Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

東のエデン 第9話 「ハカナ過ギタ男」

2009年06月16日 | 東のエデン
東のエデン、第9話。

京都の鬼才・板津豊、英雄として死す。

世間コンピューターの予測は、まさにハカナ過ぎました。

話の流れや真相への性急な迫り方、そして「ハカナ過ギタ男」という副題から
ある程度の覚悟はしてたけど、その死にざまはやはり衝撃的なもの。

そして彼を殺したのは、滝沢を追ってきたセレソンNo.1の物部と
京都在住のセレソンNo.10である結城の腹黒コンビです。

その板津が最後にデータを送信した先は、どうやらみっちょんの
ノートパソコンみたいですね。

(6/18訂正:この記事を書いた後で10話を見たら、転送先は
 エデンのサーバだったと判明しました。)

データの内容は「日本をミサイル攻撃」とか「先制攻撃を誘発」、
さらに「60発のトマホーク」など、なんとも不穏なモノばかり。


「迂闊な月曜日」は、やはりもっと大きな陰謀の序章に過ぎなかったようです。

そして以前のミサイル事件が「迂闊」で片付けられた影には、
やはり(記憶を失う前の)滝沢朗の活躍がありました。

自ら警官に化けた滝沢、爆心地付近での避難誘導に従事中。
やはりコイツ、根っからのクラウン気質じゃなかろうか。

話は少し戻って、板津がノブレス携帯を解析している場面。
携帯のロック解除に成功し、メモリーに残された履歴にアクセスしてみると
そこには滝沢の指示による「救助作戦」の経過が、はっきり残されていました。

この見事な段取りは、滝沢のオーダーにあわせてジュイスが組んだプランでしょうね。

一連の命令を実行するパターンは火浦医院長のときに、セレソン同士の駆け引きは
黒場社長のときに経験済み。
視聴者の経験値もしっかりと上げてからネタを割ってみせるところに、神山流の
周到な演出作法を垣間見た気がします。

さらにノブレス携帯の履歴を探っていくと、「迂闊な月曜日」のミサイル発射を
引きおこしたのは、セレソンNo.10のオーダーが原因だと判明。
どうやらこの結城という青年、自作自演の戦争で今の日本をリセットした後に
改めて「奇跡の復興」を再現しようと目論んでいるようです。


しかしそんな結城も、自分の手を汚すハメになるとてんで役立たず。
板津の轢き逃げも、彼の車を強引に発車させた物部によるものでした。



机上のシミュレートならどれだけ人を殺しても気にしないくせに、目の前の一人を
手にかけることもできない意志の弱さと、ご都合主義のヒロイズム。
たとえどんな理由であれ、この程度の人間に数百万の人々の命を左右されるのは
まっぴらごめんですね。
まして日本の将来なんて言葉、間違っても口にしないでもらいたい。
器の大きさでも火浦医院長や黒羽社長とは比較にならないし、比べること自体が
他の二人に失礼な気もします。

それに比べて、とっさの判断で板津を轢いた物部はさすがに腹が据わってました。
その覚悟、素早い判断力、そしていざとなれば手段を選ばないだけの冷酷さ。
どんな形であれ、やはりこいつこそ滝沢にとって最大の敵となりそうです。
いまのところ結城と組んでいるのも、彼を利用して自分の計画を実現しようという
狙いがあるのでしょう。

その物部が成そうとしている計画については、今もなおハッキリしないまま。
ノブレス携帯の使用履歴にも彼の記録は出てこなかったし、滝沢を探すときも
あえてジュイスに頼もうとしませんでした。
その行動の隠蔽ぶりについては、他のセレソン以上に徹底しているようです。
(ヘタすると、自分では一度もジュイスにオーダーしてないとか?)
あるいは板津が最後に見た「政府の中枢に相当近い」痕跡こそ、物部の秘密に
直結しているのかもしれません。

板津を轢いた後で「人殺しにはなりたくない」という結城に対し、
厳しく一喝する物部。

「これから何十万、何百万という人間を、ミサイルで消滅させんとする英雄が
 人ひとり轢いたくらいでビビってるんじゃないよ!」

さすがは黒羽社長をして「リアリストのNo.1」とまで言わしめた男。
結城の陳腐な英雄気取りを吹っ飛ばすタフネスぶりを、強烈に見せつけました。
しかし、かたや「ロマンチストのNo.9」と評された滝沢がこんな考えを認めるとは
とうてい思えません。

机上の理屈で数百万人を虐殺しようとする夢想家と、見も知らぬ人たちを救おうと
ひとり奮闘するロマンチスト。そして目的のためならば英雄どころか、女子供や
年寄りさえもその手にかけるであろうリアリスト。
この三者が会したとき、どんなクライマックスが訪れるのでしょうか。
そして社会の敵、真のテロリストと呼ぶべき人物は、いったい誰なのでしょう?


さらに、板津からの危険なデータを受け取ったみっちょんと咲を待つ運命は・・・!
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2 コメント

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いよいよ終盤 (shamon)
2009-06-17 19:19:45
まいどでーす。

監督の人間描写の腕がすみずみまで発揮された回でした。
結城のヘタレぶりは想像力という代物が欠けた頭でっかちの今の一部の若者まんま、
腹据わってる物部はかなりの策略家だけど日本を動かすに値する人物ですね。

>やはりコイツ、根っからのクラウン気質じゃなかろうか。

彼の行動の根底には「ほおっておけない」が常にありますね。
大杉の件もあそこまですること無いのに動いてしまう。そこがセレソンたるゆえんなのでしょう。

東京ではいよいよ明日最終回、
TVでの決着をつけた上で劇場版へどうつなぐか注目です。
返信する
大詰めですねー (青の零号)
2009-06-17 22:45:35
shamonさん、まいどでーす。

>結城のヘタレぶりは想像力という代物が欠けた頭でっかちの今の一部の若者まんま
これに近い論説が実際に展開されていて、しかも行き詰ったニート層などに
ある程度の支持を受けてるらしいのが、一番の問題だと思いますよ。
で、そういう軽はずみな発言に乗っかってしまうと
結局は物部のような策士にうまく利用されちゃうよー、という警告では。

>腹据わってる物部はかなりの策略家だけど日本を動かすに値する人物ですね。
たしかに器は大きいと思いますけど、ここまでキレるとやっぱり怖いですよね。

>彼の行動の根底には「ほおっておけない」が常にありますね。
人に任せるだけでなく自ら進んで事態に介入していく姿勢が
結城のようなタイプとの決定的な差だと思います。
あと物部と違って、やることにかわいげがあるのがいいですよね。
周囲をなごませるのも、クラウン(ピエロ)の重要な資質です。

いまさら当たり前の話なのですが、いよいよ大詰めにつき、ここで再確認。
ノブレス携帯って使い方によっては正しくも使えるし
どうしようもなく乱用できるという点で、まさに「権力」の象徴そのものですよね。
ではそういう権力を、もしも一般市民レベルに持たせたとしたら
それに見合った使い方ができるか?というところをシミュレートしつつ
見ている人それぞれに対しても考えさせようとしているのが、
この『東のエデン』という作品だと思います。

滝沢がくり返し「無責任なMr.OUTSIDEをぶん殴る」と言ってますが
このMr.OUTSIDEの部分を「国の主権者」に置き換えるならば、
最後にぶん殴られるべきなのは無責任な傍観者を決め込んでいる
我々なのかもしれませんねぇ(^^;。
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