2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書

2005-12-09 19:02:10 | 国際交渉

 SBSTAの総会で、IPCCから、今年9月にとりまとめた二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する特別報告書の概要についての報告があり、この報告書の内容を検討するためのコンタクトグループが設置されました。今回の会議では、炭素回収・貯留技術に関する問題が、資金、緩和対策やCDMの議論の中でも争点になっています。

 CCSとは、工場や発電所などから排出された二酸化炭素を回収して貯留し、長期間大気中から隔離するシステムのことです。代表的な方法として、海洋貯蔵と地中貯蔵の2つがあります。CCSによって、二酸化炭素の大気中濃度の増加を緩和することができると考えられていますが、排出削減ではなく先送りの対策であるなど多くの問題点も指摘されています。

 今回の会合でも、多くの国はCCSの有用性を指摘する一方で、その実用化に向けて時間とコストがかかることや技術の特性について多くの未解決な問題があることを指摘しています。とくに海洋貯留について、ノルウェー、EU、G77・中国は技術開発の検討が時期尚早であることや小島嶼国連合は技術上のリスクに懸念を表明しています。12月3日のコンタクトグループでは、「二酸化炭素回収・貯留のIPCCの評価に留意し、締約国および民間部門がこの技術の研究、開発、展開、普及を支援することを推奨し、ワークショップの目的および報告書作成を規定し、GEF に対して二酸化炭素回収・貯留への支援、特にキャパシティビルディングを通しての支援が、その目的と一致しているかどうかを検討するよう要請する」(Earth Negotiation Bulletin, vol.12 No.286, December 5, 2005.)と合意されました。

 特別報告書は、「政策決定者向け要約及び技術要約(SPM)」(53ページ)と本編(約360ページ)で構成されています。SPMでは、9つの主要な論点についてQ&A方式で紹介されています。

1) CCSとは何か。どのように気候変動の緩和へ貢献できるのか。
2) CCSの特徴とは何か。
3) CCS技術の現状とはどのようなものか。
4) CO2の注入と貯留時の地質学的関係はどのようなものか。
5) CCSのコストと技術的・経済的可能性はどのようなものか。
6) CCSによる地域での健康面、安全性、環境リスクとはどのようなものか。
7) 貯留されたCO2の物的な漏れは気候変動緩和オプションとしてのCCSを危うくしないのか。
8) CO2貯留を実施する上での法的・規制上の問題は何か。
9) 知見での相違とは何か。
 
 とりわけ重要な論点は、5)CCSの技術的・経済的可能性と 7)貯留された二酸化炭素の漏れの可能性です。

 まず、現時点の技術的可能性については、二酸化炭素の回収と輸送、地中貯留は条件次第で経済的に実現可能ですが、海洋貯留は実験段階と評価されています。地中貯留の場合、2兆トンもの炭素貯留が可能と推測されています。経済性については、火力発電所を事例に天然ガスや微粉炭などの燃料別と技術構成別に評価がされていますが、環境影響や炭素漏れの危険性などにより不確実性が大きくなると指摘されています。

 次に、炭素の漏れについては、地中貯留の場合、100年又は1000年後でもほとんど危険性はないと評価されています。しかし、海洋貯留の場合、場所や深さによって異なりますが、100年後で65~100%維持可能、500年後には30~85%の維持可能にとどまります。

 特別報告書は現実のデータが存在しないことを重視し、知見不足の解消に向けて生態系や環境への影響について慎重に検討するように求めています。しかし、地球環境基金(GEF)などのいくつかの機関は、すでにCCSをプロジェクトとして認めています。これに対して、気候行動ネットワーク(CAN)は、「CCSが温室効果ガス・インベントリー・ガイドラインと計測ルールに適合するのかを検討すべき」(ECO, December 7, 2005.)と指摘し、締約国に対してCCSへの慎重な対応を求めています。


最新の画像もっと見る