いまさら韓ドラ!

韓国ドラマの感想をネタバレしながら書いています。旧作メイン

【無韓系】huluオリジナルドラマ「フジコ」

2015年12月10日 | 無韓系日記
日頃からhulu huluとうるさくブログで紹介していますが、
全然関係者じゃありませんよ。

それどころか、あわよくばNetflixに乗り換えようかという
気分でおりました。

が、

出してきたよね、オリジナルドラマ。

映像化不可能と言われた「殺人鬼フジコの衝動」が原作!

ってわたし原作読んでないんですよねー。
映像化不可能ってことはアレか、
「アヒルと鴨とコインロッカー」系のアレか?

こっちも読んでない人がいるとネタバレで悪いので反転で書きますけど、


叙述トリック系か?


事前情報はほぼ無いまま、全6話、一気に視聴しましたよ!


《あらすじ》

新進気鋭の女性ジャーナリストが追った、殺人鬼フジコの半生。


まぁ、あんまり予備知識ない方がいいんじゃないすかね。

推理物って感じじゃないので、毎週更新!とかにするより、
一気に6話公開というスタイルも、ストレス溜まらずにすんで良かったと思います。

「嫌われ松子の一生」と視聴した後味は似てる気がするなー。
こっちも遠い記憶だけど……。

以前、オリジナルドラマ「破門」が観たくてスカパーに加入したわけですが、
やっぱり配信サービスの特色を打ち出すオリジナルドラマ制作ってのは興味深い。

どんな作品を作るのかな?どれくらいちからいれてんのかな?
と、サービス側の熱量をはかる指針になりますしね。

その点、huluが、お試し無料期間で見終わってしまうオリジナルドラマを
やったのはスゲぇ覚悟だな、と感じたりして。

だってスカパーは週1だったもん。
2ヶ月かかるから1ヶ月分はちゃんとお金払ったもんなー。

それがこっちは完全無料ですよ?
「これからもこーゆーの出していくけんね」って意味で、
新規加入者獲得と言うよりは、
まさに今、Netflixへ乗り移ろうとしているわたしのような会員を引き止めるためじゃないかと。

あ、あと、先ほどビックリするような情報が入ってきまして、
なんとd-TV でスターウォーズ旧作が期間限定で見放題ですと?
すごいねー!

こういうデカいコンテンツをバッチタイミングで確保するってのも、
重要な経営戦略ですなー。

ま、そんな肝いりのオリジナルドラマ「フジコ」
世間の事情に疎いわたしは、原作が50万部越えのベストセラーになってることも
知りませんでした。
こんな輩(やから)に「まさかの映像化!」とか言っても豚に真珠ですね。

だがしかし、

面白かったですよ!

ここがいつものように青色大文字になっていないのは、
「一気に観たくなるくらいに面白かったけど、
一気に観なかったらここまで面白かったかどうかわからん」
という矛盾した感想のせいでして。

原作通りなのか、ドラマ制作上のものなのか、
後半部分で「ん?」と微妙にひっかかる部分が出てきたりして、
最初の面白さの勢いでグワーッと観るにはいいのですが、
ちょっと尻つぼみっぽい感じも否めません。

「最後の最後のどんでん返し」が原作の面白さみたいだけど、
ドラマの方はそういうのじゃなかったしね。
原作読んでいないと、ここんとこは正直言いようがないので、
後日読んでから書き足しますね。

残酷描写は韓国映画見慣れてる人なら全然平気。
でも解体された人体が出てくるから、気をつけて。

それよりも、いじめとか虐待とか暴力とか裏切りとか、
人間の悪意とか、生々しくてそっちのほうがイヤだったかな~。
う~ん、さすがイヤミス。
最後も救われないしな。

そんなドラマのどこがおもろいの?!

うん、自分でも書いてて不思議になった……。

そこらへん、おいおい考えていこうかと。
以下、ネタバレしながらお送りします。





端的にいやぁ、役者がよかったんでしょうなー。

え?そんなもんかって?

いやー、映像作品の善し悪しって、これが大きいでしょう!
小説みたいに細かい部分を補完できるわけじゃないしさー。
人物の心の中を全部書いちゃうわけにいかないしさー。

「視聴者に伝えたいこと」を伝えるには、演出もさることながら
役者の演技力・たたずまいは大きいと思うな。

そして、なんつーか、ミステリーじゃないんだよね。
なんか細かいトリックとか、
なんで警察にバレないのか、とか、
あんまりどーでもいい話なの。

どっちかっていうと、

フジコって女が自分の過去を直視できずに逃げて逃げて
逃げまくっていく中で幸福になりたいともがくのに、
結果的には信じられない不幸な人生を歩んでいく過程を
興味津々で観て楽しむ、って話だと思うわけ。

フジコの体験とサキコの体験がほぼ同じなので、
最初の方はちょっとめまいに似た感覚に襲われる。
そのグルグル感が気持ち悪くていいんだ。

観てて混乱してちょっとよくわかんない感じになるところで、
ぐぐっと話に引き込まれていくのです。

ここまで2話分くらい?

つづいてその混乱が整理されておさまってくると、
取材してたジャーナリストがフジコの実の娘だということが明らかになり、
ふたりの面会シーンがより緊張感を増す。

いつ話すのかな?最後まで話さないかな?
などと、興味が持続するわけよ。

でもまぁそこは一過性の興味というか、
それよりもっと面白いフジコの過去が語られていくわけですわ。

大人のフジコを演じた尾野真千子もすごく良かったけど、
若フジコを演じた子がすごくいいんだよね。



最近では「あまちゃん」で若春子を演じた有村架純ちゃんが大ブレイクしましたが、
若フジコこそブレイクしてほしぃっ。

でも、たぶんブレイクしないっ。
そういう売れ方、使われ方をする役者じゃない。
なんかもー、映画方面で末永く活躍していってほしいタイプの人です。

特にすごいなぁと思ったのは、性的なシーンの演技ですね。

フジコは堕ちて堕ちて、体を売るようになったわけだけど、
大人フジコになってからはそういうシーンほぼないでしょう。
唯一と言えるのは、旦那とのベッドシーンですが、あそこはまさに人形のよう。

人のセックスを笑う気は毛頭無いが、
なんじゃあれは?

演出なのかな、とも思います。
整形美人となったフジコは、常に仮面をかぶって生きているようなもので、
彼女自身がシャンソン人形になってしまったのだ、と。
だから人間的な肉欲は表現されないし、
まるで人形の用に男に抱かれるのだ、と。そこに愛もないし。

ただ、そのわりには事後に満足そうなため息ついたりしてるし。
無敵の仮面を手に入れて、
もっともっと貪欲に幸せを欲しがっている女なんじゃないのか、フジコは?
って気もするし。
単にセクシャルな芝居は尾野さん苦手なのかな、とも思っちゃいますね。

その点、若フジコは奔放です。

飾り気のない下着をつけて、
髪型だけは流行のスタイルにしてるイモ臭い子なんだけど、
それが逆に生々しい。

胸が見えるわけでもないし、べとべとした細部描写も一切ないんですけど、
あの鼻にかかる声と演技のおかげで妙にイヤラシイ空気が画面に充満するんだな。

そして親友にすごむ若フジコの鬼気迫る顔。
そのくせ、血まみれで恋人にプロポーズを迫る時のかわいらしさ。

もうすごい魅力的でした。

子役フジコも良かったね。
卑屈なね、感じとかね、でも子どもらしい笑顔もあってね。

主役のフジコを演じる役者陣がみないいので、
それについては本当に満足できるドラマでした。

それが3、4話くらいなのかな。

で、フジコの過去のお話が一段落ついたところで、
「化粧品のおばさんが、実は、殺した友達のお母さんだった」と
いう事実が明らかになります。

わたし全然わかってなかったらびっくりしましたよ~。
ええっ?あのふたりが同一人物なの?って。
女性は化粧でまったく印象がかわるものですね。

ただ、このミステリっぽい感じが出たあたりから、
実はもうめんどくさくなっちゃうんだよな。

化粧品のおばさん(初代)は、かつてフジコの父と不倫していて、
逆恨みからフジコの家族を惨殺した。
その後フジコは実の伯母(茂子)に引き取られ、引っ越し、転校した。
転校先で、ある少女と仲良くなるが、結局クビをしめて殺す。
その子の親が、初代だった。
初代には、殺人事件で服役していた売春婦という噂があり、
小学生のフジコはそれを聞いている。

結果あきらかになる事実関係は上記の通りなのですが、
もちろんこの順番であきらかになるわけじゃなくて、
話は前後して徐々に詳細があきらかになるの。

ミステリ部分に絡んでくるのは、ずっとフジコを追い続けていた記者と、
ジャーナリスト ミヤコの上司である水谷編集長。
この記者の存在感が希薄だし、
編集長はなんかあっさり死んじゃうしで、
そこんとこがいまいち乗れない原因だったのかもしれない。

リリー・フランキーはめちゃくちゃ良い味出してるんだけどねー。
次元大介の声、この人にやってもらってもいいかってくらいなんだけどねー。

初代とアポとってたのに死んじゃった編集長。
わかりやすすぎて、なぜ初代に警察のマークがつかなかったのか、
まったくもって理解できないので、
最後の最後にミヤコが犠牲になることが嘘くさいです。

無能か、近代警察はここまで無能なのか。





そしてアホーなわたしには、肝心の部分がまったくわかんない。

ミヤコになら、ミヤコだけにはわかる、と信じて、
サキコが書いた原稿のラストシーンの意味とは何か?

「電車にひかれそうになったいじめっこを見捨てたサキコ。
しかし彼は初代によって救われ、彼女に手を引かれたサキコは、
大きな富士山に向かって歩いて行く」

……というシーンらしいのですが……。
富士山は茂子の象徴なのよ!って言われてもなぁ。

そんなもんなの?ミヤコにだけわかる意味って……。

他になんかないの?
あんだけ出てきたシャンソン人形の歌は単なる暗喩かよ。
as if personality(境界性人格障害)の象徴なんだろうけどさ。

できれば、登場人物の情念の象徴と、
ミステリのトリックの象徴が一緒だったりすると
がってんがってん押したくなるんだけどなー。

結局、ミステリっぽい部分はずいぶん適当な気がしちゃって。
全然警察介入させてこないから、
本当は警察は警察でなんかやってたのかもしれないけど。

たぶんミステリのつもりで書いてないし作ってないだろうからいいんだけど、
ちょっと中途半端というかなんというかなぁ~。
大量殺人で他の殺人経験者も絡んで、って話だと、
そこは曖昧にするとユルユルになりすぎちゃう気が……。

フジコの半生の描かれ方はすごく良かったんですが。


彼女は、本当の友達になり得た人をふたりも殺してしまったんですよね。
小学生の時、小坂えみちゃん。
高校生の時にアンナ。

自分と同じように親に虐待を受けていたえみちゃん。
シニカルな視点を持ち、糞みたいな世界でも一緒に笑い合えたお友達。
でもフジコは、教室のボス的女子にしっぽをふるため、彼女を裏切ります。
それなのに、カナリア殺しの犯人じゃない、と信じてもらえずに、
すべてが台無しになりそうで、彼女を殺してしまった。
えみちゃんは、後にカナリア殺しの真犯人だったことが判明し、
フジコは密かにショックを受けたようでした。

アンナは素敵な女の子でしたが、フジコの恋人を寝取る。
ただ、親友フジコとの友情をとって、
男とは別れるつもりだったアンナ。

ふたりとも、清濁あわせもつ人格で、
いわゆるフツーの人だと思います。
善い行いもすれば、間違うこともある。
いろいろひっくるめてお友達になれればよかったのに、
フジコは拒否して二人とも殺してしまう。

「イヤなことは、ぜーんぶ忘れちゃえばいいのよ」

この叔母さんの言葉が、呪詛になり、フジコの人生を狂わせたんだと思いますね。

お母さんみたいになるってどれだけ言われても、
あの最後のお母さんの言葉を思い出せていれば、
こんなに彼女の人生が狂うことはなかった。

茂子が実の姉に抱いた憎悪が、すべての不幸のはじまりだったと言えるかもしれません。

「フジコに共感できる部分はひとつもなく、つらかった」と
尾野真千子さんはインタビューで語っていますが、
わたしは大いにフジコに共感しました。

リセットすればいーんだ、
バレなきゃいーんだ、
全部忘れてしあわせになるんだ、

思ったって不思議じゃないでしょ、こーゆーことは。
ただ、思った瞬間、
「そんなの無理だよ……」ってわかるから、
みんなはフジコにならないだけでさ。

フジコが、あんな風にゆがめられていくって、
正直想像可能な範囲だと思うな-。

うだるような暑さの夜、
恨めしそうにクーラーのきいた部屋の中をのぞいていた若フジコが印象的。




ダークな物語に救いを与えてくれたのは、ミヤコの存在でした。
谷村美月さん、よかったですね。
美しいけどかたくなで、真面目で、ちょいダサの衣装もgood。

稀代の殺人鬼に面会しながら、
どこかにお母さんだという安心感があるのか、甘えがあるのか、
虐待の修羅場にいたおかげで度胸があるのか、耐性があるのか、
ふたりの間にコミカルな雰囲気が漂う瞬間がいくつもありました。

こういう子だから、ミヤコは今までまっとうに生き抜いて来られたのだろうし、
茂子は彼女を引き取らなかったのかなーと思いましたよ。
御しにくい子だからね。

ただ、フジコがメインなんで仕方ないんですが、
彼女があまりにノー天気に見える時もあって、
虐待を受けてて、その母が凄い殺人鬼だってわかってて、
それで葛藤を抱えながらインタビューをして、
というミヤコの内面が軽すぎやしねえか?と思うこともありました。

フジコとミヤコがフツーの母と娘のように、
刑務所の透明な板を挟んでののしりあって……。
「見えないけどここにとーめいなのがあるんですー、ばーかばーか!」

悲惨な過去を持つ殺人鬼と加害者の娘としてその血に怯え生きてきた娘?
これが?

とも思いますが、そうじゃない瞬間もあるからこそ、人は生きて行ける。
そして、フジコも、ミヤコも、けして異常な人間じゃないのです。

そういう相反する感情がわいてくるドラマだから、
面白くてぐいぐい観ちゃったんだなぁ。

最後、さっぱりした顔で、ルン♪って感じだったミヤコがどうやって殺されたかなんて、
考えたくないですが、まったく救われないラストでありましたね。

原作読もうかどうしようか……。
でもちょっと補完したい気分だす。

hulu、いいオリジナルドラマでしたね。
次も期待したいけれど、
NHKなんかで短かいシリーズはいいのやるから、
差異化するとなるとこうしたセンセーショナルなものになるのかな。

興味のある方はぜひ観てほしいなー。
なんだかんだいって尾野真千子さんの存在感、すごいですから。

フジコの娘、サキコは、母そっくりの顔に整形します。
ということで、彼女は二役やるんですが、
声はアフレコということを差し引いても、サキコはちゃんとサキコに見える。
フジコの顔をしたサキコに。

お母さんみたいになりたくない。
しあわせになりたくてもがいていたフジコは、結果的に母の生き様をなぞった。

あんたはわたしにそっくりだから、生きていたってたかが知れてる。
そういって呪いをかけた娘サキコは、自分と同じ顔に整形した。

サキコはフジコの顔で、しあわせになりたかったんじゃないでしょうか。
母にかけられた呪いを解いてあげたかったんじゃないか。
そんな風に思いましたよ。

同じ人生、同じ顔の再生産って、
わたしが好きな漫画家 伊藤潤二さんの「富江」のイメージ。
女の業の深さを感じさせるドラマでした。

けして後味はよくないんだけど、
視聴が終わってしばらくたつと観なおしたくなる。
描ききれなかった部分が多いせいなのか、女優のちからなのか、
はたまた斉藤和義の主題歌のせいなのか……。
ズルいよなぁ、この曲は。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿