Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

「009 RE:CYBORG」神山健治監督×宮野真守さん舞台挨拶 “PRE:CHRISTMAS!”

2012年12月22日 | アニメ
新宿バルト9で12月22日に開催された『009 RE:CYBORG』の舞台挨拶つき上映に行ってきました。

リピーター御礼企画の第8弾となる今回は、上映終了後に神山監督と009役の宮野真守さんが
登場するとあって、会場内は女性が圧倒的に多かったです。

今回は2度目の鑑賞なので、細かい部分や見落としていた部分にいろいろと気づくことができました。
メカニック的には、アメリカのミサイル巡洋艦から六本木ヒルズへ撃ち込まれたのが「トマホーク」の
後継機として開発されている超音速巡航ミサイル「ラトラー」だったり、002が操縦しているF38
(F22と23の合いの子っぽい形状にカナードを装備した、架空の米軍機)を追跡しているのが、
ロシアか中国の戦闘機であること(形状がスホーイっぽいので、Su-30か殲撃11の系統?)が、
新たに確認できたところです。ヘルメットと機体にも赤い星がついてましたからね。
あと、最後にゼロゼロナンバーズが弾道弾迎撃のため占拠したイージス艦の名称が「シャイロー」に
聞こえたのですが、同名のSM-3搭載艦が横須賀基地に配備されていたはず。

今作では3Dの効果を最大限に生かすため、アオリやパースのついた絵がたくさん出てきますが、
特に目立ったのは、003の足元からナメるように撮るカットですね(^^;。
なお、トモエについても同じ撮り方をしているのは、両者の同一性を暗示する演出なのかも。
そういえば『攻殻SSS 3D』の舞台挨拶で、神山監督が「3D映像だと、下から見上げたときに
女性のスカートの中とかのぞけそうな感じで、ドキドキしませんか(笑)」と言ってましたが、
今回の003(とトモエ)は、まさにその言葉を実践したかのような映像でした(^^;

009の代名詞である加速装置は、前半は009の主観で、後半は加速状態を客観的に見た演出で
その「速さ」を表現していますが、後半はちょっと石川五右エ門の斬鉄剣っぽい気がしました(笑)。
大量の敵を一瞬で倒す009はカッコいいけど、個人的にはハイスピードカメラ風の主観映像のほうが
アニメの表現として斬新だし、迫力があったと思います。

ラストの解釈については、神山監督自身も「はっきりと描いてしまいたくなくて、観客に委ねた」と
言っているとおり、あのシーンだけで断定的な答えは出せないと思います。
ただし、「脳こそが神そのもの」というピュンマの仮説と「神は乗り越えられる試練しか与えない」という
トモエの言葉を総合すると、ラストに起こった「奇跡」は、人の意識のネットワークが生んだ超越者である
「集合的無意識」の存在を暗示すると共に、それが009たちを人類にとっての「希望」と認識したことで
(具体的な手段は不明ながら)なんらかの力で彼らを救った・・・とも解釈できそうです。
だとすれば、今回の『009 RE:CYBORG』も『攻殻SACシリーズ』や『東のエデン』と共通の世界観を持つ、
一種のパラレルワールドと見なすこともできるでしょう。

以前にお台場の「ノイタミナショップ&カフェシアター」で行われた『東のエデン総集編上映会』で
神山監督から「新作と『東のエデン』、そして『攻殻SAC』は、同じ世界というわけではないにしろ、
ある種のつながりがある、つながってたらいいなという思いで作っている」との説明がありましたが、
その言葉が『009 RE:CYBORG』のラストにそのまま反映されているというのが、私の考えです。

ですから、脳波通信とネットワークを司る力を持つ003が、流れ星を見上げて祈りを捧げる姿は、
人類全体の「願い」の象徴であり、同時に神山作品に繰り返し登場する電脳シャーマンの一員として、
この世界を超えた存在へと直接呼びかけているようにも見えました。

その一方、ハインリヒの「神ほど自分勝手に人間を苦しめてきた存在はいない」という発言は、トモエの
「神は乗り越えられる試練しか与えない」という言葉と対になって、「神」の持つ「残酷さ」と「慈悲」の
二面性を表すものになっています。
そしてこの二つの言葉は、そのまま「東日本大震災による被害」と「震災後の復興に立ち向かう人々」に
向けられた、一種の「メッセージ」である・・・とも解釈できるでしょう。
震災によって甚大な被害を受けながら、11月17日に再オープンを果たした石ノ森萬画館のことを思うと、
『009 RE:CYBORG』は、そうしたメッセージを伝えるよう運命付けられていたのかもしれません。

そう考えた場合、この作品から聞こえる「彼の声」は、神山監督、そして石ノ森章太郎先生から届けられた
「いま生きている私たちへの呼びかけ」のようにも感じられます。
これが劇中終盤でジョーが言う「彼の声が、今は全く違うものに聞こえる」というセリフを理解するうえで、
ひとつの手がかりになるのではないかと思います。

さて、『009 RE:CYBORG』上映終了後には、神山監督と宮野さんによる舞台挨拶が行われました。
初上映から2ヶ月を越えて上映が続いていること、熱心なリピーターと今回が初鑑賞のお客さんに対して
お二人から感謝の言葉が述べられた後、作品やアフレコについてのエピソードが披露されました。

神山監督は今回初めて音響監督も手がけたということですが、3Dの映像を見ながらのアフレコでは
ブレスタイミングが2Dに比べて若干早くなる傾向があり、声優さんに苦労をかけてしまったとの話。
宮野さんは「最初はちょっと合わせにくかったけど、これが人どうしの間合いなんだなと思いました。」
・・・ということは、3Dの場合は舞台的な呼吸で演じたほうがうまくいくのかも。

アフレコ初日のエピソードとしては、音響ブースに入ってチェックをしていた神山監督がふと見ると、
キャスト側のブースがやたら盛り上がっているので、音声レベルを上げて中の様子を聞いてみたら
宮野さんがスギちゃんのモノマネで「ゼロゼロナンバーズのプロフィール」を語っていたとか。
これを聞いた本人は「なんでスギちゃんだったんでしょうね・・・加速装置するぜぇ~!」といきなり実演。
ちなみに2日目もこのノリでスタジオに入ったら、ギルモア博士役の勝部演之さんから「まだ早いって!
はじめからそのテンションだと、最後まで持たないから!」と言われたそうです(^^;。

劇中で印象的なシーンを聞かれて、神山監督は「最後のジョーのシャツが、萌え袖なところです(笑)」
男性スタッフが絵を描くと、袖をピッタリな長さに描いてしまうので、そこは女性目線にこだわって
「違う、そこは(袖を余らせて)萌え袖にして」と監督自ら指定したそうです。
これには宮野さんも「それは初耳でした(^^;」とビックリ。

ちなみにこの日、宮野さんの衣装は萌え袖。そしてフォトセッションで横に並んだ神山監督も、シャツの袖を
ぐいぐいひっぱって「インスタント萌え袖」に変身。これを見ていた観客からは、思わずくすくす笑いが・・・。
神山監督、相変わらずお茶目だなー。

印象的なシーンについて、宮野さんは「フランソワーズですね・・・まさかあそこで脱ぐとは(笑)」
ちなみに神山監督によると、3Dでは本番前にリハーサル映像を作るそうで、そこではスーツ姿でしたが
何かの手違いで「スカートだけ脱いだフランソワーズ」が出てきたこともあったとか。
これについて監督からは「アレは全脱ぎより強力だったかもしれません」と、うれしそうなコメントも(^^;

宮野さん自身が演じたジョーの登場シーンでは、やはり加速装置がお気に入りだそうです。
「やっぱもえますよね、加速装置!・・・いや「萌え袖」の萌えじゃなくて、火へんの「燃え」です!」

急遽行われた観客からのリクエストでは、映画の続編だけでなく、現代にあわせてアップデートされた
原作エピソードや、ゼロゼロナンバーズの解散から再結集までの空白期間を描く前日譚の希望がありました。

宮野さんいわく「なんで解散したんですかね・・・まあちょっとしたことで仲が悪くなることもありますし。
・・・たとえば、隣で何度も「飛行!」のポーズをやられて、イラッとしたとか」これは場内も大爆笑。
ここで初日舞台挨拶の小野大輔さんとのミニコントをひっぱってくるとは、わかってるなぁ。

今回のジョーはこれまでの正義感あふれるイメージだけでなく、トモエに自分勝手な依存をしたりと
「黒い・悪い」姿を見せるところもあり、宮野さんも神山監督もそういう一面に魅力を感じたとか。
神山監督は「悪ジョーはもっと描きたいですね」、宮野さんは「そんなジョーを、もっと演じてみたい」と
物語やキャラを膨らませることに意欲的でした。

続編やスピンアウトについては、映画への反応も含めて判断することになるようですが、神山監督としては
「自分以外の誰かが作る可能性も含め、いま誰かが撮らなければ新しい物語が始められない・・・という思いで
今回の009を作りました。自分の中には映画の後の画もあるので、いつかそれも撮ってみたいです。」
そして最後に「できればゼロゼロナンバーズのみんなに、また集まってもらえたらと思います。」

こうした発言が、何らかの形で今後につながってくることを期待してます。
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