東洋経済オンライン (財新 Biz&Tech)
2024年2月14日
中国では金利が高めに推移した2017~2021年に契約した住宅ローンを繰り上げ返済する借り手が増えているとみられる(写真はイメージ)
かつては右肩上がりで増加していた中国の個人向け住宅ローンの残高が、2023年に減少に転じたことがわかった。背景にはローンの借り手による繰り上げ返済の増加があるとみられている。
中国人民銀行(中央銀行)が1月26日に発表したデータによれば、2023年末時点の残高は38兆1700億元(約794兆円)と前年末に比べて1.6%減少した。
人民銀行の統計を遡ると、個人向け住宅ローンの残高は2004年から2021年末までのすべての四半期で、前年同期比2桁台の高い伸び率を維持していた。
広東省の減少幅は2%超え
しかし2022年に入ると、不動産市況の悪化を受けて住宅ローン残高の伸び率はみるみる低下した。2022年1~3月期の伸び率は前年同期比8.9%と1桁台に落ち込み、同年10〜12月期には同1.2%まで急減速、翌2023年の4~6月期にはついに0.7%のマイナスに転じていた。
中国国内でも住宅ローン残高の減少が顕著なのが、南部の広東省だ。経済発展の水準が高い同省は、中国全土の個人向け住宅ローン残高の14%弱を占めている。
人民銀行広東省分行(支店に相当)の調査統計部門の責任者を務める汪義栄氏は1月25日の記者会見で、広東省の2023年末時点の個人向け住宅ローン残高が5兆3000億元(約110兆円)となり、前年末より2.5%減少したことを明らかにした。
広東省の住宅ローン残高減少について、汪氏は「主に繰り上げ返済の影響によるものだ」と説明した。同省の金融機関による2023年の個人向け住宅ローンの実行額は前年より1151億元(約2兆3943億円)増加した一方、繰り上げ返済が前年より2784億元(約5兆7913億円)も増えたという。
住宅ローン残高減少の底流には、不動産不況の長期化による住宅価格の上昇期待の低下がある(写真は広東省深圳市の高層マンション群)
繰り上げ返済増加の背景にあるのは、過去1年余りの間に生じた中国の経済環境の変化だ。2022年以降、不動産市況の低迷が続いて住宅価格の上昇期待が低下。さらにコロナ禍の影響も加わり、(個人が住宅ローンを借り入れて行う)住宅投資のリスクが大幅に高まった。
理財商品への不安も一因か
それだけではない。不動産市況の悪化は、中国の個人投資家にとって余剰資金の主要な投資先の1つになっていた理財商品(高利回りの資産運用商品)の運用難をもたらした。一部の理財商品が償還不能に陥るケースも生じ、金融機関は販売する理財商品の元本・利回り保証を停止した。
そのため、(リスクの高い)理財商品に代わる余剰資金の受け皿を探す個人投資家の一部が、住宅ローンの繰り上げ返済に動いているもようだ。住宅ローンの支払金利と余剰資金の運用利回りを比較し、繰り上げ返済を選ぶほうが合理的と判断する個人投資家が増えているとみられる。
(財新記者:王婧)
※原文の配信は1月26日
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