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世界から貧しさをなくす30の方法

2007-01-26 19:56:39 | BOOKS
田中 優 編 「世界から貧しさをなくす30の方法」 合同出版 2006.12.25.

国連人口基金「世界人口白書」(1994年版)には、「途上国では急速な人口増加と貧困が、先進国では資源の大量消費とゴミの増加が、環境を圧迫する主因となっている」と書かれています。途上国では「生産は算術級数的にしか増加しないが、人口は幾何級数的に増加する」ので、生産が追いつかなくなって貧困者が増えるのだと考えられています。必要なのは、「避妊法」と「教育」。つまり「途上国の人たちは教育を受けていないために避妊を知らず、セックスを楽しんだ結果として人口増加を引き起こしている」といっているのと変わりません。 一方で増加した人口に対処するためには、食べ物などの生産物や清潔な水を届けなければなりません。だれが? そう、先進国が。「世界人口白書」(1996年版)では「とくに、世界の中でもっとも貧しい国、女性差別がもっとも深刻な国、人口圧力がもっともきびしい国においては、外国の支援なしに国内の努力だけに頼っていては、的確な対処ができない」と書かれています。「貧しい人に釣ってきた魚を与えるよりも、魚の釣り方を教えてあげなさい、そうすれば彼らは私たちがいなくなったあとも自分たちで生きていくことができるだろう」といういい方があります。それにしたがって、生産用具が提供されたのです。開発インフラとよばれる道路や発電所、ダムなどです。人口問題を解決するために、先進国からの開発支援が必要だと考えられたのです。 そもそも世界の中で人口が増えているのは途上国の「土地なし都市住民」とよばれるスラムの人たちです。その人たちの4割が地方で食べられなくなって集まってきています。世界銀行が発表した「非自発的移住に関するレポート」によると、世界銀行の進めるダムや農園などの開発による立ち退き者を、過去10年間で200万人と推定しています。「しかしこの数はその国自身の開発によって追い立てられる人の数の3%でしかない」そうで、自身の開発を含めると、6667万人がたった10年間に追い立てられたことになります。しかも追い立てられた人びとは、十分な補償も代替地も与えられていないと書かれています。世界銀行創立から60年に、じつに4億人もの人たちが十分な補償も代替地もなく、土地を追い立てられたことになります。 都市スラムにたどり着いても、多くのスラム住民たちは、観光客にみやげ物を売ったり、靴磨きや信号待ちの車の窓を拭いたりして、チップを得て生活するようになります。かせぎ手を増やすことで収入が増えますので、都市スラムで生活を安定させていくには、子どもを増やさなければならないのです。彼らの貧困を解決する策は、スラムの住人が地方に戻り、農業なりで生計を立てられるようにしていくことです。いや、それ以上に重要なのは、今地方で生活している人たちを、開発で追い立てないことです。 地方の農家が生活できなくなる最大の原因は、生産物の値崩れです。「援助」や「経済のグローバリゼーション」によって、世界中から異常に安い商品が送られてきます。自給率の高い国からの不要な生産物が安い価格で輸出され、それが農家が1年かけて作った作物と市場でぶつかるのです。 人口問題の原因を作り出した「立ち退きの開発」を進めた人たちは、「今なお人口問題を解決するために開発を」といっています。その被害に遭った人たちは、まるで彼らが悪いかのように、「教育を受けていないから」といわれるのです。

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