「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.571 ★ 低意欲の「寝そべり族」に「衝動的な退職」、流行語から読み解く中国Z世代の今 熾烈な競争の反動で極端な行動に出てしまう?

2024年08月18日 | 日記

東洋経済オンライン

2024年8月17

写真:Jcomp/Getty Images)

中国では6〜7月が大学の卒業シーズン。高考(ガオカオ)と呼ばれる厳しい大学入試や就職活動を経て、今夏から新社会人として働き始める若者が多いが、Z世代を中心とした彼らの間では、3年ほど前から「躺平」(タンピン=何もしないで寝そべる)、10年以上前から「裸辞」(ルオツー=転職先を決めずに仕事を辞める)が流行語になり、社会現象となっている。その背景には何があるのだろうか。

「何もしない」「消費しない」寝そべり族はなぜ生まれたか

筆者が「躺平」という言葉を初めて目にしたのは2021年5月だった。筆者は頻繁に中国のSNSを見ているが、そこに突然、現れたのがこの言葉だった。「躺平」とはもともと「横たわる」「寝そべる」などの意味だったが、それが転じて「結婚しない」「最低限しか働かない」「消費しない」「何もしない」などの低意欲、低欲望のライフスタイルを指す言葉として登場した。

きっかけは同年4月。ある中国人が中国のコミュニティサイトに「寝そべり主義は正義だ」と書き込んだこと。この文章はすぐに削除されたものの、ネット上でバズり、肯定的に受け止められて、瞬く間に拡散された。

どうせ、がんばっても報われない(努力して勉強してもいい学校に入れないなど)なら、いっそのこと、何もしない方がよいではないか、と潜在的に考えていた人々がこの投稿に同調。「無気力でもいいんだ」と考えたのだ。

「自分も寝そべろう」「私ももう何もしない」と思う人が増え、大きな反響を呼んだ。あまりにも大勢の人がSNS上で「私も躺平する!」と書き込んだことから、その年の流行語になった。以来、3年以上が経つが、今もしばしば使われている。

衝動的に仕事を辞めてしまう「裸辞」

もう1つ、「裸辞」は2010年頃から使われ始めた言葉で、意味は「転職先を決めずに仕事を辞めること」。中国語で「裸」は「何もない」という意味で、以前、お金をかけない「裸婚」(ルオフン=何もなし婚、地味婚)という言葉が流行ったこともあった。

それと同じく、後先のことを何も考えずに仕事を辞めることをあらわす言葉として、最近、中国版Instagram と呼ばれるSNS「小紅書」(シャオホンシュー)などで再び注目され、若者の間で使われるようになっている。

「裸辞」は主に2種類に分けられる。1つは労働時間が長すぎたり、仕事のプレッシャーがあまりにも大きすぎたりして、それに耐えられないことから、すべてを投げ出して「裸辞」に至ること。もう1つは、職場環境がよすぎて(ホワイト企業すぎて)、逆に不安にかられ、目標を見失ってしまったことから退職に至るケースだ。

大手IT企業などでは過労死寸前まで働かされることがあるが、中小企業や一部の企業の中には、がんばらなくても十分やっていける企業もある。だが、がむしゃらに働いている同級生がどんどん出世していく姿などを見ると、「自分はこんな楽な企業に腰を落ち着けていていいのか」という気持ちになるようだ。多くの場合は1つ目の理由だが、衝動的に辞めてしまうという点では同じだ。

進学と就職にかかる大きすぎるプレッシャー

「躺平」と「裸辞」に共通している問題として、中国でしばしば議論になることの1つは、厳しすぎる受験戦争の反動ではないか、という点だ。

中島 恵(なかじま・けい)
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。中国、香港など主に東アジアの社会事情、ビジネス事情についてネットや書籍などに執筆している。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないのか』『日本の「中国人」社会』(いずれも日経BPマーケティング)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『中国人のお金の使い道』(PHP研究所)、『中国人は見ている。』『いま中国人は中国をこう見る』『中国人が日本を買う理由』(いずれも日本経済新聞出版)などがある
(写真:中島恵氏提供)

よく知られているように、中国では「高考」に向けて幼い頃から受験勉強が始まる。生まれたばかりの赤ちゃんの枕元に「高考まであと6540日」などと書いた紙を置いて写真を撮るのが定番で、つまり、それほど幼い頃から高考に向けて、厳しい戦いが始まっているという自虐的な意味である。

保護者からのプレッシャーを長年受けながら厳しい受験を勝ち抜き、ようやく大学に合格。しかし、そこでも競争はなくならず、さらによりよい就職を目指して頑張らなければならない、というのが中国の若者が歩む道だ。

先日、広東省に住む筆者の知人が、SNSに子どもの答案用紙の写真を載せていたのに目が留まった。そこには、「クラスの中でどの生徒が蹴落としたいライバルですか」と先生のコメントが書いてあり、知人の子どもが「陳〇〇さんと、王〇〇さん」と書いていたことに、筆者はとても驚かされた。

ある程度の競争はモチベーションアップのためにもよいことだと思うし、人口が多い中国で競争がつきものなのも承知している。個人的に「ライバルは〇〇さん」と自覚することもあるだろう。だが、学校の答案にまでライバルの名前を明記し、闘争心を煽るという教育のやり方に違和感を覚えた。

ここまでして、一心不乱に勉強した結果、一流の大学に合格し、有名企業に就職できる人もいる。だが、それはごく一握りで、ほとんどの若者は、必死でがんばってもいい大学に進学できず、よい仕事にも就けない。親の期待に応えられなかったことにより、自己嫌悪に陥る。そこで、自分は何の価値もない人間なのだ、と感じてしまうのだ。

「一人っ子」として甘やかされてきた若者たち

中国の若者にとって、夢や希望は「将来、〇〇(職業)になりたい」や「〇〇になって、世の中の人の役に立ちたい」ということではなく、「一流大学に合格すること」や「有名企業に就職すること」自体になってしまっている。その結果、それが叶わなかったときの反動や失望、絶望が非常に大きくなる。

そこには、一人っ子で甘やかされて育ってきたことも関係しているだろう。中国が一人っ子政策を実施したのは1979年以降。2016年からは、すべての夫婦が第2子を持つことが認められ、現在は3人目まで認められているが、Z世代の若者の多くは一人っ子だ。

両親だけでなく、父方、母方の双方の祖父母からの期待も一身に背負って、大事に育てられてきた。小学校だけでなく、中学校に通う際にも、保護者やお手伝いさんがカバンを持ってくれるような、甘やかされた環境にいる若者も多かった。

そのため、自分にとって厳しい状況を受け止め、我慢することよりも、「割に合わない」「嫌いな仕事を振られた」と感じたら、すぐに仕事を辞めてしまうという行動に出やすいのではないだろうか。

むろん、我慢することが必ずしもよいことだというわけではない。だが、都市部では、保護者と一緒に生活している若者が多いため、もしいきなり退職しても、翌日から生活が成り立たなくなるわけではなく、当面の生活には困らない。本当に経済的に苦しいギリギリの生活をしていたら、「躺平」や「裸辞」はやりたくてもできない。

そう考えると、これらの言葉の流行は、厳しすぎる受験戦争の反動であるのと同時に、ある意味で中国全体が豊かになったことの現れ、とみなすこともできるのではないかと感じている。

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No.570 ★ 第2四半期の対中直接投資は2度目の引き揚げ超過に

2024年08月18日 | 日記

JETRO北京事務所

2024年8月16日

添付資料(102 KB)

中国の国家外貨管理局は8月9日、2024年第2四半期(4~6月)と上半期(1~6月)の国際収支統計(速報値)を発表した。

第2四半期の対内直接投資額(注1)は148億ドルの引き揚げ超過となった。四半期ベースでみると、引き揚げ超過は統計が発表されている1998年第1四半期(1~3月)以降で2度目となる(注2、添付資料図参照)。引き揚げ超過額は前回の2023年第3四半期(7~9月)の121億ドルを上回った。内訳をみると、株式持ち分投資や再投資収益などは流入超過(73億ドル)だったが、関連企業間債務は引き揚げ超過(220億ドル)となっており、2023年第3四半期と同様の状況が発生している。

上半期では46億ドルの引き揚げ超過だった。

第2四半期の経常収支は594億ドルの黒字だった。うち貨物貿易収支は1,671億ドルの黒字、サービス貿易収支は617億ドルの赤字だった。上半期では経常収支は941億ドルの黒字、貨物貿易収支は2,884億ドルの黒字、サービス貿易収支は1,229億ドルの赤字だった。

国家外貨管理局の王春英副局長は上半期の国際収支の特徴として、(1)貨物貿易収支の黒字が高水準だった、(2)サービス貿易収支のうち旅行収支など幾つかの項目が堅調だった、(3)株式の取得をみると、対外直接投資はグローバルに行われ、対内直接投資では資本金としての流入が408億ドルに達するなど、双方向の直接投資が安定していたことの3点を挙げた。

商務部の7月12日の発表では、1~6月の外資利用額(実行ベース、注3)も前年同期比29.1%減の4,989億1,000万元(約10兆4,771億円、1元=約21円)と、大きく減少している。

(注1)直接投資負債額のフロー。

(注2)国家外貨管理局ウェブサイトでの公表による。

(注3)国家外貨管理局によると、対内直接投資額と外資利用額の主な違いは次のとおりとされる。

  1. 対内直接投資額は資産負債原則、外資利用額は親子関係原則に基づく。
  2. 対内直接投資額はネット金額。
  3. 対内直接投資額は未分配利益、分配利益の未送金分、株主ローンを含む。

(河野円洋)

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No.569 ★ 中国で蔓延する「死に急ぐような値下げ競争」新車のEV比率 50%  超えに浮かれる中国自動車業界のヤバい未来

2024年08月18日 | 日記

MAG2NEWS (by 『CHINA CASE』)

2024年8月16日

 

EV大国として真っ先に名の上がる中国。今年7月には乗用車新車販売におけるNEVの比率が51.1%に達し、隣国では自画自賛の声が上がっていると言います。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は今回、中国の新車販売データを扱った記事を紹介。NEV比率50%超えは画期的であるとしながらも、その数字を喜んでばかりはいられない「中国自動車業界の問題点」を取り上げています。


※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:新車販売のNEV比率50%越えに浮かれる中国、国内販売は超苦戦

新車販売のNEV比率50%越えに浮かれる中国、国内販売は超苦戦

乗用車市場情報聯席会(CPCA、乗聯会)が2024年8月8日に発表した、中国の2024年7月における乗用車新車販売で、新エネルギー車(NEV)が占める比率が初めて50%を超えたことで、中国では大きな話題になっている。

NEVがここまで浸透している中国はすごい、というのが基本的な論調。しかし、この2024年7月の中国新車販売データはそこが着眼点ではなく、もっと大きな問題をはらんでいる。

そこを冷静に指摘する中国現地メディアもあるが、乗聯会のみならず、中国自動車工業協会(中国自工会)のデータも含めて問題点を指摘する。

NEV比率50%とは

乗聯会のデータによれば2024年7月、中国の乗用車NEV新車販売(小売)は87.8万台となり、乗用車新車全体が172万台だったため、NEV比率が51.1%に達した。

この比率が50%を超えるのは中国でも初めてのことであり、その意味では画期。

ただし、このNEV比率が急速に高まってきた近年、それに比例するように中国自動車業界に問題が多くなってきているのも確かだ。

ダブルマイナス成長

乗聯会と違い、乗用車のみならず、商用車も含めた中国全体の自動車データを発表する中国自工会の2024年7月の新車生産・販売はそれぞれ229万台、226万台となった。

これは前月と比べると8.8%減、11.4%減であり、前年同月と比べると4.8%減、5.2%減と、大きく落ち込んでいる。

この傾向は乗聯会のデータにも表れているものであり、両者のデータの違いを示すものではない。

2024年1~7月の累計の生産・販売は前年同期比で引き続きプラス成長を確保しているが、そのプラス幅は当然狭まってきている。

深刻な中国国内販売

特に深刻なのは、中国国内販売だ。7月の中国国内販売は前月比13%減、前年同月比10%減。1~7月ではとうとうマイナス成長に突入した。

輸出は引き続き堅調だが、前月比では3%減少、前年同月比での成長率は20%を切った。春節などの季節的変動を抜かせば、この水準はここ数年来最も低い水準で、頼みの輸出も底が見え始めた。

中国の国内で自動車が売れなくなっているのは間違いない。そしてなんとかそれをけん引しているのがNEV販売、という構図が鮮明になった。

NEV販売も先行き不透明

しかしそれも先行き明るい、とは言えない。NEVの新車生産・販売は7月、それぞれ前年同月比22%増、27%増と堅調そうに見える。

しかし、中国NEVの代名詞ともされるBEVだけを見れば、販売は同3%増にとどまる。BEVの1~7月新車販売は前年同期比10%増まで低減している。

BEVは月ごとの販売ではそろそろマイナス成長になりそうだし、2024年通年でも大きな成長率は望めそうもないのが現状だ。

堅調なのはPHEVのみだが

BEVに比べ、PHEV(REEV)は堅調だ。7月の新車販売は前年同月比81%増を記録しており、1~7月でも85%の成長を維持している。

PHEVのBYD、REEVの理想(Lixiang)、ファーウェイ「鴻蒙智行(HIMA)」の躍進による。ただしこれでさえ、中国の国内販売自体が弱含んでいる以上、当然これが永続するわけもなく、2024年限定の現象になる可能性もある。

「巻き」と呼ばれる皆が死に急ぐように、値下げ含む悪性の競争が蔓延している中国の自動車業界は日系含む外資の苦境という形で今は顕在化しているが、それにとどまるものにはならないと見るべきだ。

出典: https://mp.weixin.qq.com/s/6zc2afFLdm3seIcc-biAiw

CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。

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