転がり坂

登りつめたわけでもないのに、そろそろ下山したくなってきた。

穴があいた靴下

2014-12-21 05:39:23 | 日記
「靴下の穴を見つめて日向ぼこ」牧童

硝子ごしの日だまりの中で足を投げ出して座っていた。ふと見ると靴下の指先に小さな穴があいていた。さらに大きく広げ、親指を出してみた。可愛いなと60歳を過ぎた僕が微笑んだ。

靴下に穴があくと、穴があいていないほうまでも捨てていた。ある人から、同じ物を何足も買っておけば、片方がダメになってももう片方はまだ使えると教わったので実行することにした。
僕の場合、右だけに穴があき、左足だけが残っていく。それをまた両足にわけてはく。ところが何か変だと思ったら、ワンポイント模様の位置が右と左とでは違うことに気がついた。無地または左右全く同じものを買わなければいけなかったのだ。でも今更、まあいいかとはくことにした。なれてしまえば気にはならない。
こんな暮らしをしていたら、靴下をペアに揃えてはくことがだんだん面倒になり、左右異なった靴下を平気ではくようになった。
人前で靴を脱ぐことはないし、僕がどんな靴下をはいているのかチェックする物好きもいないだろう。
だが待てよ。
このまま何もかもがどうでもよくなってしまいそうで怖い。どうでもよいことが果てしなく広がっていく。どこかで歯止めをかけないとまずいな、と思う。

今日は一対の新しい靴下をはいて行こう。


別れても

2014-12-19 08:38:57 | 都々逸

(ーー;)やっと上まで二人で来たが
すぐに落ちてく観覧車

(ーー;)自分勝手でわがままばかり
まるで子供ね可愛くて

(ーー;)印つけたい私のものと
どこにどうしてつけようか

(ーー;)雇ってちょうだいお金はいらぬ
妻と言う名の仕事なら

(ーー;)二人結ばれ運命だから
しかたないわね別れても

勘を鍛える

2014-12-14 18:47:53 | 日記
「もう一杯飲むか飲まぬか寒・勘・燗」牧童

勘がいい奴と悪い奴がいる。勘がいいか悪いかによって人生変わってしまうはずだ。
残念ながら僕は勘がすこぶる悪い。例えば初デートの時、注文した料理をひつこく勧める。どうも様子が変だから問いかけると、見るだけで吐き気がするくらい嫌いな料理だったりする。勘で彼女が大好きな品をオーダーしていたら、今頃いい仲になっていたはずだ。

毎日、エレベーターに乗る。四基ある。僕は勘を鍛練するため、次に来そうな一基の前に立つ。四分の一の確率なのに当たったことがなく、いつも落胆している。

酒をもう一杯飲んだほうが幸せになれるか、それとも不幸になるのか勘を働かす。勘ははずれ、いつも不幸な二日酔いがやってくる。

現代人は勘が悪くても生きていける。しかし生命体は本来、勘が悪いと生きてはいけない。餌はどこにあるのか、毒か栄養か、敵か味方か、勝つか負けるか……勘で見極めないと生きてはいけない。

テストの山勘、〇か×かの勘を磨くことは悪いことじゃない。本来、教育とは生きていくための勘を養うものなのに、現代教育はむしろ勘を鈍らす訓練を行っている。

勘は天性だけのものではなく、経験によっても創られていく。経験に裏付けされた勘がものをいう。勘が当たる確率を高めるには経験が必要であり、だから部族の長老たちには特等席が設けられるのだ。
「若者たちよ、そうさな、今日のような天気の日はな、新宿ではなく池袋の山に登るといい。そこに美味い女がいるはずだ。それを連れてこい!」
長老の勘によって若者たちも美味しい餌にありつける。腕力を失っても経験による長老たちの勘は若者たちには負けはしないのだ。

経験的勘が働かない老人は生き場所を失う。老後をどうしたら楽しく過ごせるのか、癌になったらどう対処すればいいのか、どうしたら自分らしい死に様が見えてくるのか、勘を働かすしかない。

さて、今度の恋はうまくいきそうな気がするのだが、さてさて、今夜の酒は美味くて身体に良さそうな気がするのだが、さてさてさて僕の勘は当たるのだろうか。

浮気癖

2014-12-12 05:57:24 | 都々逸
(ーー;)ジャズの魅惑に心も揺れて
グラス傾け鳴る氷

(ーー;)故意(恋)で抱かれたわけではないが
いつもよりかは酔いたくて

(ーー;)あっていいわよ七癖ぐらい
だけど許せぬ浮気癖

(ーー;)風に煽られ寄り添う二人
いっそこのまま倒れたら

(ーー;)小銭ばかりね貴方の財布
なのに指輪をくれた人

流されちまえよ

2014-12-03 04:50:35 | 日記
「汚さずにとっとと失せろ冬の糞」牧童

ここ数日、あちこちでトイレ話を楽しんでいる。トイレや便の話は面白い。

汚すつもりはないが、汚れてしまうトイレ。
いつまでも、こそこそと便器にしがみついている糞を見ていると、我が分身であっても非常にむかつく。ましてや憎い亭主の糞など許しがたい存在なのだろう。

流されまいと、いつまでもへばりついていないで、とっとと流されちまったほうが、互いにすっきりするのに、それができない。まるで人生のようだ。

駅などの公衆トイレがきれいになった。トイレットペーパーがある!変な紙を流されると詰まってしまい、かえって経費がかかるらしい。
水も自動的にふんだんに流れてくる。流し忘れ対策なのだろうが、センサーが敏感過ぎて、頼みもしないのに流れ出してくるときがある。

トイレに入ると自動的に電気がつく。出れば消える。ところが、このセンサー、人の動きがないと誰もいないと錯覚して消灯してしまう。長時間滞在派の僕が動かずにいると、勝手に消されてしまう。あわてて便座に座ったまま、電気をつけようと動く様は滑稽である。

古い時代から生きてきた僕は、この当たり前のことが、まだ当たり前だとは思えないでいる。

先日、駅の洋式トイレに入っていたら、突然、水が勢いよく流れ、尻に跳ね返った。汲取り式の頃は、おつりと言って、便をするとポチャリと跳ね返って来た。あの時とは違う不快感が尻を襲った。

その日は女を抱く気になれなかった。

泣き崩れ

2014-12-03 04:02:40 | 都々逸
(ーー;)網を投げれば雑魚ならとれる
網じゃすくえぬ好きな人

(ーー;)チェックアウトの時間が迫る
抱いておくれよもう一度

(ーー;)射程距離よね貴方とわたし
先に撃つのはどちらやら

(ーー;)皇室みたいに手を振り別れ
そっと振り向き泣き崩れ

(ーー;)遥か彼方に消えてく恋を
思い出させる残り香が