まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

ブータンからのメッセージ

2005-08-05 01:02:33 | おすすめ書籍など
ブータン国王が提唱した国民総幸福量(GNH)は、GNPの動向に右往左往している国々にとって、耳が痛いどころか、実に新鮮で清々しい気分さえ感じる。環境問題が深刻になるなか、世界からの注目はますます高まっている。「幸福」という形なきものであるが故に、議論が絶えないのは、皆が幸福を見つめ直すいいキッカケになるかもしれない。
そのGNHを考える上で、重要な考え方が以下に示されているので紹介したい。

ブータン仏教から見た日本仏教

NHK出版

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虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史

平河出版社

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両書を記す今枝由郎氏は、ブータン国王や優れた学僧とも長年の親交を持つ、フランス国立科学研究センター(CNRS)の研究ディレクターで、約10年間ブータン国立図書館顧問を担った人物である。
上段の著書は、多岐にわたる引用が素晴らしく、ブータンを知る上で非常に重要な一冊。下段は、現国王の王妃が書かれた本の翻訳である。
上段の書籍に引用された文章がとても印象に残ったので、部分的に掲載する。国民総幸福量GNHの核心をつく内容と言える。
(本書には、他にも注目すべき内容が数多く掲載されています)

   ▼▼▼ ここから引用 ▼▼▼
私たちが懸念しているのは、私たちを駆り立てている価値観の問題です。世界の人口の大半が、極度の経済的苦しみに直面していることからして、物質的発展が必要なことは自明です。と同時に、いわゆる「富んだ半球」である北半球でも、心配、不安、ストレスといった精神的苦しみが大きいことを考えると、精神的発展が必要なことは、それ以上に自明です。(中略)そうした中で、先進国、開発途上国とを問わず、世界の人々および政府は、よりよい生活といっそうの幸福を確保しようと努力しています。しかし、皆様もお気づきのように、現在の経済の主流は、個人が消費者であること、そして消費者が王様であることを正当化し、個人をその快楽に溺れさせています。こうした近代化のなかでは、人々はいっそう消費に走り、ますます消費の自由を追求します。企業にとっては、それが売り上げを伸ばし、市場を拡張する唯一の道です。こうした近代化の理論は、一般的には疑問視されることはありません。しかし、仏教徒としては、はたしてそれが倫理的な制度に基づいた本当の幸せをもたらすものかどうかを、考えねばならないと思います。仏教では、私たちが幸せで、健全な社会生活を送るためには「四無量心」すなわち四つの無限の心、「慈無量心」「悲無量心」「喜無量心」「捨無量心」(中略)が必要であると教えています。

四無量心と四摂法(長泉禅寺のHPより)
http://www3.ic-net.or.jp/~yaguchi/houwa/sisyoubou.htm

現在進行中の近代化は、こうした仏教の理念に即した社会の実現する可能性を根底から覆すものなのではないかと自問せざるを得ません。私たちブータン人は、本当の意味で開花した人間及び社会を実現する、別な近代化の道があるのではないかと模索しています。(中略)
 ブータンが目指しているのは、仏教の理念に深く根ざしたブータン文化に立脚した社会福祉、優先順位、目的に叶った近代化の方向を見出すことです。最近になってGNHすなわち「国民総幸福」という指針が真剣に取り上げられるようになりましたが、これはすでに二十年以上も前に現ブータン国王が提唱したものです。GNHは仏教的人生観に裏打ちされたもので、私たちが新しい社会改革、開発を考えるうえの指針となるものです。一部の人々は、仏教をはじめとする哲学的考察と、政治、経済とは、異なった次元のものだと考えていますが、決してそうではなく、すべてが統合され、総合的に考慮されるべきものです。
 今日最も重要な問題は、西洋的政治・経済の理論と仏教的洞察との溝を埋めることです。仏教の活力と仏教社会の将来は、仏教の理念をどのようにして社会の進むべき方向、あるいは取るべき選択に肯定的に反映することができるか否かにかかっています。
   ▲▲▲ 引用ここまで ▲▲▲


※今枝氏は、私が読んだ上田紀行氏と玄侑宗久氏の著書について、厳しいコメントをしているが、両氏が仏教界内外、とりわけ外部社会に与えた影響は非常に大きいことに違いはない。研究対象としての宗教と、実社会の生きる道具としての宗教の違いなのかもしれない。
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