晴れときどき化学、ところにより雑想

もしかしたら何かの役に立つかもしれない化学のお話(と、よしなしごと)

キチン

2012年06月15日 21時35分25秒 | 化合物のお話
キチンは、エビの殻やカニの甲羅、昆虫の殻、さらには菌類の細胞壁の構成成分です。

その構造は、N-アセチルグルコサミン(ブドウ糖のOH基のひとつがアセトアミド基[CH3CONH-]で置換された化合物)が、平均でおよそ850個ほどつながったものです。


キチンは有機溶媒や水、薄い酸や薄い塩基には溶けません。

キチンに濃塩酸を作用させると、加水分解されて単糖であるグルコサミンと酢酸が得られます。

一方でキチンに濃水酸化ナトリウム水溶液を作用させると、アミド結合の部分だけが加水分解されて、キトサン(グルコサミンのポリマー)と酢酸が得られます。


キチンを分解する酵素としてはキチナーゼが挙げられますが、ヒトにはその酵素はありません。

ただしヒトの体内ではリゾチームなどの酵素によって分解されるため、毒性や安全性に関して問題はない化合物です。



三上と三多

2012年06月14日 23時59分38秒 | よしなしごと
ひらめきや良い考えの生まれやすい状況をまとめて「三上」(馬上、枕上、厠上)と言うのはよく知られていますが、

文章を上達させる秘訣をまとめて「三多」と言うそうです。


3つの「多」は、看多、做多(さた)、商量多を指し、

それぞれ「多くの本を読むこと」、「多く文を作ること」、「多く工夫し推敲すること」という意味だそうです。


どちらもポイントを3つにしていることで、説得力のある表現になっているのではないかと思います。

企画書やプレゼンテーションなどでの理由付けにおいても、

「この理由は3つあります」

というような形で「3つ」を意識して使うと内容が引き立つものと思います。



ラジカル

2012年06月13日 21時41分57秒 | 化学のお話
不対電子(対になっていない電子)をもつ原子や分子をラジカル[radical](あるいはフリーラジカル、遊離基)といいます。

一般的に不安定(≒反応性が高い)で寿命が短く、他のラジカルや分子と反応することで安定化します。

※電子は2個でペア(対)をつくりたいという性質がありますので、1個だけの場合は、なんとか相手を見つけようとします。
 (そしてそれが反応性の高さにつながっています)。

例外として、トリフェニルメチルラジカル (C65)3C・ のように比較的安定なものもありますが、それはほんの一部になります。


ラジカルが関わる反応はラジカル反応と呼ばれますが、気相での光化学反応やラジカル重合など、多くの例があります。

例えばメタンと塩素の光化学反応では、

最初に塩素ラジカルが生成します(開始反応)。
 Cl2 → 2Cl・

次に、以下の反応が連鎖的に生じます(成長反応)。
 CH4 + Cl・ → CH3・ + HCl
 CH3・ + Cl2 → CH3Cl + Cl・

その途中でラジカルどうしが出会うと、
 CH3・ + Cl・ → CH3Cl
 Cl・ + Cl・ → Cl2
 CH3・ + CH3・ → CH3CH3

というような反応が起きることでラジカル反応が停止します(停止反応)。


このようにラジカル反応には、開始、成長、停止の3つの段階が必ず含まれますが、効率よく生成物を得るためには、なるべく停止反応が起きないような工夫がされます。


※なお、世間一般では(化学の分野以外では)、ラジカル[radical]というと「過激派」「急進主義者」という意味になりますので、使う際には気をつけてください(笑)。



のんびりモード

2012年06月12日 23時45分13秒 | よしなしごと
個人的な話になりますが、

何かを行う際において、時間に余裕があるときの方が、かえって時間が余計にかかるということがよくあります。

逆に時間に余裕がないときの方が、てきぱきと物事を処理している自分に気付きます。


あまりせかせかし過ぎるのもよくないですが、反対にのんびりし過ぎるのも考えものです。

何事も適度なペースで進めるのがよいとは思いますが、

根がぐうたらなのか、そこまできちんとできない自分もいて、なかなか悩ましいところです。


お仕事において時間に追われていることが多いので、

それ以外の時間はのんびりモードで息抜きしている、ということで、うまくバランスが取れているのかもしれません。



酸化防止剤

2012年06月11日 22時53分11秒 | 化学のお話
酸化防止剤は、プラスチックやゴムなどの二重結合を持つ材料や、食品などで酸化しやすいものに加えることで、文字通り酸化を防止する物質です。

このときの酸化の過程においては、一般的に酸素のラジカルが関わっていることから、酸化防止剤の多くがラジカルを補足する働きを持っています(=ラジカル補足剤)。


材料用としてよく用いられる酸化防止剤には、

フェノール系(ヒンダードフェノール系)酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系およびリン系酸化防止剤などがあります。


フェノール系酸化防止剤や芳香族アミン系酸化防止剤は、一次酸化防止剤として、ヒドロペルオキシラジカルを補足する機能があります。

一方で硫黄系およびリン系酸化防止剤は、ヒドロペルオキシドを分解する作用があります(二次酸化防止剤)。

一次酸化防止剤と二次酸化防止剤は、このように作用機構が異なるため、それらを併用することで酸化防止効果が高まります。

※なお芳香族アミン系酸化防止剤は変色性があるため、プラスチックに用いることはあまりなく、主に(変色してもわかりにくいタイヤなどの)ゴム用として用いられることが多いです。


食品の中で酸化されやすいものとしては、(油脂に含まれる)不飽和脂肪酸がありますが、

これらの酸化を防止するために(食品添加物として)「酸化防止剤」が添加されています。

主なものとしては、トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、没食子酸エチルなどが挙げられます。



ルミノール試験

2012年06月10日 22時17分36秒 | 化学のお話
ルミノール試験は血痕の鑑識に用いられる試験で、現場から血痕を探す場合に用いられます。

その方法としては、ルミノール(3-アミノフタル酸ヒドラジド)のアルカリ性水溶液と、過酸化水素水との混合溶液を塗布または噴霧したときに、

もしそこに血痕があれば特徴的な青白い光を発することになります。


この反応は、ルミノールが過酸化水素などの酸化剤と反応することで発光する現象を利用していますが、

ヘモグロビンや血液がこの発光反応の触媒になるため、古くから鑑識において用いられているという実情があります。

なお、新鮮な血痕よりも古い血痕の方が発色が強くなります。


ミステリーでよく出てくるおなじみの試験ですね。



けん化

2012年06月09日 23時25分48秒 | 化学のお話
塩基(例えば水酸化ナトリウム)などを用いて油脂を加水分解することで、グリセリンと脂肪酸塩が得られる反応を、特にけん化と呼びます。

油脂を構成する脂肪酸が分子内に3種類(R、R’、R”)あるような油脂を水酸化ナトリウムでけん化したときには、以下のような化学反応となります。

CH2OCOR

CHOCOR’ + 3NaOH → グリセリン + 3種類の脂肪酸Na

CH2OCOR”

※3種類の脂肪酸Na: RCOONa、R’COONa、R”COONa


この反応は実質的に、エステルからカルボン酸塩とアルコールを得る反応でもあることから、

エステルの加水分解のことをけん化と呼ぶこともあります。


けん化(エステルの加水分解)はエステル化の逆反応になりますので、反応機構も含めてセットで把握しておく方がよいかもしれません。



シリコンとシリコーン

2012年06月08日 23時58分14秒 | 化学のお話
シリコンとシリコーンは1文字違いですが、全くの別物になります。

シリコン(silicon)はケイ素のことを指しますが、

シリコーン(silicone)は、いろいろな有機物がついたケイ素と、酸素が交互に結合した形のポリマーになります。


シリコーンはその構造からわかるように、炭素-炭素結合からなる一般の有機ポリマーと、ケイ素と酸素だけからなる無機ポリマーの中間的な性質を示します。

特徴としては、耐熱性・耐寒性、耐溶剤性および対候性に優れ、消泡性や撥水性、電気絶縁性、難燃性などを有していますが、

その一方で、物理的強度が弱く、接着性が低いという欠点があります。


分子量と架橋の度合いによって、油状、ゴム状、樹脂状の3つの形態があり、

油状のものは熱媒体、撥水剤、消泡剤などに、

ゴム状のものは耐溶剤用のチューブやホース、ゴム栓などに、

樹脂状のものは電気製品や塗料などに、

というような形で、幅広い分野で使用されています。




疲れがたまりやすい時期

2012年06月07日 23時51分22秒 | よしなしごと
だんだんと気温が高くなり、同時にムシムシしてくる季節となりました。

今の時期は、気温の上昇に対して身体がまだ対応しきれていない頃だと思いますので、

なるべく疲れを残さないように、しっかり休むようにしましょう。


※なお、毎日好きなことばかり行っているから疲れ知らずです、という方はそのまま突き進んでいってください(笑)。



炭素鋼

2012年06月06日 23時45分10秒 | 化学のお話
炭素鋼とは、鉄と炭素の合金のうち、0.02%~2%の炭素を含む鋼を指します。

なお不純物として、通常0.2~0.6%程度のケイ素とマンガン、および0.05%以下のリンや硫黄を含んでいます。

炭素の含有量が多いほど、密度や熱伝導率および電気伝導度などが低下しますが、

この理由としては、炭素の増加とともに、硬くてもろい性質をもつセメンタイト(Fe3C)の量が増加することによります。


また、炭素の含有量が多いほど硬度が増すことから、炭素量によって以下の6種類に分類されます。

・極軟鋼: 炭素量が0.12%以下のもの。薄板や鋼線に用います。

・軟鋼 : 炭素量が0.13%~0.20%のもの。リベットや橋梁材に用います。

・半軟鋼: 炭素量が0.21%~0.35%のもの。鉄骨、鉄筋、造船用に使用します。

・半硬鋼: 炭素量が0.36%~0.50%のもの。シャフトや建築材として使用します。

・硬鋼 : 炭素量が0.51%~0.80%のもの。レールやねじなどの用途に使われます。

・最硬鋼: 炭素量が0.81%以上のもの。工具用材として用いられます。


これを見ていくと、それぞれの用途によっていろいろと使い分けられていることがわかり、とても興味深いです。



ミネラル

2012年06月05日 22時58分19秒 | 化学のお話
ミネラルは、本来鉱物を意味する言葉ですが、生体に必須の無機成分を指すことが多いです。

ヒトの身体の約95%は、酸素、水素、炭素、窒素の4つの元素からできていますが、残りの約5%がミネラルになります。


ミネラルの中でヒトに必須のものは16種類あり、

比較的多く存在する「多量元素」と、少量しか存在しない「微量元素」に分けられます。

・多量元素(7種類): カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、硫黄、塩素

・微量元素(9種類): 鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、モリブデン、クロム、コバルト、セレン

となります。


ミネラルに関してよく言われている例としては、

・カルシウム不足 → 骨が弱くなる

・鉄不足 → 貧血になりやすい

・ナトリウム過剰(=食塩の取りすぎ) → 高血圧を招く

がありますが、これらはすでに一般常識の範囲かもしれません。


また少しマイナーなところでは、

・亜鉛不足 → 味覚異常

・リン過剰 → 骨が弱くなる

などが挙げられます。


どの元素についても多過ぎず、少な過ぎずバランスよく取り入れることが大切なことから、

普段からいろいろな種類の食品を取るようにすることが必要となります。

※とはいうものの、現代の食生活ではなかなか難しいですよね・・・。




ソックスレー抽出器

2012年06月04日 23時13分07秒 | よしなしごと
ソックスレー抽出器は、その名前が示す通り、ソックスレー(F.Soxhlet)が発明した抽出器です。

サイフォンの原理を利用していて、比較的少ない溶媒で抽出できるのが特徴です。


以前に、接着剤や粘着剤に含まれる樹脂成分を抽出して分析するために、よく使っていたことを思い出します。

フラスコに溜めていた溶媒が加熱されることで少しずつ上に溜まっていき、ある一定のところまで溜まるとサイフォンの原理によって一気に流れ落ちるのですが、それは見ていてなかなか楽しいものでした。


ただ、本来ならばそれは「お仕事」のひとつだったので、そんなにぼんやり見とれていてはいけなかったのでしょうが、

もう時効(?)ではないかと思いますので、許して頂ければと思っています(笑)。


もしまだ使ったことがなく、そして手近なところにこれがあるようでしたら、一度試してみてもよいかもしれません。


※なお、ソックスレー抽出器の図についてはこちらを参照ください(Wikipediaのページより)。


軽金属と重金属

2012年06月03日 20時24分49秒 | 化学のお話
軽金属と重金属は、その密度による違いで分類されます。

軽金属は、密度が4g/cm3より小さい金属で、

リチウム、ベリリウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどが該当するのに対して、

重金属は、密度が4g/cm3以上の金属すべてを指します。

具体的には、遷移金属元素(スカンジウム以外)や、スズ、鉛、亜鉛、ビスマス、カドミウム、水銀などが重金属の例として挙げられます。

※すなわち重金属には分類上、金や銀、白金などの貴金属や、ウランやプルトニウムなどの放射性元素も含まれます。


重金属というと、毒性のあるカドミウムや水銀、鉛だけを指すように思ってしまいがちですが、

このように定義から考えていくことで、頭のなかをもう一度整理しておく必要があるかもしれません。



不動態

2012年06月02日 22時54分00秒 | 化学のお話
金属や合金が当然示すような反応性を失って、不活性な性質を帯びた状態のことを不動態と言います。

例えば、鉄を濃硝酸に入れると溶解せず、全く酸に反応しない状態となります。

またアルミニウムは、空気中に放置するだけで錆びにくい状態になります。

そして同様の性質は、ニッケル、コバルト、クロム、チタンにも見られます。


これは金属の表面にきわめて薄く緻密な酸化皮膜が生じることで、内部にある金属部分が保護されることによります。

※ちなみにステンレスの良好な耐食性は、不動態となりやすい性質を利用しています。