Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

「北京故宮博物院200選」の期間限定展示「清明上河図」を見てきました

2012年01月19日 | 美術鑑賞・展覧会
東京国立博物館で開催中の特別展「北京故宮博物院200選」に行ってきました。
もちろん最大の目当ては、史上初の国外展示となる傑作「清明上河図」(せいめいじょうかず)です。

さて、こちらは平日の朝9時15分ごろ、国立西洋美術館前の様子。

今は40年ぶりに来日したゴヤの「着衣のマハ」が展示されていますが、
それでも開館前の列はこの程度でした。

そして同日9時20分ごろ、東京国立博物館の様子。


既にこれだけの長い列ができてます(^^;。

そして9時30分の開館後、わずか10分で「清明上河図」の鑑賞までは90分待ち、
さらにその5分後に「180分待ちです」とのアナウンスが・・・なんじゃこりゃー!

そして45分待ちで館内に入ると、今度は一階ラウンジで「清明上河図」を見るため“だけ”の列に
改めて並ぶことに・・・。


入場待ちの間に係員から説明された話によると、貸出元から「展示はほぼ平置き」
「鑑賞に混乱をきたさないように」等と厳重に指示されているため、「清明上河図」は
展示ケース前に一列に並んで鑑賞する形になるとのことでした。
今回の入場列は、そのための措置だそうです。
また、他の展示物を見るためには一度退室して、改めて第一会場の入口から
入室する必要があるとのこと。

ようやく二階へ上がってみれば、またもや行列です。

並ぶ人が多すぎるせいで、巨大な窓ガラスが全面曇るほどの混雑っぷり(^^;。

右側に折れた列の先には、第一展示会場の出口があります。

「清明上河図」は第一展示会場の最後に置かれているので、出口から会場の途中に入って、
そこから折り返す形での鑑賞となります。

ようやく第一会場の出口までやってきました。

ここまで来るのに2時間半。まあ屋外で待たないだけマシというべきか。

しかし、これで終わりではありません。
文章では説明しにくいので、展示場所の略図を作ってみました。


「清明上河図」の鑑賞者は、会場の途中から入って壁際に列を作る形になります。
このコーナーには「清明上河図」の拡大図や解説ビデオの上映があるので、これらを見ながら
現物にたどり着くまでさらに30~40分待つことになります。

もちろん第一会場の入口から入った人は「清明上河図」の鑑賞列には並べません。
また、ケースの高さと前に並んだ人の列のせいで、後ろから覗き込むのもほとんど無理。
二つの順路はベルト状の間仕切りで仕切られており、強引に身を乗り出すと警備員が飛んできます。

さて、待つこと3時間。いよいよ「清明上河図」の展示場所に到着しました!

ここで「清明上河図」について、公式HPの解説を転載しておきます。

“「清明上河図」は、北宋の都・開封(かいほう)(現在の河南省開封市)の光景を描いたものと言われています。
 作者である張択端(ちょうたくたん)は、北宋の宮廷画家であったということ以外、詳しいことがほとんど
 分かっていない謎の画家です。
 全長約5メートル、縦24センチの画面のなかに登場する人物は773人!(異説あり) 。まさに神技です。”

“ここまで精密に描かれた都市風景は、もちろん同時代の西洋にもほとんどありません。北京故宮でも
 公開される機会はごくまれで、上海博物館で公開された時は夜中まで行列が続いたほどの熱狂的
 大ブームを 巻き起こしました。
 まさに中国が誇る至宝であるとともに、世界でも屈指の幻の名画なのです。”

それでは、この「幻の名画」を実際に何分見られるか、試しに計ってみることにしました。
警備員にせかされながら、時に単眼鏡で細部を確認しつつ横歩きで鑑賞したところ・・・

結果、所要時間は5分26秒。1mあたり1分5秒くらいですかね。
展示品のキャプションに「中国絵画の真髄を、じっくりと堪能していただきたい。」とありましたが、
もはやじっくり見るどころの話じゃありません(^^;。

ではこのわずかな鑑賞時間のために、特に絵画に詳しくない人が最長で4時間半とも言われる
行列待ちをする価値があるのか・・・と問われたら、それでも私は「ある」と答えます。

その理由は、実物の「清明上河図」が写真や映像で見るよりずっと鮮やかで、生命力を感じる
「生きた絵画」だったから。

小さな画面に細密に描かれながらも、その描線は決して曲芸的ではなく、豊かな強弱を持っています。
また、各所に繊細な彩色がされているので、水墨画の枯れた感じはありません。
そして約800~900年を経たとは思えない保存状態の良さに、この作品が単なる絵画を越えて
大切にされてきた「文化遺産」であることを、ひしひしと感じたのでした。

さらに、国名や為政者が変わっても「清明上河図」だけは変わらず珍重されてきたこと、そして
そのテーマが普遍的な「自然と人々の暮らし」であることを思うと、この作品が中国という国の
「魂」あるいは「精神」さえも象徴しているのではないか・・・とも考えてしまいました。
まあ長時間並んだゆえの思い込みではありますが、「自然」と「民」が国の宝であるというのは、
ひとつの真理ではないでしょうか。

これだけ短い鑑賞時間で「絵」としてのすばらしさを十分理解するのは、難しいかもしれません。
しかし、少し見方を変えれば「絵」という枠を超えた面白さを見出すこともできるはず。
そういった部分も加味して「清明上河図」を見に行くべきか否かを判断してもらえればよいと思います。

もちろん他の展示物もすばらしいので、そちらをじっくりと見るならば、むしろ「清明上河図」の
展示期間が終了する、1月25日以降に行ったほうがよいかもしれません。
特に、自然と民衆を描いた「清明上河図」と好対象を成すとも言える、皇帝の巡行をテーマにした
超大作「康熙帝南巡図巻」は、サイズ・色彩・細密描写ともに圧倒的。
まるで絵で描かれたミニチュアの世界を旅するような、他にはない体験が味わえます。

また、孔雀の羽を織り込んだ上衣やカワセミの羽を貼ったブローチなど、工芸の絶品もあります。
これらの細工をよく見るためには、やはり単眼鏡を用意していったほうがよいでしょう。

全ての展示を見終えて展示会場を出たのは、午後3時。
外には、まだ入場待ちの表示が出ていました。

入館まで10分待ち、「清明上河図」を見るまで180分待ち。
一見すると朝並ぶよりも入りやすそうですが、ここで注意すべきは「閉館時間は午後5時」という点です。

係員さんに聞いたところ、展示会場そのものは午後5時で終了するため、これから入館する人については
5時までに他の展示を見てもらわないと「清明上河図」しか見られなくなってしまう・・・とのことでした。
「清明上河図」の列には午後5時まで並べるそうなので、閉館後も連日3時間かけて人を捌くのでしょう。
・・・これで会期中の延長開館がない理由がわかりました。

係員さん、いつもご苦労様です(^^;。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 特撮リボルテック「海底軍艦... | トップ | チャイナ・ミエヴィル『都市... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿