2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

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どれだけ減った?日本の温室効果ガス排出量

2005-11-29 16:56:26 | 温室効果ガス
■ 温室効果ガス排出量、基準年比7.4%増
 環境省は2004年度の温室効果ガス排出量(京都議定書対象の6種類のガス)速報値を発表しました。2003年度に比べれば0.8%減少したものの、京都議定書の基準年である1990年度(代替フロン類は1995年度)の排出量に比べて7.4%増の13億2900万トン(CO2換算、以下同じ)で、依然高い水準にあることが明らかになりました。
 日本は京都議定書で基準年比6%削減を義務づけられています。「京都議定書目標達成計画」では、6%削減うち海外での削減(京都メカニズム)と森林吸収を使って5.5%をまかなうことになっており、残る実質0.5%削減の政府目標を達成するにしてもなお約8%もの削減が必要になっています。

■ 部門別排出量
 京都議定書の対象になっている6つの温室効果ガス別では、CO2が排出量の94%を占めています。
 CO2の部門別排出量を表したのが図1です。外側の円は、部門別の「直接排出量」の割合で、発電所や製油所などのエネルギー転換部門が31.4%、工場などの産業部門が30.4%で、この2部門が巨大排出源であることがわかります。
 ちなみに、内側の円は、発電所が排出するCO2を、各部門の電気使用量に応じてCO2を割り振った「間接排出量」です。こうするとエネルギー転換部門は6.8%と非常に少なく表示されてしまいます。このような表し方は日本政府だけが行っているもので、一般に国連等は、「直接排出量」を示す外側の円の統計を使っています。

■ 1990年度との変化
 2004年度の6つの温室効果ガス排出量は基準年である1990年に比べて7.4%増となっています。このうち大部分を占めるCO2は1990年に比べて11.5%も増えています。他の5種類のガスは全て減少しています。
 CO2排出量(直接排出量)増減を部門別に見ると、増加量の多いのはエネルギー転換部門(約5500万t増)、次いで運輸部門(約4500万t増)です。増加率が大きいのは運輸と業務その他の部門でいずれも21%増加、エネルギー転換部門が16%増加です。産業部門はバブル崩壊にもかかわらず約1200万t(3.3%)増えました。家庭部門は約700万t(12%)増となっています。
 こうした増加の原因は、エネルギー転換部門では石炭火力発電の大幅増加、産業部門ではエネルギー効率の大幅悪化、運輸部門では自動車の増加と大型化などです。京都議定書の目標を守り、更にその後に求められる大幅削減に備えるためには、大口の排出源である、エネルギー転換、産業、運輸の各部門の大幅削減が不可欠で、これら部門に抜本的な政策を実施することが喫緊の課題となっています。

■ 前年比較
 2004年度のCO2排出量は前年度に比べて0.6%減少しました。2003年度は東京電力の原発トラブル隠しの発覚で原発が長期間停止した年です。しかし、2004年度は原発の設備利用率が前年の59.7%から68.9%に上がったものの、エネルギー転換部門のCO2排出量は前年度比1.4%削減にとどまりました。その理由として2004年夏に東京電力と関西電力で大型石炭火力発電所が新たに運転を開始したことの影響が考えられます。

■ 排出減でも要注意
 代替フロン類3ガス排出量は1995年度から2004年度までに半減しました。ところが、この3ガスの一部は冷媒(カーエアコンや冷凍倉庫など)や断熱材などに大量にストックされています。冷媒の代替フロンは10~20年後に車や倉庫が解体される際に排出され、断熱材の中の代替フロンは約30年かけてじわじわと排出されていきます。
 こうしたストックされている代替フロンの排出は、今後も増加すると考えられ、現に2004年の代替フロン類排出量のうち冷媒からの排出量は1995年度の5倍、断熱材からの排出量は2倍に増えています。今問題となっているアスベスト問題と同じように、10年後20年後に負の遺産を残さないためにも、代替フロンを元から断つ「脱フロン化」を実行に移していくことが必要です。

■ 2005年度は「目に見える進展」が必要な年
 京都議定書3条2項は、先進国に対し2005年に「この議定書に基づく約束の達成について明らかな前進を示す」ことを求めていますが、2004年度の排出量を見る限り、日本は「明らかな停滞」状態です。このままでは、京都議定書の約束である6%削減の達成は極めて困難です。

海の酸性化が進み、生態系に影響

2005-11-10 19:34:14 | 影響
 現在、大気中に放出される二酸化炭素のうち、約1/2は海水に溶け込んでいます。ですから大気中の二酸化炭素濃度が増加すると当然ながら海水に溶け込む二酸化炭素の量も増えていきます。また気体は一般的に溶け込む液体の温度が低いほど溶解度が大きくなるため、この酸性化の影響はより温度の低い海域、つまり南極海や北太平洋の海域で深刻になると予測されています。

 そしてこのほど、日米欧など9カ国の国際研究チームが9月29日付けの科学誌「ネイチャー」に、この海の酸性化による生態系への影響についての発表をしました。

 それによると今現在海水面付近は、pH8.1程度の弱アルカリ性を呈していますが、大気中の二酸化炭素濃度が600ppm(現在は約370ppm)を越えるとpHが約0.2~0.3下がり、より中性(pH7)に近づく酸性化が進みます。これによって炭酸カルシウムを主成分とするサンゴや貝類、あるいは魚やクジラなどにとって重要な餌となっている動物プランクトンの翼足類の殻や骨格などが溶け出し(写真参照:地球環境フロンティア研究センターHPより転載)、大きな被害を及ぼすと考えられています。こうした状況は過去何百万年もの間、前例がないことです。

 そして今のままの経済活動を続けると大気中の二酸化炭素濃度は毎年約1%ずつ増え、2060年ごろには先に述べた600ppm濃度に達してしまい、翼足類の殻やサンゴの溶解が南極海から次第に北太平洋へと広まり始めていくと警告しています。今回の研究によって、これまで二酸化炭素の海中生物への影響は、100年以上先だと考えられてきたのが予想以上に早く進んでいることが明らかとなり、また生態系全体への影響が危惧され始めています。この海洋の酸性化は二酸化炭素濃度上昇によって確実に起こるものであり、この点においても早急な排出削減が望まれます。


※より詳しく知りたい方は、地球環境フロンティア研究センターのサイトをご覧ください。
http://www.jamstec.go.jp/frcgc/jp/press/050929/index.html

北極海の氷、今年9月に史上最小

2005-11-04 11:27:43 | 影響
◆減少する北極海の氷
 今年9月21日、北極海を覆う氷の面積が観測史上最小を記録しました。北極海の氷は夏場にあたる9月に最小となり、冬に拡大するサイクルを繰り返しています。今年の氷の面積は532万平方kmで、1978年から2000年の夏場の平均より20%(130万平方km)少く、消失面積は日本列島ほぼ3個分にあたります。これは人工衛星での観測が始まった1979年以降最も小さく、過去50年までさかのぼっても最小とみられます。これまでの最小記録は2002年で、2番目は昨年2004年だったといわれています。
 冬場の氷の回復も減少しており、北極海の氷の面積の縮小が加速しています。氷の厚さも、1960年代~1970年代の間には平均3.1mあったのが、1990年代半ば以降の調査では平均1.8mに40%減少したと報告されており、今世紀半ばまでに、夏期には北極海の氷が完全に消失するとの予測もあります。
 
◆危惧される極域の生態系
 北極などの極域には、私たちが思っているよりはるかに豊かな生態系が存在しています。米海洋大気局(NOAA)などの国際調査チームは、アラスカ沖の北極海の水深4000m近くの海底で、ナマコの仲間や小型のエビ、イソギンチャクやヒトデなど多くの生物を確認し、中には新種とみられる生物が数種類含まれていたと発表しました。
 こうした極域の生態系が地球温暖化により大きな影響を受けることが心配されています。すでに温暖化の影響と思われる現象も報告されており、今年3月には、北極周辺の湖底の堆積(たいせき)物の調査で、生息するプランクトンなどの生物の生息状況が、19世紀半ば以降の約150年で劇的に変化したとの報告がなされました。数百年から数千年にわたって安定していた水生生物などの生息状況が大きく変化したのは、水の表面を覆う氷が解け、夏が長くなったためで、変化が起きた時期からみても、人間の活動による温暖化が原因である可能性が高いとされています。
 北極圏の生態系の頂点にたつホッキョクグマ(シロクマ)も、氷の減少により餌のアザラシなどを得られなくなり、1981年から98年の間に子グマの平均体重・数が約15%減少したと報告されています。

◆温暖化の悪循環
 こうした氷の減少が、北極圏の熱収支を変える可能性が指摘されています。日光が氷や雪に当たるとその80%から90%は反射されて宇宙空間へ戻っていきますが、氷のない大地や海面に当たるとそのエネルギーの多くは吸収されて熱に変換され、気温上昇へとつながります。これがポジティブフィードバックと呼ばれる現象です。氷が減って海が太陽熱を多く吸収することで、氷の縮小に一層拍車をかける悪循環がすでに始まっている可能性があります。現に、NASAは今年5月、地球観測衛星テラの観測データから、地球がだんだん暗くなっていると発表しました。2000年から2005年の間に地球が太陽光を反射する割合が0.5%低下し、その理由は、地球温暖化によって雪や氷が減少したからだとしています。
 北極の平均気温は、世界のほかの地域や過去数年に比べて2倍の速さで毎年上昇しています。アラスカやカナダ西部では、冬場の平均気温がこの50年間で3℃から4℃上昇し、このままでは、北極全体の平均気温は、100年後には大陸部で3℃から5℃、海上では最大7℃上昇すると予想されています。私たちは、こうした気温上昇に敏感な極域からの警告に真剣に学ぶ必要があります。