平成24年2月16日、廃墟写真著作権等に関する損害賠償等請求事件について、上告人兼申立人丸田祥三氏の上告及び上告受理申し立てに対して、上告を棄却する、本件を上告審として受理しないとの判決が最高裁判所第一小法廷にて言い渡されました。
私は、1980年代から鉱山、廃工場に残された廃墟撮影をする一方、東京湾岸や建設途中の建物、橋、ダム、道路ができる景観を撮り続け発表してきました。すなわち私にとって「完成に向かう建造物」及び「朽ち果て廃墟になる光景」の両者は生涯追い求めるテーマであり、現代日本の風景を複合的切り口で表現する一つが「廃墟」です。
風景写真のひとつである廃墟は、写真が発明された当時から世界中で撮影されてきたモチーフです。そして、一度でも誰かが撮影、発表した場合は事後の撮影、発表が制限されるという丸田氏の主張がまかり通れば、他者によって既に撮影されている場所でも、誰もが表現上の工夫をして、さらに新しい写真をうみだそうというアーティストはもちろん、写真家を志す若者、全国の写真愛好家のインセンティブが失われ、写真表現が著しく萎縮することになったでしょう。
今回の訴訟は、そもそも論争にならない主張を丸田氏が法廷に持ち込み、何ら立証できぬまま訴訟を続けたものであり、その行為はあまりにも理不尽であり不当訴訟であったと考えます。当然のことですが裁判所は丸田氏の写真と私の写真はまったく異なるものと判断し、丸田氏の請求は何一つ受け入れられず、一審、二審、最高裁とすべて棄却されました。
また、丸田氏は訴訟以前から今日に至るまで、私、及び出版社、新聞社、関係企業、そして写真界までも度重なる非難、誹謗中傷、審理の内容とはまったく異なる根拠のない発言を公の場で繰り返しており、かかる名誉毀損・信用毀損行為は、一般常識から大きく逸脱した不法行為に該当すると思います。丸田氏の発言に類似するウェブサイトの内容も大変遺憾です。これまでは係争中であったため、まずは審理されている内容に対応すべきであると考え、あえて静観してきましたが、今後は、いわれのない誹謗中傷に対しては、法的措置を視野に入れて毅然と対応していく所存です。
小林伸一郎
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