◆減少する北極海の氷
今年9月21日、北極海を覆う氷の面積が観測史上最小を記録しました。北極海の氷は夏場にあたる9月に最小となり、冬に拡大するサイクルを繰り返しています。今年の氷の面積は532万平方kmで、1978年から2000年の夏場の平均より20%(130万平方km)少く、消失面積は日本列島ほぼ3個分にあたります。これは人工衛星での観測が始まった1979年以降最も小さく、過去50年までさかのぼっても最小とみられます。これまでの最小記録は2002年で、2番目は昨年2004年だったといわれています。
冬場の氷の回復も減少しており、北極海の氷の面積の縮小が加速しています。氷の厚さも、1960年代~1970年代の間には平均3.1mあったのが、1990年代半ば以降の調査では平均1.8mに40%減少したと報告されており、今世紀半ばまでに、夏期には北極海の氷が完全に消失するとの予測もあります。
◆危惧される極域の生態系
北極などの極域には、私たちが思っているよりはるかに豊かな生態系が存在しています。米海洋大気局(NOAA)などの国際調査チームは、アラスカ沖の北極海の水深4000m近くの海底で、ナマコの仲間や小型のエビ、イソギンチャクやヒトデなど多くの生物を確認し、中には新種とみられる生物が数種類含まれていたと発表しました。
こうした極域の生態系が地球温暖化により大きな影響を受けることが心配されています。すでに温暖化の影響と思われる現象も報告されており、今年3月には、北極周辺の湖底の堆積(たいせき)物の調査で、生息するプランクトンなどの生物の生息状況が、19世紀半ば以降の約150年で劇的に変化したとの報告がなされました。数百年から数千年にわたって安定していた水生生物などの生息状況が大きく変化したのは、水の表面を覆う氷が解け、夏が長くなったためで、変化が起きた時期からみても、人間の活動による温暖化が原因である可能性が高いとされています。
北極圏の生態系の頂点にたつホッキョクグマ(シロクマ)も、氷の減少により餌のアザラシなどを得られなくなり、1981年から98年の間に子グマの平均体重・数が約15%減少したと報告されています。
◆温暖化の悪循環
こうした氷の減少が、北極圏の熱収支を変える可能性が指摘されています。日光が氷や雪に当たるとその80%から90%は反射されて宇宙空間へ戻っていきますが、氷のない大地や海面に当たるとそのエネルギーの多くは吸収されて熱に変換され、気温上昇へとつながります。これがポジティブフィードバックと呼ばれる現象です。氷が減って海が太陽熱を多く吸収することで、氷の縮小に一層拍車をかける悪循環がすでに始まっている可能性があります。現に、NASAは今年5月、地球観測衛星テラの観測データから、地球がだんだん暗くなっていると発表しました。2000年から2005年の間に地球が太陽光を反射する割合が0.5%低下し、その理由は、地球温暖化によって雪や氷が減少したからだとしています。
北極の平均気温は、世界のほかの地域や過去数年に比べて2倍の速さで毎年上昇しています。アラスカやカナダ西部では、冬場の平均気温がこの50年間で3℃から4℃上昇し、このままでは、北極全体の平均気温は、100年後には大陸部で3℃から5℃、海上では最大7℃上昇すると予想されています。私たちは、こうした気温上昇に敏感な極域からの警告に真剣に学ぶ必要があります。
今年9月21日、北極海を覆う氷の面積が観測史上最小を記録しました。北極海の氷は夏場にあたる9月に最小となり、冬に拡大するサイクルを繰り返しています。今年の氷の面積は532万平方kmで、1978年から2000年の夏場の平均より20%(130万平方km)少く、消失面積は日本列島ほぼ3個分にあたります。これは人工衛星での観測が始まった1979年以降最も小さく、過去50年までさかのぼっても最小とみられます。これまでの最小記録は2002年で、2番目は昨年2004年だったといわれています。
冬場の氷の回復も減少しており、北極海の氷の面積の縮小が加速しています。氷の厚さも、1960年代~1970年代の間には平均3.1mあったのが、1990年代半ば以降の調査では平均1.8mに40%減少したと報告されており、今世紀半ばまでに、夏期には北極海の氷が完全に消失するとの予測もあります。
◆危惧される極域の生態系
北極などの極域には、私たちが思っているよりはるかに豊かな生態系が存在しています。米海洋大気局(NOAA)などの国際調査チームは、アラスカ沖の北極海の水深4000m近くの海底で、ナマコの仲間や小型のエビ、イソギンチャクやヒトデなど多くの生物を確認し、中には新種とみられる生物が数種類含まれていたと発表しました。
こうした極域の生態系が地球温暖化により大きな影響を受けることが心配されています。すでに温暖化の影響と思われる現象も報告されており、今年3月には、北極周辺の湖底の堆積(たいせき)物の調査で、生息するプランクトンなどの生物の生息状況が、19世紀半ば以降の約150年で劇的に変化したとの報告がなされました。数百年から数千年にわたって安定していた水生生物などの生息状況が大きく変化したのは、水の表面を覆う氷が解け、夏が長くなったためで、変化が起きた時期からみても、人間の活動による温暖化が原因である可能性が高いとされています。
北極圏の生態系の頂点にたつホッキョクグマ(シロクマ)も、氷の減少により餌のアザラシなどを得られなくなり、1981年から98年の間に子グマの平均体重・数が約15%減少したと報告されています。
◆温暖化の悪循環
こうした氷の減少が、北極圏の熱収支を変える可能性が指摘されています。日光が氷や雪に当たるとその80%から90%は反射されて宇宙空間へ戻っていきますが、氷のない大地や海面に当たるとそのエネルギーの多くは吸収されて熱に変換され、気温上昇へとつながります。これがポジティブフィードバックと呼ばれる現象です。氷が減って海が太陽熱を多く吸収することで、氷の縮小に一層拍車をかける悪循環がすでに始まっている可能性があります。現に、NASAは今年5月、地球観測衛星テラの観測データから、地球がだんだん暗くなっていると発表しました。2000年から2005年の間に地球が太陽光を反射する割合が0.5%低下し、その理由は、地球温暖化によって雪や氷が減少したからだとしています。
北極の平均気温は、世界のほかの地域や過去数年に比べて2倍の速さで毎年上昇しています。アラスカやカナダ西部では、冬場の平均気温がこの50年間で3℃から4℃上昇し、このままでは、北極全体の平均気温は、100年後には大陸部で3℃から5℃、海上では最大7℃上昇すると予想されています。私たちは、こうした気温上昇に敏感な極域からの警告に真剣に学ぶ必要があります。
北極の平均気温は、世界のほかの地域や過去数年に比べて2倍の速さで毎年上昇しています。アラスカやカナダ西部では、冬場の平均気温がこの50年間で3℃から4℃上昇し、このままでは、北極全体の平均気温は、100年後には大陸部で3℃から5℃、海上では最大7℃上昇すると予想されています。私たちは、こうした気温上昇に敏感な極域からの警告に真剣に学ぶ必要があります。