「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.608 ★ 落書きするだけで簡単に「英雄」になれる…中国人が靖国神社で     「愛国チャレンジ」という犯罪に手を染める理由  努力なし、才能なしでもSNSで 再生数を荒稼ぎできる

2024年08月30日 | 日記

落書きするだけで簡単に「英雄」になれる…中国人が靖国神社で「愛国チャレンジ」という犯罪に手を染める理由

努力なし、才能なしでも     SNSで再生数を荒稼ぎできる

PRESIDENT Online (西谷 格:フリーライター)

2024年8月28日

東京・九段下の靖国神社で、入り口にある石柱と台座に落書きされているのが見つかった。「トイレ」を意味する中国語に似た字やアルファベットが書かれていたという。ノンフィクションライターの西谷格さんは「訪日中国人による落書き事件はこれまでも繰り返し起きてきた。何の努力や才能も必要なく、成功すれば中国で『英雄』として迎え入れられる。中国人にとって最小のコストで巨大なリターンが得られる極めて『お得なチャレンジ』になってしまった」という――。

中国SNSより

中国SNS上では賞賛の嵐

靖国神社が、再び落書きされてしまった。19日午前3時50分頃、境内の石柱に落書きがあるのを神社職員が見つけ、110番した。落書きには黒いフェルトペンが使われ、画像を見ると

「厠所(トイレ)」
「狗屎(犬のクソ)」
「軍国主義 去死(軍国主義は死ね)」

と中国の簡体字で書いてあるように読める。靖国神社では5月にも同じ石柱に赤い塗料で中国人の男2人に「toilet」と落書きされたばかり。5月の事件同様、今回も落書きをしたと見られる人物はすでに中国に向けて出国したという。

「愛国チャレンジ」とでも呼ぶべき犯罪行為だが、中国のSNS「微博(ウェイボー)」を見ると前回同様、落書き犯への賞賛の声で埋め尽くされている。

「勇気があって尊敬する!」
「素晴らしいと言わざるを得ない」
「まさに英雄」

といったストレートな誉め言葉がまず目に止まる。

「素晴らしい! またやろう」
「落書きは簡単に消せるから、今度はノミで彫刻してやろう」
「毎日1回、あるいは毎週1回落書きをして、常に清掃中の状態にしてやろう」

といったさらなる犯行を期待するものや、

「便所に便所って書いただけじゃねえか」
「落書きではなく、正しい名称に『訂正』しただけです」
「小日本よ、そんなにカリカリすんな。作品のオリジリティーを尊重していただきたい」

など、落書きなんて大した問題ではないとあざ笑うようなコメントも目立つ。

「自作自演では?」「過ぎたことは根に持つな」

このほか、日本が戦後70年談話などで語ったことを、逆手に取るようなものもあった。

「日本人には未来志向の関係を目指してほしい。落書きはもう過ぎたことなんだから、過去のことを根に持たないでくれ」
「民族間の恨みつらみを根に持たないでいただきたい。昨日の出来事によって今日の中国人を責め立ててはいけない」

戦後70年談話で安倍晋三首相(当時)は「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と語っている。起こった事象も時間的スケールもまったく異なるが、すでに時効が成立していると言いたいようだ。

このほか、

「これ、日本人が自作自演で落書きして、善良な中国人にその罪を着せようとしているんじゃないのか?」

という中国人は無関係との説を唱えるものもあった。

「なぜ靖国神社が落書きの対象となるのか、日本はよく考えなくてはいけない」

という意見も根強い。

中国政府は犯罪行為には知らぬふり

5月に落書き事件が起きたあと、中国外務省は記者会見で次のように語った。

「報道については承知している。靖国神社は対外的に侵略戦争を発動した日本軍国主義の精神的な象徴である。侵略の歴史について日本は直視と反省を行い、正しい態度と認識を忠実に守らなくてはならない。実際の行動によってアジアの隣国や国際社会の信頼を得ていかなくてはいけない」

靖国神社や日本政府への批判を長々と語ったあと、落書きについては付け足し程度にこう指摘した。

「外国にいる中国人においては現地の法律を守りながら、要求を理性的に表現するよう促していきたい」

落書きに関与したとみられる中国人については特定され警視庁公安部が指名手配している。実行犯の男については中国当局が中国国内で起きた別件で拘束したが、日本側に身柄を引き渡す可能性は低いだろう。

「靖国トイレ」という中傷は前からあった

中国語で「社(シャア)」と「厠(ツァア)」は韻を踏んでいるため、中国国内では以前から靖国神社を「靖国神厠(靖国トイレ)」と文字って批判する言説が広まっていた。

少なくとも、筆者が2014年に取材した時点では、中国各地の飲食店やショッピングセンターのトイレ入り口に「靖国神厠」と書かれた看板を掲げたものが確認できた。

写真=筆者提供

トイレ入り口に「靖国神社」と書かれた看板

中国政府はこれまで一貫して靖国神社への批判を続けており、中国国内では「靖国神社=悪の組織」といった図式が出来上がっている。これまで靖国神社をさんざん批判してきた以上、落書き犯を罰することは中国にはできないだろう。言い換えれば、靖国神社への落書きは中国政府としても黙認せざるを得ないし、中国世論では圧倒的な賞賛で迎えられる。

なぜこうした現象が起きるのか。近代以降、中国国内で連綿と続いてきた反日感情や90年代以降のいわゆる反日教育が背景にあるのは間違いないが、筆者にはそれだけが原因とも思えない。以下、思いつくままに列挙する。

低迷する中国経済への不満のはけ口に

来日中国人のレベルの低下

落書きをした中国人と見られる男がどのようなビザで来日したのかは不明だが、中国人による「爆買い」がブームとなった2014年頃から現在に至るまで、中国人に対する観光ビザの要件は、所得条件などの面で緩和の傾向が続いている。

日本が「観光立国」を掲げている以上やむを得ないのかもしれないが、入国しやすくなれば、それだけレベルの低い人間も入りやすくなる。日本への中国人留学生の質についても、基本的には低下傾向にあると言われている。日本の国力が低下していることとも、相関関係にあるのかもしれない。

中国経済の低迷

2021年に不動産開発大手の恒大集団の経営危機が表面化して以降、中国経済は低迷が続いている。今年の大卒内定率は5割を下回っており、就職難が常態化している。将来に対して絶望感を抱く若者が水面化で増えていると考えられ、そうした者たちがやぶれかぶれの行動を取ってもおかしくない。反社会的な行動はさまざまな選択肢があるが、そのなかで靖国神社への落書きはもっとも安全で満足度の高い行為と言える。

写真※写真はイメージです

何の努力もせずとも「英雄」になれる

迷惑系ユーチューバーによる再生数稼ぎ

5月の事件はこの要素が大きかったようだが、靖国神社に落書きをして帰国すれば、中国では一夜にして“英雄”になれる。何の努力も才能も必要とせず、わずかばかりの蛮勇を奮いさえすれば英雄となって莫大な再生数を稼げるのなら、やらない手はないだろう。

こうして考えると、靖国神社への落書きは最小のコストで巨大なリターンが得られる(かもしれない)極めてお得なチャレンジということになる。万が一日本国内で逮捕されても、器物損壊なら最高でも懲役3年。人生に絶望して自殺を考えていたような人間にとっては、どうということもないだろう。

かたや日本人は製薬会社の駐在員がよくわからない理由で1年以上拘束され続けているというのに、中国人による犯罪行為は結果的に無罪放免となっている。

「政治家の靖国参拝は軍国主義を想起」

8月15日には岸田文雄首相が靖国神社に玉串料を奉納したほか、3人の閣僚が参拝した。中国外務省は会見で、以下のように発言したばかりだった。

「79年前の今日、日本は『ポツダム宣言』を受諾し無条件降伏した。中国人は世界の人々とともに日本軍国主義の侵略者とファシズムを打ち負かした。正義が悪に勝利し、光は闇に勝利した。進歩主義が反動主義に打ち勝つという偉大な勝利だった。この歴史は国際社会において永遠に記憶される価値のあるものだ」

続いて、お決まりのフレーズで靖国神社を強く批判した。

「靖国神社は日本軍国主義が対外的に侵略戦争を発動した際の精神的な手段であり象徴であり、A級戦犯もまつられている。日本の一部の政治家が靖国神社について取っている行為は、日本が歴史問題について間違った態度を取っていることを改めて示している。中国は日本に対して厳粛に申し出を行い、厳正な立場を表明している」

中国人による落書きは今後も続くだろう

靖国神社のA級戦犯合祀(ごうし)については、かつて昭和天皇も不快感を示しており、安倍晋三元首相も分祀できないか模索していたという。こうした背景を踏まえて考えると、中国側の主張にも一定の理があると筆者には感じられる。落書きは言語道断だが、「A級戦犯を合祀しないでくれ」という訴えは、それなりに理解できる。

とはいえ、ここまでこじれてしまった靖国問題は、そう簡単に解決できるとも思えない。仮にA級戦犯を分祀したとしても問題が完全解決するかどうかは定かではなく、靖国神社をめぐる日中間の応酬は今後も半永久的に続くことになりそうだ。

なお、靖国神社は「分祀は不可能」と主張しているが、宗教学的な知見を整理すれば、分祀の方法を模索することは可能なのではなかろうか。神道において「供養先の移転」や「墓じまい」ができるなら、分祀もできそうに思える。

ともあれ前提状況が変わらない以上、中国人による靖国神社への落書きは、今後も続く可能性が高いだろう。対策としては、監視カメラを増やしたり警備員を24時間体制で常駐させたりするぐらいしかないのかもしれない。

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No.607 ★ 中国共産党の重要会議「三中全会」は期待外れ、中国経済に明るい展望が見えない3つのワケ

2024年08月30日 | 日記

DIAMOND online  (玉井芳野:伊藤忠総研 主任研究員)

2024829

Photo:Lintao Zhang/gettyimages

異例の約1年遅れで開催された三中全会

 7月15~18日、中国共産党の重要会議、三中全会(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)が開催された。

 5年に一度の党大会で選出された、中国共産党のトップ約370人(約200人の中央委員、約170人の中央候補委員)による中央委員会の全体会議が年1回以上開催される決まりで、慣例として1期5年のうち7回開催されており、その第3回目が三中全会と呼ばれる(中央委員会全体会議は、開催回数を頭につけて「○中全会」と一般に呼ばれる)。

 三中全会は、中国指導部が中長期的な経済改革方針などを議論・決定する場であり、内外の注目度の高い政治イベントである。過去には、第11期三中全会(1978年)における改革開放路線の導入決定など、中国経済の行方を左右する重要な決断が下されてきた。

 第20期三中全会は、慣例のスケジュールに従うと2023年秋に開催されるとみられていたが、明確な理由が示されることなく、異例の約1年遅れの開催となった。党内人事(2023年に解任となった前外相の秦剛氏、前国防相の李尚福氏の処遇など)や、長期化する不動産不況への対処など経済政策をめぐり、党内の意見がまとまらなかったとの見方がある。

 ただし、三中全会が「異例」となったのは今回だけではない。習近平政権2期目の第19期中央委員会全体会議に関しても、本来であれば国家主席や首相など政府人事を決定する二中全会(2018年1月)で、憲法改正が討議・決定されたため、三中全会(2018年2月)が政府人事を決める場となってしまった。

 その後の四中全会(2019年10月)も、主題は「国家統治システムおよび統治能力の近代化」であり、経済分野への言及はあるものの、従来の三中全会のような詳細な経済改革プランは示されなかった。

 これらを考慮すると、習近平政権のもとで、三中全会の持つ意味合いやその重要性が変容しつつあると推察される。

米国との対立長期化を意識 科学技術向上や国家安全を強調

 今回の三中全会では、「改革をいっそう全面的に深化させ、中国式現代化を推進することに関する中共中央の決定」(以下、「決定」)が採択された。

「決定」全文は15章(総論+14章、下記表参照)・60項目から成り、経済を中心に、社会・環境・文化・軍事などさまざまな分野に関し、300以上の改革構想を打ち出した。これらの改革を「2029年までに達成する」という野心的な目標も掲げた。


 前回、経済改革プランが示されたのは、習近平政権1期目に実施された第18期三中全会(2013年)であるが、その内容と今回の「決定」を比較すると、大きな変化として、米国など西側諸国との対立長期化への意識がある。

 まず、第18期三中全会の「決定」のタイトルは「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」であったが、今回は「中国式現代化の推進」という文言が加わった。

「中国式現代化」とは、2022年の党大会で示された概念で、巨大な人口規模など「中国の国情に基づいた」現代化と定義されている。中国が、西側諸国とは異なる発展モデルを目指していることが示唆される。

 さらに、米国をはじめとする西側諸国に対抗する上で、中国指導部が特に重視しているとみられるのが、科学技術の向上である。

「決定」は、2023年9月に習総書記が初めて言及して以来重視されている「新質生産力」(高レベルの技術・効率・質を特徴する生産力)というキーワードを盛り込み、AIや新エネルギー、量子技術など戦略的産業の発展を推進するとした。

 また、「自主制御可能な産業チェーン・サプライチェーンの構築を急ぐ」として、半導体などの重要分野におけるサプライチェーンの強靭化も掲げた。貿易・投資規制を通じて、中国による先端技術へのアクセスを制限している西側諸国の動きへの対応であることは明らかである。

 今回の「決定」では、第18期三中全会にはなかったイノベーションに関する新たな章を設け(第4章、表参照)、科学技術の向上のための人材育成など、国家主導でイノベーション体制を構築する方針も掲げた。

 こうした科学技術強化の動きに加え、国家安全の重視も西側諸国との対立への意識から生じた変化であろう。今回の「決定」は、国家安全に関する新たな章を設け(第13章、表参照)、外国制裁や内政干渉に対抗する仕組みを整備するとした。習総書記による説明でも、「決定稿では、国家安全の維持をより重要な位置づけとした」とある。

中国経済に明るい展望を描けない3つの理由

 このように、中国指導部が米国に対抗できる「強国」を目指していることは明らかである。しかし、今回の三中全会で示された改革案は、主に以下3つの理由により、中国経済に対して明るい展望を描けるような内容とは言い難い。

 第一の理由は、「市場」の存在感の低下である。

 第18 期三中全会では、「市場が資源配分において決定的な役割を果たし、政府の役割をより良く発揮させるようにする」として、市場の果たす役割をこれまでの「基本的」から「決定的」という表現に格上げ、市場経済化の推進を掲げた。

 一方、今回の「決定」全文には「資源配分において市場に決定的な役割を十分に担わせ、政府の役割をよりよく発揮させる」という一文はあるものの、「決定」の要旨であるコミュニケや習総書記の説明には「市場の決定的な役割」について言及がなかった。

 また、「『緩和の柔軟性』を保ちながら『管理の徹底』をはかり、しっかりと市場の秩序を維持して市場の失敗を補完する」という文言からも、市場経済化の一段の推進より政府による市場の管理を重視していることが示唆される。

「決定」では、「民営経済促進法」の制定による民間企業の活動支援なども盛り込まれた。しかし、企業の自由な活動を原動力とする市場経済の役割が重視されているように見えない以上、低迷している民間企業のマインドが大きく好転するとはいえないだろう。

 第二の理由は、内需拡大より供給サイドの政策に重点が置かれていることである。

 過剰投資問題を抱える中国では、投資効率低下など弊害が生じており、対応として、消費主導型経済への構造転換が求められている。実際、GDPに占める消費の割合を、現在の中国と同様の所得水準だった時のアジアの他国・地域と比較すると、低水準にとどまっている(図表)。


 しかし、今回の「決定」では、「消費拡大につながる長期的かつ効果的な仕組みを整備する」という一文はあったものの具体策が示されず、消費喚起のために必要な社会保障の充実についても新味に欠ける内容だった。新興産業育成など供給側の改革を重視する習近平体制下では、消費主導型経済への転換が進みにくいとみられる。

 第三の理由は、現在中国経済が直面する最大の課題である不動産について、根本的な対応策が示されなかったことである。

 2020年夏以降のデベロッパーに対する資金調達規制などバブル抑制策を受け、不動産市場の調整が長期化している。政府は、住宅購入制限の緩和やデベロッパーに対する資金繰り支援、住宅在庫の買い取り策など対応策を打ち出しているものの、不動産販売の大幅減が続いている。

 しかし、今回の三中全会では、全60項目の主要改革分野において、不動産に関する独立した項目が設けられず、社会保障に関する項目で部分的に言及するにとどまった。

 その内容をみると、「不動産開発の融資方式と分譲住宅の前売り制度を改革する」として、建設中住宅の予約販売を中心とする従来の販売モデルの変革を打ち出していることは評価できる。住宅購入から引き渡しまで約2年かかる予約販売システムのもと、消費者はデベロッパーの経営悪化による住宅建設・引き渡しの遅れへの不安に直面、購入を控えているからだ。

 ただし、その他は既存の政策の確認にとどまり、多額の債務を抱えるデベロッパーをどのように再編していくかなど、重要な指針は示されなかった。

改革の進展度合いに加え ビジネス環境の改善に注目

 このように、大枠では期待外れに終わった三中全会の「決定」だが、持続的な成長のために必要な改革も数多く含まれている。

 例えば、地方財政難への対応として、現在中央政府の税収となっている消費税の段階的な地方税への切り替えなど、地方政府の財政資金や税源の拡大に関する具体的な政策が盛りこまれた。

 深刻な人口減少問題に関しても、出産・子育て・教育費用の引き下げなど少子化対策、定年年齢(現在、男性60歳、女性50歳または55歳)の引き上げなどが示された。

 今後、これらの改革案が有効な具体策となって実行に移されるかどうかが重要となる。その進捗が停滞すれば、中国の潜在成長率がさらに低下、世界経済を下押しすることになるからだ。

 日本企業をはじめ外資企業にとって、こうした改革の進展に加え、中国におけるビジネス環境の改善も注目が必要な点である。

 中国日本商会による在中国日本企業へのアンケート調査(※)では、当局による急な規制変更、安全・環境に関する立ち入り検査の多さ、補助金・優遇措置の面での中国企業との差などが、事業環境の課題として挙げられている。

(※)中国日本商会「会員企業景気・事業環境認識アンケート結果 第2回」(2024年1月15日)、「会員企業景気・事業環境認識アンケート結果 第3回」(2024年5月14日)。

 今回の「決定」には、外資企業に関して、「市場化・法治化・国際化した世界トップクラスのビジネス環境を整備し、法に基づく外商投資の権利・利益を保護する」とある。日本企業としては、中国側の対応を待つだけでなく、この意欲的な文言を材料に、事業環境の改善を求めていくことも可能であろう。

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No.606 ★ 中国軍用機が初めて日本の領空侵犯、中国側の「意図的ではない」の 釈明は本当かー東アジア「深層取材ノート」(第246回)

2024年08月30日 | 日記

JBpress (近藤 大介:ジャーナリスト)

2024.年8月29日

8月26日、日本の領空を侵犯した中国のY-9偵察機(提供:防衛省/AP/アフロ)

長崎県近海の領空に

 8月26日夕刻、防衛省が中国に関して突然の発表を行い、日本全国に緊急ニュースが流れた。

<令和6年8月26日(月)、中国軍のY-9情報収集機が、11時29分頃から11時31分頃にかけて、長崎県男女群島沖の領海上空を侵犯したことを確認した。これに対し、自衛隊は、航空自衛隊西部航空方面隊の戦闘機を緊急発進させ、通告及び警告を実施する等の対応を実施した>

 中国軍機の到来である。過去に中国は、2012年12月13日、習近平体制の「新時代発足」を宣布するかのように、国家海洋局の「Y-12」航空機を尖閣諸島上空(魚釣島南方約15km)に飛ばし、初めて日本の領空侵犯を強行した。12月13日は、中国側が主張する「南京大虐殺」の日で、2014年から習近平主席の意向で「国家公祭日」に指定された。

 この時は、海上保安庁の巡視船が視認し、航空無線機を出して国外退去を要求した。しかし中国機は、「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土」を反論しながら、尖閣諸島を上空から撮影した。

 続いて、習近平体制が2期目を迎える直前の2017年5月18日、中国海警局の公船4隻が、尖閣諸島近海の日本の領海に侵入。そのうち1隻が小型無人機を飛ばし、日本の領空(魚釣島西北約14km)を侵犯した。

 だが今回、3度目にして、ついに軍用機が白昼堂々と、日本の領空に侵入してきたのである。しかも、中国側が「自国の領土」を主張している尖閣諸島の近海ではなく、長崎県の近海である。

「中国はいかなる国の領空も侵入する意図はない」

 8月27日、木原稔防衛大臣は、会見でこの一件を問われ、眉をひそめて答えた。

「中国軍所属航空機による我が国領空の侵犯は、わが国の主権の重大な侵害であるだけではなく、安全を脅かすものであり、まったく受け入れることはできません。同日中に中国政府に対して、外交ルートで極めて厳重に抗議するとともに、再発防止を強く求めたところです」

 だが続けて、こうも述べている。

「当該中国軍機の行動の意図・目的について、事柄の性質上、確たることをお答えすることは困難でございます」

 中国は一体、何を考えているのか? 27日の中国外交部定例会見で、仏AFPの記者が質問したが、林剣報道官はけむに巻いた。

「その指摘された件に関して、中国の関係部門がいま、関係する状況の実態の確認をしているところだ」

中国外交部の林剣報道官(写真:共同通信社)

 その後、会見の最後に、NHK記者が再度質したら、こう答えた。

「中日の双方は、すでにあるルートを通じて連絡を取り合っている。私が強調したいのは、中国はいかなる国の領空も侵入する意図はないということだ」

考え得る5つの説

 本稿を執筆している28日現在、中国側の意図は不明だ。だが考えられるのは、次の5点ではないか。私見だが、現時点で可能性があると思われる順に述べる。

① 誤って侵入した

 これは、昨日確認を取った自衛隊の関係者が述べていた説だ。

「現在の上空は、ウクライナ戦争を見ても分かるように、無人機全盛の時代で、偵察目的でも無人機が多用されている。だが無人機を飛ばすには、前提となる正確な航空情報が欠かせない。どこを飛べばどのように、自衛隊や在日米軍などの動きを、より深く偵察できるかということだ。

 そうした無人機用の偵察の中で、意図せず日本の領空を越えてしまったのではないか。その証拠に、日本側の警告を受けたとたん、直ちに領空を離れている。その間、わずか2分だった」

 たしかに、前述の27日の林剣報道官の回答を見ていると、何とも歯切れが悪い。20分の定例会見を終えようとしていたら、最後にNHKの記者がダメを押してきて、うざったそうに答えていた。少なくとも、中国外交部も含めた「中国政府としての総意による領空侵犯」ではなさそうな様子だった。

もしも意図的に侵入したとすると…

② 日本側を舐めてかかった

 周知のように、日本は現在、政権交代の移行期にある。岸田文雄首相が退陣を表明してから、次期政権が発足するまでの「空白の1カ月」を狙って、中国軍が日本側を舐めてかかって挑発行為に及んだ。

 そう言うと、さも意図的に挑発したかのようだが、意図的でなくても、潜在的に舐めてかかっている場合がある。「ひょっとしたら日本の領空に入ってしまうかもしれないが、いまの日本なら平気だろう」というわけだ。

③ アメリカの政権移行期を狙った

 ここからは「意図的に侵入した」という説に基づく。習近平政権の発足以前、人民解放軍のある退役将軍から、こんな話を聞いた。

「わが軍から日本を見た場合、最も注視しているのは在日米軍の動向で、自衛隊の動向は二の次だ」

 そうした観点に立てば、現在はアメリカのジョー・バイデン大統領も「レイムダック状態」に近く、政権の移行期である。そのため、来年1月にアメリカで新政権が発足する前に、たとえ日本の領空を侵犯することはあっても、できる偵察行為はやってしまおうと判断した。

「戦狼外交」からの路線転換に不満?

④ NATOがアジアに迫ることへの対抗意識

 8月22日から、イタリア海軍の空母「カブール」が、横須賀基地に寄港している。グイード・クロセット伊国防相も来日中で、イタリア軍によるインド太平洋地域の防衛や、日本、イギリスとの次期戦闘機の共同開発などに、改めて意欲を示した。

 ウクライナ戦争が起こって以降、中国は「NATO(北大西洋条約機構)がアジアにやって来る」ことを、何よりも警戒している。その警告の意味で、今回、挑発を決行した。

⑤ 「戦狼外交」路線を引っ込めた習近平体制への不満

 最後は、中国国内での路線の違いからくる争いである。習近平政権と言えば、非友好国に対して狼のように吠えまくる「戦狼(せんろう)外交」で知られたが、昨今の経済失速に伴い、スマイル外交に転換を図っている。8月22日には、習近平主席が「鄧小平生誕120周年座談会」を主催し、鄧氏を「改革開放の総設計師」とほめ上げた。

 鄧小平氏はかつて、改革開放政策の「代償」として、人民解放軍を150万人も削減した。そのため、人民解放軍が習近平体制に警鐘を鳴らした。

 以上、5つの説を並べたが、いずれにしても日本が中国を警戒すべきは、尖閣諸島周辺だけではないことが、改めて浮き彫りになった一件だった。

近藤 大介

ジャーナリスト。東京大学卒、国際情報学修士。中国、朝鮮半島を中心に東アジアでの豊富な取材経験を持つ。近著に『進撃の「ガチ中華」-中国を超えた?激ウマ中華料理店・探訪記』(講談社)『ふしぎな中国』(講談社現代新書)『未来の中国年表ー超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)『二〇二五年、日中企業格差ー日本は中国の下請けになるか?』(PHP新書)『習近平と米中衝突―「中華帝国」2021年の野望 』(NHK出版新書)『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)『中国人は日本の何に魅かれているのか』(秀和システム)『アジア燃ゆ』(MdN新書)など。

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No.605 ★ 中国 半導体業界への投資額、24年上期は38%減

2024年08月29日 | 日記

NNA ASIA

2024年8月28日

調査会社の上海群輝華商光電科技(CINNO)によると、中華圏を対象とした半導体業界の2024年1~6月の投資額は前年同期比37.5%減の5,173億元(約10兆5,000億円)だった。金額最大のウエハー製造向けをはじめ大半の分野が伸び悩んだ。ただCINNOは半導体業界の今後の見通しに楽観的な見方を示した。

項目別に見た投資額は、ウエハー製造向けが33.9%減の2,468億元。半導体設計向けは29.8%減の1,104億元、半導体材料向けは55.8%減の668億1,000万元、半導体封止・検査向けは28.2%減の701億9,000万元となった。一方、半導体設備向けは45.9%増の246億6,000万元。

材料別で見た投資額は、シリコンが327億3,000万元、次世代半導体の材料となる炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)向けが113億5,000万元だった。

投資額のうち、中国本土の資金は90.9%を占めた。

CINNOは、半導体製品の在庫が合理的な水準に戻る流れにある中で、スマートフォンやサーバー、自動車、パソコンなど向けの半導体需要が回復を示していると指摘。人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の急速発展が半導体業界を押し上げるとみている。

国内のファウンドリー(半導体の受託製造)による工場建設の加速が国産の設備や材料の需要を押し上げるとの見方も示した。

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No.604 ★ ついに若者たちが「習近平の罷免」を要求…!いま中国各地で行われている「原因不明の肺炎」に対する「謎の緊急訓練」と、高まる「怨嗟の声」

2024年08月29日 | 日記

現代ビジネス ( 和彦:経済産業研究所コンサルティングフェロー)

2024年8月28日

「インターン歴」高額取引の闇

前編『習近平の「経済失策」で、中国がいよいよ無法地帯に…!いま若者の間で広がる「インターン歴の高額取引」と、そこに付け込んだ「詐欺」が横行している!』でお伝えしたように、中国政府が8月16日に発表した7月の若年層(16~24歳)の失業率は17.1%と、前月の13.2%から上昇し、今年の最高水準を記録した。

若年層の失業率は昨年6月に21.3%を記録した後、政府の発表は停止された。

就職フェアには、就職が決まらない学生たちがあふれている mages

今年1月から在学生を除いた失業率が発表されるようになったが、若者の雇用状況が再び悪化していることが明らかになった形だ。この統計は都市部のみを対象にしており、「中国全体の若者の雇用状況はさらに悪い」との指摘もある。

あろうことか、就職活動に励む学生をターゲットにした詐欺が横行している。

今年も1200万人近くの学生が卒業する中、中国では「有料インターン」制度が急速に広がっている。インターンとは社会に出る前に学生が実際に仕事を体験するプログラムのことだが、学生たちは少しでも良い職場を得ようと多額の金銭を払ってインターン歴を買っている。

インターン歴の相場は最高で4万8000元(約100万円)を超えると言われている。だが、法的に保障された制度ではないため、詐欺などの被害に遭う就活生が相次いでいるのだ(8月6日付朝鮮日報)

学生たちの財布は火の車

若者は悪質なネットローンにも苦しめられている。

中国の諜報機関である国家安全部は7月12日、「近年、中国の大学で高利のキャンパスローンがはびこり、多くの若者が底なしの穴に陥っている。キャンパスローンの返済に困った学生を外国の諜報機関が脅迫して、中国の国家機密を盗む事件がたびたび起きている」と警告を発しているほどだ。

とどまることを知らない少子化のせいで、若者の就職難がさらに進む懸念も生じている。

中国では昨年、過去20年間で初めて幼稚園などの教員数が減少した。北京師範大学の試算によれば、2035年には小中学校の教員の約2割が余剰になるという。中国では雇用の安定した職業のことを「鉄飯碗(鉄で作ったように安定していて食いっぱぐれがない)」と呼ぶが、その1つとされた教員の職にも淘汰の波が及んでいる。

中国経済の長期停滞が確実視され始めている Photo/gettyimages中国経済の長期停滞が確実視され始めている Photo/gettyimages

気がかりな「原因不明の肺炎」

「弱り目に祟り目」ではないが、新型コロナの再流行も若者にとって災難だ。

日本も新型コロナの第11波に見舞われているが、中国でも7月の感染者数は1万8384人となり、1ヵ月の間に1万人以上も増加した。8月も増加が続いているようだ。

今回の特徴は、若者に顕著な症状(体の痛みや発熱など)が見られることだ。

気がかりなのは、中国各地で8月中旬から大規模な「原因不明の肺炎」に対する緊急訓練が実施されていることだ。「中国でまた新たな感染症ウイルスが出現したのではないか」との不安が頭をよぎる。

各地で実施されている訓練について、ネット上では「またロックダウンの準備をしているのか」「もう二度とあんな経験はしたくない」との怨嗟の声があふれている。

ふたたびロックダウンへの警戒感が高まっている Phot中国では2022年12月、約3年続いたゼロコロナ政策が解除された。この規制の撤廃を実現させたのは、若者が主導した「白紙デモ」だった。

政府が感染症対策を再び実施すれば、ゼロコロナ政策が引き起こした不況がさらに深刻化する。若者たちは「生活はますますめちゃくちゃになるし、せっかく勝ち取った行動の自由を二度と手放したくない」との思いだろう。

習近平の罷免を求める横断幕

7月30日、「白紙デモ」に参加したとされる1人の若者が、湖南省新化県の歩道橋に「独裁、国賊の習近平を罷免する」などと書いた横断幕を掲げた。

この動きに追随する動きは今のところ起きていないが、政府が再びロックダウンを断行すれば、若者たちは今度こそ政府打倒の「旗」を掲げるのではないだろうか。

さらに連載記事『習近平がついに「全面降伏」か…!突然示された「方針転換」のウラにある中国経済「悲惨な実態」と、若者に広がりはじめた「ヤバすぎる異変」』でも、中国経済の疲弊と若者の怒りを紹介しているので、ぜひ参考としてほしい。

藤 和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年、愛知県生まれ、84年通商産業省入省。03年に内閣官房内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官を経て、研究職へ。現在、独立行政法人経済産業研究所上席研究員、公益財団法人世界平和研究所客員研究員。著書に「シェール革命の正体」ほか。

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