「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

時雨

2004年12月19日 | 歌びとたち
 師走とは思えない暖かな晴天つづきの一週間でしたが、昨日は予報が外れて、昼前から気がつくと雨になっていました。
  時雨のあめ間なくな降りそ紅に匂へる山の散らまく惜しも
 万葉集に光明皇后の作として出ている歌です。女性らしいはなやぎを裡に、万葉人らしいおおらかさが好きです。
 いよいよ時雨の季節の到来です。庭の楓も頭のほうは、そそけた黒い枝をむなしく空に伸ばしています。
 蕪村にも時雨を詠んだ好きな句があります。
   老が恋わすれんとすれば時雨哉  (自画賛・手紙)
 この句は句稿の 「秋の哀れ忘れんとすれば初時雨」よりも「切なさ」がいよいよ切なく漂ってきます。ほかにも時雨の句のなかから。
   
   
   遠山に夕日一すぢ時雨哉
   楠の根を静かにぬらす時雨哉