ロイター (By 清水律子, Yuka Obayashi)
2024年8月30日
日本製鉄の森高弘副会長(写真)はロイターとのインタビューで、中国の過剰生産・輸出増加に強い懸念を示した。2023年11月撮影(2024年 ロイター/Ritsuko Shimizu)
[東京 30日 ロイター] - 日本製鉄 (5401.T), opens new tabの森高弘副会長はロイターとのインタビューで、中国の過剰生産・輸出増加に強い懸念を示した。年間1億トンペースで続く安価な輸出鋼材が日本に入ることを防ぐため、政府に対して反ダンピング(不当廉売)措置などを取るよう働きかけていると述べた。
一方、買収が難航している米鉄鋼大手USスチール(X.N), opens new tabを巡っては、民主党の副大統領候補ウォルズ・ミネソタ州知事と6月に会っていたことを明らかにし、その時は支持する旨の発言があった、とした。ウォルズ氏が副大統領候補になって以降は、USスチール買収に関しての態度は明らかになっていない。
中国の過剰生産問題に関して森副会長は「中国の内需が毎年3000万トンぐらいずつ下がっており、さらに中国からの鋼材輸出が増えていく可能性がある」と話した。足元で為替が一時より円高方向に振れていることも、輸入鋼材が入りやすい要因になっている。
中国では、高水準の鋼材生産が続く中、内需不振で安価な鋼材輸出が増加している。1―6月期の中国の鋼材輸出量は5340万トンと前年同期比24%増加し、年間では1億トンペースとなっている。森氏は、中国の内需について「年内の回復はないだろう」との見方を示した。
完全に中国からの鋼材輸入をシャットアウトしている米国のほかにも、欧州や韓国も反ダンピング措置を打ち出し中国から鋼材が入らないようにしている。森副会長は「日本だけ裸。非常に危ない状況にある」とし、「政府に対して反ダンピング措置、関税などを考えたほうが良いということで働きかけをしている。守らないと、日本のマーケットがおかしくなる」と強い危機感を示した。
自動車の大量生産に必要な「型式指定」の認証不正問題で日本国内の鋼材需要も影響を受けている。日鉄が現中計を策定した際には、全国の鋼材消費の前提を5400万トンで見ていたが、今期は5100万トンの見通しと下振れている。
森副会長は「構造的に日本の消費が落ちてしまうなら、抜本対策を考えなければならない。今から見極めるという段階」と指摘。高炉を15基から10基に減らすことで国内の構造対策が一巡したとは「言えない。マーケットが想定より悪くなっている」と述べ、需要減が一過性かどうかを見極めた結果、さらなる構造改革に踏み込む可能性もある。
日鉄は今月、2025年3月期(国際会計基準)の連結事業利益を6500億円から前年比19.5%減の7000億円に上方修正したが、足元の為替や原料・鋼材市況動向次第では業績下振れ要因にもなりかねない。
<ウォルズ氏と6月に面談、USスチール買収「応援」>
一方、米USスチールの買収に関しては、今期業績見通しに織り込んでおらず、計画通り年内に成立した場合、25年1―3月期の業績がプラスされることになる。森副会長は「1―3月期に事業利益で300―400億円になる」との見方を示した。
共和党候補のトランプ前大統領は19日、東部ペンシルベニア州で演説し、大統領に返り咲いた場合、日鉄によるUSスチール買収を阻止すると改めて表明した。一方、民主党候補のハリス副大統領は今買収に対する態度を明らかにしていない。
森副会長は、民主党の副大統領候補、ウォルズ・ミネソタ州知事と6月に会ったことを明らかにし「20分から30分、1対1で話をした。ミネソタへの投資をものすごく歓迎してくれるし、日米関係にも非常に関心の強い人」と評し、副大統領候補になる前ではあったものの、USスチール買収についても「応援すると言ってくれた」という。
森氏は、来月も訪米し、年内の買収完了に向けて引き続き働きかけを行っていく。
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