goo blog サービス終了のお知らせ 

Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

東のエデン 最終回 「さらにつづく東」

2009年06月28日 | 東のエデン
『東のエデン』TV編も、いよいよ最終回。
これまでの10話でたっぷりと仕込んできた布石を、最終話で一気につなげることで
決着へと持っていった展開は、TVシリーズの締めくくりにふさわしいものでした。

アニメ作品がこれだけたくさんつくられるご時勢、物語をうまく着地させるのに失敗して
それまで熱心に話を追ってきた視聴者の時間と労力を一瞬で徒労に終わらせる作品も
見られる中、『東のエデン』は実にキレイな着地をキメてくれました。
少なくとも私としては、(ほぼ)リアルタイムで追いかけてきて、最終回というゴールに
たどり着いた今「ここまで一緒に伴走してきてよかった」と思える作品となりました。

さて前回のラストで帰還した全裸ニートの群れは、ドバイ送りの元凶である滝沢を探すため
群れを成してショッピングモールへと突入。


エデンメンバーがほうほうの体で逃げ出す中、平澤は東京駅についた咲とみっちょんに
携帯電話で「お前たちは豊洲に来るな」と警告します。


バックの赤レンガが東京駅の目印。白い壁の高さも、たぶんロケハン済みでしょうね。
こういう小さなリアリティの積み重ねが、作品世界に強固な存在感を与えます。

ところでモールへと殺到するニートの影は、なぜかゾンビか木偶人形のような姿です。

これは何度か出てきたジョニー人形と同じ形状ですが、まだ明かされてない伏線と見て
よいのかな?

そして、最終話のタイトルカット。

上を見上げるエデンメンバーと、一人離れて呆然と空を見る滝沢の姿。
そしてひとりだけ、振り向いて滝沢を見つめる咲。
右横に見えるのは帰国時に二人で撮った、最初で最後のツーショット写真ですね。
全部見終わってから改めてチェックすると、このカット一枚に最終話の結末がきっちりと
集約されていることがわかります。

ニートから逃れ、平澤の誘導で映写室まで辿りついたエデンメンバー。
監視カメラでニートたちを見てみると、彼らは連絡手段の確保その他もろもろのため、
山となったケータイを掘り返している真っ最中でした。

そしてそんな映像の中に、置き忘れてきたみっちょんのノーパソを持ってるヤツが!

一方、携帯電話で平澤と話す咲は、滝沢が記憶を消すに至った顛末を説明します。

「迂闊な月曜日」の実現の陰には、2万人のニート動員があったこと。
そのニートに混じって滝沢が動いたことで、彼やニートにミサイル発射疑惑がかかり、
さらには避難民からの逆恨みや、それに対するネット中傷までが起こってしまったこと。
それらを収拾するために滝沢が全ての手を打ったあと、自分の記憶を消したこと・・・。
ネットの持つ強さと危うさの両面が絡み合った事件、それが「迂闊な月曜日」の真実でした。


「滝沢くんは、魔法の携帯を持ってたから住民を助けたんじゃないと思う。
 ただ、当たり前のことをしようとしただけなんだよ。」

滝沢が去った今、自分たちだけでミサイル60発を阻止しなくてはいけないという咲。
でもそれに必要な板津のデータを開けるには、みっちょんのノーパソが必要です。
そしてノーパソ奪還のために春日から進言された「攻めに転じるための提案」とは
「木を隠すなら森の中、全裸にまぎれるなら全裸」というものでした。


当然おネエは絶対拒否(笑)ですが、平澤と大杉はやむをえず同意。

かくして、ケータイ一丁だけ持っての全裸潜入作戦が発動します。

かたやデータ分析のため、やっぱりショッピングモールへ来てしまった咲とみっちょん。

二人を乗せてきたタクシー運転手を意味ありげに見せたこのカットも、新たな謎?

そして二人の女子を出迎えたのは、当然ながら全裸のニート軍団でした!!

必死でニート軍団を突っ切ったあとに、みっちょんが発した毒舌がヒドい。
「大丈夫、あの人たち、たぶん二次元にしか興味ないから。」
おいおいみっちょん、それはニートに対する認識が間違ってると思うぞ・・・たぶん。

そのニート軍団に潜入した平澤たちはノーパソ奪取に成功したものの、よそ者とバレて逃亡。


ドキッ!男だらけの大運動会。もはや男祭り、かつ裸祭り状態になってますが、
これってノイタミナ枠としてはアリなんですか、どうなんですか!?

でもこのへんのドタバタ劇はアニメのノリを最大限に活かした筋書きと演出であり、
そして重い内容を疲れさせずに最後まで見せようとする工夫にも感じられました。

言いたいことや表現したいことは譲らないけれど、見る側に負担を過剰に押し付けようと
しないところは、プロとして立派な姿勢だと思います。
というか、いくら話題作でもこれができない製作者は、やはりプロとしていかがなものか。
観客が自分で足を運ぶ映画に比べ、不特定多数が見るTVアニメという媒体においては
むしろこの点はもっと問われるべき責任であると、私は思っています。

ドタバタの中でノートを託された大杉は、同じくニートから逃走中の咲たちと合流に成功!

ジョニー隠しに使われたみっちょんのノーパソは、ギャグに見えてさりげなく提示された
「イチジクの葉」=「禁断の知恵」の変奏では?などと勘ぐってみたりして。

たとえば携帯電話についても「禁断の知恵の実」のイメージであり、また同時に
「一度手にしたら、もはや欠くことのできないもの」の象徴にもなってますからね。
衣服代わりのPCってのも「エレガントな批評行為」のひとつかもしれません。
あるいはこれがホントの「ウェアラブルPC」だったりして。
(それらしいこと言っといて、結局こんなオチなのが申し訳ない。)

おネエの手引きでニートから逃れた咲たちは板津のデータを分析し、ミサイルの目標に
この豊洲が含まれていると知ります。

そんなときエデンメンバーとニート軍団の携帯へと一斉送信されてきたのは、滝沢からの
メッセージ動画でした。



「あー、テステス。ただいまカメラの試験中。

 ハーイ、ジョニー!
 今日もまいらをココに集めたのにはワケがありまつ。
 それは、迂闊な月曜日の真相を知っているもまいらと、
 オレを訴えようとした住民を新たなミサイル攻撃で
 亡き者にするためなのでつ!」

進んで道化を演じる救世主の姿。見ているこちらも胸が痛くなります。
咲が必死で否定したくなる気持ちも、痛いほどよくわかるし。

「これはウソではありません。
 ただし、生き延びるチャンスは無きにしも非ず。
 まず生き延びたいジョニーは屋上に集まるように!!」

場面は変わって、ATOのヘリに乗り込む物部と置き去りにされる結城の様子。

ジュイスが手に入らなかったことをなじる結城を、物部はあっさり突き放します。


「すまないが、後は自己責任ってことで。」

これが自己責任を過剰に評価し、自分のそれに絶対の自信を持っている男の答え。
こんな連中が上に立って弱い者の行く末を決めたとしても、最後はこのひとことで
切り捨てられるのがオチでしょう。
それに気づけなかった結城の愚かさについては、今さら繰り返すまでもありません。

途方にくれる結城に声をかける、No.2の辻。
背後には彼を迎えに来たリムジンが停まってます。

すでにBPさんも指摘してますが、この人物の立ち位置はとても気になります。
やはりトリックスターの臭いがぷんぷんな彼は、一体何者?
映画で示されるであろう回答が、今から楽しみです。

豊洲ではニートが屋上に殺到し、かたや退路を塞がれた咲たちは脱出もままならず。
かろうじて動いていたエレベーターに乗り込む一行とそれを追ってきたニートの前に
現れたのは、さっき動画を送ってきた滝沢朗その人でした・・・。


一人で行こうとする滝沢に手を差し伸べる咲。


一度はためらうも、その手を握って一緒に走っていく滝沢。


そして滝沢は“前にも使った”奥の手によって、60発のトマホークに立ち向かいます。



「BANG!!」

このとき滝沢の言葉が撃ち砕いたものは、一体なんだったのでしょう。
その答えを(自分で考えて)見つけることこそ、この『東のエデン』というアイテムが
全ての視聴者へと課した「noblesse oblige」なのかもしれません。






空に閃く爆発を見ながら、黒羽、辻、物部、結城、そして板津(死んでないじゃん!)、
さらにそれを見た全ての人々は、どんな思いを抱いたのか。


そしてすべてが終わったあとで、滝沢が選んだ最後のオーダーとは・・・。




「ちぇ、このメリーゴーラウンド、ゴールデンリングがついてねぇや。」

てっぺんの王冠が失われ、傷つき傾いたメリーゴーラウンド。
それはまるで日本の姿を戯画化したようでもあり、また「おとぎ話」と
「淡い恋」の終わりを象徴しているかのようにも見えました。

こうしてひとつの物語が幕を閉じ、そして新たなる物語への予兆が示されます。

このラストシーンが、第1話冒頭のモノローグへと繋がるワケですね。
さらに劇場版ではいよいよ「その後」の物語が描かれるのでしょう。



『東のエデン 劇場版Ⅰ The King of Eden』(11月28日~)
『東のエデン 劇場版Ⅱ Paradise Lost 』(2010年1月~)

公開まで先が長いとはいえ、これはもう期待するありません!
予想外の2部構成ですが、それに見合ったスゴイ作品を切望します。

そして今作で「王」ならぬ「巨匠」の資質を証明した神山監督。
その世界を救わんとする志、確かに受け取りました。
願わくは滝沢と同じように、これからもそのまま変わらずにいてください。



さて、遅れながらの掲載となりましたが、『東のエデン』のレビューもひと段落です。
すばらしい作品をつくってくれた神山健治監督、羽海野チカ氏、川井憲次氏、
そしてプロダクションI.Gをはじめとするスタッフ全員に惜しみない拍手と賞賛を、
そしてレビューをお読みいただいた方に、最大の感謝を捧げたいと思います。

そしてクロスレビューで私を引っぱってくれたshamonさんBPさんにも、重ねてお礼を。
おかげでレビューのモチベーションも保てましたし、いろいろ勉強になりました。
また機会があれば、よろしくお願いします!
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 闇狩り師シリーズ『黄石公の犬』 | トップ | 『黄石公の犬』サイン会 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こちらこそ~ (shamon)
2009-06-29 20:25:39
お世話になりました~>レビュー。

いやー実に面白いシリーズでした。
TVの前で毎週ワクワク(笑)。
さすが神山監督、今年のメディア芸術祭では最低でも優秀賞か?

>平澤と大杉はやむをえず同意。
クールな切れ男・平澤(滝沢の次に好み)も形無しで大爆笑。
でもって大事な?「ジョニー」を愛しの咲に見られてしまう大杉、トドメにライバル・滝沢に助けられ・・・ですな^^;。

>みっちょんが発した毒舌がヒドい。
いやこれは^^;当たらずとも(以下略)。

>ジョニー隠しに使われたみっちょんのノーパソ
この後のみっちょんのリアクションが最高でした(爆)。
TVに向かって「わかるわかるわかる」って叫びたくなりました。

タクシー運転手はきっと・・・ですよね?
年末が楽しみだっ!
返信する
姐さんあってのレビューですって (青の零号)
2009-06-29 23:41:20
shamonさん、いつもありがとうございます。

>お世話になりました~>レビュー。
こちらこそ、どうもです~。
きちんきちんと更新される「ひねもすのたりの日々」がなかったら
たぶん記事書くのがもっと遅れるか、途中で折れちゃってたかも(^^;。

>TVの前で毎週ワクワク(笑)。
ですねー。
しかも回を追ってもボルテージは下がらないし、個人的には期待を裏切られなかったし。
リアルタイムで見てることの喜びを満喫できるという「連続TVアニメの楽しさ」を
久々に堪能しました。

>さすが神山監督、今年のメディア芸術祭では最低でも優秀賞か?
これでもし何の賞にも挙がらなかったとしたら、来年からアニメ部門なんて
なくした方がいいですね(笑)。

>クールな切れ男・平澤(滝沢の次に好み)も形無しで大爆笑。
しかも倒れこんだあとにはグラウンド(地べた)でのパンチ連打!!
外見以上に中身の熱い男の本領を発揮してました。まさにひとり男祭り状態(笑)。

>トドメにライバル・滝沢に助けられ・・・ですな^^;。
あそこはいいですよね~。私は滝沢の男っぷりに燃えましたよ!!
(あえて「萌え」と書かないのは、「TOP」ファンの意地ってとこです。)

>いやこれは^^;当たらずとも(以下略)。
いやぁ、ニートって別に草食系じゃないっすよ。
ただ食うチャンスがないだけですから、目の前においしそうな獲物が来たら大変!

>タクシー運転手はきっと・・・ですよね?
>年末が楽しみだっ!
やっぱり・・・ですかね?
年末に向けて、こっちもテンション上げときますよ~!
返信する
終わったぁー (BP)
2009-07-04 18:42:38
 青の零号さん、shamonさん、こんちは。

 この週末に東海地区でも無事放映されました。
 午前2:05。私は会社での深夜残業後、車で帰宅中に生放映の音だけカーステレオで聴きました。まさか生で聴くことになろうとは! (先週は仕事が地獄。この日は2時間しか寝てない)

>>お世話になりました~>レビュー。

 毎週、3人で書いて、楽しかったです。
 週一、このネタがあることで、ちょっと楽できたのに、これから困りそう(^^;)

 またクロスレビューできる作品が出てくるといいですね。(次は磯作品??)

>>たぶん記事書くのがもっと遅れるか、途中で折れちゃってたかも(^^;。

 これは僕もそうかも。
 途中でかなり書くことなくなった回があったような、、、作品はずっと楽しかったのですが、、、。

>>リアルタイムで見てることの喜びを満喫できるという「連続TVアニメの楽しさ」を久々に堪能しました。

 ワンシーズンに一個、こういうのあるといいですよね。

>>タクシー運転手はきっと・・・ですよね?
>>年末が楽しみだっ!
>やっぱり・・・ですかね?
>年末に向けて、こっちもテンション上げときますよ~!

 年末まで待てません。
 というわけで『ヱヴァ』に浮気。

 メディア芸術祭の神山監督に強敵現る!
 (『電脳コイル』が『ヱヴァ序』と同時受賞だったですよねー)
返信する
いろいろお世話になりました! (青の零号)
2009-07-06 22:43:37
BPさん、こんばんわ。
とりあえずTVのほうは見事に終わりましたねぇ。

>午前2:05。私は会社での深夜残業後、車で帰宅中に生放映の音だけ
>カーステレオで聴きました。
>まさか生で聴くことになろうとは!
激務の中で迎えた東海地方の最終回を、なんとか音だけでも
リアルタイムで押さえた、という根性がエライ!
ある意味、それもいい思い出になりますよね。
(こうでも書かないと、あまりにツラすぎるので・・・お疲れさまです。)

>毎週、3人で書いて、楽しかったです。
ホント、いろいろお世話になりました。
私にとっては、各自の視点の違いや見逃した部分の発見などが
自分が書く上での参考や刺激になってましたね。
この作品でクロスレビューができて、よかったです。

> ワンシーズンに一個、こういうのあるといいですよね。
見るのにも記事を書くにも気合が入りますしね(笑)。
でも「いろんな見方ができて、しかも議論に耐えうる作品」って
なかなか難しいですけど。
そうなると、やっぱり磯作品ですか?(笑)

>年末まで待てません。
>というわけで『ヱヴァ』に浮気。
そういえばそちらで「破」の記事を読んで、私がTV版EVAに感じた
「物足りなさ」の理由が、少しわかった気がしました。

あれを見てたとき、私がSF者として持ち続けていた期待って
「これまで見たことのない世界が、ラストに待っているかもしれない。」
というものだったんですよね。
でも最後に出てきたのは「ごく当たり前の、見慣れた日常」への回帰。
作品の意図するところはともかく、少なくとも私個人にとっては
「いやいや、この終わり方は違うだろう」という気持ちがあって、
それが今でもどこかでひっかかってるんだと思います。

私がいまだに『トップをねらえ!』を愛してやまない理由も、結局のところは
主人公たちが「銀河中心核」や「ブラックホール爆弾最深部」といった、
「ヒトの行けない領域」まで行ってしまうところにあるのかもしれません。
「ああ、ヒトはとうとうこんなところまで来てしまった」という無常感と、
それとうらはらに感じる法悦感とでも言いましょうか。

もし新劇場版EVAにそんな感じがあるとすれば、ちょっと期待できそうですね。
返信する

コメントを投稿