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本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録。

北杜夫『楡家の人びと(下)』あらすじと感想

2009-10-15 17:48:42 | 紙の書籍
北杜夫『楡家の人びと(下)』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
第二部 第六章~第十章
第三部 第一章~第十章
解説 辻邦生


【あらすじ】
大正から昭和にかけて変動していく世の中で、楡基一郎が経営する精神科の楡病院を舞台に、一風変わった楡家とその周囲の人々を描く。


【感想】
上巻とは違い戦争が全面に出た内容になっており、全体的に暗さが漂うのは否めない。にもかかわらずユーモアを感じさせるのは、北杜夫の力量によるところが大きいのだと思う。
あれだけの繁栄を誇っていた楡病院も、楡基一郎の死後さまざなことが起こり、戦争によって焼失という結末を迎える。楡基一郎の子供たちもそれぞれ、無邪気で恵まれた子供時代から、さまざまな悲哀を味わうことになる。それは、彼らにだけ特別に起こったことではなく、この時代の多くの人びとが味わうことになった、悲劇の一端に過ぎないのだろうが…。
明治・大正・昭和と時代が移りゆくなかで、市井の人びとの悲喜こもごもに焦点をあてて描かれたいい作品だと思う。