転がり坂

登りつめたわけでもないのに、そろそろ下山したくなってきた。

何か変ですが……

2014-04-27 23:03:50 | 日記
「何か変なぜだか変な春の朝」牧童

朝、果物を口に含むとようやく頭が動き始める。水分量や香りなど朝の目覚めにはやはり柑橘系がよく合う。
グレープフルーツもよく食べる。
グレープフルーツを初めて口にしたのは50年ぐらい前だったと思う。
半分に切って砂糖を乗せ、ウィスキーをかけて食べるものだと教わった。当時未成年だった僕にもウィスキーが振る舞われた。いつの間にかグレープフルーツ用のガラス皿や、先がギザギザの専用スプーンまで用意され、すっかり定着していった。

先日、グレープフルーツを食べようと半分に切ったら何かが変だった。いつもと何かが違う。しばらくして、やっと切り方を間違えたことに気づいた。気づくまでの時間がすごくかかった。

深い眠りから目覚めたというのに目が開かない。大きな話し声がする。
いけない!テレビをつけっぱなしで寝てしまったんだ。うるさいな!消そう…あれ?身体が変だ。動かないぜ。あれ、熱い!あっ…あれ?僕、死んだのかな…

そして目覚めない朝がいずれはやってくる。

気になる木

2014-04-24 18:48:04 | 日記
「悩むふりしても会えない明日の春」牧童

知人が肝臓ガンで死んだ。まだ52歳だった。50代の死について同世代で話し合ってみると、僕が思っている以上に50代で多くの方が死んでいるようだ。
僕はもうすぐ62歳。現実としての死が身近に忍び寄ってくるのだろう。
生きることに対し今はそれほど執着、未練はないし、僕が死んだら誰かが困るというわけでもないから、いつ死んでも問題はないが、できれば激痛は避けたい。
緩和ケアはモルヒネ投与による苦痛の軽減に加え、最近はかなりメンタル面を重視しているようだ。現代医療のドクターたちの発言の中に、医者というよりまるで宗教家のような心のあり方を語る人も多くなってきた。現代医療の限界に医師たち自身が気付き、まるで失望しているようだ。日本では牧師などの宗教家の存在が希薄だが、本来は医師は医師としての研鑽を積み、宗教家の領域を侵すべきではないと僕は思っている。

メンタル面での緩和ケアは「気になること」を探り出し、その思いを薄めようとするらしい。
死の宣告を受けた時、僕は気になること、気がかりなことが何も想い浮かんでこないのだ。これって哀しいけど想い浮かんでこない。

突然、あの歌が浮かんできた。

この木なんの木 気になる木
名前も知らない 木ですから
名前も知らない木になるでしょう

この木なんの木 気になる木
見たこともない 木ですから
見たこともない花が咲くでしょう

この歌を歌いながら、にゃっと笑って死ねたらいいな。

顔を見せない女たち

2014-04-19 02:33:55 | 日記
「見せぬ顔マスクの次はサングラス」牧童

風邪や花粉症の季節になるとマスクをした群衆が動き出す。

僕はマスクが嫌いだ。

自分でマスクをするのもマスクをした女も嫌だ。女のパンティは僕の手で脱したくなるが、マスクははずす気にもならない。マスクをした女が目の前にいる。僕は彼女のマスクをはずしキスを…こんなシーンを妄想しただけでも悪寒が走る。

マスクのイメージ
保健所の消毒作業員、医者、歯医者、給食当番……
学生運動のデモ隊、得体のしれない抗議団体……
鼻汁や臭い口臭が染み込んでいるマスク…….

高校生の頃、マスクをした集団が電車に乗り込んできたことがあった。
僕はこの異様な車中に閉じ込められ怖かった。

僕はマスクが嫌いだ。

花粉症の季節が終わりマスクが消えてきてホッとしたら、今度はサングラスの女が増えてくる。目から入る紫外線がシミの原因になるそうだから、シミ対策を兼ねたファションなのだろう。

サングラスですか…
かっこいいというより、悪のイメージが今でも強く残っている。
マスクよりはいいけどね。

と、以前、こんなブログを書いていた時もあった。

僕はマスクが嫌いだった。

しかし最近はマスクをしていることが多い。花粉症が発症したり、介護という仕事上、マスクは欠かせない。洗って何度も使用していた昔のガーゼマスクとは違い、使い捨てで便利だし、呼吸も楽な気がする。睡眠中、口の中が乾いてしまうので、マスクをして寝る習慣を身につけたいのだが、今のところ寝ている間に無意識にはがしてしまう。
サングラスは白内障予防のため、外出時には欠かせなくなった。サングラスをしていると目が疲れない。
還暦を過ぎた今の僕にとって、マスクもサングラスも必需品となってしまった。サングラスとマスクをし、ますます怪しい雰囲気の爺さんとなって、今日も街を歩いている。

ただの木になる

2014-04-10 05:46:52 | 短歌
寒き朝閨の想いが溶け込んだ
湯湯婆の湯で笑顔を洗う

湯湯婆は役目を終えて冷え冷えと
春に消された老婆の骸(むくろ)

閉ざされた地中の闇も春めいて
顔を出しましょ土筆みたいに

口紅の色淡くして待つ君に
風より先に春の口づけ

ありがとう。そうつぶやいたこの女(ひと)も
笑顔のままで旅立つ地獄

雨に濡れ散りゆく花か身を濡らし
咲きゆく花か春はさまざま

止まぬ雨桜みぞれとなりて落つ
ビニール傘に花びらを乗せ

群衆は闇に消え去りスポットは
孤独な我と一本の桜

酒なしの花見の良さがようやくに
わかる齢か桜餅食む

この桜人さえおらぬ公園で
咲いては散ってただの木になる

婆となり

2014-04-06 17:23:09 | 都々逸
(ーー;)桜並木をあなたに会いに
桜吹雪にせく心

(ーー;)ひとり見たときゃ蕾の桜
二人見るときゃ散る桜

(ーー;)人目忍んで絡ます指を
ほどき触れましょ散った花

(ーー;)二人並べば月夜の影に
隠しきれない深い仲

(ーー;)憎みたくなる貴方の浮気
だけど許すわ好きだから

(ーー;)憎むよりかは哀しむほうが
好きな自分になれるから

(ーー;)湯湯婆がわりにあなたに抱かれ
お湯がもれたか濡らす夜具

(ーー;)春がきたのか花粉のせいか
涙とまらぬ閨の中

(ーー;)やがて女は世間の波の
下でもまれて婆となり

(ーー;)婆という字は寄る年波の
下に女が沈みゆく

(ーー;)行火湯湯婆いらない春が
来ても心は寒いまま