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【無韓系】ドラマ「ハンニバル」のための「羊たちの沈黙」

2015年08月21日 | 無韓系日記
うん、もう、これまた面倒くさいのですが、
こんなタイトルの記事になったわけをご説明しておきますね。
そもそも、とある事情でドラマ「ハンニバル」を視聴していまして。
わぁすごく面白い!とぐいぐい視聴を進めていたのですが、ふと、
レクター博士の過去を再確認する必要があるのでは?と思ってしまったのです。

物語の時間軸としては、ドラマ「ハンニバル」は「羊たちの沈黙」以前の話なんですけどね。

ですから、これからわたくしが行うのは、
ドラマ「ハンニバル」以前に描かれたレクター博士像の再確認作業ということになります。

博士のは初登場は、小説「レッド・ドラゴン」ですが、
レクター博士を真の意味で世に出した出世作は「羊たちの沈黙」といえるでしょう。
映画も観たし、原作も読んだ~!
はずだったのですが、もう随分前で記憶も曖昧。

そんなわけで、あらためて原作を読んだ上で、映画を視聴いたしました。
ドラマ「ハンニバル」をより楽しむための視聴ですので、
感想はドラマにからめていろいろとなっております。
ご了承ください。

〈あらすじ〉

FBIアカデミーの訓練生、クラリス・スターリングは、
行動科学課の長、ジャック・クロフォードに呼び出された。
稀代のシリアル・キラーであるハンニバル・レクター博士に
インタビューをしてきてほしいという。
このチャンスを最大限に生かしたいクラリスは、
おそろしい殺人鬼の収監されている監獄へと足を運ぶ。

同時期、世間では、バッファロウ・ビルと呼ばれる連続殺人鬼が、
次々に犯行を重ねていた。
妙齢の女性をさらい、皮をはぐという猟奇殺人。
犯人の狙いは何なのか?FBIは次の殺人を防ぐことができるのか?

レクター博士からヒントをもらったクラリスは、
訓練生の身でありながら、バッファロウ・ビルの正体に迫って行く。
一方レクター博士は、この機会を利用してふたたびの自由を手に入れようとしていた……。


以上は映画のあらすじですね~。
映画の話をしながら、原作やドラマの話を一緒にしてまいりましょう。

あ、ではネタバレしつつ進めさせていただきます。


いや~、何年ぶりに見返したんだろ、この映画。
人間の記憶なんて曖昧なものですなぁ。
バリキャリ風にかっこつけた
クラリスの赤い口紅がすごく印象に残っていたのですが、
今観ると一番印象的なのは、
ボサボサすっぴんで訓練に励むクラリスの若さ!初々しさ!

か~わ~い~い~!

レクター博士でなくても、ぐっときちゃうなぁ。
嗜虐心をそそる、美しくも冷たいお顔立ち。
ぽちゃぽちゃしたカワイイ系の子だったら、こうはいかない。
この野心に満ちた挑戦的な顔つきの美女だからこそ、そそるんですなぁ。
青くて硬い。かじるとすっぱいライムのようなクラリス・スターリングです。

訓練中のもっさい感じがまたいいんだ。

このクラリスの上官が、ジャック・クロフォード。
行動科学課の一番えらい人です。
枯れ専と呼ばれるみなさまには、どストライクの美中年。
目尻のしわとか、口元のしわがセクシーなの~。

ドラマ「ハンニバル」では、このジャック・クロフォードは大柄な黒人俳優さんが演じております。
うまく言えないけど、これだけで全然印象が変わっちゃうんだよな。
同じセリフを言っていても、そのルーツが違うだけで、
言葉の重みや意味合いが違ってくる気がする。

しかし、アメリカって人種のるつぼなんだなぁと再確認しました。
小説ではいちいち登場人物の人種を書いていないことが多いし、
名前だけでは判断できないので、いろんな配役がありえるんですよね。
頭の中に白人しか登場させられない自分の想像力の貧困さよ。悲しいなぁ。

ドラマのジャックは、キレッキレのクールな男って感じじゃ無くて、
もっと無骨で実直なイメージ。温かさを感じます。

映画でレクター博士を演じるのは、アンソニー・ホプキンス。
他でも書いたけど、わたしこの人が出てくるとなんか笑いたくなるの。
ちっこいおっちゃんがなんか出てきたで、みたいな気分になる。
美しくなでつけてはいても、すだれな後頭部のせいなんでしょうか。
人を殺して肉を食う、おそろしい殺人鬼なんですけどね……。

この人はクラリスを気に入り、
彼女の情報と引き替えに、バッファロウ・ビルに近づくヒントを与えます。
博士がほしがるのは、クラリスのごく個人的な情報。
しかし、それは彼女の存在理由ともいうべき記憶。
あれを教えた時点で、クラリスは博士に心臓を握られたも同然な気がします。

映画はやはり2時間という制約がありますので、
随分いろいろな部分をはしょってます。
重要なシーンはもちろん押さえてありますが、
原作には、より深い登場人物の心情描写があるので、面白いと思いますよ~。

捜査の進め方もね、もちろん原作の方がきちんと書き込まれていますしね、
クラリスが追う線と、クロフォードの追う線が、どう交差して、どう離れていくのか。
ここを丁寧に読んでいくと、ラストがよりいっそう面白いです。

クラリスの射撃の腕が相当だ、という描写が、映画では薄かったですね。
教官のジョン・ブリンガムとの関係が好きなんですが、これは原作でお楽しみください。
映画の方も少し撮ってあったようですが、カットされたようです。
ブリンガムがただのおじいちゃんだったし、まぁカットでもいいかな……。
DVDには特典映像としてカットシーンがまとめてあります。
確かに無駄なカットのように見えますが、原作の香りを漂わせる部分が多くて、残念。

監獄の責任者チルトン博士は、役柄ぴったり!
無能なくせに高慢で、その俗物加減にうんざりします。
最後、レクター博士は彼を殺すだろうと予測させて映画は終わるのですが、
あんな奴、博士に喰われる価値すらないと思いました。
食べなくていいよ。

小説版クラリスは、早くに母を亡くし、愛していた父も銃の暴発で死に、
叔父夫婦のもとへ引き取られます。
その農場では、子羊のを行なっており、彼女はその悲鳴の中、
同じように殺処分の対象だった老馬を連れて逃げ出します。
子羊たちの悲鳴が、クラリスを駆り立てるのです。
「もしバッファロウ・ビルを捕らえ、さらわれた女性を救えたら、
その悲鳴は止むと思うか?」
と博士に聞かれ、クラリスは「たぶん」と答えました。

映画では、もっと単純に、クラリスは子羊を一頭抱いて逃げたことになっています。
そして結局連れ戻されて子羊は殺されてしまいます。
原作でもクラリスは連れ戻されますが、馬はなんとか助かるんです。
そして、しあわせな老後を過ごし、安らかに寿命で死にます。

比べてみると、映画の方がよりわかりやすい寓話になっていますね。
わかりやすい分、強烈で、クラリスのどこか満たされない風情や、
いつも何かに追い立てられているような焦燥感を裏打ちする、
力強いエピソードになっていると思います。

強烈、といえば、レクター博士脱獄後の情景。
警備警官の一人が、天井から美しくつるされるという悪夢のごとき演出です。
これではレクター博士が超人同然じゃないか、と鼻白みますが、
ここまでやるのが映像屋の心意気でしょう。
このインパクトはすごい。

ジェイム・ガムの作った、女性の皮膚でできた着ぐるみも、
映像で観るとよりグロテスクに感じられますね。
赤外線ゴーグルで暗闇の中を歩くクラリスを観るのは、
ジェイム・ガムでなくとも興奮するシーンでした。

クラリスがクロフォードに呼ばれる一番初めのシーンは、
ドラマ「ハンニバル」にも形を変えて出てきます。
FBIの訓練生が、クロフォードに呼ばれるシーンがあるのです。
ここは、「羊たちの沈黙」でのクロフォードとクラリスとまったく同じです。
クラリスがクロフォードに手紙を書いたけれど返事はなかったことなど、
小説版のエピソードも、ドラマでそのまま使われています。
クラリスではない、訓練生の話として。
「羊~」を観てからドラマを観た人は、
ちょっとドキッとするんじゃないでしょうか。

なんというか、稀代の女ったらしのいつもの手口を見せられているようで、
なんだか居心地が悪いんです。
ああ、クロフォードは昔っからこうやって訓練生をたらしこんでは利用してたんだな、っていうかね。
優しそうに見えるけど、絶対にウィルを手放さないように、
悪党を捕まえるためなら、何でもする男なんだ、と彼の冷酷さに気づくのです。
正義のための冷たさなんだけど、それって許せる?

この訓練生(女性)は犠牲になっちゃうんだけど、
それでも懲りずに、後年クロフォードはクラリスを呼びだすんだなぁ。
まったく感慨深いですね。

面白いのは、この過去のエピソードは、
あくまで後付けだということ。

「羊~」「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライジング」と、
原作つき映画がぜ~んぶ撮られた後の、
20年後の新作ドラマで、過去の再構築をやっているわけです。

かつてレクター博士を見て驚愕した人々の記憶をも利用しながら、
もっと面白いドラマを作ってやろう!的な野心が見え隠れして、
とてもワクワクさせられます。
もちろん配役やジェンダーは変わっているのですが、
この物語はもちろん地続きなのです。

新作ドラマを観終わって、
映画「羊たちの沈黙」の中にあらたな発見や意味づけがされたら、
それはすごいことなんじゃないでしょうか。
なんかこう、タイムマシンを作っちゃったのと同じことなんじゃないかと
思うんですけど……。
現在の人間が、時間をさかのぼって過去を作り、
その過去の影響で、現在の意味も少しだけ変化していく……みたいな。
う~ん、わかってもらえるかなー。

ドラマ「ハンニバル」のために「羊たちの沈黙」を観て、
なんだか自分なりの発見もできたので良かったです。
しかし今回は小説も読んでいるので、自分の頭の中で随分補完して観た気もしますな。

ドラマはレクター博士のたたずまいが全く違いますし、
レッド・ドラゴンをベースにした物語のようなので、
ぜひ観ておいてね!ということもありません。
が、こういう再視聴もなかなか面白いな、と思った次第です。

原作に漂う、ジャックのそこはかとない恋愛感情のようなものが
映画にも反映されていて興味深かったです。
ドラマのジャックは、後にクラリスと出会ってもあんな関係にはなりそうもないですが、
どうなんですかねぇ。
ドラマはどうやらSeason3で打ち切りのようです。
他チャンネルで誰か買い取って続きを作ってほしいところですね~。

今回は、映画、小説、ドラマ、と3方向にあちこち飛んだ感想でした。
お粗末!


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