「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

おえべっさん

2004年12月04日 | 塵界茫々
 師走と思えない暖かな日差しに誘われて、何十年ぶりかで若松の恵比寿祭りに参詣してきました。
幼いころ、父に手を引かれてお参りして以来、一、二度は出かけているのですが、若戸大橋が架かって、周辺一帯がまるで様変わりしてからは、一度も参拝したことがないのに思い至り、「おえべっさん」の名で親しまれてきた恵比寿神社へでかけました。参道は大橋の下になり、暮らしの利便と引き換えに失われて行くものの姿をまざまざと見る思いでした。
 かっての日、石炭の積出港として名を知られた若松の「おえべっさん」の祭りは、海の守り神、商売の福の神としてずいぶん賑ったものです。
 かつての日、人波に押されて参拝した境内は、混雑とは縁遠いもので、軒を連ねる露天には、人影もまばらで、夜には賑わいを見せるのかもしれませんが、手持ち無沙汰な店番の人が気の毒なくらいでした。
 街全体も、祭りの日とあってそれなりの装いを凝らしているのが、かえって寂しく、寒々しくさえ感じました。こうした現象は一極集中といわれる大都市周辺部の宿命なのでしょうか。なんとなく、やり場のない腹立たしさをおぼえます。こうして長い伝統行事や、文化が変質し、消滅してゆくのが悲しいのです。