「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.71 ★ 中国「未来産業」発展計画を発表、重点6分野で育成強化

2024年02月07日 | 日記

JETRO(北京事務所)

2024年02月07日

中国の工業情報化部、科学技術部など7部門は1月29日、「未来産業の革新的発展の推進に関する実施意見」(工信部聯科[2024]12号)を発表した。意見では、未来産業(注)の発展に係る2025年までと2027年までの2つの目標を掲げたほか、重点6分野として製造、情報、材料、エネルギー、空間、ヘルスケアを挙げ、技術イノベーションと産業育成などを推進する方針を明確にした。

目標としては、2025年までに未来産業の育成や技術革新を進め、セキュリティー面のガバナンスなどを発展させ、同産業の規模を安定的に拡大し、一部の分野を国際的な先進水準に高めると定めた。また、2027 年までには未来産業の総合的な実力を顕著に高め、一部の分野では世界をリードすることを目指している。

目標の実現に向けては、技術供給の強化、代表的な製品の育成、ハイレベルな一群の企業集団の育成と特色ある産業チェーンの構築、技術の応用シーンの拡大、支援メカニズムの最適化という5つの方面で取り組みを進めるほか、金融支援や国際協力を強化するとした。

技術供給の強化に関しては、重点6分野(添付資料表1参照)の技術イノベーションに力を入れると明記したほか、代表的な製品の育成に関しては、ヒト型ロボット、量子コンピュータ、新型ディスプレーなど10種類の製品(添付資料表2参照)を列挙している。

今回の意見の発表について、科学技術部のプロジェクトに従事する専門家の周迪氏は「人工知能(AI)や量子コンピューティングなどの分野で高い研究開発能力を持つハイテク企業、スマート製造や新エネルギーなどの分野で優位性を持つ大手企業、新材料やバイオテクノロジーなどに関わる革新的能力を持つ中小企業の3種類の企業がメリットを受ける可能性がある」と分析した。

一方、北京市社会科学院の王鵬研究員は「企業の立場からみると、将来を見据えた技術には高いリスクが伴い、投資に対する期待収益が得られない可能性があり、市場の先行きの不透明性と激しい競争もリスクにつながる。また、先端技術や製品が市場に受け入れられるには時間と労力が必要で、大規模な資金投入とリスク管理も政策実施に関わる課題の1つ」との見方を示した(「澎湃新聞」1月30日)。

(注)意見によると、未来産業とは、最先端の技術によって牽引され、現在、萌芽段階または産業化の初期段階にあり、戦略性が高く、リードする力が強く、破壊的な影響力を持ち、不確実性が大きく、将来性のある新興産業とされている。

(趙薇)

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No.70 ★ 中国当局が証券業界に追い証猶予指導へ、株式市場安定化策の一環

2024年02月07日 | 日記

ロイター編集

2024年2月6日

 中国証券監督管理委員会(証監会)は2月5日、株式市場の値下がり圧力を和らげるため、証券業界に対して信用取引を行っている投資家への証拠金の追加差し入れ請求(マージンコール、追い証)までより時間的な猶予を持たせるよう指導すると表明した。2022年10月、上海で撮影(2024年 ロイター/Aly Song)

[北京 5日 ロイター] - 中国証券監督管理委員会(証監会)は5日、株式市場の値下がり圧力を和らげるため、証券業界に対して信用取引を行っている投資家への証拠金の追加差し入れ請求(マージンコール、追い証)までより時間的な猶予を持たせるよう指導すると表明した。

中国では足元の株安によって売りが売りを招く事態が起きることへの懸念が高まっており、当局が市場を安定させる姿勢を強く打ち出している。

証監会によると、1月に発生した強制的な売りの総額は約9億元(1億2503万ドル)と、なおリスクは制御可能な範囲にとどまっており、信用取引を確実に落ち着かせていくという。

また証監会は、悪質な意図を持った空売りや相場操縦などを徹底的に取り締まる方針も改めて明らかにしている。

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No.69 ★ IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」

2024年02月07日 | 日記

現代ビジネス (町田 徹:経済ジャーナリスト)

2024年2月6日

深刻な下振れリスク

photo by gettyimages

 昨年(2023年)の5.4%から転げ落ちるように減速して、28年には3.4%に落ち込む見通しだ――。

  国際通貨制度を安定させて世界経済の成長を促すことが目的の国際機関・国際通貨基金(IMF)は先週金曜日(2月2日)、IMF協定の4条に基づく中国との年次協議に関する報告書を公表し、その中で、中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。

 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである。

 IMFが描いた中国経済の転落のシナリオと現状をみておきたい。  冒頭でも記したように、本コラムで取り上げる4条協議は、IMF協定の第4条に規定されているルールだ。  経済や金融不安の火種がないか点検するために、通常は年に1回、IMFが、スタッフを加盟各国に派遣して、当該国の経済と金融の情勢をモニタリングすることになっている。その結果を当該国と協議のうえで、採るべき政策を助言するという手続きなのだ。

 ただ、協議結果は、スタッフによって4条協議報告書としてまとめられ、IMF理事会に提出される。この理事会で討議され、理事会の公式見解となったものが、当該国の政府に送られるだけでなく、IMFのホームページでもプレスリリースされる仕組みなのだ。

地政学的なリスクも

 今回の対中・4条協議報告書はなかなか衝撃的だ。興味のある人は一読してほしい。

 今回の要点をまとめておくと、IMFは、去年の中国経済のパフォーマンスについて「新型コロナウイルス感染症危機から脱却して回復軌道を辿り、実質GDPは国家目標の5.4%成長をほぼ達成した」と一定の評価を与えた。その回復の原動力は、「主に内需、特に民間消費であり、金融緩和や法人と家計に対する減税、災害に伴う財政の救済策なども後押しした」と説明している。

  半面、今年(2024年)以降の先行きについては、「不確実性が高い。既存の不均衡と関連する脆弱性があり、特に注意が必要だ」と強く警鐘を鳴らした。リスク要因としては、「不動産セクターでの予想以上の収縮が、さらなる民間需要の減少や、地方政府の財政のひっ迫」などを招きかねないと強調した。

中国の高齢化のほか、「(米中摩擦に伴う)外需の低迷や、(台湾海峡などの)地政学的な緊張の高まりなども大きな下方リスクをもたらす」とも記したのである。

 こうした前提に基づき、不動産セクターの債権処理の加速によって、リスクの現実化を回避したうえで、民間の設備投資などの刺激に繋げていくよう迫っている。  ちなみに、4条協議報告書に記された試算によると、中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている。

「失われた30年」を彷彿

photo by gettyimages

 今回の対中・4条協議報告は、既視感のあるシナリオだ。1989年末の証券・不動産バブル崩壊に伴って膨れ上がった銀行の不良債権の処理に手間取り、「失われた30年」などと呼ばれた長い経済不振を経験してきた日本の経済史を彷彿させるからだ。

 とはいえ、あのIMFが、このタイミングで、中国経済が依然として歴史的な窮地を抜け出していないという危機感を露わにしたことも見逃せない。

 ここで、視点を、中国の不動産デベロッパーの現状に移してみよう。外電によると、香港の高等法院(高裁)は先月(1月)29日、経営再建中の不動産デベロッパー大手「中国恒大集団」に対し、実質的な法的整理命令に当たる「清算命令」を発出した。

 振り返れば、中国恒大の経営破綻が浮き彫りになったのは2021年9月のことだ。経営が自ら「未曽有の危機にある」と破綻寸前に陥っていることを認めたのを手始めに、同年末には広東省が監視チームを会社に送ったり、同じ時期に米ドル建て債の利息を支払えず、格付け会社が相次いで「部分的債務不履行」(デフォルト)に陥ったと認定したりもした。

中国政府が経営への全面的な関与を打ち出して破綻そのものは回避してきたものの、膨大な債務の整理は遅々として進まず、2年4カ月ほどの月日は無駄に流れた。その間に、事態は深刻さ増してきたのだ。

 香港高等法院に「清算命令」の発出を求めたのも、債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。  今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。

 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある。

 しかし、恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある。

「不良債権処理に100兆円」

 以前にも本コラムで指摘したが、中国にとって厄介なのは、恒大集団が氷山の一角に過ぎないことだ。

 不動産デベロッパー各社の負債額は、文字通り、天文学的なレベルに膨らんでいる。いずれも2022年末の数字だが、最も負債の多い恒大が2兆4374億元(約48兆7480億円)を抱えて、債務超過に喘いでいる。

以下、主な大手デベロッパーの負債額は、多い順に、碧桂園が1兆4349元(約28兆6980億円)、万科企業が1兆3521元(約27兆0420億円)、緑地控股が1兆2010元(約24兆0200億円)、保利発展控股集団が1兆1483元(約22兆9660億円)といった具合だ。

 バブル崩壊後、日本の銀行は2005年3月期までの12年間に、不良債権処理に実に96兆4199億円を費やした。俗に、「不良債権処理に100兆円」と言われた所以だ。

 これに対し、中国の不動産デベロッパーは大手6社だけで150兆円を超す負債を抱えている。全体でどれぐらいの負債が不良債権化しているのかは、信頼に足るデータがなお提供されておらず、見当もつかないのが現状だ。  

ただ、6社では、恒大集団に続き、上海市政府系の緑地控股集団が昨年7月、碧桂園が昨年10月にそれぞれ、米ドル建て債で債務不履行を引き起こした。 いずれにせよ、中国の不動産デベロッパー大手が揃って大規模な債務整理を余儀なくされていることは間違いない。

 あわせて、決して見逃すことができないのは、不動産デベロッパーに巨額の資金のつなぎ融資をしてきた金融セクター、特にシャドウバンキング(影の銀行)の経営への影響だ。シャドウバンキングが、短期金融商品の体裁で富裕層や法人顧客から集めた資金の利払いや償還が滞り、消費や投資の足を引っ張る信用収縮を招いている。  

また、不動産デベロッパーの不振が地方政府の財政を圧迫してきた問題も深刻だ。というのは、お国柄だが、土地の私有を認めていない中国では、地方政府にとって土地使用権の売却収入が税収と並ぶ収入の柱になってきたからだ。この財政ひっ迫は、地方のインフラ投資資金を細らせるほか、行政サービスの低下や地方振興策の停滞に繋がっている。

 一連の惨状を見れば、IMFが今回の対中・4条協議報告書で迫った不動産デベロッパーセクターに対する「断固たる政策行動」が今後の中国経済の行方を左右するポイントであることは明らかだ。

 中国の習近平体制は当初、拡大した貧富の格差を是正すると主張、銀行による不動産デベロッパー向け融資規制を強化するなど中国版バブル潰しに動いた。  ところが、事態が深刻化すると、一転して不動産デベロッパーに対する政府の管理を強め、延命に走り、結果として抜本的な債務整理の断行を阻んできた。

 こうした混乱の背景には、断固たる債務整理が短期的に大きく景気の足を引っ張る懸念があるうえ、居住目的で住宅用不動産を購入した消費者が物件の引き渡しを受けられない事態が頻発すれば、共産党の統治に対する国民の反発が高まりかねないとの判断があるという。

 しかし、IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している。

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No.68 ★ 中国に関する国際金融界は嘘と欺瞞だらけ デフレ不況・マイナス成長も…西側の銀行は北京当局発表に疑義をはさまず

2024年02月07日 | 日記

夕刊フジ(田村秀男:産経新聞特別記者)

2024年2月6日

【お金は知っている】 国際金融界というのは、中国に関する限りは虚偽と欺瞞(ぎまん)だらけである。 昨年の中国経済は本欄前週で報じたようにデフレ不況、マイナス成長に陥った。

 ところが西側の銀行、証券の国際金融資本は5・2%のプラス成長とする北京当局発表に疑義をはさまない。さりとて真実から目をそらしていては、金融機関としての信用を失ってしまう。

固より、中国市場が縮小し、衰退し続けるのは国際金融資本にとっては重大な打撃になる。そこで、どうやって中国の経済危機を緩和し、再浮上させられるか、秘策を練る。国際金融資本のアナリストたちは中国が依然として巨大な成長市場だと喧伝(けんでん)する習近平政権のお先棒を担ぐのだ。

図らずもだろうが、この思惑が最近あらわになった。1月26日付ブルームバーグ電は「中国は低迷する経済と株式市場を回復させるために、円に対する人民元安を狙うべきだと、シティグループが提案した」と報じた。

米シティグループ・グローバル・マーケッツのアジア取引戦略責任者はブルームバーグテレビジョンで、「もし中国が現在の水準より8%から12%安い1元=18―19円にすることを目指せば、(中略)中国はリフレ、日本はデフレとなり、皆がハッピーになれる」と論じたという。

グラフは人民元の対円、ドル相場の推移である。元は円とドルの双方に対してウクライナ戦争勃発の2022年2月までは上昇を続けたが、同3月以降はドルに対しては下落プロセスに入ったものの、円に対しては1元=20円前後の高水準で推移するようになった。2021年末には不動産市況下落が本格化し、ウクライナ戦争開始後からはロシアに加担する習政権が西側の金融制裁を食らうとの恐れが生じた。

不動産バブル崩壊と政治的リスクの双方が重なった結果、外国の対中証券投資が急減し、続いて製造業の対中直接投資減にもつながった。

中国市場からの外国資本引き揚げとともに元が売られ、ドルが買われる。元の対ドル安はさらなる資本流出を招く。他方で、マイナス金利政策が続く日本の円は元以上の速度でドルに対して下落してきた。 米国の機関投資家たちは中国株を売って、円安で割安になった日本株買いに熱中する。

他方で、日本と中国は製造業ではライバルの関係にあり、元の対円相場高は競争力で日本優位、中国勢力後退につながる。中国経済の没落を避けるためには元の対円安が必要だとシティグループは中国にアドバイスするわけである。それは中国投資で荒稼ぎを狙ってきた米ウォール街の本音そのものなのだ。

元安・円高シナリオは、日銀がマイナス金利を止め、利上げに転じ、中国が追加利下げすれば成り立ちそうだ。だが、中国経済衰退は党主導の経済モデルの破綻に根ざしている

(詳細は、1日発売の拙著「中国経済衰退の真実」《産経新聞出版》)。習政権の強権を前提にした国際金融資本主導の中国経済回生策は幻想でしかないだろうに。 

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