「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.613 ★ 中国の過剰鋼材輸出、政府は反ダンピング措置を=日鉄副会長

2024年08月31日 | 日記

ロイター (By 清水律子Yuka Obayashi)

2024年8月30日

日本製鉄の森高弘副会長(写真)はロイターとのインタビューで、中国の過剰生産・輸出増加に強い懸念を示した。2023年11月撮影(2024年 ロイター/Ritsuko Shimizu)

[東京 30日 ロイター] - 日本製鉄 (5401.T), opens new tabの森高弘副会長はロイターとのインタビューで、中国の過剰生産・輸出増加に強い懸念を示した。年間1億トンペースで続く安価な輸出鋼材が日本に入ることを防ぐため、政府に対して反ダンピング(不当廉売)措置などを取るよう働きかけていると述べた。

一方、買収が難航している米鉄鋼大手USスチール(X.N), opens new tabを巡っては、民主党の副大統領候補ウォルズ・ミネソタ州知事と6月に会っていたことを明らかにし、その時は支持する旨の発言があった、とした。ウォルズ氏が副大統領候補になって以降は、USスチール買収に関しての態度は明らかになっていない。

中国の過剰生産問題に関して森副会長は「中国の内需が毎年3000万トンぐらいずつ下がっており、さらに中国からの鋼材輸出が増えていく可能性がある」と話した。足元で為替が一時より円高方向に振れていることも、輸入鋼材が入りやすい要因になっている。

中国では、高水準の鋼材生産が続く中、内需不振で安価な鋼材輸出が増加している。1―6月期の中国の鋼材輸出量は5340万トンと前年同期比24%増加し、年間では1億トンペースとなっている。森氏は、中国の内需について「年内の回復はないだろう」との見方を示した。

完全に中国からの鋼材輸入をシャットアウトしている米国のほかにも、欧州や韓国も反ダンピング措置を打ち出し中国から鋼材が入らないようにしている。森副会長は「日本だけ裸。非常に危ない状況にある」とし、「政府に対して反ダンピング措置、関税などを考えたほうが良いということで働きかけをしている。守らないと、日本のマーケットがおかしくなる」と強い危機感を示した。

自動車の大量生産に必要な「型式指定」の認証不正問題で日本国内の鋼材需要も影響を受けている。日鉄が現中計を策定した際には、全国の鋼材消費の前提を5400万トンで見ていたが、今期は5100万トンの見通しと下振れている。

森副会長は「構造的に日本の消費が落ちてしまうなら、抜本対策を考えなければならない。今から見極めるという段階」と指摘。高炉を15基から10基に減らすことで国内の構造対策が一巡したとは「言えない。マーケットが想定より悪くなっている」と述べ、需要減が一過性かどうかを見極めた結果、さらなる構造改革に踏み込む可能性もある。

日鉄は今月、2025年3月期(国際会計基準)の連結事業利益を6500億円から前年比19.5%減の7000億円に上方修正したが、足元の為替や原料・鋼材市況動向次第では業績下振れ要因にもなりかねない。

<ウォルズ氏と6月に面談、USスチール買収「応援」>

一方、米USスチールの買収に関しては、今期業績見通しに織り込んでおらず、計画通り年内に成立した場合、25年1―3月期の業績がプラスされることになる。森副会長は「1―3月期に事業利益で300―400億円になる」との見方を示した。

共和党候補のトランプ前大統領は19日、東部ペンシルベニア州で演説し、大統領に返り咲いた場合、日鉄によるUSスチール買収を阻止すると改めて表明した。一方、民主党候補のハリス副大統領は今買収に対する態度を明らかにしていない。

森副会長は、民主党の副大統領候補、ウォルズ・ミネソタ州知事と6月に会ったことを明らかにし「20分から30分、1対1で話をした。ミネソタへの投資をものすごく歓迎してくれるし、日米関係にも非常に関心の強い人」と評し、副大統領候補になる前ではあったものの、USスチール買収についても「応援すると言ってくれた」という。

森氏は、来月も訪米し、年内の買収完了に向けて引き続き働きかけを行っていく。

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No.612 ★ 欧州で苦戦「中国車両メーカー」の新たな足かせ 経験不足や違反に加え「ウクライナ戦争」の影も

2024年08月31日 | 日記

東洋経済オンライン (橋爪 智之 : 欧州鉄道フォトライター)

2024年8月30日

CRRC大同製のベラルーシ鉄道向け電気機関車BKG2型。EUなどの制裁によりフランス製部品の供給が停止されたことから納入延期となった(写真:Belarusian Railways)

世界最大の鉄道メーカーである中国中車(CRRC)の子会社、CRRC大同は2024年7月、ベラルーシ鉄道から受注していた15両の交流電気機関車BKG2型の納入延期を発表した。

この機関車はCRRCとフランスのアルストムによる共同開発で、変圧器や主電動機、コンバーター、制御装置、診断・監視システムなどの電子機器などはフランス製品を採用している。ウクライナ戦争において親ロシアの立場を取るベラルーシは、EUおよびアメリカの経済制裁の対象となっており、同国に対して西側諸国で生産した部品の供給を停止するという決定が下されたことが納入延期の理由だ。

「世界最大」でも欧州進出は難航

BKG2型電気機関車は、2021年12月にベラルーシ鉄道が中国電気輸出入公司およびCRRC大同との間で、総額6430万ユーロ(約103億6000万円)で契約を締結しており、契約を補助するために中国輸出入銀行が融資を行っている。

当初、2023年末までには納入される予定だったが、フランス製部品の使用が不可能となったことで、納入期限を2025~2026年まで延期。CRRCは中国製の代替部品を確保することで、この問題を解決するべく対応に追われている。

過去数年を振り返ると、中国政府およびCRRCは世界最大シェアとなった業績をさらに拡大すべく、世界各国への進出に躍起となっている。実際に、アジアや南米などの新興国では同社製品が徐々に浸透しつつある。

一方で同社がとくに力を入れているヨーロッパ市場においては鳴かず飛ばずという状況であることは、過去の記事で何度もご紹介したとおりだ。

チェコの民間鉄道会社レオ・エクスプレスと契約した都市間急行列車用車両「シリウス」は、営業に必要な認可取得が遅れたことで、同社との契約が破棄されたことに加え、車両の基礎部分における熟成不足などが露呈。営業用として問題なく使えるかどうか未知数で、短期間の試験的な営業運転を行って以降も、再契約の話はない。

チェコのヴェリム試験センターで試運転をしていた当時のシリウス(筆者撮影)

試験運行後にそのまま本契約とはいかなかったシリウス(筆者撮影)

オーストリアの民間鉄道ウェストバーンとの間でリース契約した2階建て車両も、試運転を開始してからすでに数年が経過しているが、こちらは試験営業すら行われておらず、先行きはまったく白紙の状態だ。ヨーロッパ市場に対するCRRCの経験不足が露呈した形だ。

オーストリアで営業されるか先行き不透明な2階建て電車(筆者撮影)

CRRCは契約獲得を有利に進めるため、中国政府から多額の助成金を受け取って入札提示価格を下げるなど、なりふり構わない手段で進出を試みている。実際に、ブルガリアでは車両納入に関する契約を獲得できたものの、これはEU外からの補助金に関する規則(外国補助金規制 The Foreign Subsidies Regulation/FSR)に抵触していることが指摘され、この契約は破棄されることになった。

「親ロシア」への抵抗感

ヨーロッパ市場への進出をなかなか実現できないのは、前述の通り同社の経験不足や違法行為などが主な理由であるのは明らかだが、一方でロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシア寄りの中国に対してヨーロッパ各国の抵抗感がより強まったことも、進出を阻む決定的な要素となったことは否定できないだろう。

CRRCの新型電車をテストするにあたり協力を申し出たチェコのレギオジェットに対しても、チェコ国内では中国へ手を貸すことは間違っている、という否定的な意見が多く飛び交っていた。同社は以前、価格が高騰している電気機関車をCRRCと共同開発する可能性についても言及していたが、いつの間にかその話はまったく聞かれなくなった。

短期間だけレギオジェットで試験営業をしたCRRC製連接電車シリウス(筆者撮影)

ウクライナへ積極的な支援を行っているチェコ共和国の立場として、親ロシアの中国および同国企業と関わりを持つことは、国内世論を敵に回すことにもなりかねない自殺行為だ。

だがEU加盟国であっても、完全に足並みが揃っているわけではない。

ハンガリーのIT・物流・エネルギー企業のAcemil社は2024年5月、CRRC子会社のCRRC株洲との間で、鉄道車両の製造、保守、鉄道専門教育、研究開発の4つの分野でハンガリー国内に共同センターを設立することに合意した。また、同じく子会社のCRRC山東との間では、ハンガリーで客車の共同組立・製造に関する契約を結んでいたことも明らかにした。

ハンガリーで量産されるか注目される、CRRCが開発した電気機関車バイソン(筆者撮影)

中国の習近平国家主席は5月にブダペストでハンガリーのオルバン首相と会談し、ハンガリーの鉄道計画を中国の一帯一路構想の対象となるインフラプロジェクトのリストに含めることに合意したが、この発表はそれに続くものだ。オルバン政権が親ロシアであることはよく知られているが、ハンガリーは中国へも接近し、さらに中ロ寄りになったといえる。

「安さ」で中国製に頼る国も

ルーマニアも、CRRC子会社のCRRC四方と新型電車の製造契約を結び、都市間輸送に使用する予定となっている。経済的に余裕があるとはいえない国々では、欧米メーカーと比較して価格の安いCRRC製車両に頼らなければならない国がある、というのが現実でもあるのだ。

ヨーロッパ圏に位置しながらEUに加盟していない国の中には、中ロとヨーロッパ(EU)を綱引きさせて、自分たちの利益をうまく引き出しているところもある。鉄道に関しても同じで、セルビアはCRRC子会社のCRRC長春と、都市間特急用新型電車4両編成5本を導入する契約を交わしている。EUに加盟していないセルビアの場合、中国政府からの補助金は規制の対象とはならないため、より安く鉄道車両を導入できるという点で大きなメリットがある。

オーストリアではなかなか営業許可が下りないCRRC製2階建て電車(筆者撮影)

中ロ関係から欧州での展開については不透明なCRRC製車両(筆者撮影)

中国政府とCRRCが目論む世界進出だが、ことヨーロッパ圏においては、中国・ロシアと距離を置きたいという政府や国民の意識が強い国が多い。その中で経済的に裕福とはいえない国の鉄道会社が、高価な欧州製品を導入しつづけられるのか、それとも安価な中国製品の導入に踏み切るのかが、今後のCRRCの欧州展開では鍵を握ることとなりそうだ。

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No.611 ★ 日本で本を売る中国人 習体制の出版抑圧を逃れ 穏健派の知識人  でさえ、表現の自由を求めて国外に拠点移すケースが増加

2024年08月31日 | 日記

DIAMOND online  (The Wall Street Journal)

2024年8月30日

中国人の出版業者チャン・シージーさんはカートを引いて東京・神保町を歩き回る

NORIKO HAYASHI FOR THE WALL STREET JOURNAL

【東京】チャン・シージーさん(47)はかつて中国大手出版社の経営幹部として年間数百万ドル相当の書籍販売を監督し、北京で開かれる宴会で契約を取り交わしていた。最近はショッピングカートを引いて東京の本屋街、神保町付近を歩き回り、自費出版業者として手がける3作品を置いてほしいと本屋に頼み込んでいる。

 北京で彼が扱った書籍は月に何万部も売れることがあった。日本で売れたのは1月以降で合計2000部にも満たない。

チャンさんは、新型コロナウイルスの流行以降、総じて衰えずに続いている中国の広範な頭脳流出の一例だ。習近平国家主席の下で政治的統制が急速に強まる中、それを逃れるために同国を去る知識人や起業家が後を絶たない。

 母国では自分の望む生き方ができないと悟り、国外に居場所を求める中国人の思想家や芸術家、文化人たちの波に加わり、チャンさんも中国を離れて規模を縮小した自身のキャリアをスタートさせた。

 チャンさんはこの「シフトダウン(低速ギアへの切り替え)」に満足しているという。中国を出れば、国内のし烈な競争から解放されるうえ、中国当局がもはや容認できない種類の思慮深い批評的な作品を出版できると話す。

「私は『あの幸せの国に行く』ために北京を離れた」。チャンさんは専制的体制から逃れることを語るのに、中国最古の詩集である「詩経」の一節を引用した。

 活動家や反体制派は共産党と衝突して以前から外国に逃げていたが、現在出国する人々の多くは政治的な穏健派で、それほど厳格でない習氏の前任者たちの下では同国の文化や知識に貢献する生活に満足していた。だが、創造性を巡る閉塞(へいそく)感に加え、景気減速によって経済的不安が募っていることが、ここにきて頭脳流出を加速させている。

 増え続ける自発的な国外逃亡者たちは、世界各地の都市に拠点を移している。中国のテレビ局の看板キャスターだった柴静(チャイ・ジン)さんは、現在住んでいるスペインのバルセロナからユーチューブで配信するインタビュー番組を最近立ち上げた。上海の有名な書店のオーナー、於淼(ユー・ミャオ)さんは、米国の首都ワシントンに新店舗を開く準備をしている。高名な映画監督の王小帥(ワン・シャオシュアイ)さんは、当局に何年も受け入れられてきたが、最近になって検閲の標的となり、英ロンドンに移住した。

チャン・シージーさんの日本移住は、新型コロナウイルス流行以降、総じて衰えずに続いている中国の頭脳流出の一例だ

PHOTO: NORIKO HAYASHI FOR THE WALL STREET JOURNAL

 中国国内では政治はもちろん、経済などの話題でも穏健な意見を表明する場さえ与えられないため、国外にいる中国人の発する声が重要性を増している。「Sparks: China’s Underground Historians and Their Battle for the Future(歴史の書き換えと闘う中国新世代の歴史家たち)」の著者であるイアン・ジョンソン氏は、中国の重要な記憶を守ろうとする知識人たちの取り組みについてこう語る。

「10年前にはこれほど顕著ではなかったが、異なる見解に対する渇望がある。それはまさに代わりの説明を求める感覚が、反体制派や活動家だけのものではないからだ」

 その渇きをいやす一助になればと考えるチャンさんは、今月のうだるような暑さの午後、本を携えて神保町の中国書籍専門店、東方書店に足を運んだ。中国関連の本が並ぶ棚に近づき、その下の引き出しを開けた。

「ほら見て」。彼は引き出しの中を指さした。「在庫がなくなりそうですよ」

 店長はチャンさんが持参したある作品を5冊引き受けてくれた。だが、ショッピングカートで持ち込んだ他の作品は全て断られた。

「自由で民主的な社会では、本の出版は簡単だ」。チャンさんは書店を出る際、こう話した。「だが本を売るのは大変難しい」

 チャンさんは2人の娘のことも心配だったと話す。学校で中国共産党の政治教育を浴びるように受けていたうえ、社会に出れば、今度は激しい出世競争にさらされることが懸念された。

 一家は2021年、コロナ禍のさなかに東京に引っ越した。娘たちが適応するのは早かったが、チャンさんは足場を見つけるのに時間がかかった。中国人作家の本を日本語で出版しようとしたが失敗し(彼は日本語が話せない)、その後は卓球やバスケットボールに興じ、地元の観光スポットを探すなどして日々を過ごした。

 他の国外逃亡者も同様の苦労を味わったと語っている。ワシントンで書店を開こうとしている於淼さんは、2018年に最初の書店を当局に閉鎖させられた後、中国で疎外感にさいなまれたと話す。だが米国に到着すると「疎外感が(故郷と切り離された)孤独感に変わっただけだった」。

 チャンさんは時がたつにつれ、東京に移り住む中国の知識人が増えていることに気づいた。彼らの利用する書店や読書スペースが出現するようになり、中国の歴史や時事問題の講演会が開かれた。彼はそうしたイベントに定期的に顔を出し始めた。それは20年前に北京で方々に顔を出していたのと同じだった。もう一度出版業に挑戦することにした。

 検閲を避けたい中国人作家の多くは、作品を国外で繁体字を使って出版するしかない。繁体字は国外移住者コミュニティーには好まれるが、中国本土の人には読むのが難しい。チャンさんは、中国本土の簡体字を使って検閲を受けない作品を出版できるチャンスを作家たちに売り込み始めた。

「中国国内で出版されるのとは違う本が欲しいと伝えた」とチャンさんは言う。「異質であればあるほど、なお良いと」

東京のオフィスで自身が出版した本を読むチャン・シージーさん

PHOTO: NORIKO HAYASHI FOR THE WALL STREET JOURNAL

 中国で発禁処分を受け、現在はタイのチェンマイに住むエッセイストの野夫(イェ・フー)さんは、中国の知識人に関する著作集の新刊発行をチャンさんに許可した。中国の歴史作家、傅国涌(フー・グォヨン)さんは、発禁本を含む2作品をチャンさんが出版することに同意した。

 チャンさんは日本の書籍の奥付を見て印刷所を探し、妻の助けを借りて本の表紙をデザインした。この新事業を「読道(よみみち)」と名付け、中国当局から自身の活動を隠すため、新しい下の名前に「シージー」を選んだ。

 最初は売れ行きが鈍かったが、すぐに軌道に乗った。1917年に上海で創業し、東京・神保町に店を構える内山書店で、チャンさんの本はベストセラーとなっている。現店主である内山深さんはそう話し、購入者の大半は中国人旅行者だと述べた。

 彼らはこのような本を中国では見つけられない、と内山さんは話す。日本で書籍を出版している中国人はあまり多くないのだという。

 習氏と共産党が政府をしっかり掌握している今、東京やその他の場所にいる中国人の頭から革命は遠のいている。代わりに多くの人が望むのは、権威主義的な支配から解放された中国知識人コミュニティーを守り、育てていくことだ。

チャン・シージーさんが出版した傅国涌さんの著書「去留之間」は、共産党が1949年に中華人民共和国を建国して以降、中国の学者が直面した選択肢を考察する
PHOTO: NORIKO HAYASHI FOR THE WALL STREET JOURNAL

(The Wall Street Journal/Wenxin Fan | Photographs by Noriko Hayashi for WSJ)

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