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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

男鹿和雄展~すばらしき背景美術の世界

2007年08月11日 | 美術鑑賞・展覧会
shamonさんのblogに触発されて、東京都現代美術館で開催中の「男鹿和雄展」を
見に行ってきました。
ジブリ作品で美術監督として腕を振るった男鹿和雄さんの業績の数々を振り返りつつ、
「アニメにおける美術」という、不可欠なのに見過ごされがちな仕事にスポットを当て、
その内容を紹介していくという、かなり意欲的な展覧会です。

館内に入るといきなり入場券を買う人の列に遭遇。私が行った日はそんなに長くは
並びませんでしたが、今後はさらに入場者が増えてきそうですので、できれば先に
コンビニなどで入場券を買っておくほうが、無駄な時間が減ると思います。
ちなみに美術館の向かいにあるローソンでも券を販売してました。
日によっては入場制限があるようですが、この日はそこまでの規制はなし。
でも中に入ると結構な数の人が絵の前にずらりと並んでます。
客層は親子連れ、若いカップル、年配のご夫婦など、幅広い客層が入っていて
「ジブリ」と「トトロ」のネームバリューの大きさをうかがわせました。

展示は三部構成で、冒頭は男鹿さんがジブリに関わる以前の仕事を集めたもの。
『幻魔大戦』『カムイの剣』『時空の旅人』など、初期の角川アニメ作品の美術では
大都市の崩壊や広大な雪原、幻想的なタイムトラベルシーンなどを手がけており
ジブリ作品とは違った男鹿さんの画風とそのすばらしさに触れることができます。
個人的には『妖獣都市』での、都会的かつ怪奇幻想色の強い美術の数々と
昔から大好きなアニメのひとつ『カムイの剣』の雪原の絵が、特に印象的でした。
雪原の白はアニメの画面だと一色に見えるけど、実際の背景美術はピンクを含む
多数の色で構成されていて、モネの「かささぎ」を思わせる色使いになっています。
こういう微妙な色を存分に鑑賞できるのも、展示会ならではの醍醐味ですね。
この絵はさして人気もなかったので、じっくり眺めることができました(^^;。

次に控えるジブリ時代の作品の数々は、時期的にも脂が乗り切っているという感じで
名実ともに男鹿さんの代表作といえる作品が揃っています。
『となりのトトロ』を始めとする数々の背景美術は、キャラの絵が無くても十分なほどの
強烈な存在感を醸し出しており、絵の中からサツキやメイ、それにトトロやネコバスたちが
ひょっこり顔を出してきそうなほどのリアリティを感じさせます。
この背景美術のリアリティが、作中の登場人物たちの存在感や生活感を支えているのだと
改めて実感させられました。
特に感激したのは、夕日の描写。その繊細さと鮮やかさは映像で見た以上の美しさです。
こればかりは実物を見てもらわないと、どうにも伝えようがありません。
海と空の青、森や田畑の目に染みる緑も実に爽やか。
セルと背景画を重ねた水田のシーンでは、絵の中を吹く風まで感じられるようでした。

最後の展示は、男鹿さんがアニメ以外で携わった仕事や、フリーになった後で手がけた
絵本や美術関係の仕事の紹介。
中小企業の広報誌の表紙絵は季節の風物詩などを織り込んだ日常の光景が中心。
小さい絵だけれどバラエティに富んでいて、男鹿さんの感性と精細な描写が光ります。
吉永小百合のライフワークである原爆詩や戦争童話の詩文集では挿絵を担当しており、
その卓越した描写力で美しい風景と無残な戦争の光景を鮮烈に対比させています。
これらの作品には強いメッセージ性も感じられ、ジブリ作品からさらに表現の奥行きを
ひと回り深めた感じも受けました。
絵本などの挿画では、アニメ美術での濃密なタッチとはうって変わった淡い色使いで、
かつての日本の素朴な生活をうまく描き出していると思います。

展示の終わりには男鹿さんが絵を描く様子やアニメ製作のプロセスについての解説があり
これまで見てきた作品がどうやって作られたかがよくわかる仕組みになっています。
最後には折り紙体験や記念撮影、そしてお約束のジブリ作品物販コーナーが待ってます。
今回は子ども向けの商品だけでなく、男鹿さんの故郷・秋田の地酒と地ビールも販売中。
どちらも男鹿さんの絵がラベルになった限定商品です。
しかも日本酒の銘柄はあの「刈穂」。ポン酒好きとして、これは買わずにいられません。
これに田沢湖ビール2種も足して、分厚い画集と一緒に家まで持って帰りました。
重たい思いをしたワリには、もったいなくてまだどちらも飲んでませんが…。

展示会は質・量ともに圧巻の内容で、次から次へと出てくる作品に目を奪われっぱなし。
それぞれの作品に描かれた情報量も多いので、最後まで見ると相当満腹感がありました。
あとは館内がそれほど混まず、客がスムーズに流れてくれるといいんですけどねぇ。
とにかく充実した内容なので、混雑覚悟で見に行くだけの価値はあると思います。
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何はともあれ「受胎告知」

2007年03月28日 | 美術鑑賞・展覧会
オルセー展の会場を出ると、その足で国立博物館へ。
開催中のダ・ヴィンチ展はどうだろうと様子をうかがって見ると、門の表示板には
「待ち時間0分」との掲示が出ていたので、そのまま入場してしまいました。

展示場所は普段入ることの少ない本館特別5室。
部屋の入口にはテロ対策とおぼしき手荷物預かり所と金属探知ゲートが待ってます。
煩わしいのはイヤなので荷物はロッカーに預けて手ぶらで入場すると、薄暗い内部には
つづら折りのようなジグザクの斜路が設置されてました。
ピーク時にはここにずらっと人が並ぶんだろうなぁ。
今回は先頭あたりに少し並んでいるだけだったので、まずはひとつ手前の段から
前の人のアタマ越しに鑑賞させていただきました。

うーむ、前にウフィツィで見たときより発色が鮮やかに見える。特に赤が良い。
画面全体もぐっと生々しく、精気に満ちた感じを受けます。
これが「モナ・リザ」の展示でも威力を発揮したという、暖色系の照明と暗い室内の
相乗効果なのでしょう。
ガラスへの写りこみも無いし、展示環境については過去最高かもしれません。
最前列に行くと背景が見づらくなるので、できればここから全体像をつかんでおいて
それから前に進むのがよいと思います。まあその日の混み具合によるでしょうけど。

だらだら見ていると係員に注意されたので、今度は列に並んで絵の真正面へ移動。
ここではくだんの係員から「立ち止まらずにご覧ください」とせっつかれるので
じわじわとカニのように歩きながら鑑賞せざるを得ません。
絵の端から端まで通過するのに、長くてもおよそ数十秒といったところ。
まるで巡礼というか、ダ・ヴィンチ詣でといった気分です。
上の段でも眺めたし、ウフィツィではもっとゆっくり見たから我慢もできましたが
もしこれだけだったらとても見た気にはなれないなぁ、というのが本音ですね。
展示環境の良さが絵のすばらしさを際立たせているだけに、なおさら残念です。

特5を出ると、第2会場の平成館には行かずにまず本館の常設展をひとめぐり。
(その前に2階から正面階段を見下ろすのは、夏以降のお約束です。)
今回は明珍の自在龍置物が見られず。でも国宝室で期間限定展示中だった
空海自筆の「風信帖」を見られたのは、実にラッキーでした。
企画展示の「下絵―悩める絵師たちの軌跡」には、応挙の絵も登場。
もちろん、愛らしい応挙犬にも出会えます。

常設展でおなかいっぱいになった後のせいか、平成館の企画展示については
それほどそそられませんでした。
天才の創造の秘密を模型とビデオ、それにCGで紹介するという内容でしたが、
ビデオは一連の番組が終わるまで人が流れないし、「受胎告知」を見終えた人は
どんどん入ってくるしで、あまり長居する気にはなれないです。
混み具合で言えば間違いなく「受胎告知」の部屋よりも上でしたね。
本人作かどうかはさておき、テラコッタの「少年キリスト像」は良かったですが。

私にとっては、やっぱり今回の展示は「受胎告知」に尽きますね。
近くでじっくり見るのは難しいかもしれませんが、これだけ良好な展示環境で、
しかも日本で見られるということはもうないと思います。
今ならまだそんなに混んでいないようですし、早めに見に行くのが吉でしょう。
ダ・ヴィンチ本人をよく知りたい人や、その業績に科学史的な興味を持つ人は
平成館の展示のために体力を温存しておくことをお忘れなく。
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オルセー展に行ってきました

2007年03月25日 | 美術鑑賞・展覧会
さて、24日は朝起きたらいきなりの大雨。
それでも今日を逃すともう行けそうに無いということで、上野くんだりまで
「オルセー美術館展」を見に行ってきました。

雨のおかげで出足が悪かったのか、11時ごろ会場に着いたにもかかわらず
並ばずには入れたのはラッキーでしたね。
それでも会場内は大混雑。一枚の絵に四重五重の人だかりができているので
せっかちな私はどうしても駆け足の鑑賞になってしまいました。
それでも気にいった絵だけは食らいつくように見てきましたけど。

それでは、以下に私の気に入った作品を列挙してみます。

モリゾ「ゆりかご」
会場の一番アタマに展示されていた絵。ここでいきなり人だかりができるのが
会場内の列がなかなか先に進まない一因でもあります。
母と赤子というおなじみの主題が、印象派のお手本のようなタッチと色使いで
静かに、しかし情感豊かに描き出されています。

クノップフ「マリー・モンノン」
1点だけとはいえ、クノップフの油彩が入っていたのはうれしい。
パッと見た感じではつかみにくいですが、憂愁を秘めた表情や輪郭を縁取る影、
画面全体を覆ううっすらとしたぼやけ具合など、随所にクノップフらしい「憂い」を
感じ取ることができる作品です。

ホイッスラー「灰色と黒のアレンジメント第1番、画家の母の肖像」
壁のほぼ一面を埋めるほどの大作。
薄暗い室内に漂う老いと死の気配と、それに決然と向き合うような老婦人の姿。
すっと伸びた背や重ね合わされた手などに、彼女の凛とした強さが伺えます。
背景の灰色と老婦人のまとう黒い衣装の対照が、画面に緊張感を与えています。
彼女の視線の先にあるのは画家の姿ではなく、自らの人生とその終わりなのです。

モネ「ルーアン大聖堂」
光の中から浮き上がる大聖堂の威容。まさに印象派の面目躍如という作品です。
立体物を思わせるカタマリ感が、画面からぐっと迫ってくるような感じ。
絵から少し離れて見るのがベストだと思います。

ロートレック「ポール・ルクレルク」
才気溢れる作家の倣岸不遜な人物像が伝わってくるような一枚。
大胆に崩したポーズと省略した背景が、モデルの人物に静物画的な「かたち」の
面白さを与えています。色使いもクール。

マネ「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」
今回の展覧会を代表する1枚をあげるなら、やはりこの作品でしょう。
色彩豊かな印象派にあって、あえて黒という色で勝負したマネの心意気を感じます。
半分が陰になった顔と印象的に配された目鼻立ち、そして少しだけ見える胸元が
黒い衣装と見事なコントラストを成しています。
黒衣の胸元に密やかに置かれたすみれのブーケは、画家の心中に秘められた思いを
暗示しているのかもしれません。

モロー「ガラテア」
モロー大好きな私にとって、今回の鑑賞目的の筆頭がこの絵でした。
印象派の手法と古典主義的なテーマが幻想的に融合した画風は、いつ見ても最高。
ガラテアのまとうレース(もしくはアクセサリー?)は、金属感のある絵具の厚みにより
立体的に表現されています。
こういった細部を自分の眼で確認できるのも、実物を見る楽しさの一つです。

ガラ「未来の宗教のための神殿」
未来風の神殿を描いた空想的な連作ですが、私にはむしろ都市のように見えました。
A・C・クラークのダイアスパーか、はたまたE・ブライアントのシナバーか。
SFファンなら誰しも、この絵には胸がときめくだろうと思います。

他にも良い絵がたくさんありましたが、とりあえずこのへんにしておきます。
会場では添え物的な見られ方でしたが、19世紀の写真を展示していたのも良かったですね。
写真芸術の発展と拮抗するように印象派が生まれ、絵画の在り方を問い直していったことが
よくわかりました。

誰でも知ってるほどの超有名作というのはありませんが、全般的に見てハズレ感のない
非常に水準の高い展覧会だったと思います。
印象派の変遷とその展開を一望のもとに見渡すという点でも、実に充実した内容でした。
会期はあとわずかですが、興味があるなら混雑をおしてでも見に行くべし!
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夢の美術館・工芸100選

2007年02月11日 | 美術鑑賞・展覧会
いつも録ろう録ろうと思いつつ、気づかないうちに放送されて録り損なう
NHKの『夢の美術館』ですが、今回は運良く放送前に気づいたおかげで
はじめて録画できました。(でもBSハイビジョンじゃないけど。)
今回は「世界の至宝・工芸100選」ということで、装飾品や調度品から
衣装やからくり人形等に至るまで、広い範囲の「工芸品」が登場します。

前・後編の2回に分けて放送される番組の第一日目では、正倉院の宝物や
故宮博物館の名品の数々、エジプトやヨーロッパの王族の品々などを紹介。
個人的には先日『芸術新潮』の故宮博物館特集の号を読んだばかりなので
汝窯の青磁や翠玉白菜、肉形石を映像で見られたのはうれしかったです。
でもそれ以上に衝撃だったのは、この番組ではじめて見た「象牙多層球」。
一個の象牙球を内側から順に彫っていくという、恐るべき超絶技巧。
ああいう非常識なまでに手のこんだ細工を見せられると、驚きのあまり
もはや笑うしかありません。

常識というか、既成概念の枠をとっぱらわれるような作品という点では、
「エカテリーナ2世の王冠」もすごかった。
そこまでするか?というくらいの徹底したダイヤずくめには、なんかもう
「ありえねぇ」という言葉しか思い浮かびませんでした。
どの角度から見てもギラギラ光って、まるで光の洪水ですよ。
ああいうモノを求める権力者の欲望と、それを形にしてしまう職人の技術。
その底知れなさには、人間の凄さと業の深さの両方を感じてしまいます。

乾隆帝の多宝格などのミニチュア好みは、今の食玩ブームに通じる感じ。
みんな昔から、精巧な模造品が大好きだったんですね。
その他にもマイセン焼やら生人形やら動物の胃石(ベゾアール)やら、
博物学的にも興味深い「おもしろアイテム」が多数登場しました。
12日放送の後半部では、国立博物館で見て以来の私のお気に入りである
「正宗」と「龍自在置物」が出てくるそうで、これも楽しみです。

紹介された工芸品については、番組のHPで全て見られます。
いくつかの作品については国内の博物館で実際に鑑賞できますので、
気に入った作品があったら、足を運んでみると良いでしょう。
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ベルギー王立美術館展

2006年12月11日 | 美術鑑賞・展覧会
最終日にすべりこみで「ベルギー王立美術館展」に行ってきました。
どうしようか迷ったけど、やっぱりマグリットの「光の帝国」は見たかったもので。

今回の催し、ベルギー絵画400年の歴史を一望に見渡せるという点では
意義があると思いますが、作家やテーマを絞った展示内容ではないだけに、
全体的に散漫かつぎこちないな印象はぬぐえません。
大物作家の大作もいくつか混じってはいるものの、その傑出ぶりはかえって
展覧会の中で浮いてしまっている気もします。
「光の帝国」などはその代表例でしょうか。

とはいっても、どの作品も王立美術館収蔵品としての格は備えているので
行く前に想像していたよりは楽しめました。
もともと好きなクノップフやデルヴィル、メルリといった象徴派の面々に加え
古典的題材に大胆なエロスを持ち込んだヌイッセンの「欲望」、ボッス顔負けの
スワーネンブルフ「地獄のアイネイアス」、若冲ばりにダイナミックな鶏を描いた
フェイト「鶏と七面鳥」などが、私の好みです。
遠近法の構図や細密描写が楽しいのはスネイエルス「イザベラ女王のラーケン巡礼」と
アルスロート「マリモンの城と庭園」。
ルーベンスは確かにうまいんだけど、肖像画はいまひとつ面白みに欠けます。
むしろドラクロワの模写と並んだ「聖ベネディクトゥスの奇跡」のほうがドラマチック。
両者の作風の違いも堪能できて、さらにお得感が高いです。
エーレンベルクの「アントウェルペンのシント・カルロス・ポロメウス教会内部」は
精密な建築物の描写だけでなく、教会に集う人々それぞれに垣間見えるドラマ性にも
注目したい作品です。こればっかりは現物を見ないと、小さすぎてわかり難いかも。
その他の作品については、私より先にご覧になったshamonさんの鋭い感想
ご参照ください。

展覧会の一方の「顔」であるブリューゲル「イカロスの墜落」ですが、この作品で
一番気になるのは「タイトルと絵がかみ合わない」という点だと思います。
画中のイカロスはすでにほとんど水没して手と足しか見えず、その大きさもかなり
適当な感じです。
私としては、このとってつけたような「適当感」が結構好きなところ。
日常の風景を描いたあたりまえの構図に神話の故事を描き込むことで、当時主流の
神話を主題とした作品へのすり替えを図ったような感じもありますし、一方では
主役のはずのイカロスが農民などの「市井の人々」より小さく描かれているという
逆説性にも、作家の意図が透けて見えるように思います。

そして今回の目玉、マグリットの「光の帝国」。
これはすごい。いうまでもないけど、とにかく強烈極まりない作品です。
静寂に満ちた絵でありながら、既知の世界が「バチン!」と断ち切られる音が
響いてくるような気がします。
開放的な青空とランプの灯が映りこむ池。その狭間で輝くランプの明かりは、
頼もしいようでもあり、どこか頼りなさげでもあります。
青空と池の鏡像の間で宙吊りにされた屋敷は、光と闇、現実と非現実の間で
不確かに漂う、人の認識を象徴しているのかもしれません。
単なるだまし絵として楽しんでもよいのでしょうけど、この絵には自分の中の
言葉になりにくい部分を刺激してやまないものを感じます。
これを見られただけで、来た価値は十分にありました。

さて、これで終わりかというと実はそうではなく、この後に国立西洋美術館の
常設展示も見てきました。
ぶっちゃけて言うと、ベルギー王立美術館展よりもこちらのほうが水準が高いかも。
不覚にもいままで西洋美術館の常設展は見てなかったのですが、傑作ぞろいで
びっくりしました。
庭先にもあるロダンだけでなく、ティントレット、ヴァザーリ、ルーベンス、
エル・グレコ、ラ・トゥールと、私程度でも知ってる有名どころがずらり。
モネやルノワール、私の大好きなギュスターヴ・モローなどの作品もありました。
しかもベルギー展より全然すいていて、思う存分見ほうだいです。
特にうれしかったのは、見る機会の少ないギュスターヴ・ドレの油彩が展示されていたこと。
数は「ラ・シェスタ」1点だけですが、サイズが大きいので見ごたえは十分すぎるくらいです。
今年度収蔵作品ということで画集にも収録されていませんし、入れ替え展示ということなので
見られる機会は今くらいしかないかもしれません。
カルロ・ドルチの「悲しみの聖母」も忘れちゃいけません。荘厳な青と気高いマリアの表情に
目を奪われる、展示作品中の白眉とも言える傑作です。
展示物の詳細はhttp://www.nmwa.go.jp/index-j.htmlでご覧ください。
(なぜだかドレは載ってないですが。)

外に出てくると、もう夕暮れ時。おなじみ前庭の「考える人」や「カレーの市民」も
イルミネーションで飾られてます。
まだ青さの残る空に「光の帝国」を思い出しつつ、パチリと1枚。
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振り向けばダリがいる

2006年11月15日 | 美術鑑賞・展覧会
上野で開催中のダリ回顧展を見てきました。
入り口のダリの写真はデカ過ぎ。客の子供がおびえてましたよ(笑)。
既に見に行かれたshamonさんの記事どおり、入場待ちの列が長いです。
来場者の内訳は女性7に男性3くらい。ダリは女性の支持が高いのでしょうか。
中に入ると人がアリのごとく絵に群がっており、確かにじっくり見る状況ではありません。
細かい象徴などを楽しむ余裕もないので、一通り回って出てきてしまいました。
そんなあわただしい中で、私の特に気に入った作品は次のとおり。

「雄羊(亡霊のような雌羊)」ダリには珍しい平面的な描写が新鮮。大胆なデフォルメが好き。
「日食と野菜の浸透」蒼い静寂の中に立つ異形の馬の佇まいに魅かれます。
「降りてくる夜の影」明と暗のダイナミックな切り分けの中にぽつんと置かれた静物の面白さ。
「記憶の固執の崩壊」平面から立体、そして時間と空間の描写へと広がっていく感覚の妙。
「新人類の誕生を見つめる地政学の子供」
ダリ作品の中でも特に想像力を刺激される作品。生まれてくるものはどんな姿なのか?

ダリにとって、古典や科学といった題材はインスピレーションの起点である一方で、
ダリ自身により解体し再構築すべき対象物と見なしていたようにも感じました。
自らの絵によって古典主義から物理科学、さらに時間や空間まで描き変えてしまおうという大胆さ。
今だったら森村泰昌の得意な「だぶらかし」や「侵入」の感覚とも通じるような感じですが
ダリの場合はやり口がより奔放かつ傲慢。そこがまたダリらしいわけですが。
それと、チェロのイメージ。これは芸術的なものの表現と見なされているようですが、
私の目にはダリ自身の顔に見えました。チェロのf字孔がダリのひげっぽいもので。
その点で「チェロを残忍に攻撃するベッドと二つのベッドサイド・テーブル」は
まるでダリ夫妻の夫婦ゲンカのようにも見えましたね。

会場の隅では延々と「アンダルシアの犬」を上映中。
昔見たときは今回のようにコメディ調の曲がなかったので、むしろ実験的芸術と思ってましたが
今回の上映でナンセンスコメディとして見方に改めて気づかされました。
そう思いながら見ていると、なんだかモンティ・パイソンの一編にも思えてきたりして。
テリー・ギリアムのアニメなんかも、ダリの影響を受けているのかな。
人を食ったような投げっぱなしのオチも含め、この映画はとても好きです。

でもダリの絵って思ったよりとっつきやすいですね。
もっと人を突き放した感じなのかと思ってたけど、意外と包容力がある感じ。
ボーッとした感じでダラダラ見られる状態ならば、より絵の世界に入り込めたかもしれません。
つくづく混んでたのが恨めしいです。

そしていつかは「燃えるキリン」と「聖アントワーヌの誘惑」も見てみたいもの。
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