日刊ゲンダイ (長谷川高:不動産アナリスト)
2024年2月24日
チャイナマネーは東京都心部のマンションにも大量に流入(C) =共同
香港では、イギリスから中国へ返還される前から、香港脱出を夢見る若者は少なくありませんでした。返還前にウォン・カーウァイ監督が撮った名作「恋する惑星」や「欲望の翼」には、香港を脱出し、米国へ移住しようとする人物が度々登場します。当時から、香港の将来に希望がもてない者が大勢いたのでしょう。
さて、現代の香港はどうなったでしょうか。2047年までは「1国2制度」を維持し、社会主義政策を実施しないことになっていましたが、自由は失われようとしています。やはり、ある程度、資産を持つ人たちは、香港脱出を試みています。自らが脱出できない場合は、まず子供を海外の大学へ留学させて、卒業後も、その国で働かせてグリーンカードを取得させようとしています。
いまでは、中国本土でも同じことを考える国民が大勢います。米国とメキシコの国境を越えてやって来る中国人不法移民が急増しています。中国国内で経済的に困窮した者が「自由」と「生活の安定」を求めて国境を越えて来ているのでしょう。
と同時に、この10年、裕福な中国人は急ピッチで資産を海外へ逃がしています。東京都心部のマンションなどにもチャイナマネーが大量に流入しています。ある司法書士によると、都心部のある大型分譲マンションの約20%が中国系の名称の名義だったそうです。20%という割合は決して少なくありません。これまでチャイナマネーが日本の不動産価格上昇に寄与してきたのは、間違いないでしょう。
直近の問題としては、中国経済が急速に悪化しはじめていることです。とくに中国の不動産不況は深刻です。はたして、中国経済の悪化によって、日本に流れていたチャイナマネーはどうなるのでしょうか。
ポイントは、彼らの不動産購入の特徴は、投資目的だということです。自分たちが住むわけではない。よって価格の値上がりが続くか、現状を維持している分には保有を続けるはずです。更に、中国国内の経済が悪化するほど、日本に流れてくるかもしれません。
しかし、一転、日本の不動産が下落基調となれば、迷わず売り一色となるでしょう。住むために実需として購入している日本人とは、事情が大きく異なります。いったん下落基調になった場合、彼らの売り圧力は、相当強いものとなり、日本の不動産マーケットに大きな影響を与える恐れがあります。「自分が逃げ出すことができないならば、せめても命の次に大事な資産を外国へ逃がそう」と考える中国人にとって、逃避先(投資先)は日本だけではないのですから。
または、中国国内のビジネスが経済的不況により行き詰まり、資金需要が発生した場合、日本で保有する不動産を売却するケースも出てくるかもしれません。今後も日本の不動産価格はチャイナマネーの影響を少なからず受けることになるでしょう。
長谷川高
不動産アナリスト。長谷川不動産経済社代表。著書「家を買いたくなったら~令和版」「家を借りたくなったら」(WAVE出版)は初版から累計10万部を突破。新刊「不動産2.0」(イースト・プレス)で人口減少、供給過剰で大転換期を迎えるマーケットを制するための不動産の必須知識を伝えている。
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