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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

川崎市民ミュージアム「実相寺昭雄展 ウルトラマンからオペラ「魔笛」まで 」

2011年09月04日 | 美術鑑賞・展覧会
ひねもすのたりの日々」のshamonさんが先に見に行って絶賛していた、川崎市民ミュージアムの
「実相寺昭雄展 ウルトラマンからオペラ「魔笛」まで 」を見てきました。(会期は本日4日まで)

行くまではさほど期待してなかったんですが、会場に入って「もっと時間を取るべきだった!」と大反省。
なにしろ資料数が多く、さらに原稿やらメモやらの書きこみの量も半端じゃありませんから、
それらにいちいち眼を通そうとすると時間がなんぼあっても足りないほど。
ああ、最初に映像コーナーで「故郷は地球」を見てる場合じゃなかったよ・・・。

展示の冒頭部分については「インターネットミュージアム」で映像を見ることができます。
さらに横の写真をクリックすると、大きなサイズで画像を見ることも可能。
逆に川崎市民ミュージアムのHPのほうは、ぶっちゃけ見るところが少なすぎる・・・(^^;。

すばらしく充実した内容にもかかわらず、美術館の方に聞いたところ、今回は図録も展示品リストもないとのこと。
今後の資料的価値も含めると、少なくとも展示内容のリスト化は必須だと思うのですが、この種の展覧会は
大体そういうことに無関心なんですよね。
しょうがないので、大急ぎでメモってきた範囲で展示品を列記しておきます。

○ジャミラ資料
・ジャミラ着ぐるみ(オリジナルではなく後年の複製)
・ジャミラプレート(ジャミラの墓碑銘) 生没年は1960-1993
 銘文はフランス語で書かれている。
・「故郷は地球」アイデアスケッチ
 大判スケッチブックに描かれたもの。
 イデ隊員がジャミラプレートの前にかがみこんだ姿を、ラフなタッチで描いている。
 またこのプレートに「ICI DORT CE・・・」とフランス語の書き出しが入っていることから、
 銘板の文句は実相寺監督が書いたものだと推測できる。
 なお、実相寺監督は早稲田大の仏文科出身で、フランス語に堪能だった。

○研究書「円谷英二の映像世界」用資料 
・「ゴジラ」絵コンテ
 映像分析のため、ノートに「ゴジラ」の一場面を、わざわざ絵コンテとして起こしたもの。
(見開き2ページ分、DVDで45~47分あたりの、ゴジラが列車をくわえるシークエンス)
 欄外に「何故これ程簡潔なCut割りで表現できるのか・・・」との書き込みあり。
・「ゴジラ」分析用ノート
 場面ごとに、セリフを交えて分析したノート。
 展示は冒頭部分のみだが、たぶん丸1冊使って全編を分析していると思われる。

○スカイドン資料
・「空の贈り物」シナリオ台本(準備稿)
・スカイドンの原案イラスト(この時点の名前はイヤミラー)と、演出をメモしたノート
・「空の贈り物」絵コンテ
・自筆の製作ノート
 (次のような文章が書かれていた)
 ウルトラマンで得たもの、失ったもの 未整理
 5本目と6本目(これでこのシリーズともお別れ)
 1本目と2本目はルウティンで語り、3本目と4本目は特撮なしで語ろうとし、
 今度は特撮(ここに下線2本引き)で語ろうと思う

○シーボーズ資料
・「怪獣墓場」シナリオ台本(準備稿)
 これを含めて、多くの初期台本には赤いマジックで実相寺監督のサインが書かれている。
 高校時代に考えてからずっと使ってきたそうだが、後年には使われなくなり、代わりに筆書きで
 自分の名を書き、落款を押すようになっていく。 

なお、ウルトラマンの実相寺監督作品は次の6作です。
 
第14話「真珠貝防衛指令」(汐吹き怪獣ガマクジラ)
第15話「恐怖の宇宙線」(二次元怪獣ガヴァドン)
第22話「地上破壊工作」(地底怪獣テレスドン)
第23話「故郷は地球」(棲星怪獣ジャミラ)
第34話「空の贈り物」(メガトン怪獣スカイドン)
第35話「怪獣墓場」(亡霊怪獣シーボーズ)

○ウルトラセブン
・ウルトラセブン「夜毎の円盤」シナリオ台本
 オンエア時に改題されて「円盤が来た!」になったもの。
・ウルトラセブン未製作話「宇宙人15+怪獣35(仮題)」シナリオ台本(準備稿)

ウルトラセブンでの実相寺監督作品は3本。数は少ないけど、忘れがたい異色作ばかり。

第8話「狙われた街」(幻覚宇宙人メトロン星人)
第43話「第四惑星の悪夢」(第四惑星のロボット長官)
第45話「円盤が来た」(サイケ宇宙人ペロリンガ星人)

なお、さすがに「遊星より愛をこめて」に関する資料展示はありませんでした。


・劇場用再編集映画「実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン」シナリオ台本(準備稿)

・短編ドキュメンタリー「夢の通ひ路 ~ ウルトラマンの謎」シナリオ台本(準備稿)
 「夢の来た路」のタイトルを訂正して「夢の通い路」の添え書きあり

・元祖ウルトラマン「怪獣聖書(仮題)」シナリオ台本(準備稿)
 後に書き換えられて「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」になったとの説もあります。

○ウルトラマンティガ
・「花」自筆絵コンテ(ホテルニューオータニ博多の便箋を使用)
 欄外に「等身大の斗い(巨大化でもいいが) 剣豪同士の決戦である」と書かれている。

○ウルトラマンダイナ
・「怪獣戯曲」シナリオ台本(元の台本の上に紙で表紙をつけ、そこに筆文字でタイトルを書いたもの)
・「怪獣戯曲」ダビング表(学校芸能工作用紙を2枚に切って使用)
 ダビング表は音声収録の際に、シーンを並べてSEやBGMを入れるタイミングを書きこんだ表。
 ここではさらに添え書きとして、次のとおりのメモが書かれている。
 「基本的に今回、劇中の音楽はない、効果音が主体である。
  私の音響設計図を全否定してもらっても構わない。
  但し、ルーティンからの発想でなければ・・・である。
  この回は従来からの慣行とは関係がない。
  人の肉声をSEに加工できないか?」
・バロック怪獣ブンダー 原案イラスト(変身前、変身後)
 変身前のイラストに「ディテールはバロックの建物を参考に!」と書かれている。

○「ウルトラマンマックス」資料
・「胡蝶の夢」シナリオ台本
・「狙われない町」シナリオ台本
 どちらも表紙を付け直して、筆書きでタイトルを記載。
・「狙われない町」ダビング表

○「怪奇大作戦」資料
・「呪いの壺」シナリオ台本(決定稿)
・「死神の子守唄」シナリオ台本(準備稿)
 私が最高と考える実相寺作品がこれ。もっとたくさん資料が見たかった・・・。 
・未製作シナリオ台本「平城京のミイラ」
 「京都買います」の幻の台本とのキャプションがあったが、「呪いの壺」のボツ台本という説もあり。
 シナリオのコンセプト的には「京都買います」に近いらしい。
・「京都買います」ダビング表
 東京放送の方眼紙を使用したもの。
・「恐怖人間(仮題) 死神と話した男たち」シナリオ台本
 「恐怖人間」の部分を鉛筆で「怪奇大作戦」と修正してある。
・「恐怖の電話」シナリオ台本(決定稿)
 「死神と話した男たち」を改題して、若干の修正を加えたオンエア版。

なお、余談ですが「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」で「三百六十五歩のマーチ」と「恋の季節」を
挿入歌として使ったのは、「怪奇大作戦」でこの2曲が使われたことに引っ掛けたものと思ってます。

○「ウルトラQ Dark Fantasy」資料
・「ヒトガタ」シナリオ台本
・「闇」シナリオ台本
・「運命(さだめ、と手書きルビあり)」ワープロによるシナリオ原稿
・「冬の熱情」ワープロによるシナリオ原稿

○ウルトラマンの東京
同名でちくまプリマーブックスから刊行された書籍のイラスト用原画。
(後に改訂されて、ちくま文庫に収録)
小型のスケッチブックに、東京の風景に立つ怪獣やウルトラマンを登場させたイラストが
昔の文人画を思わせるタッチで描かれています。
いまだと山口晃画伯の書き方に似てるかな?あちらよりはラフな描線ですが。

ペンで描かれた線に水彩で着色されたイラストには、にじみにもまた味があります。
イラストに添えられた短い文章は、筆ペンを使って書かれたものでしょうか。

展示された数十点の作品から、印象的だったものをいくつか紹介します。
・ウルトラQ「地底超特急西へ」の「いなづま号」
・ウルトラマン「真珠貝防衛指令」の「ガマクジラ」(添え書き“ガマクジラに真珠”)
・シルバー仮面(添え書き“銀の光の流れ星”)

○「シルバー仮面」資料
・「ふるさとは地球」シナリオ台本
・「ふるさとは地球」手書き脚本原稿
(用紙の裏まで記入あり。チグリス星人の側面イラストも添えられている。)
・CMフォーマット表(時報からタイトルクレジット、提供などの所要時間を指定した一覧表)
・演出メモ
・「シルバー假面」シナリオ台本
 「シルバー仮面」を新たな設定でリメイクした、2006年の作品。
 全3話だが、実相寺監督は1話を撮影後に死去している。
・シルバー仮面 カプセル玩具用自販機像

○ATG等の映画作品資料
・「無常」ポスター
・ロカルノ国際映画祭「金豹賞」受賞トロフィー(「無常」で受賞)
 ヒョウの尻尾が折れたのを包帯で治してあるのが微笑ましいです。
・「曼荼羅」ポスター、台本、プレスシート
・「あさき夢みし」ポスター、ダビング表(原稿用紙を使用)
・「あさき夢みし」コンテ兼ノート(大判スケッチブックを使用)
・「宵闇せまれば」シナリオ台本(準備稿)
・「哥(うた)」シナリオ台本(準備稿)
 この時点では「(あに)」とルビが振ってある。
・「歌麿 夢と知りせば」シナリオ台本
 表紙を追加し、さらに自筆のご詠歌を貼り付けている。
 “弥陀の大悲ふかければ
  佛智の不思議あらはして
  変成男子の願をたて
  女人成仏ちかいたり”

・エッセイ「闇への憧れ」書籍及び自筆原稿

・CM映像「資生堂『口紅 色』」「スーパーニッカ」など

・各種番組台本
(演出デビュー作「歌う佐川ミツオ・ショー」、初ドラマ「おかあさん」、「でっかく生きろ!」、
 「レモンのような女」など。)

・カンヌ国際広告映画祭 金賞賞状(「資生堂CM『口紅 色』」で受賞)

・資生堂CM『口紅 色』直筆絵コンテ

・ドラマ「波の盆」ポスター、取材ノート、シナリオ台本、MA(マルチミキサー)シート

○「帝都物語」資料
・ポスター、台本(「帝都物語」とタイトル筆書き)曲コンセプト指示書
・ギーガーから送られた護法童子のラフデザイン(たぶんファックス)
・大連地下洞窟のイメージ図
・加藤保憲の特撮用胸像
・樋口真嗣氏の描いた絵コンテ(コピー)

○その他の映画作品関連資料
・「D坂の殺人事件」「屋根裏の散歩者」台本、チラシ、スチール写真
・各種台本
「ウルトラQ 星の伝説」、「光」(「シルバー假面」製作後に予定されていた企画)、
「夢十夜 第一夜」、「鏡地獄」、「姑獲鳥の夏」

○ひまつぶし
文字どおりの「ひまつぶし」として、実相寺監督が作品とは無関係に仕上げた遊びの製作ですが
これがめっぽうおもしろい。
紙を横長につなぎあわせて、左端の1から右端の1000までがムカデのようにうねりながら
重ね描きされたものや、コケシ型の携帯電話、子供用の懸賞ぬりえに手を加えて、風神と雷神が
スケボーをやってる絵に描き変えてしまったものなど。
実はこれらの手すさびにこそ「天才・実相寺昭雄」の自由闊達な才能が、最もよく発揮されていると
感じました。

○イラスト、絵手紙
「ウルトラマンの東京」と同じようなタッチで、建物から大好きな路面電車、さらに身近な小物や
自作他作を問わない様々なキャラクターに至るまでを描きとめたもの。

こちらからも、印象的な絵をいくつか抜粋して紹介します。
・自画像(ペン描き、高松東急インの便箋を使用)
・老眼鏡(ケースが少年アシベ柄)
・ガマクジラ(添え書き「女心と秋の空」)
・ゾイド(添え書き「ゾイドのメカに驚く」)
・サンダーバード2号(添え書き「チョロQは進化する」)
・ヒカリアン
・いかレスラー(実相寺監督が監修)
・フシギダネ(添え書き「ポケモンは羅漢さんだ」)
・ガヴァドンA(添え書き「フィギュアは作画を補完する」「わが机上のガヴァドン」)
・オーパス・ワンのラベル(添え書き「美酒・・・羅府にあり」)
 羅府はたぶんカリフォルニアとロサンゼルスの勘違いだと思います。
・「ティガ」レナ隊員のフィギュア(添え書き「夢よ、蘇れ!」「しかし俺の絵は似てねぇー」)
 添え書きの部分は、ちょっとうろ覚えです~。

○二期会オペラ「魔笛」資料
・「魔笛」衣装(タミーノ、夜の女王、パパゲーノ、パパゲーナ)
 デザインコンセプトは「生きたフィギュアのように表現したい。」
・衣装デザイン担当・加藤礼次朗氏によるデザイン画
 加藤先生といえば、知る人ぞ知るマンガ「戦え!筋肉番長」の作者ですね。
 実相寺監督と加藤先生の間を取り持ったのは「いかレスラー」などで知られる河崎実監督とか。
 加藤氏を抜擢した理由は「お前なら遠慮なくダメ出しができるから」だそうです。
・ボークスによるスーパードルフィー「タミーノとパミーナ」
 さらにその足元には、小さなサイズの「実相寺監督フィギュア」が・・・欲しい!

「魔笛」の詳細については二期会のHPに多数の資料がありますので、そちらもどうぞ。

○朝比奈隆氏との仕事
音楽に造詣の深かった実相寺監督ですが、この方面の仕事でも特に際立っているのが、
日本屈指のベートーベン/ブルックナー指揮者とされる朝比奈隆氏のコンサート映像です。
今回はDVD-BOXの他に、譜面などが展示されていました。

○私物
会場の一角に、監督の仕事場を再現したスペースがありました。
壁には写真でもよく着ている黒のジャケットがかけられ、ちゃぶ台にはけろけろけろっぴの
メガネケース、スカイドンのソフビ、その横にはワープロ(シャープの書院)など。

○フィギュアコレクション
大きなガラスケースに、監督が生前集めたという人形たちがずらり・・・なのですが、
時間がなくてここはじっくり見てません。

メモを取り始めたらきりがなくなって、最後のほうは駆け足になってしまいましたが、
場内の大体の様子はお伝えできたと思います。
それにしても、版権がらみで難しいのかもしれませんが、図録がダメならせめて
(繰り返しになるけど)展示品のリストくらいは作って欲しいものですね。

とはいうものの、内容についてはとても充実したものでした。
多芸多才と完璧主義な仕事ぶりはもちろんですが、巷で言われてきた「鬼才」の印象とは違った
「人間・実相寺昭雄」の素顔を見ることができたのも、大きな収穫です。

展示品の多くは川崎市に寄贈されたものなので、今後は展示物について十分整理したうえで、
川崎から遠い場所の人にも見られるような巡回展などの企画を練って欲しいです。


おみやげはクリアファイルと缶バッチ、そして絵はがきで約3,000円。
これだけ出せば、普通は図録が買えるんですけど・・・(^^;。

絵はがきとクリアファイル。


クリアファイルその2。

右下に小さく「川崎運河にメトロン星人現わる」と書かれています。

缶バッチ。

電車やウルトラマンの柄もありましたが、私が選んだのはこの3種。

最後はこれ、「どんな旅にも欠かせない」実相寺監督愛用の筆記具たち。

奥様や友人たちと同じく、これらも実相寺監督を支えた大切なパートナーだったのでしょう。
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1 コメント

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特撮同好会(名前検討中 (村石太レディ&アニオ太)
2012-04-19 09:03:53
宇宙人は 侵略者なのかなぁ?
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