2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

CASA声明を発表

2005-12-11 01:19:27 | 国際交渉

 CASAは、会議終了後、モントリオールで以下の声明を発表しました。



          COP11・COP/MOP1
          歩み始めた京都議定書
         2013年以降にも確かな道のり


2005年12月9日(カナダ:モントリオールにて)
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)


気候変動枠組条約第11回締約国会合(COP11)と京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1)は、京都議定書の運用ルールであるマラケシュ合意をすべて採択するとともに、2013年以降の削減目標と制度設計について交渉を開始する決定を採択して終了した。

マラケシュ合意の採択により、このCOP/MOP1で京都議定書が着実な歩みを始めたこと、そして2013年以降も京都議定書が継続することを前提に、2013年以降の削減目標と制度設計についての議論に道筋がつけられたことを、心から歓迎する。

遵守制度を含むマラケシュ合意の採択により、京都議定書は完全に実施段階に入ることになった。このことは、日本などの先進国の法的拘束力を持った削減義務を実施するためのすべてのしくみが完成したことを意味している。日本は、今年4月に「京都議定書目標達成計画」を閣議決定したが、6%削減の目処はまったくたっていない。早急に、再生可能エネルギーについての固定価格買取制度や環境税の導入などの抜本的な対策を早急に導入すべきである。

このCOP/MOP1では、締約国が2013年以降も京都議定書を継続する意思を示せるかどうか、そのための道筋をつけることができるかどうかが課題であった。COP/MOP1で、2013年以降も京都議定書の枠組みが継続することを前提に、2013年以降の削減目標と制度設計についての議論をここCOP/MOP1で開始し、次期約束期間との間に空白が生じないよう結論を出すことが決定されたことは大きく評価されてよい。また、途上国を含めた議定書の検討についての議論を準備することになったことも評価してよい。

気温上昇幅を工業化以前(1850年頃)から2℃未満に抑えなければ、地球規模の回復不可能な環境破壊により人類の健全な生存が脅かされる可能性がある。すでに0.7℃上昇してしまった。残された時間は少ないことを自覚しなければならない。

リオ、京都、マラケシュそしてモントリオール。次代を担う子供たちのためにも、この歩みを止めることは許されない。

COP11、COP/MOP1が閉会!

2005-12-11 01:17:28 | 国際交渉
12月10日午前6時4分、11月27日から開催されていた気候変動枠組条約第11回締約国会合(COP11)と京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1)は、京都議定書の運用ルールであるマラケシュ合意を、遵守制度も含めてすべて採択するとともに、2013年以降の削減目標と制度設計についてのCOP/MOP決定と、「長期的な共同行動」についてのCOP決定を採択して終了しました。


◆ 歩み始める京都議定書・・2013年以降にも確かな道のり

マラケシュ合意がすべて採択されたことにより、このCOP/MOP1で京都議定書が歩みを始めることになります。1997年のCOP3で京都議定書が採択されてから8年、ようやく京都議定書が動き始めるたことを心から歓迎したいと思います。

もうひとつの課題であった2013年以降の削減目標と制度については、先進国の2013年以降の削減目標について規定する京都議定書3条9項にもとづく決定がCOP/MOP1で採択されました。また、途上国を含むすべての議定書の締約国がこの議定書をCOP/MOP2で検討するとの議定書9条の規定に基づくプロセスを準備することも、議長サマリーとして確認しました。

さらに、条約の締約国会議(COP)で、「長期的な共同行動」についてのプロセスをCOPの決定として採択しました。京都議定書を批准していないアメリカやオーストラリアを含めてCOPの決定が採択できたことは評価できます。

  最後は、ロシアが議定書3条9項の検討プロセスのなかで「自主的な目標」についても明記するCOP/MOP決定を求め、朝方まで議論が続きました。

 最終的にはディオン議長がCOP/MOP2でロシア提案についても検討するとして、議定書3条9項のCOP/MOP決定は議長の提案どおり採択されました。

国際会議でNGOがしていることは?

2005-12-11 01:11:38 | 国際交渉

 今回の会議には北米で開催されたこともあってか、いつもより多くの環境NGOが会議に参加しています。気候変動問題の国際交渉では、CASAも参加する気候行動ネットワーク(CAN)という世界の約360の環境NGOが参加するネットワークが活動しています。

 CANは、気候変動問題を解決するためのNGOの戦略をたて、実行するロビー活動が主たる活動です。具体的には、文字どおり会議場のロビー(廊下など)で、政府関係者などをつかまえて情報収集したり、「eco」というニュースを発行したり、その日の会議でもっとも後ろ向きの発言や行動をとった国に対し「今日の化石賞」を授与したりしています。

 そのために、会議中、毎日午後2時~3時にミーティングが行われるだけでなく、会議の前と中間の日曜日に戦略会議をもって、情報交換やロビー戦略などが話し合われます。日本の環境NGOも、毎日集まって情報交換をしたり、日本政府にロビー活動を行ったり、日本から来ている記者へのブリーフィングを行ったりしています。

 また、会議中に必ずパーティが企画され、このパーティには政府の代表団からもたくさんの人が参加します。

「一部の有名な例外」

2005-12-11 01:06:42 | 国際交渉

 12月9日の総会で、世界の環境NGOを代表して、気候行動ネットワーク・カナダ(CANカナダ)のスティーブン・ギルバードが以下のステートメントを行いました。


「一部の有名な例外」

 気候行動ネットワーク(CAN)を代表して、本日世界の市民社会の声を届けるために、このような機会を与えて頂き感謝いたします。

 議長、ここモントリオールに集まった全ての締約国は、一部の有名な例外を除いて、気候変動対策の国際的な努力を一層強化する意思を表明しました。

 この会場に集まった全ての締約国は、一部の有名な例外を除いて、先進工業国の温室効果ガス排出量の大幅削減へ向けて前進することを望んでいます。

 その一部の有名な例外を除いた全ての締約国は、「共通だが差異ある責任」に基づいて、全ての締約国が気候変動による脅威に立ち向かうために、公正な負担を負うべきであることを認識しています。

 その一部の有名な例外を除いた全ての締約国は、生命と市民の幸福を脅かす、現在及び将来の気候変動の影響を認識し、発展途上国への精力的な支援措置を要求しています。

 本会議に参加している全ての締約国は、新たな炭素市場の開発を望んでいます。また、産業界に対して、2012年12月31日以後に安定した、そして予測可能な事業環境を保証できることを望んでいます。

 本会議に参加している全ての締約国は、CDMの改善と成功、そして発展途上国への技術移転促進を支援しています。
 繰り返しますが、一部の有名な例外を除いて私たち全員は、京都議定書が唯一の国際的なメカニズムであり、微妙な均衡のもとで、人類が直面している最大の驚異に立ち向かう最初の答えを示す唯一の足掛かりであることを認識しています。

 気候は変動しています。私たちの社会も動いています。無限の可能性を有する、まさにこの大陸で、先住民、若者、労働者、ビジネスマン、宗教団体、そしてあらゆる立場の政府関係者が声を高らかにし、都市、州、産業界や市民社会において積極的に変化を作り出しています。

 それらの揺ぎない声を前にして、最も影響力があり、かつ最も頭の固いあの政府を含めて、一体どこの政府が、これ以上世界の要求を拒否し続けることができるでしょうか。

 ここに参加した全ての締約国は、一部の例外を除いて、人類への危険な気候変動を回避するという目的を共有しています。私たちは、この会合で、短期的・長期的に必要となる温室効果ガスの排出量削減を達成するための基盤となるように、京都議定書の枠組みを強化することを求めます。

 また、私たちは、京都議定書が、将来、全ての締約国が温暖化対策の枠組みに入ってこられるように十分に開放的で柔軟であるべきだと考えます。京都議定書は、持続可能な発展に必要な技術や、気候変動へ適応するために要する資源へのアクセスを発展途上国に保証する唯一の枠組みです。私たちはまた、京都議定書が市場制度や柔軟性メカニズムといった必要な制度が育つための枠組みであるとも信じています。

 最も聡明で見識のある人々によって代表された、ここに集まった全ての締約国は、何も行動しないことが選択肢にはないことを理解しています。一部の有名な例外によって、大多数による作業が無力化されることを受け入れることはできません。ここモントリオールで行き詰まることは想像できません。実質的な措置に結びつかない、希釈された無意味な決定は想像できません。確固たる集団行動こそが唯一の方向性なのです。

 前進することに失敗することは後退することなのです。

 このモントリオール会合を去るときには、この地球上の人々と国々を代表する者として、過去10年間に築いてきた土台に基づき、決して後戻りすることなく、気候変動に立ち向かう人類の努力を具体化せねばなりません。

CDM改革の議論

2005-12-11 01:01:12 | 国際交渉

 CDM改革の議論は、MOP総会でCDM理事会からの現状報告がなされてから始まりました。総会で議論があった後、1)2013年以降のCDMの継続などに関するCDM全体に関わる議論、2)理事会やサポートする組織などのCDMガバナンス、3)方法論と追加性、4)地域分布と実施能力向上、5)CDM理事会の運営資金、の5つの枠組みに基づいてコンタクトグループで議論されました。

 2013年以降もCDMを継続させていくことに関しては、合意がなされ、決定文書にも文言が入りました。これによって長期的な視野に基づいてCDMを促進させていくための足掛かりができたことになります。

 1)の議論では、炭素回収・貯留技術(CCS)をCDMとして考慮していくかどうかが争点となりました。日本やカナダはCDMでもやりたいと望んでおり、特に日本は特定の技術がよいか悪いかということはここで判断すべきではないという主張を繰り返していました。決定文書では、ワークショップを開催し、CCSをCDM事業として入れていくかどうか検討していくことが確認されました。

 3)では、プロジェクトの追加性を証明するための方法の改正が主な争点となりました。途上国で行われたプロジェクトが、CERによる収入なしには行われなかったと証明される場合、そのプロジェクトが追加的であるといいます。追加性を証明するためのツール(以下、追加性ツール)はCDM理事会から提示されているのですが、そのツールに基づいた証明が複雑で、プロジェクト参加者にとっての負担が大きいことから、改正案が求められていました。議論の結果としては、追加性の改正に対してCDM理事会がパブリックコメントを募ることになりました。しかし、CDM事業が行われやすくするためだけに追加性が緩められるべきではなく、CDMとして成り立つためにはしっかりとした環境十全性を考える必要があります。また、この問題はCDM事業の認証などが非効率的であるということと一緒に持ち出されますが、それは追加性の問題ではなく、大きくはCDM理事会を運営するための資金不足の問題といえます。

 4)に関しては、事業が行われる地域はアジアではインド、南米ではブラジルに大きく偏っているため、アフリカ諸国から不満の声があがっていました。決定文書では、そのような地域格差を生じさせている原因を締約国がCDM理事会に提出し、COP/MOP2で問題解決のためのオプションを検討することが決められました。また、特に島嶼国や後発開発途上国がCDMに参加しやくなるように、附属書I国が能力構築や資金提供を行っていくことの必要性が再確認されました。

 最後に、5)に関して、CDM理事会の資金不足を補うために、CER収益の一部を徴収することが決定されました。年間CER発生量のうち、15,000t-CO2までは、t-CO2あたり0.1USドルを、15,000t-CO2を超える分に対しては0.2USドルを徴収することが決定されました。後者の0.2USドルの課金率の引き下げについて、CDM理事会の運営資金が黒字になった場合に限り、COP/MOP2で検討されることになっています(ただし0.1USドル以下になることはない)。

適応対策、資金問題についての議題を採択

2005-12-11 00:57:25 | 国際交渉

◆ 適応対策についての議題を採択

 「5ヵ年計画」は2週目に入って水面下の議論に入り、現在は非公開の会合において議論が続けられました。この計画は、地球温暖化の影響の科学的、技術的、社会経済的側面における評価をし、緊急に適応対策どのように行っていくのかということを決める上でのベースになる、非常に重要な行動計画と言えます。最後までもめた点は、この5ヵ年計画の中に経済多様性の内容を組み入れるかどうかということです。

 経済多様性とは、一つには、ある国の経済がビーチリゾートなど観光産業のみに頼っていて、海面上昇などの気候変動の影響を受けることによって、大きな経済的影響を被ることをできるだけやわらげるために経済を多様化させようということです。あるいは、例えばある国の経済が石油のみに頼っていて、気候変動の対策を進めることによって経済的悪影響を受けるのをできるだけ避けるための対策のことを指します。

 現在の交渉で5ヵ年計画に経済多様性を組みこもうとしているのは後者の対策を促したいサウジアラビアです。しかし、通信1でも述べたように、昨年のCOP10においてまとめられた「適応と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」においては、サウジアラビアをはじめとする産油国が求めるこのような対策は、5ヵ年計画とは別に議論されることになっていました。特にサウジアラビアは、ここにきてあらゆる場面でこの問題を取り上げるように主張していましたが、適応計画では実質的にはそこに焦点が当てられないことになりました。


◆ 資金問題についての議題も採択

 資金の関係では、条約の下の基金である、後発開発途上国基金と特別気候変動基金に関しては、合意に至りましたが、京都議定書の下の適応基金は、合意に至りませんでした。条約の下にある2つの基金への先進諸国からの資金提供は任意のため、いつも資金不足であるという点が問題としてあがってきました。これに対して適応基金は、CDM事業の2%が収入として基金に入ってくることになっています。

 もちろん、適応基金もそれだけでは基金は足りず、資金不足も懸念されていましたが、今回最も懸念されたのは、この適応基金をGEFが運用するかどうかという問題です。資金がアクセスしにくいことなど、途上国のGEFに対する深い不信感を募らせているため、MOPがGEF以外の機関に基金を任せるべきだという主張が途上国側からあがっていました。しかし、結果としてはGEFが運用するかどうかというところは合意できず、適応基金がMOPのガイダンスの下でMOPの責任の下で機能することになりました。しかし詳細は次回のSBに持ち越され、各国が2006年2月13日までに、適応基金の支援対象、評価基準などに関する意見を提出することになっています。

妨害するアメリカ

2005-12-11 00:54:05 | 国際交渉

 今回の会議では、アメリカの参加をどう考えるかが大きな争点になっています。「2013年以降の次期枠組みの交渉と米国の参加」 に掲載したように、アメリカの参加のために気候変動対策全体を緩めるのか、アメリカにも席を用意しながらも、京都議定書のプロセスを進めるべきかが、2013年以降の制度設計の議論とも関連して問題になっていました。条約の交渉も、京都議定書の交渉も、前に進めたくないブッシュ政権は、この会議でも陰に陽に交渉を妨害しています。

 「閣僚級会合始まる」に掲載した、アメリカを暗に非難したカナダのマーティン首相の演説にブッシュ大統領が怒ってしまい、カナダのディオン議長とアメリカの代表団とが会った際に、アメリカの代表団はこの会議ではいかなる決定にもアメリカは参加しないと断言したとの噂が流れています。

 また、12月8日から9日にかけて行われたインフォーマルな交渉で、アメリカは席をたってしまったということです。
最終日(12月9日)の今日の化石賞は1位、2位、3位ともアメリカでした。

 1位の受賞理由は、この2週間の会議の間、アメリカはモントリオールでの交渉を妨害し続けたこと。

 2位の受賞理由は、昨日の閣僚級レベルの会合において、他の国が良い雰囲気の中で2013年以降の話をしようとしている時に、前日にカナダのマーティン首相がスピーチの中で隣国アメリカに対して批判したとして、席を立って出て行ったこと。

 3位の授賞理由は、夕方の閣僚級レベルの会合で、アメリカも締約国である「条約」のもとでの2013年以降の対話も始めたくないと発言したこと。

 会議場では、京都議定書から離脱し、交渉の進展を妨げているアメリカへの非難が高まっています。

徹夜で続く交渉

2005-12-10 17:41:01 | 国際交渉
 現在、モントリオールの時間で、12月10日(土)の午前1時を回りました。
 11月28日から開催されていた気候変動枠組条約第11回締約国会合(COP11)と京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1)も、最終日の深夜を迎えていますが、現在も交渉が続いています。
 12月9日の午前中から開催された、COP11とCOP/MOP1の総会で、ほとんどの議題が採択され、残っているのは「長期的な共同行動」との表題のCOP決定案と、COP/MOPの京都議定書3条9項の決定案だけになっています。
 午後6時頃にいったん休憩に入った総会は、現在もまだ再開される様子はありません。今回も徹夜になりそうです。
 現在、提案されている京都議定書3条9項の決定案は以下のような内容になっています。
 
(1)議定書3条9項に基づく先進国の2013年以降の目標についての議論を開始する。
(2)この問題を討議するための特別作業グループを設立し、第1約束期間と第2約束期間の間に空白が生じないように、可能な限り早く、締約国会合(MOP)で採択できるように結論を出さねばならない。
(3)特別作業グループの第1回会合は、2006年5月の第24回補助機関会合(SB)の際に開催する。
(4)締約国は2006年3月15日までに、3条9項についての意見を提出する。

 また、COP決定案として提案されている「長期的な共同行動」の内容は以下のとおりです。
 
(1)「長期的な共同行動」の要素には、開発目標の進展、適応活動、技術、市場メカニズムの活用、などが含まれるべきである。
(2)この対話を行う、すべての締約国に開かれた、条約のもとでのワークショップを設置する。

会議場でパフォーマンス!

2005-12-09 19:07:42 | 国際交渉

 今回の会議には、世界各国の環境NGOが多数参加しています。気候行動ネットワーク(CAN)のメンバーも多く、毎日の会議も部屋からあふれるほど参加しています。会議場の中や隣のビルの一部も、COP、MOP関係の展示場になっており、様々なNGOや企業、ユースグループがパフォーマンスなどを行っています。

◆ 小池大臣、「京都メーター」にチャレンジ(WWF)
 温暖化の影響で絶滅が危惧されるシロクマを前に、どれくらい真剣に温暖化対策をやろうとしているかを図る「京都メーター」にチャレンジ!【写真左】

◆ 「化石燃料恐竜」出現(FOEジャパン)
 よく見ると頭が車、脇が飛行機になっていて、おなかに高速道路が走っている、こわーい恐竜です。(実は、この恐竜、日本からここに着くまでにいろいろ大変な目にあっています。)【写真中央】

◆ 「ベッドの中から温暖化対策を叫ぶジョン・レノン」(ユースグループ)
 今回は世界から18才~26才までのユースが集まり、様々なアクションを行っています。今日は、各国から到着した大臣との会合などももっていましたが、注目を集めていたのは、会議場の真ん中でのアクション。エレベーターの前を陣取って布団をかぶり、温暖化対策への行動を訴えました。【写真右】

二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書

2005-12-09 19:02:10 | 国際交渉

 SBSTAの総会で、IPCCから、今年9月にとりまとめた二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する特別報告書の概要についての報告があり、この報告書の内容を検討するためのコンタクトグループが設置されました。今回の会議では、炭素回収・貯留技術に関する問題が、資金、緩和対策やCDMの議論の中でも争点になっています。

 CCSとは、工場や発電所などから排出された二酸化炭素を回収して貯留し、長期間大気中から隔離するシステムのことです。代表的な方法として、海洋貯蔵と地中貯蔵の2つがあります。CCSによって、二酸化炭素の大気中濃度の増加を緩和することができると考えられていますが、排出削減ではなく先送りの対策であるなど多くの問題点も指摘されています。

 今回の会合でも、多くの国はCCSの有用性を指摘する一方で、その実用化に向けて時間とコストがかかることや技術の特性について多くの未解決な問題があることを指摘しています。とくに海洋貯留について、ノルウェー、EU、G77・中国は技術開発の検討が時期尚早であることや小島嶼国連合は技術上のリスクに懸念を表明しています。12月3日のコンタクトグループでは、「二酸化炭素回収・貯留のIPCCの評価に留意し、締約国および民間部門がこの技術の研究、開発、展開、普及を支援することを推奨し、ワークショップの目的および報告書作成を規定し、GEF に対して二酸化炭素回収・貯留への支援、特にキャパシティビルディングを通しての支援が、その目的と一致しているかどうかを検討するよう要請する」(Earth Negotiation Bulletin, vol.12 No.286, December 5, 2005.)と合意されました。

 特別報告書は、「政策決定者向け要約及び技術要約(SPM)」(53ページ)と本編(約360ページ)で構成されています。SPMでは、9つの主要な論点についてQ&A方式で紹介されています。

1) CCSとは何か。どのように気候変動の緩和へ貢献できるのか。
2) CCSの特徴とは何か。
3) CCS技術の現状とはどのようなものか。
4) CO2の注入と貯留時の地質学的関係はどのようなものか。
5) CCSのコストと技術的・経済的可能性はどのようなものか。
6) CCSによる地域での健康面、安全性、環境リスクとはどのようなものか。
7) 貯留されたCO2の物的な漏れは気候変動緩和オプションとしてのCCSを危うくしないのか。
8) CO2貯留を実施する上での法的・規制上の問題は何か。
9) 知見での相違とは何か。
 
 とりわけ重要な論点は、5)CCSの技術的・経済的可能性と 7)貯留された二酸化炭素の漏れの可能性です。

 まず、現時点の技術的可能性については、二酸化炭素の回収と輸送、地中貯留は条件次第で経済的に実現可能ですが、海洋貯留は実験段階と評価されています。地中貯留の場合、2兆トンもの炭素貯留が可能と推測されています。経済性については、火力発電所を事例に天然ガスや微粉炭などの燃料別と技術構成別に評価がされていますが、環境影響や炭素漏れの危険性などにより不確実性が大きくなると指摘されています。

 次に、炭素の漏れについては、地中貯留の場合、100年又は1000年後でもほとんど危険性はないと評価されています。しかし、海洋貯留の場合、場所や深さによって異なりますが、100年後で65~100%維持可能、500年後には30~85%の維持可能にとどまります。

 特別報告書は現実のデータが存在しないことを重視し、知見不足の解消に向けて生態系や環境への影響について慎重に検討するように求めています。しかし、地球環境基金(GEF)などのいくつかの機関は、すでにCCSをプロジェクトとして認めています。これに対して、気候行動ネットワーク(CAN)は、「CCSが温室効果ガス・インベントリー・ガイドラインと計測ルールに適合するのかを検討すべき」(ECO, December 7, 2005.)と指摘し、締約国に対してCCSへの慎重な対応を求めています。