転がり坂

登りつめたわけでもないのに、そろそろ下山したくなってきた。

帯解くに

2013-06-30 23:53:38 | 都々逸
雛(ひょっこ)みたいな口説きじゃ落ちぬ
雄叫びひとつで帯解くに

好きと書きたい匿名ならば
人に言えない恋だから

怒らないでよ浮気を責めた
ことがそんなに許せぬか

洗い流そか涙と波で
どうせかなわぬ島の恋

白衣よりかは裸の天使
白い素肌でする看護

叫びのように

2013-06-30 11:05:42 | 短歌
あの頃は日々背を伸ばすスカイツリー
アガパンサスの叫びのように

振り向けばアガパンサスは狂おしく
先行き見えぬ終りなき道

黄身割れた卵の殻を破壊する
アガパンサスを摘めない指で

振り向かぬ時を逃れて雑踏の
アガパンサスの影に身を寄せ

唐突にアガパンサスは咲きほこり
過去を忘れて結婚賛歌

夏になったら

2013-06-23 23:23:04 | 都々逸
夏になったら冷んやり濡れて
白い素肌の冷奴

俺を見上げてお前が締める
うまくなったねネクタイを

仏ごころになれそでなれぬ
だって仏国(フランス)人じゃない

ふたごみたに似ている姉妹
だけど妹は若い肌

かたい骨付き売り切れかしら
口にするのは皮ばかり

道の露草

2013-06-22 11:19:51 | 短歌
揺れ惑う心しずめて口ずさむ
童謡途切れ道の露草

汚れなき言葉うしない露草も
涙も枯れて時は過ぎゆく

僕らしい自分が消えて露草が
咲くも咲かぬも自然不自然

露草のしずく癒せよ刃傷の
痕より深い言葉の傷を

朱に燃え時は一日過ぎてまた
闇に包まれ露草の跡

道は終った

2013-06-16 04:41:21 | 短歌
蒲公英の綿毛みたくは羽ばたけぬ
無精の髭は白さを増して

海風に水仙は揺れ豚まんの
残りも冷えて道は終った

励ましの風にまたがり赴任する
種よ何処ゆくタンポポ残し

皺くちゃのままに干されたコットンは
余生に揺れてプリムラの上

菜の花を行き交う蝶も迷い箸
どれを拾おか火葬場の骨

厄介な恋の予感に汗ばみて
アガパンサスはまた咲き誇る

枯淡の色で

2013-06-15 06:57:41 | 短歌
ガマの穂で心拭えば従順に
癒えて童話の恋の寝枕

尾行して棘刺す薔薇の無邪気さの
軽き言葉に振り向く血潮

老いらくは激しからずや傷つかぬ
日陰に恋す石蕗の花

趣味的にセントポーリアと老いの恋
育みながら小部屋に飾る

この先は恋も侘助控えめに
咲かせてみたい枯淡の色で

それぞれの秋

2013-06-13 18:03:54 | 短歌
単調な日々を締めくる夕餉には
バジルとパクチーたっぷり飾る

老人も童も顔を赤らめて
七竈燃ゆそれぞれの秋

ユーカリのアロマで胸を消毒し
条件を飲む振り返らずに

食い残すパセリと恋の未練乗せ
皿の担架は搬出された

清楚なるオンシジウムは樹雨乗せ
老いゆく目には乗らぬ涙か

イヤの山

2013-06-13 05:19:10 | 都々逸


取るに足りない あの癖でさえ
積もり積もればイヤの山

毎度見慣れて見飽きていても
思い出せずにまた覗く

美味かないけど寂しい夜は
頬を赤らめ舐める酒

迷う下着がはらりと落ちて
惑う想いも波の中

蜜柑皮むく炬燵の中で
未完のままの恋ごころ

愛尽くし

2013-06-13 05:16:30 | 都々逸
雪がとけても芽が出ぬままに
債権ばかりが積もる夜

念仏みたいにブツブツ小言
仏のかみさん そっぽ向く

怖い顔して迫ってきても
シュンとすぐなり去るあなた

先に裂かれる あだ花だけど
先に咲きたや 夜ふけ(老け)前

遠慮しないで もそっとお寄り
今夜一夜の愛尽くし

汚れた気分

2013-06-09 16:21:37 | 短歌
交差せぬ心と体交差する
月蝕くるまで汚れた気分

換えられぬ貴女の部屋に帰れない
月と心を凍りつかせて

腕枕温もりもなく月隠れ
イルミの帰路に棘も凍てつく

愛プラス貴女イコール
月隠れプラス憎しみセクスと嫌悪

幸福のバーゲン漁りもうやめて
粋な渋茶で月見て団子

地獄を巡る

2013-06-09 16:17:54 | 短歌
誰よりも旅する二人月変化
同じ寝床で地獄を巡る

烈烈の烈女の愛は強烈に
烈火烈寒烈日烈震

全部脱げ月夜にさらせまだ脱げる
この肉体はお前ではない

底無しのエゴイズムだねこの愛は
月さえ真っ赤に嫉妬で濡らし

裸婦の手で欲と白髪を黒に染め
月に雄叫び老醜無惨