ぼんさい塾

ぼんさいノートと補遺に関する素材や注釈です.ミスが多いので初稿から1週間を経た重要な修正のみ最終更新日を残しています.

離散フーリエ変換 (3)

2012-12-17 21:44:53 | 暮らし
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                              2乗余弦波とそのフーリエ変換

簡単な例として,上図の2乗余弦波の離散フーリエ変換を考えて見ましょう.単位は書きませんが,明記するように指導されている人は時間の単位を[ms],周波数の単位を[kHz]と考えてください.また,N 点の離散フーリエ変換の標本点は区間 [-NT/2, NT/2),[-1/2T, 1/2T) で考えます --- このようにすると偶関数の波形のフーリエ変換が実関数になります.

上記の式と図を対応させると標本化周期は T = 1/8 であることが分かります.(F1 xA)(ν) ≒ 0  ( |ν|>1 ) とみなすと F1 xA の近似的な帯域幅は W = 1 で,帯域外では 1/2 の整数倍のνで厳密に (F1 xA)(ν) = 0 です.

孤立波形 xA のスペクトルを十分に大きい周期の周期関数のフーリエ係数として近似的に計算する場合の式は

    F1(xA * MNT comb) = (F1 xA)・M1/NT comb

で,この式から標本値は正確に求められます.しかし,離散フーリエ変換で使えるのは xA ではなく,これを標本化した xA・MT comb です.T = 1/2 のとき xD(t) = 0.5 δ(t + 0.5) + δ(t + 0.5) + 0.5δ(t - 0.5) ですが,三角波 yA(t) = max(0, 1 - |t|) を標本化しても同じ式になり,(xD * M1/2 sinc)(t) のフーリエ変換は (1 + cos πν)・rect(2ν) です.T を小さくしなければ,時間窓を拡げて周波数軸上の標本点の間隔を狭くしても (1 + cos πν)・rect(2ν) の値を計算しているにすぎません --- この例では“偶々”スペクトルの一つの近似式が元の孤立波と同じ式になっています.一般には次のように考えるといいと思います.

(1) 標本化された信号 xD(t) = Σn x(n)δ(t - nT) が与えられたとき,元の信号は F1 xA = (F1 xD)・M1/T rect = F1(xD * MT sinc) である xA と考える(標本化定理を満足しないものは検討の対象外).
(2) スペクトルを(厳密に帯域制限して)計算するときは時間窓の外では標本点での値が 0 である無限に拡がった波形で考える --- 離散フーリエ変換では標本点での値しか考えないので無関係.式で書くと (F1 xD)・M1/T rect = F1(xD * MT sinc)
(3) 孤立波形のようにスペクトルが無限に拡がっている場合は適当な標本化周波数を定めて帯域内の成分を計算する.