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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

『バッタ君町に行く』見てきました

2010年01月05日 | アニメ
昨年の暮れになりますが、渋谷のシネマアンジェリカで『バッタ君町に行く』を見てきました。



見に行ったのは日曜の午後だというのに、観客の数は10人未満。
古い作品とはいえ、さすがにこれはさびしかったですねー。

・・・さて物語の舞台は、第二次世界大戦前のアメリカのとある街。
その片隅に建つ家の庭先に住む虫たちは、人間たちの心無いふるまいによって、
その平和な生活を脅かされつつありました。
庭を囲む塀が壊れ、そこを通り抜けてくる人間たちが庭を荒し、タバコを投げ捨て、
虫の住みかを踏み潰すようになったのです。

そんなところに、旅好きで飄々とした風体のバッタ君こと“ホピティ”が帰ってきます。
幼なじみのハチ少女“ハニー”と仲間の虫たちのため、新たな引越し先を探そうとする
ホピティですが、どこに行ってもトラブルばかりで、仲間たちの逆恨みを買う始末。
しかもハニーに横恋慕する金持ち虫のビートルとその手下の陰謀で、ホピティ自身も
囚われの身となってしまいます。

そのころ塀も直せないほど資金繰りに窮した持ち主が去った庭には、巨大なマンションの
建設計画が持ち上がっていたのです・・・!



しゃれた音楽と通りを行き交う人々の姿、そして高層化の進む街の様子は、製作当時の
アメリカ社会に満ちていた享楽と繁栄の空気をよく伝えていました。
もっとも映画が公開された頃には既に第二次世界大戦が勃発し、さらには日本軍による
真珠湾攻撃と、作品の持つムードとは正反対の社会情勢になってしまうのですが・・・。

アニメートの技術的な部分については、論じるほどの知識を持ち合わせていないのですが
音楽に合わせた動きの「気持ちよさ」については、素人の私にもよくわかりました。
あとバッタというキャラの特徴からか、水平移動に加えて“上下の動き”が目に付くのも
当時の作品としては異色だったのではないでしょうか。

それにしてもこの作品を見るのは初めてなのに、妙な既視感があると思っていたのですが
正月にTVで『未来少年コナン』の劇場版を見て謎が解けました。
垂直の壁に貼りつき、せまい隙間をよじのぼるコナンの姿。水攻めにされる地下の住民。
そして崩壊していく居住地と、そこを必死で逃げ惑う人々の脱出劇といったモチーフが
確かに『バッタ君町に行く』と共通するものを感じさせるのです。
きっと宮崎駿の作品を通じて、知らないうちに自分の中にも“フライシャーの遺伝子”が
組み込まれていたんだなぁ。

その宮崎駿氏も絶賛する『バッタ君町に行く』ですが、作品を見れば本人の言葉以上に、
強い影響を受けていたことがわかります。
特にラストで虫の少年がジョーク交じりに放ったセリフが、『天空の城ラピュタ』の中で
(その傲慢さを最大限に強調した形で)ムスカの有名なセリフへと転用されていることは、
その影響度がいかに根強いものであるかを示す一例でしょう。
享楽的で結構なトラブルメーカーだけど、一度決めた目標は決してあきらめないという
ホピティのキャラクターも、どこか『カリ城』のルパン三世を思わせるところがあります。
(単に色が緑色なのと大ジャンプが得意、という共通点のせいかもしれませんが・・・。)

というわけで、アニメ業界を志す人だけでなく「宮崎アニメのお手本」について知りたい人にも
いろいろと参考になる作品だと思いました。
ただし時代背景が色濃く出ている作品でもあるので、多少古びてしまった感は否めませんが。
逆に言うと、主として誰でも知ってる名作童話を手堅くアニメ化してきたディズニーのほうが
結果として時代を超える評価を得たというのが、運命の皮肉なのでしょう。

ちなみに映画のパンフレットは800円で、作中のエピソードにちなんで窓あき封筒入り。

こちらには映画のHPに載っている宮崎氏と庵野氏のコメントのロングバージョンが
収録されてます。
でもパンフのつくりは長いリーフレットを折りたたんだ薄っぺらなもの。
本音を言えば、これで800円はどう考えても高すぎるなーと思いました。
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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
観てこられたんですねー (shamon)
2010-01-05 21:31:08
まいどでーす。

観るか否か今思案中(^^;。
でもよさそうですねー。

>本音を言えば、これで800円はどう考えても高すぎるなーと思いました。
『パンダコパンダ』も紙芝居風で800円くらいでした。
素敵なイラスト封筒入りだったんでよかったけど、、折りたたんだのがその値段じゃ高いですね。


私は今日「チベット展」を観てきました。
オススメですよ~。
返信する
マニアックなshamonさんにはオススメ(笑) (青の零号)
2010-01-05 21:59:48
ノブレス・オブリージュ。
今年もshamonさんがよきBlogger、そしてよき猫又たらんことを・・・。

改めまして、あけましておめでとうございます。
今年もエデンとかワインとか、いろいろ教えてくださいませ。

『バッタ君』はですねー、やっぱり一般ウケは難しいと思うんですよ。
ある意味で我々が見慣れてるアニメのルーツにあたりますから
逆に今の作品と無意識に比較しながら見ちゃうところがあって。
その時、宮崎アニメよりもこっちのほうが面白い!と
断言できる知識と感性を備えてるのは、相当な玄人筋だと思います。
(残念ながら、私にもそこまでは思えませんでした。)
そこらへんを割り切って見られる人か、shamonさんほどの
筋金入りの方なら(笑)たぶん楽しめると思います。

>私は今日「チベット展」を観てきました。
実は私も行ってきました。
政治的にモメてるようなので記事にするのは避けましたが
秘仏を通して異文化に触れる感動は格別でしたね。

今年もこんな調子ですが、よろしくお願いいたします。
返信する
バッタくん! (BP)
2010-01-07 00:44:21
 いいですねー、東京は。

 僕も激しく観たいです。実はうちにうん十年前にTVで録ったBETAテープがあるのですが、既にデッキが壊れて観られません(^^;)。

 ヒットしていないようなので心配ですが、これを機にDVDがジブリからちゃんと出ることを期待するしかないです。
返信する
やっぱりマニアなのか^^; (shamon)
2010-01-07 21:17:25
まいどでーす。

>そしてよき猫又たらんことを・・・。
でも魍魎は嫌い、ワインなら好き(・・)。
明日はワインスクール♪、
ブルの年代物が出るって噂♪

>筋金入りの方なら(笑)たぶん楽しめると思います。
うーん^^;。

チベット
>秘仏を通して異文化に触れる感動は格別でしたね。
天に一番近い国のせいかなんとも凝縮感のある展示物ばかりですよね~。
しかし「鳥葬」の単語に思い浮かんだのは「エレガント」、、、『エデン』が早く観たい~。
返信する
BPさんのためにある作品かも(笑) (青の零号)
2010-01-08 00:07:55
BPさん、コメントありがとうございます。
実は渋谷のパルコに行こうとして道を間違えたときに
アンジェリカの前に出たという縁で見にいったのは
ここだけのヒミツです(^^;。

>僕も激しく観たいです
できればBPさんに見てもらって、最新の感想を聞いてみたいです。
あと、実は私もBetaのユーザーでした(^^;。
返信する
いまさら何を言ってるんですか! (青の零号)
2010-01-08 00:20:39
shamonさん、いまさら自分を偽るのはやめましょう(笑)。

>明日はワインスクール♪
>ブルの年代物が出るって噂♪
こないだはダイスのマンブールとか、いいのばっかり出ますねぇ。
お値段もハンパじゃないんでしょうけど・・・。

>しかし「鳥葬」の単語に思い浮かんだのは「エレガント」、、、
そしてブラックな女神といえばダーキニー立像。
あれも黒羽社長みたいにエレガントかつエロティックな像でしたね~。
返信する
いえいえ (shamon)
2010-01-09 21:59:38
>いまさら自分を偽るのはやめましょう(笑)。
うーん偽っているつもりは無いんですが、、、
強いて言えばかぶってるんです、猫を(笑)。

>お値段もハンパじゃないんでしょうけど・・・。
行ってきましたぜ(^^)v。
生きててよかった~って中身でした。
これで半年間(全6回)で48000円の講座ですからスクール通いがやめられません。
先生は予算のやりくりが大変みたいですけど(^^;。

>黒羽社長みたいにエレガントかつエロティックな像でしたね~。
そうそう、確かにそんな感じでしたが。

素子はハードなイメージ先行だけど、
黒羽社長はプラスエロティックが絶妙に入ってるってのがいいんですよね。
女性から見てもああいう女性はカッコイイ。
神山監督ってホント女性を描くのが上手い、師匠より上手いかも。
返信する
神山監督の素子って (青の零号)
2010-01-10 16:02:29
shamonさん、まいどですー。

スクール、今回も鬼のようなラインナップですね。
先生どう考えてもモト取れてない気がする・・・(笑)。

>素子はハードなイメージ先行だけど、
>黒羽社長はプラスエロティックが絶妙に入ってるってのがいいんですよね。

男性の立場で表現すると、素子は「振り向かせたい女性」
黒羽社長は「支えてあげたい女性」という感じでしょうか。
まあどっちもかなり大変ではありますが。

>神山監督ってホント女性を描くのが上手い、師匠より上手いかも。
神山さんの描く素子は、非常に「女性的」な面が強調されていて
士郎さんや押井さんの描く素子と決定的に違ってる気がします。
その点、攻殻に脱セクシャリティの物語を求める人には
ウケが悪いのかもしれませんが・・・。
私はそれぞれに良さがあると思ってますけどね。
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