●小沢疑獄vsユングの「シャドウ論」
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大筋を言えば、こうだ。
(1)どこから出たお金か知らないが、小沢氏は、
4億円で、秘書に土地を買わせた。
(2)うち5000万円については、その2日前、
どこかの土建業者から、裏金(=ワイロ)として
小沢氏が受け取ったものらしい。(ここが重要。)
(3)その大金の出所を隠すため(?)、そのあと
小沢氏は、銀行から4億円を借りた。
(あくまでも、「そのあと」である。)
つまり銀行から小沢氏が個人名義で借りたお金で、
土地を買ったことにしようとした。
(4)秘書らは、あれこれ日付をごまかすための、
小細工を重ねた。
(5)陸山会は、4億円を小沢氏に返却し、結局、
小沢氏は4億円を取り戻した(?)。
これに対して小沢幹事長は、「検察と全面対決!」と、
息巻いた。
民主党議員たちは、「ウォー」と大声をあげて、
それに呼応した(某県・民主党大会にて)。
問題は、小沢氏がもっていた4億円。
そのお金は、どこから出てきたのか?
また銀行から借りた4億円は、どこへ消えたのか?
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●毎日新聞
毎日新聞(1-17)は、つぎのように伝える。
『・・・これまでの特捜部の調べによると、陸山会の当時の事務担当者で小沢氏の私設秘書だった石川議員は04年10月上旬、小沢氏から現金4億円を受領。東京都世田谷区の土地を約3億5200万円で購入したが、同年の収支報告書に記載しなかった。当時の会計責任者で小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規容疑者(48)と、石川議員の後任の元私設秘書、池田光智容疑者(32)は、07年4月に小沢氏に4億円を返却しながら記載しなかったとされる。
最初の4億円が渡された直後、陸山会は関係政治団体などから集めた4億円で定期預金を組み、これを担保に小沢氏名義で金融機関から融資を受け、小沢氏からの借入金として収支報告書に記載するなど複雑な会計処理を行っている。石川議員は「小沢氏の手持ち資金を隠すためだった」などと供述。特捜部は複雑な会計処理や虚偽記載への認識について、小沢氏に問いただしたい意向だ』と。
●「手持ち資金を隠すためだった」
4億円という大金は、どこからどのようにして出てきたのか?
表向きは、「複雑な会計処理や虚偽記載への認識について、小沢氏に問いただしたい意向」となっているが、検察側の目的は、ズバリ、収賄罪での立件。
またそこまで行かないと、国民も納得しないだろう。
が、小沢氏があがけばあがくほど、小沢氏は墓穴を掘るだけ。
小沢氏の一連の行為、態度は見苦しいというより、醜悪ですらある。
すでに石川議員は、「小沢氏の手持ち資金を隠すためだった」などと供述している。
まともなお金だったら、隠す必要など、ない。
●消えた4億円
で、もう一度、金の流れについて、おさらいをしておきたい。
当初、陸山会は、小沢氏から渡された4億円(これを4億円Aとする)で、土地を買った。
そのあと、小沢氏は、4億円(これを4億円Bとする)を銀行から融資を受けている。
陸山会は、「07年4月に、陸山会は、小澤氏に4億円(これを4億円Cとする)を返却している」(毎日新聞)。
小沢氏が自分の資金で、自分の土地を買ったというのであれば、何も問題はない。
が、陸山会は、小沢氏から4億円Aを渡され、それで土地を買った。
そのあと小沢氏は、小沢氏名義で、銀行から4億円Bを借りた。
で、最終的に、陸山会は、4億円Cを小沢氏に返却している。
小沢氏は、その4億円Cを、銀行に返す。
となると、銀行から借りた4億円Bは、どこに、どのように消えたのか、ということになる。
・・・とまあ、こんな回りくどい言い方は、やめよう。
4億円Bは、マネーロンダリンされた形で、小沢氏の懐(ふところ)に戻った。
今回の事件が発覚していなければ、何かのことで、「4億円はどこから?」と聞かれたら、小沢氏は、あの笑みを浮かべて、こう答えたであろう。
「銀行から借りたもの」と。
つまりこれが今回の、一連の小沢疑獄の構造ということになる。
●シャドウ論
そこで登場するのが、「シャドウ論」(ユング)。
「なぜ、シャドウ論?」と驚く人も多いかと思う。
が、もし私がここで、「小沢疑獄の構造ということになる」というだけで、ペンをおいてしまったら、ただの政治評論になってしまう。
が、これだけではおもしろくない。
別の角度から、つまり私の専門分野から、掘り下げて、この問題を考えてみたい。
それが、「シャドウ論」。
が、この「シャドウ論」については、たびたび書いてきた。
つまり自民党政権というよりは、戦後の金権政治の中で、それを批判しつづけてきたはずの現民主党政権ですら、そのシャドウ(影)を引き継いでしまった。
「シャドウ論」について、以前書いた原稿を、添付する。
これを読めば、人間の心が本来的にもつ欠陥が、理解してもらえると思う。
内容的に、かなり遠回りになるが、そこは許してほしい。
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【シャドウ論】
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●仮面(ペルソナ)
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ペルソナ(仮面)そのものを、職業にしている人たちがいる。
いわゆる「俳優」という人たちが、それである。
で、あくまでも一説だが、あの渥美清という俳優は、本当は気難し屋で、
人と会うのをあまり好まなかったという(某週刊誌)。
自宅のある場所すら、人には教えなかったという(同誌)。
が、その渥美清が、あの『寅さん』を演じていた。
寅さんを演じていた渥美清は、ペルソナ(仮面)をかぶっていたことになる。
といっても、ペルソナ(仮面)が悪いというのではない。
私たちは、例外なく、みな、仮面をかぶって生きている。
私もそうだし、あなたもそうだ。
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●みな、かぶっている
たとえばショッピングセンターで、深々と頭をさげる女子店員を見て、
「人間的にすばらしい人」と思う人は、まずいない。
顔には美しい笑みを浮かべている。
何か苦情を言ったりしても、おだやかな口調で、「すみません。ただ今、
お調べいたします」などと答えたりする。
彼女たちは、営業用のペルソナ(仮面)をかぶって、それをしている。
同じように、教師だって、医師だって、みな、ペルソナ(仮面)を
かぶっている。
最近では、さらにそれが進化(?)した。
インターネットの登場である。
今、あなたは、私が書いたこの文章を読んでいる。
で、あなたはそれを読みながら、「はやし浩司」のイメージを頭の中で
作りあげている。
心理学の世界では、これを「結晶」と呼んでいる。
そのあなたが作りあげているイメージは、どんなものだろうか。
私にはわからない。
それに結晶といっても、その中身は、みなちがう。
ある人は、「林って、理屈っぽい、気難しい男だな」と思うかもしれない。
また別のある人は、「わかりやすい、単純な男だな」と思うかもしれない。
文章を読む人の、そのときの気分によっても、左右される。
映画なら、まだそこに「像」を見ながら、相手のイメージを頭の中で
作りあげることができる。
しかし文章だけだと、それがさらに極端化する。
それがこわい。
●相手の見えない世界
以前にも書いたが、たとえばメールで、「お前はバカだなあ」と書いたとする。
書いた人は、半ば冗談のつもりで、つまり軽い気持ちでそう書いた。
しかし受け取る側は、そうではない。
そのときの気分で、読む。
たとえば何かのことで、その人の心が緊張状態にあったとする。
だから、それを読んで激怒する。
「何だ、バカとは!」となる。
もっとも小説家といわれる人たちは、こうした結晶を逆手に利用しながら、
読者の心を誘導する。
よい例が、スリラー小説ということになる。
恋愛小説でもよい。
たとえば「A子は、みながうらやむほどの、色白の美人であった」と書いてあったとする。
それぞれの人は、それぞれの美人を空想する。
その美人の姿は、それぞれの人によって、みなちがう。
●現実
が、ここで重要なことは、ペルソナ(仮面)は、ペルソナ(仮面)として、
(現実)とは、しっかりと切り離すこと。
たとえば学生時代、私にとっては、「ベン・ハー」イコール、
「チャールトン・ヘストン」であり、「チャールトン・ヘストン」イコール、
「ベン・ハー」であった。
私には区別がつかなかった。
しかしこうした現象は、何も私だけに起きた特殊なものではない。
映画ドラマの中の主人公を、(現実の人)と思いこんでしまう現象は、
よく見られる。
しかも若い人たちだけではない。
40歳前後の女性ですら、それが区別できなくて、韓国の俳優を追いかけたり
する。
が、相手を見るときはもちろんのこと、自分自身に対してもである。
ペルソナ(仮面)と(現実)は切り離す。
とくに、自分がかぶっているペルソナ(仮面)には、警戒したほうがよい。
この操作を誤ると、自分で自分がわからなくなってしまう。
欧米では、牧師に、そのタイプの人が多いと言われている。
みなの前で、神の言葉を語っているうちに、自分自身が(現実)から遊離してしまい、
自分のことを(神)と思いこんでしまう。
が、それだけではすまない。
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