まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

心の貸借対照表

2008-06-20 06:17:08 | まちづくりのキーワード
 去る6月6日(金)、鈴木輝隆江戸川大学教授が代表を務めるローカルデザイン(LD)研究会で、住民流福祉総合研究所所長の木原孝久さんのお話を聞きました。場所は秋葉原駅の近くの貸し会議室。秋葉原のあの酷い事件が起こる2日前のことです。

 案内通知が間際になってしまったことと、日程調整がうまくいかず、2週連続のLD研究会となってしまったために、果たして人が集まるか非常に不安でした。にもかかわらず、当日は48名定員の会場が溢れかえるほどの盛況ぶり。嬉しいことに、四国や九州からも私の知人が駆けつけてくれました。特に福祉関係者以外の方にお聞きいただきたかったこともあり、今回はまちづくり活動の実践者から官庁で働く方、地方議員の方など、実に多様な方にお集まりいただき、本当にありがたいと思います。
 また、終了後の懇親会では、ゲストの木原さんが不参加ながら、23名の方々にご参加いただき、参加者同士で会の感想や互いの活動の紹介など活発に意見交換されていたようで、こちらも大変な盛り上がりとなりました。
 今回は、木原さんのお話は初めてという方ばかりで、30年以上に及ぶ蓄積に裏付けられた含蓄ある知見や事例の数々は、大変な刺激となったようです。参加者の皆さんからは、「地域の見方が変わった」「福祉の考え方が変わった」という意見や、「助けてもらうことは評価されるべきことだとわかり、働き方に対する考え方が変わって楽になった」という意見など、木原さんのお人柄や楽しい話し振りも手伝い、大変好評で、ありがたいお言葉をたくさん頂戴しました。企画者としての冥利に尽きます。

 木原さんのお話を聞くのは、私自身2年ぶり。住民流福祉総合研究所の書籍や資料、木原さんご自身が書かれているブログ”タカヒサ発”には時折接していましたが、今回は目の前でじっくりとお話を聞くことができ、改めて感激した次第です。ご近所づきあいができていないことを反省するとともに、地域社会の見方・捉え方、地域に潜む住民(世話焼きさん)パワーの凄さ、相互扶助や住民流福祉の考え方、官による支援のあり方、まちづくりで力を入れるべき対象範囲(セグメンテーションとターゲッティング)、テコ(レバレッジ)の利かせ方など、ソーシャル・マーケティングの要素がてんこ盛りで、勉強になる点が多々ありました。木原さんの語る地域福祉は、金子郁容さんの語るコミュニティ・ソリューションを体現したものだと思います。

 そして、今回のお話で特に印象付けられたのが、『心の貸借対照表』の話でした。
人間誰しも、人に”助けられる”ことは、助けてくれた人に対して”借り”ができるもの。この”借り”がたくさん貯まると申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまいます。人から貰い物をすると御返しをしなくてはと思うのは当然ですよね。だから、人は、借りた分を御返しするようバランスを取ろうとするのが自然なんです。
 と言うことは、助けられる一方の要介護の当事者は、たまらない気持ちになるではないかと、重要な指摘。要介護者だって「人の役に立ちたい」「ありがとう」って言ってもらえる人間らしい普通の生活がしたいのです。しかしながら、現在の日本の介護システムや地域福祉の考え方は、半ば無意識的に、支援する側の都合で作られてしまっているそうです。
 「私だって誰かの役に立ちたい」という、人間本来の基本的な欲求を(抑圧するのではなく)コミュニティの中で機能させるため、支援を受けたい人と支援をしたい人を関係づけること、人々の関係性を住民の流儀(ルール)に従って編みなおすことが、結果的に地域の再生につながる、むしろ関係の再構築なしに再生はありえないと言えるかもしれません。
 住民流総合研究所では、”住民支え合いマップ”という誰もが作れるツールを通して、地域の現状を地域の人々が把握することから始めることを勧めています。マップに様々な情報を載せていく取組みは、地域を知る様々な人から聞き取りをする必要も生じることから、マップ作成のプロセスそのものが関係づくりとなっています。

 『心の貸借対照表』。心に借りを持つ人ほど、人の役に立ちたいという気持ちは強い。その気持ちを汲み取り、きちんと発揮できる場を提供すること、コミュニティの中で機能させ循環させること。このことが、まちづくりを考える上で欠くことのできない基本ではないかと再考させられた一日でした。
 木原さんのブログによると、2009年1月には、都内にて「ご近所福祉研究集会」を開催する予定とのこと。とても楽しみです。
 最後に、江戸川大学の学生さんの感想文と次回以降のローカルデザイン研究会の開催お知らせのリンクを掲載します。

ブログ”タカヒサ発”より住民流福祉の4点セット
http://hello.ap.teacup.com/applet/takahisa/20080121/archive

助けられ上手さん―介護を受けるあなたが主役
木原 孝久,認知症介護研究研修東京センター
認知症介護研究研修東京センター

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江戸川大学の学生さんの感想文
http://ameblo.jp/ldken/theme-10000801265.html
今後のローカルデザイン研究会の開催お知らせ
http://ameblo.jp/ldken/theme-10000690482.html

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