Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

コンテナ船「Carina Star」の詳細と同型船について

2009-10-29 20:04:37 | Nice boat
さて、今般の早鞆瀬戸における水上衝突事故の当事船のうち、自衛艦「くらま」の方は要目や艦歴がよく知られていますので、特別な言及は不要でしょう。
そこで今回は、もう一方の当事船であるコンテナ船「カリーナ・スター Carina Star」についてまとめてみます。


まず、本船のオペレータ(運航者)は韓国ソウルに本社を置く南星海運株式会社(なんせいかいうん、ナムソン海運、남성해운、Namsung Shipping Co., Ltd.)となっています。
船主も南星海運であるかそれとも傭船であるかはわかりませんが、どうやら自社船っぽいです。

公式の History によると、南星海運は1953年の創業。
1955年より韓国―阪神間の不定期航路を運航し、1964年には定期化。1970年代に入ると木材運搬船による東南アジア航路を開設。
1994年よりコンテナ船に進出して大連、青島、京浜に就航。
1998年には日本総代理店として日本法人のナビックス南星株式会社(2007年4月南星海運ジャパン株式会社に商号変更)を設立。
そして2007年に廈門、香港、ハイフォン(ベトナム)にコンテナ船就航。
2009年内にはホーチミン、バンコク、レムチャバン(タイ)に就航予定(未就航)としています。

こうして見ると、それまでの弱小船社からほんのここ15年で船隊を急拡大したことがわかります。

船隊については南星海運ジャパンの本船Particularに紹介があります。
それによると、

■342 TEU 級 4隻(1994年竣工2隻、1996年竣工2隻)
■706 TEU 級 6隻(1998年竣工2隻、2000年竣工2隻、2003~2004年竣工 710 TEU 積2隻)
■962 TEU 級 4隻(2005~2007年竣工)

となっており、ここ6年内だけで6隻も増備しています。

船体塗粧は灰色で、舷側に白色で「NAMSUNG」のネームを記し、上部構造物は白色、煙突はクリーム色で、
便宜置籍船を用いず旗国は大韓民国とし、コンテナ船の船名には社名に因んでか Star を入れるのが通例になっているようです。


本船「Carina Star」はこの船隊のうち、 706 TEU 級の2番船にあたります。
TEU というのはコンテナ船への積載容量の単位で、 twenty-foot equivalent unit の略であり、20フィートコンテナ換算で何個積めるかというのを表す数値です。
この 706 TEU 級は南星海運では前述のように6隻保有しており、うち後期建造の2隻は少改良され 710 TEU となっています。
船名は1番船「Victory Star」、2番船「Carina Star」、3番船「Liberty Star」、4番船「Bohai Star」、5番船「Korea Star」、6番船「China Star」。

1~4番船の要目は以下の通り。
 全長: 127.937 m
 垂線間長: 119.9 m
 型幅: 20.00 m
 型深: 10.70 m
 満載吃水: 7.41 m
 国際総トン数: 7,401.00 GT (3,4番船 7,409 GT)
 国内(登録)総トン数: 7,401.00 GRT (3,4番船 7,409 GRT)
 純トン数: 3,371 NT (3,4番船 3,334 NT)
 載貨重量: 9,157.035 DWT (3番船 9,164.231 DWT / 4番船 9,143.135 DWT)
 排水量: 12,609.4 t
 コンテナ積載容量: 706 TEU
 主機形式: MAN B&W 8S35MC-MK6
 主機定格出力: 7,600 PS = 5,600 kW
 航海速力: 21.50 kt
 建造所: 株式会社新
 建造地: 大韓民国 慶尚南道 統營市 道南洞

2番船「Carina Star」のアイデンティフィケーションは以下の通り。
 旗国: 大韓民国
 建造番号: SAS-396
 起工: 1998年4月10日
 進水: 1998年7月27日
 竣工: 1998年10月10日
 船舶番号: JJR-049869
 IMO番号: 9172612
 信号符字: DSNS2


次に、本船の造船所の株式会社新(シナ、신아、ShinA)についてみていきます。

ko:SLS조선 によると、創業は1946年6月、新造船工業(신아조선공업)として設立されました。
1978年6月、大宇財閥(だいう、デーウ、대우)の傘下に入りますが、同年設立の大宇造船重工業機械株式会社(慶尚南道巨済市に造船所を持つ。現・大宇造船海洋株式会社)に吸収はされなかったようです。
その後大宇造船の合理化方針のために大宇グループからスピンオフされ、従業員買収(エンプロイー・バイアウト)による新会社として1991年12月に新造船株式会社(신아조선、ShinA Shipbuilding Co., Ltd.)を設立、1998年2月には株式会社新に商号変更しています。
上記の 706 TEU 級各船は、1番船「Victory Star」が1998年3月31日進水、同年6月26日竣工ですから、この社名の時期の建造船ということになります。
同社はその後2006年8月、SLS造船株式会社(SLS조선、SLS Shipbuilding Co., Ltd.)に再度商号変更して現在に至っています。
公式の会社紹介によると、社名の SLS とは “SKY”, “LAND” and “SEA”を表すのだそうです。
現在の設備としては大型の乾ドック3基を備えています。

造船所の所在地は、設立時は慶尚南道統營郡統營邑、1955年9月1日統營邑が忠武市に昇格して統營郡と分離したことにより忠武市道南2洞、1995年1月1日忠武市と統營郡の合併で統營市(トンヨンシ、통영시)道南2洞、1995年5月1日行政洞の統合で統營市道南洞(トナムドン、도남동)と変遷しています。

706 TEU 級コンテナ船はSLS造船の公式でも紹介されており、南星海運向けの1番船「Victory Star」の写真が使われています。
ここでの記載内容は主機形式が B&W 6S42MC となっている以外、上記とほぼ同じとなっています。
同社の標準商品の一つとして他の船主にも同型・準同型船を売り込んでいるのかもしれません。

   *  *  *  *

「Carina Star」の写真を捜してみましたが、私は撮っていませんでした。
船名でウェブ検索すると、以前釜山―京浜航路に配船されていた頃などに撮られた写真を載せたブログエントリが幾つかヒットします。
現在京浜航路(釜山→東京→横浜→川崎→名古屋→馬山→釜山)には姉妹船の「Victory Star」が配船されています。
因みに「Carina Star」は現在は釜山―阪神航路に就航中で、釜山→大阪→神戸→光陽(全羅南道)→釜山の往航時に今度の事故に遭っています。

写真は東京港品川埠頭SCバースにおける「Victory Star」です。





「Victory Star」は明日2009年10月30日0700に品川SDバースに入港し1700出港、横浜港本牧C9バースに1855入港し31日0400出港の予定です。

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남성해운 (韓国語)
http://www.namsung.co.kr/kor/
Namsung Shipping (英語)
http://www.namsung.co.kr/eng/
南星海運ジャパン (日本語)
http://www.namsung.co.jp/

本船 "Carina Star V-945E/W" 接触事故のご連絡 (PDF) (平成21年10月28日)
http://www.namsung.co.jp/info/CST945.pdf

SLS Shipbuilding (韓国語 / 英語)
http://www.slsship.co.kr/

統営(トンヨン)市 (日本語)
http://jpn.tongyeong.go.kr/main/

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Summary of images:
Description = 南星海運社船 「Victory Star」 (DSNR9 / Off.No. JJR-049678 / IMO 9172595)
Date = 2008-12-12
Source/Author = Vantey
License = CC-BY-SA-2.1-JP
Creative Commons License


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