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日本のCO2排出構造をさぐる-石炭火発(2/4)

2006-08-10 18:19:05 | 温室効果ガス
◆シグマパワーの石炭火力発電中止に

 東芝とオリックスが出資する「シグマパワー」が山口県に計画していた石炭火力発電所が中止になりました。この石炭火力発電所「シグマパワー山口」は設備容量100万kWの大型石炭火力発電所で、仮に運転されていたとしたら年間582万トンのCO2排出と予想されていました。582万トンは、日本全体のCO2排出量の0.5%ですが、京都議定書目標達成計画で電力部門が削減すべき分とされている量の26%に相当する排出量です。

 シグマパワーは、環境省の警告や世論の反対もあって中止されましたが、石炭を燃料とする火力発電所は次々を建設され、また建設が計画されています。電力以外でも、電力自由化に伴い、神戸製鋼のように石炭火力発電所を稼動させ、その電力を販売しているところもあります。


◆CO2増加の主因、石炭火力発電所

 火力発電所で発電をするのに、燃料が違えばCO2排出量も全く異なります。効率にもよりますが、CO2排出量の比は石炭と石油と天然ガスとではおよそ9:7:5になり、石炭を燃料として使うのと、天然ガスを使うのでは、石炭では約2倍のCO2を排出します。

 同じ発電量でCO2が半分なら、天然ガスを選べばいいのですが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1次評価報告書が発表され、気候変動枠組条約の交渉が開始された1990年以降も、日本の電力会社はCO2排出量の多い石炭火力発電所の建設を進めてきました。現在、2400万kWという大型原発24基分の石炭火力発電所が建設されています。一部の石炭発電所は、石油発電所や天然ガス発電所であったものを、2000年以降わざわざ燃料を石炭に転換してCO2の排出を大幅に増やしてしまいました。

また、発電所の稼働率をみても、CO2の排出の少ない天然ガス火力発電は40~50%であるのに対して、石炭火力発電の多くは70~80%とほぼフル稼働状態になっています。これらのことから電力会社は明らかに火力発電の中でも、特に石炭重視の運用をしていることがわかります。

 この結果、石炭火力発電所からのCO2排出量は、1990年以降に建設されたり転換されたものだけで1億3千万トンに上り、これは1990年の日本全体のCO2排出量のおよそ12%にあたります。これはちょうど、日本が1990年以降に増加させてしまったCO2量排出量に当たります。


◆なぜこんなに石炭火力発電所増加したのか?

  温暖化防止に逆行するような石炭火力発電所の建設が進められたのは、石炭が他の燃料より安く、税制の面でも国がそれを優遇してきたからです。石炭はもともと国際価格も石油や天然ガスの半分以下の値段でした。加えてわが国では、長年石油や天然ガスにはかけてきた石油税を、石炭にはかけず、もともと安い輸入石炭の価格を石油・天然ガスより大幅に安いままで放置し、事実上優遇していました。図2のように、石炭にかかる税金は今でも石油や天然ガスより安くなっています。
さらに発電所を建てた自治体に対して国が交付金を出すという政策も、石炭火力の増加を後押しをしたといえます。

 排出割合から見ても発電部門は、日本のCO2排出量の4分の1を占める大排出源であり、地球温暖化防止のためには発電部門の排出削減が極めて重要です。しかし政府は、産業界の削減については、産業界の自主計画まかせで、排出量の最も少ない技術や燃料の選択を法制度で規定するような政策は行いませんでした。電力部門もどのような削減対策をとるかは電力会社に任されています。こうしたことから、コストの安い石炭火力発電所の建設が進められ、高い稼働率で運転されるようになり、残念ながら今もその状態が続いています。