goo blog サービス終了のお知らせ 

竹林の愚人  WAREHOUSE

Doblogで綴っていたものを納めています。

イワシが高級魚になった?

2007-07-01 00:07:31 | BOOKS
中村 幸昭 「イワシが高級魚になった? ふしぎな海の生態系」PHP研究所 2007.03.05. 

日本人にとってイワシは大衆魚であり栄養価もあり庶民の味であった。一般になじみのあるものはマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシの3種だ。ところが、海の米といわれるイワシが最近、激減し、大衆魚から高級魚になったのではないかといわれている。イワシが減れば、それを食べるカツオやタイなどの中距離ランナーの餌がなくなる。そのまた背後にはマラソン選手のマグロやカジキなどが控えている。事実、マグロの漁獲量が年々、減少傾向にある。 イワシだけでなくマグロも世界中で人気が高まり、肉食中心の欧米人が肥満や高血圧を防ぐため、「ビーフステーキから海のシーチキン」に切り替えてきた。世界一の長寿国日本の魚食を見習えと、欧米や、中国、インドでもマグロを食べるようになり、今後、日本人とマグロとは国際関係にも微妙な課題となることは必定だ。 マグロの漁獲量減少の最大の原因は主食のイワシ、アジ、サバなどの小型魚の減少にある。ではなぜ減少したのか。海洋汚染、乱獲、生態系の変化、食物連鎖、鯨の増加、周期説、潮流の変化など複合的な要因があるが、最近の調査ではクジラの増加がすさまじく、海の生態系がアンバランスとなっている。 クジラは大型から小型まで83種を数え、地球上最大の動物シロナガスクジラは1900年初頭に南氷洋に約20万頭生息していたが、ノルウェーやイギリスが捕獲したため、現在は約2,000頭にまで減少した。2番目に大きなナガスクジラも鯨油のため乱獲され、現在は1万数千頭と推定されている。 一方、イワシクジラは北西太平洋で68,000頭、北大西洋で10万頭、南氷洋でも10万頭近くと生息数が回復している。ニタリクジラやコククジラも26,000頭まで回復し、エサ不足のため年間300頭も餓死するまで増加した。マッコウクジラは米商務省のデータで約200万頭、日本近海の北西太平洋だけで約20万頭に達したといわれる。小型のミンククジラは約100万頭に増加し、南氷洋だけで76万頭もいることがわかった。 このように捕鯨禁止の結果クジラは増え、シャチやイルカもどんどん増え続けているのが現状だ。アメリカ西海岸に設置されている定置網には毎年、数万頭に及ぶイルカが漁綱に迷いこみ死亡している。 シロナガスクジラは最長寿命120歳、ナガスクジラとホッキョククジラも平均100~20歳と長寿だ。ツチクジラが83歳、ザトウクジラやマッコウクジラで77歳、イワシクジラで74歳、ミンククジラでも約50歳、イルカは20歳から50歳と種類差がある。このように寿命の長いクジラたちの一生で食べるエサは莫大な量となる。 絶減が危ぐされるアマゾン河のピンクイルカ、中国長江の長江イルカ、インダス、ガンジスの河イルカ、ナイル河イルカなどは厳重に保護する必要がある。だが大量に増え続けるミンククジラ、イワシクジラ、マッコウクジラなどはある程度、間引きしないと海の生態系が大きく変化してしまう。海の王者クジラと人間の英智をもって平和共存の道を探らねばならないときがきている。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。