積ん読の部屋♪

本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録。

山本文緒『絶対泣かない』あらすじと感想

2013-07-11 10:51:38 | 紙の書籍
角川文庫 山本文緒『絶対泣かない』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
花のような人‥‥フラワーデザイナー
ものすごく見栄っ張り‥‥体育教師
今年はじめての半袖‥‥デパート店員
愛でしょ、愛‥‥漫画家
話を聞かせて‥‥営業部員
愛の奇跡‥‥専業主婦
アフターファイブ‥‥派遣・ファイリング
天使をなめるな‥‥看護婦
女神の職業‥‥女優
気持ちを計る‥‥タイムキーパー
真面目であればあるほど‥‥銀行員
もういちど夢を見よう‥‥水泳インストラクター
絶対、泣かない‥‥秘書
卒業式まで‥‥養護教諭
女に生まれてきたからには‥‥エステティシャン
あとがき
文庫版あとがき
涙の力  日笠雅水


【あらすじ】
花のような人‥‥フラワーデザイナー
薔子は私の元同僚で親友だ。花のような彼女は会社を辞めてフラワーデザイナーになった。

ものすごく見栄っ張り‥‥体育教師
私は県立高校の体育教師をしていて、生徒達からは「アケボノ」と呼ばれている。そんな私は、実はプライドだけは高く見栄っ張りなのだ。

今年はじめての半袖‥‥デパート店員
私は電気メーカーの会社を辞め、デパートに転職した。社内恋愛で失恋したからだ。たまたま元彼が勤務先のデパートにやってきて…。

愛でしょ、愛‥‥漫画家
私の娘は東京で漫画家をしている。娘は無口で地味で陰気な子、運動も勉強もできないし、顔は夫に似てしまった。もちろん独身だ。

話を聞かせて‥‥営業部員
会社の営業を希望したのは私自身だった。その辺にいる軟弱な男より根性はあるし、楽天的な性格だ。しかし、世の中は甘くなかった。

愛の奇跡‥‥専業主婦
私は十年越しの片思いを実らせた。夫は映画の脚本やエッセイを書く仕事をしている。私は自分の全てを捨てて彼の元に嫁いだ。だが、彼は常に外に女がいた…。

アフターファイブ‥‥派遣・ファイリング
私は派遣の仕事をしている。業務はファイリングやお茶くみ。毎日5時で退社できるし自由だ。けれど自由の代償は孤独だ。

天使をなめるな‥‥看護婦
私は看護婦をしている。また恋人にふられた。何故か必ずふられてしまう。原因の見当はついている、患者と付き合うからだ。

女神の職業‥‥女優
僕はある女優に恋をした。小さな小さな劇団に所属する女優だ。彼女のそばにいたいがために、劇団の手伝いをすることにした。高校受験を控えた中学三年生の身で。

気持ちを計る‥‥タイムキーパー
私はテレビ局のタイムキーパーの仕事をしている。時間を計ることには慣れたけれど、いまだに慣れないものがある。人の心だ。

真面目であればあるほど‥‥銀行員
私は都市銀行に勤務している。業務は窓口だ。ボーナスの時期が憂鬱で仕方がない。

もういちど夢を見よう‥‥水泳インストラクター
私はスイミング・スクールの水泳インストラクターをしている。受け持ちは平日の昼間の初級クラス。そこに45歳くらいの男性が入会してきた。

絶対、泣かない‥‥秘書
私は女社長の秘書をしている。まだ十日しかたっていない。気がついた…。彼女は小学校の同級生だった。

卒業式まで‥‥養護教諭
私は学校の養護教諭をしている。小学校の時に登校拒否になり、保健の先生に優しくしてもらった恩返しをしたかったからだ。

女に生まれてきたからには‥‥エステティシャン
私はエステティシャンをしている。自分が不器量で毛深いのがコンプレックスだったからだ。どうせお給料をエステ代につぎ込むのなら、いっそエステティシャンになれば割引きとかあるんじゃないかと思ったからだ。


【感想】
職業も年齢も、おかれている環境もさまざまな15人の女性たちの等身大の姿が描かれている。みな、それぞれに悩みや葛藤を抱えながら、ときには怒り、ときには泣き、やがてそれでも、また一歩前に進もうと決心していく。
どの女性たちにもどこか少しずつ、自分と重なるものを感じつつ、「あぁ、わかる、わかるよ~」と共感しながら読んでいた。ときおり、心の琴線に触れてしまうところでは、うかつにも涙が滲んできてしまい、電車の中での読書は本を選ばないといけないと思ったり。
ただ、「愛の奇跡」だけはほぼ共感できず。この手の「愛があるから、どんなに大変でも報われなくても尽くします~♥」というタイプが、ただ単に苦手なだけなんだが。自分には到底できないから、いや、する気もないが。

「花のような人」、「ものすごく見栄っ張り」、「話を聞かせて」、「もういちど夢をみよう」が中でも好き♪ 

巻末の日笠雅水の寄稿文「涙の力」が素敵♪
>ここでひとつ、大泣き開運法というものを伝授したい。
泣きたくなったら、泣けそうになったら、「チャンス」と思って、思いきって泣けばいい。我慢しないで泣いて泣いて、泣きわめいてみればいい。
 ただし、一人ぼっちでね。人に見せる涙では効果はあんまり期待できない。
 誰にも決して悟られぬように注意して、泣き声も外に漏れないように例えばお布団を頭からかぶって、枕に口を押し当てて。できれば横隔膜なんかもふるわせて、オエッと吐きそうになりそうになるくらい精一杯泣きわめいてみるといい。
 直面している悲しさの中に思いっきり飛び込んで、今までのつらかった思い出も全部思い出すような覚悟で、子供がえりしたような状態になって大泣きをしていると、そこから光がさしてくる。

大人も泣こう!女性も男性も!


【余談】
 『ブルーもしくはブルー』以来なので、山本文緒の作品を読むのは何年ぶりだろう?『ブルーもしくはブルー』の主人公が女性特有の湿度の高い自己愛型。ほぼ共感できずに、もやっとした読後感が残った記憶があり山本文緒を避けていた。読書してまで、もやっとしたりイライラしたくない。
今回読んでみようと思ったのは、タイトルが『絶対泣かない』だったから。ポジティブな印象だし。期待は裏切られなかったと思う。
こういう作品ならまた読んでみたいな♪