転がり坂

登りつめたわけでもないのに、そろそろ下山したくなってきた。

愛が恐怖に

2013-05-17 05:46:51 | 短歌
夕月と恋と闇とを水たまり
映せど所詮浅き夢見し

月おぼろ醜さ詰めた縫ぐるみ
抱いて眠ろう明日は麗らか

哀しみを塗り重ねては剥ぎ磨き
マニキュアみたいな月夜星降る

月冴えて別れ告たる君の肌
閉ざして解けぬ泡雪さえも

十六夜の酔いさめぬまま帰ります
すでに貴女の愛が恐怖に

毒で味付け

2013-05-16 05:33:31 | 短歌
満月を三日月に切るシェフは君
甘い吐息と毒で味付け

愛憎を月まで射抜く弾丸に
込めた貴女の気配と落葉

別れても輝く孤独月ひとつ
ひとり佇み見守るひとり

千回も擦れば果てるようように
月は巡りて千人目の女(ひと)

いつのまに異国訛に侵された
貴女残して月に帰ろう

口の冷たさ

2013-05-14 05:49:53 | 短歌
スーパーで買ったお酒と月餅を
すぐに食いたや満月の夜

対岸の君など好きにならないよ
月満ちるまで泣いていなさい

もう一度更待月に抱く君の
皮膚の全てに僕の指紋を

月欠けてかなわぬ夢に一人泣く
恋も学びも落第人生

なぜ逃げぬ月なき夜に抱く君の
ゾンビみたいな口の冷たさ

地獄の宴

2013-05-12 18:08:46 | 短歌
東雲の月色褪せて隠れゆく
悪いのは君でなく太陽

コップ酒花を浮べて月映す
邪魔する君の温もり香る

愛などと弁解はよせ!脱ぎすてて
月に向かって 己を恥じよ!

あとがきを先に記して挑む恋
新月さえも地獄の宴

微量でも恋の涙はカタルシス
形を変える月を美化して

やはり一人か

2013-05-11 18:31:27 | 短歌

雛祭り朧月夜に並ぶより
重ね合いたい人目気にせず

匿名でいいから君の本性を
月光にさらせ体でしめせ

胸を突く月の怒りに今ここで
死を選ぶならやはり一人か

島々に登らぬ朝日月隠れ
神は何処か何処が地獄

有明の月は歪みて舞う白衣
君は醜さだけをさらして

冷たい自由

2013-05-09 17:42:41 | 短歌
三日月の椅子を目指して奴凧
貴女がつかむ糸切れぬまま

ネクタイと職を奪われ早三年
月見る首は冷たい自由

月さして闇夜に浮ぶ仏の背
振り向かないでもう少しだけ

憎しみを愛だなんてブルームーン
ふたごみたいな二人の縁

僕の骨君にあげよう寝待月
もっと可愛いイヴにおなりよ

甘露を舐める

2013-05-06 23:43:22 | 短歌
名月を眺める窓の台所
猪口に残りし甘露を舐める

脳内の月も朧に惚けゆく
怖がる前に楽しい夢を

凍る月 心を病んでいるんだね
火照るばかりで重ならぬ恋

月だけが漫画みたいに浮かんでる
涙が描く墨絵の中で