「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.90 ★ 中国で住宅ローンの「繰り上げ返済」が増える事情 2023年末の個人向け住宅ローン残高1.6%減少 

2024年02月15日 | 日記

東洋経済オンライン (財新 Biz&Tech)

 2024年2月14日

中国では金利が高めに推移した2017~2021年に契約した住宅ローンを繰り上げ返済する借り手が増えているとみられる(写真はイメージ)

かつては右肩上がりで増加していた中国の個人向け住宅ローンの残高が、2023年に減少に転じたことがわかった。背景にはローンの借り手による繰り上げ返済の増加があるとみられている。

中国人民銀行(中央銀行)が1月26日に発表したデータによれば、2023年末時点の残高は38兆1700億元(約794兆円)と前年末に比べて1.6%減少した。

人民銀行の統計を遡ると、個人向け住宅ローンの残高は2004年から2021年末までのすべての四半期で、前年同期比2桁台の高い伸び率を維持していた。

広東省の減少幅は2%超え

しかし2022年に入ると、不動産市況の悪化を受けて住宅ローン残高の伸び率はみるみる低下した。2022年1~3月期の伸び率は前年同期比8.9%と1桁台に落ち込み、同年10〜12月期には同1.2%まで急減速、翌2023年の4~6月期にはついに0.7%のマイナスに転じていた。

中国国内でも住宅ローン残高の減少が顕著なのが、南部の広東省だ。経済発展の水準が高い同省は、中国全土の個人向け住宅ローン残高の14%弱を占めている。

人民銀行広東省分行(支店に相当)の調査統計部門の責任者を務める汪義栄氏は1月25日の記者会見で、広東省の2023年末時点の個人向け住宅ローン残高が5兆3000億元(約110兆円)となり、前年末より2.5%減少したことを明らかにした。

広東省の住宅ローン残高減少について、汪氏は「主に繰り上げ返済の影響によるものだ」と説明した。同省の金融機関による2023年の個人向け住宅ローンの実行額は前年より1151億元(約2兆3943億円)増加した一方、繰り上げ返済が前年より2784億元(約5兆7913億円)も増えたという。

住宅ローン残高減少の底流には、不動産不況の長期化による住宅価格の上昇期待の低下がある(写真は広東省深圳市の高層マンション群)

繰り上げ返済増加の背景にあるのは、過去1年余りの間に生じた中国の経済環境の変化だ。2022年以降、不動産市況の低迷が続いて住宅価格の上昇期待が低下。さらにコロナ禍の影響も加わり、(個人が住宅ローンを借り入れて行う)住宅投資のリスクが大幅に高まった。

理財商品への不安も一因か

それだけではない。不動産市況の悪化は、中国の個人投資家にとって余剰資金の主要な投資先の1つになっていた理財商品(高利回りの資産運用商品)の運用難をもたらした。一部の理財商品が償還不能に陥るケースも生じ、金融機関は販売する理財商品の元本・利回り保証を停止した。

そのため、(リスクの高い)理財商品に代わる余剰資金の受け皿を探す個人投資家の一部が、住宅ローンの繰り上げ返済に動いているもようだ。住宅ローンの支払金利と余剰資金の運用利回りを比較し、繰り上げ返済を選ぶほうが合理的と判断する個人投資家が増えているとみられる。

(財新記者:王婧)
※原文の配信は1月26日

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No.89 ★ 哀れ!「中国経済は健全にして安定なる発展」と習近平政権に媚びまくったが「ゼロ回答」「軽侮」を喰らった日本財界大訪中団

2024年02月15日 | 日記

現代ビジネス (石 平:評論家)

2024年2月14日

きれいに無視されました

写真提供 現代ビジネス

 

 1月23日から26日、経団連の十倉雅和会長、日本商工会義所の小林健会頭を最高顧問とする日本の経済訪中団(日中経済協会合同訪中代表団)が4年ぶりに北京を訪問した。訪中団は24日、中国国家発展改革委員会副主任や商務大臣などの中国政府高官と相次いで会談。そして25日、李強首相との会談を実現した。

 日本国内の報道によると、中国国家発展改革委員会・商務省幹部との会談では、訪中団は「反スパイ法」運用の「改善」を求め、日本人のビザなし渡航の再開も中国側に求めたという。そして李首相との会談では、訪中団が日本産海産物の禁輸解除を求める提言書を提出したと報じられている。

 「反スパイ法の運用改善」、「ビザなし渡航の再開」、そして「日本産海産物の禁輸解除」という三点セットが、訪中にあたっての日本側の基本的要求であることが分かる。この経済訪中団は、まさにこの三つの要求を中国政府に聞き入れてくれるために北京を訪れたはずである。

 しかし、日本の訪中団からのこの三つの要求に対し、中国政府の示した反応は全くの無反応、つまり「ゼロ回答」であった。訪中団に関する中国側の公式発表と報道では、日本側が前述の諸要求を出した事実に対する言及すら全くない。つまり日本側の要求が完全に無視されて「なかった」ことにされている。

ゼロ回答に「熱意を感じる」?

 もちろん日本側の報道を見ても、中国政府が日本側の要求に一切応じていなかったことは分かる。例えば1月25日に配信された共同通信の関連記事は、そのタイトルがズバリ、「経済界訪中団、李強首相に提言書、水産物禁輸解除、明確回答なし」である。

 そして1月26日に流されたテレ朝ニュースは、「北京を訪れている経済界の代表団は、李強首相のほか商務相らと会談しました。日本側からは、ビザなし渡航の再開や食品輸入規制の緩和を求めるとともに反スパイ法への懸念などを伝えましたが、具体的な進展はなかった」と伝えている。

 つまり日本の経済訪中団は、三つの要求をぶら下げて北京へ乗り込んだのに、中国政府からは「ゼロ回答」を食らっただけで成果を何一つ挙げられなかった。

 にもかかわらず経団連の十倉会長は北京で開かれた「総括会見」で、「中国側の日本に対する期待や日中経済関係の一層の緊密化に向けた熱意を感じることができた」と語っている。結局、実体のない「熱意」を勝手に感じたことは、日本の経済訪中団が手に入れた唯一の「成果」だったのである。

人民日報での露骨な軽視

 その一方、日本の経済団体トップが揃っての訪中に対し、中国政府は全体的に冷ややかな態度であった。それは、25日の李強首相と訪中団会談に対する共産党機関紙の人民日報の取り扱いにははっきりと現れている。

 李首相と外国からの賓客との会談記事は普段、人民日報の一面に載せられることは多いが、26日の人民日報は何と、李首相と日本訪中団との会談記事を三面に掲載した。文字通りの「三面記事扱い」である。

  実は同じ25日、李首相の部下にあたる丁薛祥筆頭副首相が世界銀行の執行理事らと北京で会談したが、この会談の記事は26日の人民日報で一面掲載、三面掲載の李首相会談記事と大差を付けられている。

 慣例と格式から大きく外れたこのような取り扱いは明らかに、日本の経済訪中団に対する中国政府の軽視・軽蔑の現れであろうが、その一方、人民日報の関連記事は文中、李首相との会談における「日本経済三団体責任者」の発言をこう伝えている。「中国は世界経済の発展を牽引する重要な原動力。中国経済は健全にして安定なる発展を保っており、日本の経済界は大変鼓舞されている」と。

ここまで尻尾を振ったのに

 今の時点で、「中国経済は健全にして安定なる発展を保っている」云々とは、まさに事実無視の戯言というしかないが、それも結局、訪中団の責任者たちが自国の経済難局を認めたくない中国政府に迎合して無責任なお世辞言葉を発しただけのことであろう。

 実は習近平政権は昨年年末から、究極の「経済振興策」として「中国経済光明論を大いに唱えよう」とする宣伝工作を進め始めた。上述の経済訪中団トップたちの発言は、捉えるようによってはまさに北京政府の宣伝工作に加担したものであろうと解釈することもできよう。

 言ってみれば日本の経済団体の最高幹部たちは北京へ行って、中国政府に馬鹿にされて要求を一蹴されながらも、習近平政権の幇間役を喜んで務め、媚びの限りを尽くして帰ってきている。まさに馬鹿馬鹿しくて情けない限りである。

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