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自衛隊 知られざる変容

2005-11-19 23:36:44 | BOOKS
朝日新聞「自衛隊50年」取材班 「自衛隊 知られざる変容」 朝日新聞社 2005.05.30.

今の制度では、イラクで活動中に武装勢力などと交戦になって死亡した場合、「公務災害」の扱いを受ける。イラクに戦争に行くのではないから、『戦闘死』はあり得ない。  自衛隊員の殉職者は、その前身である警察予備隊が1950年に発足して以来、1737人。そのほとんどは国内での訓練や災害派遣での事故死だ。危険な地域に海外派遣されて殉職した場合の「死」を扱う制度がない。 
海外から遺体を運ぶのに政府専用機を使えるのか。空港での儀仗はどうするのか。葬儀は部隊葬か、防衛庁葬か、内閣葬か。こうしたことが何も決まっていない。  
遺族への補償でも、自衛官と警察官との間で差があった。その差を埋めたのは、1992年のカンボジア国連平和維持活動(PKO)派遣だ。同じPKOに参加する警察官ら地方公務員は、賞恤金だけでなく、地方自治体からも弔慰金が出る。防衛庁は上限額を見直した。カンボジア派遣以前の最高支給額は1700万円だったのに対し、その後の制度改正で2003年末には9千万円になった。 
防衛庁が金銭以外の面でも「死」の問題と向き合う姿勢を見せたのが、2003年9月に東京・市谷の敷地内に完成させた「メモリアルゾーン(慰霊碑地区)」だ。
「米国のアーリントン国立墓地のように、国民や海外の訪問客にも敬意をささげてもらえる追悼の場にしたい」と、立案した幹部が言う。 
殉職隊員名簿を納めた慰霊碑の周囲に、全長100メートルの参道を設け、追悼式典が行えるよう整備した。広さ6千平方メートル。6億円を投じた。富士山をかたどった碑の中に、殉職隊員の名簿が収められている。 
キリスト教など様々な宗教の信者への配慮をした苦心の作だ。 
10月には小泉首相らが参列して追悼式が行われ、11月には来日したラムズフエルド米国防長官が献花した。だが、一般の市民はまだほとんど訪れていない。