2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

2℃をこえると海面水位が著しく上昇する

2006-09-05 17:56:01 | 2℃
◆海面水位上昇の沿岸地域への影響

 地球温暖化が進むと、海水が膨張し、また山岳氷河、雪原、氷床などがとけることによって海面水位が上昇します。IPCCの第三次報告によれば、海面水位は20世紀の間にすでに10~20cm(年平均1~2mm)上昇しましたが、このままいけば気温の上昇が2℃をこえるとみられる2040年前後には同水位がさらに5~20cm程度高くなると予測されています。年平均では1.3~5mmの上昇になります。なお、この水位上昇の原因として海水の膨張が約60%、山岳氷河と雪原の融解が約30%、またグリーンランドの氷床の融解(消失)が約10%を占めると考えられています。
 さて、海面水位の上昇がのべ40cmにも達すると、沿岸地域では陸地の水没や浸食、地下水の塩水化などが著しくなり、住民の生活や農業に悪影響をおよぼします。バングラデシュ、中国、インドネシア、エジプトなどで顕著な被害が生ずるとみられます。わが国でも、水位が今後30cm上昇すると砂浜の57%が消失すると推算されています。


◆押しよせる高潮と加速する水位上昇

 しかし、海面水位の上昇によってもっとも大きな打撃を受けるのは、南太平洋のキリバス、ツバル、西サモア、インド洋のモルジブなどの小さな島国です。国の大部分が低地であり、それらの多くが水没するおそれがあるので危機は深刻です。たとえばツバルの海抜は平均1.6mですが、近年、水位の高まりと関連して1.5mにもおよぶ高潮がしばしば全土に押しよせて、いたるところで洪水をひきおこしていると報じられています(Nature 2006年4月6日号参照)。
 ところでIPCCの報告以後にも、フランスの国立宇宙研究センターが人工衛星による海面水位測定データを公表していますが、それによると水位は1993~98年の5年間に年平均3.2mm上昇しました(Science 2001年10月26日号参照)。またアメリカのマサチューセッツ工科大学のエマニュエル教授によれば、1995~2005年の10年間に海面水位は年平均3.6mm上昇したとのことです(Chem. Eng. News 2005年11月28日号参照)。これらのデータは、最近の水位上昇が急ピッチで進みつつあり、IPCCの高い方の予測値またはそれ以上の水位レベルが現実化する可能性も否定できないことを示しています。


◆グリーンランドの氷床がじりじりと減少

 海面水位の上昇がこのように加速されてきた原因として、グリーンランドの氷床が最近これまでの予測をこえるテンポで海へとけだしていることが指摘されています。グリーンランドは、全土(約218万km2)の70~80%が多くの氷河を含む氷床(厚さが平均1.6km)でおおわれています。夏期には表面(とくに周辺部)の氷が一部とけて海へ流れだすのが多くなり、氷床の面積がやや縮小します。また流水の影響を受けて、氷河の巨大な氷塊が沿岸部に移動し、氷山として海へ放出されるのも多くなります。
 しかし冬期には降雪が増加して氷の消失分を補充するので、氷床の面積もほぼ元に戻ります。こうして古くから氷床全体としての増減はあまり見られない状態がずっと続いていました。ただし、温暖化がこのまま進むと今世紀の前半には氷の消失分が降雪量をうわまわるようになり、前述のように海面水位への影響がスタートすると考えられていました。
 ところがカリフォルニア工科大学などの最新の研究報告によれば、この変化はわずかながらすでに20世紀の末頃から始まっており、今世紀に入るとその傾向がますます目立ってきたようです。まず夏期の氷床面積の縮小が最近顕著になり、2002年には記録を更新しました。図にこの様子を1992年と比較して示します。

またおもな氷河の流速(氷塊の移動速度)が過去5年の間にほぼ2倍になり、氷山の放出による氷床の年間消失量も過去9年の間におよそ3倍に増大しました(Science 2006年2月17日号参照)。このようなグリーンランドの氷河の流速増大は、これまでの水位予測モデルではまだ考慮されていなかったものですが、この氷河からの氷床の消失が表面からの融解による分よりもはるかに多いので、気温上昇が2℃をこえたときの海面水位がどこまで高まるかはまったく予断を許さない状況です。

2℃をこえると健康障害のリスクが激増する

2006-07-20 18:11:36 | 2℃
◆温暖化によるさまざまな健康破壊

 地球温暖化は私たちの健康と生命に対してどのような影響をおよぼすでしょうか。これには直接的なものと間接的なものの2つが考えられます。直接影響としてもっとも分かりやすいのが気温の上昇による熱射病(熱中症)の増加です。夏がますます暑くなるのでこれは当然のことでしょう。また洪水、暴風雨、干ばつなどの多発が死傷者を直接増加させるのも無視できません。
 つぎに、間接影響の中でもっとも心配されているのが疫病(感染症)のまんえんです。これは、気温が上昇するとマラリア、デング熱などを媒介する生物(蚊など)の繁殖が活発になり、その地域分布も広がることに由来します。また農業生産が低下して食糧が不足し、栄養不良の人が増加します。さらに気温の上昇で光化学スモッグが多発すると共に、水不足が衛生状態を悪化させるので、それらの被害を受ける人も多くなります。図に、このような健康破壊の全体像をまとめて示します。


◆温暖化によって毎年 16万人以上が死亡

 世界保健機関(WHO)は、最近温暖化に由来するいくつかの原因(酷暑、洪水、マラリア、食糧不足など)によって生じた健康障害のデータを調査し、世界の 14地域ごとに 2000年の時点の年間推定死亡者数および傷病者数(患者数)を公表しました(Nature 2005年11月17日号参照)。それらの総計は死亡者数が 16万6000人、また患者数が 552万人に達しています。地域的にはアジアとアフリカの発展途上国の被害が目立ちます。またWHOは、温暖化がこのまま進んだ場合の 2030年における同健康障害のリスクをも算出し、これが全体として現在の2倍以上に増大すると予測しました。


◆洪水の死傷者は 2030年に2~6倍に

 これらの公表値のうち、酷暑による影響については、心血管系の障害で死亡した事例のみが年間 12000人と推算されています。これに他の障害による死亡事例や病気になった人の数を加えると、かなりの被害がすでに生じているとみられます。2003年の夏に酷暑のフランスで約15000人が熱中症などで死亡した経緯がそのことを端的に示しています。また洪水による年間の死亡者と傷病者はそれぞれ 2000人および 19万3000人と推算され、これらが 2030年には2~6倍に増加すると予測されています。これに暴風雨や干ばつの影響を加えると被害の現実と予測はさらに大きくなるでしょう。


◆3億人にマラリア感染の危険が広がる

 一方、温暖化に由来するマラリアの広がりが 2000年に生みだした死亡者は 27000人、また感染患者は 102万人と推算され、これらが 2030年には最高 1.5倍に増加すると予測されています。1990年代に入って従来の流行地域(熱帯と亜熱帯)よりも緯度が高い地方(カナダ、南ヨーロッパなど)やアフリカの高地で感染する事例が増えてきたことがこれらのデータを裏づけています。現在、マラリア流行地域に居住する人口は約24億人ですが、気候行動ネットワーク(CAN)の報告によれば、2~3℃の気温上昇で3億人があらたに感染の危険にさらされます。


◆デング熱やコレラのリスクも増大

 マラリア以外の感染症としては、デング熱、黄熱病、住血吸虫病などがやはり温暖化によって流行地域を広げます。デング熱はすでに中南米で多発する傾向を示しています。また 2002年にアメリカで大流行した西ナイル熱や最近世界各地で頻発しているコレラも今後の動向が気がかりな感染症です。WHOのデータでは、コレラなどによる下痢で死亡した人と同患者が年間それぞれ 47000人および 146万人と推算されており、栄養不良にもとづく 77000人の死亡者および 285万人の患者と共に、この調査の中では大きなウエイトを占めています。
 以上のように、温暖化による健康障害は 2000年の段階ですでに無視できないレベルに達しており、しかもこれが早くも 2030年までに倍増すると見込まれています。したがって、2℃をこえる 2040年前後のリスクはきわめて高く、たえがたいものとなることはまちがいないでしょう。

2℃をこえると水不足が大幅に広がる

2006-06-26 18:46:56 | 2℃
◆淡水資源はきわめて大切

 地球上には大量(約14億立方キロメートル)の水が存在しますが、このうち淡水は2.5%であり、さらにその中で私たちが生活用水、農業用水および工業用水として容易に利用可能な水(極地の氷や大部分の地下水を除いたもの)は250分の1(全体の0.01%)にすぎません。
 このように淡水資源はきわめて大切なものですが、それが地球上にかならずしも均等に分布していないので、現在、世界人口の約1割の人びとが水不足の生活を余儀なくされています。水不足とは、1人あたりの年間供給可能水量が1700立方メートル以下の状態を意味します。

◆氷雪に依存する地域は温暖化の影響が深刻

 さて、地球温暖化が進み、地表の気温が上昇すると、水の循環が活発になって淡水資源の分布が大幅に変化します。
 たとえば、水の蒸発量のみが増えて降水量が増加しない地域では乾燥が進み、水不足や干ばつが生じます。これは大陸内部で多く見られるでしょう。とくに山岳部の雪や氷が春から夏にかけてすこしずつ融けて流水になるのをもっぱら利用している地域では、温暖化による影響が深刻です。すなわち、気温が上昇して雪原が縮小し、氷河が後退すると、利用できる水の総量が減少し、水不足を招きます。またこれまでよりも暖かくなった早春に多くの氷雪が一挙に融けて流出するので、需要が高まる夏から秋にかけて利用できる水の量が激減します。

◆2℃の上昇で10億人に水不足が広がる

 最近アメリカのワシントン大学などの研究者が、中緯度と高緯度に分布するそのような地域について、温暖化が今のままのテンポで進んだ場合の変化をシミュレートし、2℃の気温上昇が見込まれる数十年後に、10億人をこえる人びとが居住する中国西部、インド北西部、ヨーロッパ中央部、アメリカ西部などで、あらたに深刻な水不足が生ずると予測しました。
 一方、アメリカ海洋大気局(NOAA)も類似の研究によって、アフリカ南部、中東、ヨーロッパ南部、北米西部の中緯度地域などで、利用可能な淡水資源が2050年までに10~30%減少すると予測しています(両予測共に Nature 2005年11月17日号参照)。

◆氷河の急速な後退と水問題の深刻化

 これらの予測は、世界中の氷河が急ピッチで後退しつつある現実を見ても理解しやすいでしょう。たとえばアラスカの氷河は、その後退速度が過去10年の間に3倍に増加し、とくにベーリング氷河は、すでに10数キロメートル後退しました(Scientific American 2003年10月号参照)。またWWFの報告によれば、アルプスの氷河の体積が1850年とくらべてすでに半分に減少しているそうです。
 なお水問題については、このまま温暖化が進めば早くも2021~30年にアフリカの北部と南部、西アジア、アラビア半島、オーストラリア北東部、北米南西部および南米中央部で水不足が悪化するとの予測も公表されています(Ambio 32巻4号(2003年)参照)。また人口の増加や水汚染の広がりによる影響も含めて、水不足が2025年に世界人口の4割近くの人びとにまで広がる可能性も指摘されており(Nature 2003年3月20日号参照)、今後の推移がきわめて憂慮されます。

2℃をこえると多くの生物が絶滅する

2006-05-27 12:01:16 | 2℃

◆気温が上がると生物は移動が必要

 生物は植物でも動物でもまわりの温度に非常に敏感です。それぞれがみな自身にちょうど適した気温や水温のところで生活しており、それらの温度がすこしでも変化すると、もうそこでは生きるのがむずかしくなります。そこで温暖化が進んで気温が上昇すると、生物は一般に気温がより低い高緯度地方または高所へ移動しなければなりません。具体的には、産業革命以前から2℃の上昇で高緯度地方へ 300 kmの移動が必要であり、山岳生物の場合には同じ条件で高所へ 300 m(高度)の移動が必要です。

◆すでにチョウや鳥類が移動を開始

 ドイツのハノーバー大学を中心とする国際的な研究チームの報告によれば、すでに北米とヨーロッパの 39種のチョウが最近 27年間に北方へ最高 200 km移動し、イギリスの 12種の鳥類も最近 20年間に北方へ平均 19 km移動したことが確かめられています(Nature 2002年3月28日号参照)。またWWF(世界自然保護基金)は、アルプスのある種の高山植物が最近 30年間に高所へ 100 m移動したことを指摘しています。
 わが国でも、国立環境研究所の最近の報告によれば、以前には九州や四国南部が限であったナガサキアゲハが 1980年代から和歌山県や兵庫県に出現し、2000年以降は関東地方でも生息が確認されたとのことです。

◆移動は現実にはむずかしいケースが多い

 しかし、このような生物の移動はかならずしもうまくいくとは限りません。動物は比較的動きやすいかもしれませんが、植物の場合には、すでに生えているものはただ枯れるのを待つのみであり、これとは別に他の土地で種子があらたに発芽し、成長することによってはじめて移動が可能になるわけです。とくに樹木の場合にはこの成長に長い年月を必要とします。ところが現実の温暖化の速度は、10年間に 0.3℃以上であり、この移動のテンポをはるかにこえているのが問題です。多くの樹木にとって移動が可能なテンポは、温暖化の速度とくらべて5分の1以下とみられています。
 また移動先の土地がやせていて移動する植物の生育に適さないケースも多いでしょう。そして植物の移動がうまくいかないと、それを食べ物とすることが多い動物も移動がむずかしくなります。こうして連鎖的に多くの生物が絶滅を強いられるケースが増えてきます。山岳生物の場合には、山の頂上へ向かうほど面積が減少することも移動による生息の維持を不利にします。

◆2050年までに生物種の 26~37%が絶滅

 最近イギリスのリーズ大学を中心とした国際的な研究チームがヨーロッパ、オーストラリア、メキシコ、南アフリカなどに分布する 1103種の陸上生物(ほ乳類、鳥類、こん虫類、植物など)について温暖化による生息環境の変化を見積もり、このままいけば 2050年までにそれらの 26~37%が絶滅すると予測しました(Nature 2004年1月8日号参照)。これは生息地の移動がむずかしいと想定した場合の予測ですが、前記のように、多くの生物についてそれが現実であると考えてもいいでしょう。なお、移動が可能であるとしても絶滅は 15~20%におよぶと予測されています。

 一方、国連環境計画(UNEP)も、このような絶滅を含めて 21世紀の半ばに生物分布が大きく変化する地域は世界の森林の 34%に達すると推測しています(このうち、北方林は25%が消失)。また3℃の気温上昇によってノルウェーの高山植物が4分の1に減少することも指摘されています。このように、気温上昇が2℃をこえると、地球の生態系に激変が生じ、多くの生物が絶滅せざるをえなくなります。そしてそれは私たちの生活にも多大の悪影響をおよぼすことになるでしょう。

このままいけば2℃をこえるのは2040年前後

2006-04-12 10:15:40 | 2℃

◆気温はすでに0.75℃上昇

 地球温暖化が進み、地表の平均気温はますます急ピッチで上昇しつつあります。2001年に公表されたIPCCの第三次報告では、産業革命以前から0.6℃上昇したことが確認されていますが、その後さらに温暖化が進んで、現在ではすでに0.75℃上昇したことがアメリカ航空宇宙局(NASA)のJ・ハンセン博士などによって指摘されています(たとえばScientific American 2004年3月号参照)。ハンセン博士はいうまでもなく地球温暖化研究の著名な先駆者です。

◆2℃の上昇は危険度が高い

 一方、この気温上昇が2℃をこえると、地表にはきわめて危険度の高い激変が生ずるので、最悪でもこれを2℃以下に抑制することを温暖化防止対策のぎりぎりの目標とすべきことが、多くの科学者、NGO団体、そしてヨーロッパなどの政府機関によって強調されています。2℃から上記の0.75℃を差し引けば、あと1.25℃しか余裕がないことになります。では現状のまま推移した場合に平均気温の上昇レベルが2℃をこえるのはいつごろのことでしょうか。

◆2℃をこえるのは2040年前後

 IPCCの第三次報告ではいくつかの温室効果ガス排出シナリオについて気温の上昇範囲が推算され、それらを全部まとめて2100年までに 1990年から1.4~5.8℃上昇すると予測されています。しかし、この場合に下限に近い値は、今後かなり二酸化炭素の排出抑制対策が進められたケースのものであり、対策が不十分な現在の状況が続く場合には、図に示すように3.2~5.8℃の上限側の上昇予測がほぼあてはまるとみられます。この値は、産業革命以前から3.7~6.3℃上昇することを意味します(90年までに0.5℃上昇している分を加算)。したがって2℃をこえるのは、この図から2040年前後(すこしおくれても2050年)と推測されます。

◆2025年頃には1.4℃上昇

 この第三次報告以後にも、イギリスの有名な気象研究機関のハドリーセンターが、比較的短期の変化を予測する新しいシミュレーション実験にもとづいて、地表の平均気温が2020~30年に1990年代とくらべて0.3~1.3℃上昇すると報告しています。またスイスのベルン大学の研究者も同じ期間に0.5~1.1℃の上昇を予測しています(Nature 2002年4月18日号参照)。これらの上昇温度範囲の中央値は共に0.8℃ですが、これに産業革命以前から90年代までの上昇分(およそ0.6℃)を加算するとおよそ1.4℃になります。そしてこれが2025年頃に予測される気温上昇レベルです。この上昇ペースは2040年前後に2℃をこえるという前記の推測とほぼ一致するといえるでしょう。

◆温暖化防止は今世紀前半が正念場

 以上のように、地球温暖化の悪影響に関して私たちがまず問題にしなければならないのは、2100年のことではなく、それよりはるかに近い2040~50年のことです。そしてその時点における2℃の上昇をくい止めるには、2020年頃までの温暖化防止対策が決定的に重要であることを忘れてはなりません。

2℃を超えると?

2005-10-27 00:14:47 | 2℃
◆気温上昇を2℃未満に
 2002年10月、温暖化問題に取り組む世界の環境NGOのネットワークである気候行動ネットワーク(CAN)は、「気温上昇幅を2℃未満に抑えなければ、地球規模の回復不可能な環境破壊により人類の健全な生存が脅かされる可能性がある」と警告しました。
 2005年5月、中央環境審議会の専門委員会も、「気温上昇幅が2~3℃になると、地球規模で悪影響が顕在化することが指摘されている。従って、気温上昇幅を2℃以下に抑制することは、地球規模での悪影響の顕在化を未然防止することになる」として、「気温上昇幅を2℃とする考え方は、長期目標の検討における現段階での出発点となりうる」と報告しています。
 ここで2℃というのは、現在からではなく、工業化以前(1850年頃)からです。


◆2℃を超えると世界的規模で深刻な影響が
 表は、気温上昇幅が2℃未満と2℃を超えた場合とでの影響を比較したものです(IPCC第3次評価報告書より)。気温上昇幅が2℃を超えると、世界経済にも、食料生産にも、世界的な規模で影響が広がると予想されています。
 水不足も2℃未満では5億人に供給不足や水質悪化の影響がでることが予想されていますが、2℃を超えると30億人以上が水不足の危険に直面するとされています。健康影響でも2℃を超えると、3億人がマラリア感染のより大きな危険にさらされるとされています。このマラリア感染の危険地域には西日本一帯が入ると予想されています。


◆許される気温上昇幅はもうわずか
 現在、大気中の温室効果ガス濃度は359ppmに達しています。工業化以前は280ppmでしたから、すでに79ppmも上昇し、平均気温も工業化前から0.7℃上昇してしまっています。IPCCの第3次評価報告書によれば、仮に温室効果ガスの大気中濃度を現在のレベルで安定化させたとしても、1℃もしくはそれ以上の気温上昇は避けられそうにないとされています。許される気温上昇幅はもうほとんどないことを認識する必要があります。