このところの雨続きで秋の気配が色濃くなってきました。気がつくとあれほど賑やかに騒ぎ立てていた蝉たちの声も物静かになっています。
秋というとなぜか私は琳派に回帰します。
酒井抱一を好む瀟洒な人がいます。今回のお土産に、二度出かけたという「若冲と江戸絵画」展で求めた美しい若冲の“動植綵絵”をいただきました。
それで、今回は彼女の江戸の琳派に思いを馳せてみました。といっても、取るに足らないささやかな私の知識の範囲でしかありませんが。
琳派という流派は、狩野派や土佐派のように、血脈を中心に、代々、家に継承された流派ではない点が大きな特徴のように思います。
光悦、宗達によって開かれ、光琳によって確立した基盤は、彼らを崇敬する人たちによって任意に継承されてきたもので、だからこそ、現代でも多くの絵を志す人たちに受け容れられ、時代を超えて再生される要素を持ち続けているのだと思います。
姫路のお殿様の次男として江戸藩邸に生れた酒井抱一が、光琳から100年後に、江戸で展開した琳派の作風は、光琳や、宗達のもつ明快さとは一味違った、屈折した表現の繊細さがあります。
有名な「夏秋草図屏風」(重文)の、野分の風に吹きちぎられた枯れ葉、伏し靡く草花が銀彩の中に描かれた画面からは、文学的ともいえる叙情性が漂ってきます。宗達や光琳にはみられないものです。女性好みといってしまうにはまた違う、憂愁の世界です。
一瞬の美を把握する表現には、10代から親しんだ俳諧の素養が働いているのだろうと思います。
この抱一に師事した、鈴木其一の絵が私は好きです。内弟子として、師に傾倒したころの作品から、師の没後には、独自の明快な画風が出現して、色彩も、構図の大胆さも、強靭さを覗かせています。向日葵図など、現代作家の描いた物といっても通用するでしょう。
琳派の、華麗な装飾美の世界は、時空を超えて現代にも様々な継承を見せています。
グラフィックデザインの田中一光、そしてかのエルメスなど海外のデザイン世界にまで。
「許可なく複製、転写を禁じます」となっているものが多いので、採録できるものに制限がありますが、絵葉書や、パンフレットから一部掲載します。
流水に千鳥図 鈴木其一
「若冲と江戸絵画」展は30万を越える入場者で、東京国立博物館での開催が、8月27日で終了。京都展が9月23日から11月5日まで。九州国立博物館は来年、1月1日から3月1日までです。
興味のある方は「弐代目 青い日記帳」のたくさんの画像をご覧ください。
酒井抱一の代表作が復刻され販売へ、4幅セットで
約40万円、バラ売りの1幅で12万円。
桐箱入り、限定20組と。
しかし、どんな購買層か?が気になりますね。
床の間は1間幅の大きさ、南の庭も適度な大きさ、
縁側も幅広の・・・そんな家屋をイメージしてしまう。
床の間には大きな壷と碁盤が置かれている。