いまさら韓ドラ!

韓国ドラマの感想をネタバレしながら書いています。旧作メイン

根の深い木 第19話

2014年05月16日 | 根の深い木
結局、フライングで「赤と黒」を観てしまったわたくしです。
あっちの主人公、悪い奴なんですよ~。
もちろんそうなっちゃったワケはあるんですけどね。

もう、それに比べてチェユンのかわゆさときたら!
彼の真っ直ぐさ、タムへのひたむきな愛情、王への期待、明日への希望。
不安なこともあるけれど、命を落とすかもしれないけれど、
彼が全身全霊をかけて、今本当の意味で生きているんだ、と感じるの。

あっちの主人公がその分哀れでねぇ……。

あら、同時進行になりましたけど、相乗効果でどちらも面白さが増したような気がするわ。

《あらすじ》

カリオンの正体は、チョン・ギジュンだった。
その事実に驚きつつ、王は問いかける。

「余の文字を見たか?」
「見た。素晴らしい文字だ。
それ故、わたしチョン・ギジュンは、命を懸けて文字の公布を阻止する」
ギジュンの決意は揺らがない。
「そうか、わかった、では、余とじっくり話をしよう」

ムヒュルとケパイは剣を突きつけあったまま、主君を見守る。

なぜ、文字を作ろうなどと思ったのか?
それは、三峯先生の思想によるものだ。
彼の思想は宰相総裁制だけではない。
昔は、どんな人でも王をいさめることができた。
誰もが王の過ちを指摘し、正すことができたのに、
諫官という制度が出来たせいで、民が施政者に意見を言えなくなった。
先生の理想、「言路を開く」に沿い、
わたしは「字路」を開くつもりなのだ。

「三峯先生の思想から思いついたとはあっぱれだ。
しかし、わたしが反対する理由は他にある」
「中華思想に反するか?」
「まさか。中華を大国と持ち上げるのは生き残るための戦術に過ぎない」
「では、科挙にを乱入させたように、士大夫の既得権の問題か?」
馬鹿にしたように鼻で笑った王を見て、
ギジュンの顔色が変わった。

「既得権ではない!
既得権ではなく、調和だ。
既得権ではなく、秩序だ。
既得権ではなく、均衡だ。
既得権などと、簡単に言うな」

王が王たるゆえんは何か?
血縁だ。イ・バンウォンの息子だから、イ・ドは王になった。
しかし、士大夫は違う。
自分を磨き、能力を認められた者が士大夫になるのだ。
士大夫は身分でも特権でもない。
資質と修養と努力の結果なのだ。

「それは認めよう。朝鮮を作ったのも、当時の新進気鋭の士大夫と朱子学者だと認める。
しかし、士大夫とて、腐る。
彼らも欲望を持つだろう。
能力に見合った利権を得ようとするものが出るだろう。
そしてその利権を世襲しようとする。
なぜか?人間だから。
余にはわかる。
そうならぬよう、誰が牽制するのか?
王は、牽制される側であるから、権限が少ない。
余は、その役割を民に与えたい。
民と権力を分け合えば、新たな秩序と、新たな均衡と、あらたな調和が生まれる。
余の文字が新たな世のはじまりとなるだろう」

ギジュンは、黙って王の話を聞いている。
そして少しの間を持って、問いかけた。
「士大夫の欲望か……。では、民の欲望は?」
王は、思いもよらない言葉に驚く。

「民の……欲望?」
「そうだ。民の欲望。巨大で恐ろしい民衆の欲望をどうするつもりだ?
権力の頂点にたつものが触れる、巨大な民。海のような民のことだ。
はっきり言えば、巨大な民の欲望だ」
ギジュンの言葉には、王にも身に覚えがあった。
自分もかつて、触れたことがある。

「その欲望に触れると、恐怖を覚える。なぜなら、それは満たすことができないからだ。
欲望を一度に満たすことができたら、この世は地獄になる。
秦の始皇帝は、それに触れた。
彼は法律で世を治めようとしたが、無理だった。
そのため、孔子や孟子、朱子が必要になったのだ。
恐ろしく巨大な民の欲望を抑えるため。
キリスト教も仏教も朱子学も、欲望の統治のための手段だ。
しかしお前の文字は統治を壊し、地獄の門を開く」

しかし、王は小さく笑った。
「地獄だと言い切れるか?
民が文字を理解して三網や五倫を学べば、人の道理を理解して
朱子学の理想により近づく」
ギジュンの反証は止まない。
「民が文字を知れば、読み書きができるようになる。
それは楽しいことだろう。
楽しさを知れば、知恵をつける。
知恵をつければ使いたくなる。
なんのために?欲望のためだ」
「それが地獄だと?」
「わからぬのか!欲望は政治へと向かう。彼らは、国政に関与し、
自ら指導者を選出するようになる」
「それが地獄なのか?」
王は苦笑している。ギジュンが言うことが地獄だとは思えない。

「イ・ド!」
ギジュンは、大声で叫んだ。
「そんな無責任な制度があってたまるか!
政治は責任だ。昔から本質は変わらない。
それなのに民が指導者を選ぶだと?施政者が間違えば、誰が責任を取る?
民を殺せばいいのか?」
「お前はなぜ、民を信用しないのだ。なぜそうなった?」
「わたしは民として生きてきた。民に希望はない。
歴史を発展させるのは無知で気まぐれな民衆ではない。
責任をとることができる数人だ」

王はギジュンの言葉をきいて、うなずいている。
「もし本当にそう思うなら、哀れなことだ」
「哀れだと?お前こそ哀れな王だ。
わたしはお前の本心を知っている」
ギジュンの指摘に、イ・ドは興味がわいた。自分の本心?

「当ててやろうか?
民と権力を分け合いたいと言ったな?
でも本当は、民と責任を分け合いたいんだろう?」
イ・ドは、ギジュンの言葉に衝撃を受ける。
ソイも、ムヒュルもまた、ハッと目を見開いた。

その頃、チョタクとチェユンは、密本のアジトを探索していた。
ふたりは、王とムヒュル、ソイの三人がカリオンと正倫岩に行ったという情報を得た。
三人が危ない。
チョタクは兵を呼びに走り、チェユンは単身、正倫岩に向かった。

「何も知らず、理不尽に死んでいく民を無くしたい?
文字を知れば、はっきりと理由を知り、理不尽だとも言えず、民は死んでいくだろう。
疫病が流行れば、手を尽くしてひとりひとりに薬を飲ませる仕組みを作るのが、
施政者の仕事だ。
文字を教えるから、あとは自分たちで解決しろ?それが王の態度か?
民は世話をしてやるべき存在だ。
王の本心を、もうひとつ当ててやろう。
お前は、民が、煩わしいのだ」
ギジュンの指摘に、王は動揺を隠せない。

「違うか?民が煩わしくて文字を作ったのだろう?
民を愛する王?お前は民を愛していない。
愛する女を家まで送る代わりに、剣を買い与えるようなものだ。
自分の身は自分で守れ、と。
それを愛と言えるのか?」
ソイは、動揺する王を見つめて心の中で祈る。
(それは愛です。愛だといってください)

王は立ち上がった。
「世は民を愛している!」
「いいや、違う。
文字を覚えて、自分で解決せよ。それでも不幸なら、それは民の責任だ、と言いたいだけだ」
「こ、この無礼者め!」
イ・ドは怒り、自分を抑えられない。

そこへ、ユン・ピョンが現れ、王ののど元へ剣を突きつけた。
「まだ話は終わっておらぬ!話すべき事は山ほどある!」
「残念だが、こちらが優勢だ。
わたしはあの文字を知るものを皆殺しにする。解礼も見つけて燃やす。
疫病のように恐ろしい文字を世に出しはしない。さらばだ、イ・ド」
ギジュンは、ユン・ピョンに目で合図をした。
「王様!」
身動きできないムヒュルが叫ぶ。

その声にこたえるように現れたのは、チェユン。
飛び込んできたチェユンは、カリオンの喉に剣を突きつける。
「これでまた互角だぜ」
「さあ、話を続けよう、チョン・ギジュン」
王の言葉に、チェユンは思う。
(カリオンがチョン・ギジュンなのか?)

しかしギジュンは、あくまでも王を殺せ、とユン・ピョンに命ずる。
そうすれば自分も命は無い。
しかし、ここでふたりが死ねば、すべてが終わる。
「イ・ドを殺せ!」
本元の命令に、従うことのできないユン・ピョン。
「できません」
ギジュンは、チェユンを挑発する作戦に出た。

「カン・チェユン、卑しい奴だ。王の側につくとは。
身分が低いから卑しいのではない。
卑しいのはオヤジから受け継いだ奴隷根性だ。
父の仇に服従するのか?」
カッとなり、今にもギジュンに斬りかかろうとするチェユンを、ソイが止めた。
「ダメよ!わからない?兄さんが斬れば、王様が殺される!」

ムヒュルはケパイと一触即発状態であり、
現場の緊張はますます高まって行く。
このままだと、斬り合ってしまう……。
ムヒュルはあせるが、膠着状態から抜け出すすべがない。

「兄さん、ユンピョン、刀をおろして!死にたくなければ、わたしに従って」
ソイが、きびきびと指示を出した。
「同時に刀を下ろして!本元を殺すの?
兄さんも、刀を下ろして。王様を助けないと」
ユン・ピョンとチェユンのふたりは、ゆっくりとソイの言葉に従った。
「みっつ数えたら、刀を捨てて」
ふたりは刀を放り、ムヒュルとケパイも同じように、刀を捨てた。
「先にこの場を離れて」
ソイに従い、密本の三人は去って行く。
「イ・ド、お前の文字をわたしは必ず阻止する」
「できるものか……!」

論争の後、イ・ドも、チョン・ギジュンも、
放心したように何かを考え込んでいる。
部下への指示にも、精彩を欠いている。

ギジュンは、王のある言葉が引っかかっている。
もし、民が文字を覚えて三網や五倫を学べば、朱子学の秩序が身につくだろうか?
腹心のハンは、「そう思います」と答えた。

三峯先生の教えには、
為民(民を思う)愛民(民を愛する)重民(民を重んじる)
保民(民を守る)安民(民を楽にさせる)牧民(民を育てる)と、ある。
文字を教えるのは、牧民といえるのでは?
それに、教えたとしても彼らにはつらい暮らしがある。
全員が覚えきれるものでもないし、生活に追われる人々が、他に何ができるだろうか?

イ・ドは、「民が煩わしいのだろう」というギジュンの指摘と、
「政治は責任だ」という言葉が心に残っていた。

それでも、側近たちはただぼんやり過ごしているヒマなどない。
ムヒュルらは、王の許可を得て、泮村を一斉捜索。
密本組織をあぶり出すためである。
村は大混乱になり、人々は雑司僕に取り調べを受けた。
幼いヨンドゥも牢屋に入れられ、泣いている。
ケパイと仲が良かったから、何かを知っているはずなのだ。
チェユンは、ソイを呼び出して、ヨンドゥのことを任せた。
ソイは王様の様子を心配している。
早く王命をくだしてほしいのだが……。

その頃、広平大君は開城にゆき、ある書物を印刷する準備をしていた。
ところが、その情報は密本に知られていた。
大君は、踏み込んできたユン・ピョンに拉致されてしまう。

そうとは知らぬチェユンはヨンドゥに聞いたペギン山の廃寺に赴く。
そこには確かに大君が監禁されていたのだが、
チェユンの来訪に気付いたシム・ジョンスたちが、大君を連れて去った後だった。
靴が片方残されていたが、それが大君のものだとは、今はチェユンも知る由もない。

イ・ドは、今や自分の行動に、畏れを感じている。
自分が作った文字は、自分の想像をはるかに超えて計り知れないものになるだろう。
次第に愛着がわき、何より優先してしまったが、それが問題だった。
この文字は、自分が責任を負える大きさのものではない。
王たる者が、そんな実験をしていいものだろうか?

「王様は初心を見破られてしまったの。
文字を作ろうとしたのは、民への愛からではないわ。
王様は民のために心を砕き、一生懸命働いたのに、受け入れられなかった。
何もよくならなかった。
愛していた分、失望し、挫折して腹を立てたの。
そして民に恐れを抱き、意地になったの」
ソイは、チェユンに自分の心配を話した。
「全部指摘されたの。動機が不純だし、正式な過程も経てない。
自分で作ったから、客観性もない。結果にも、責任が持てない。
続けるべきなの?」
真剣な目をしたソイに、チェユンはあえて気楽な態度だ。
「ちぇっ。お偉方は気楽なもんだ。飯の心配がないからだな」
「不安なの。不安でたまらない」
チェユンは、ソイの手を取った。
「なぜお前が?王様のことを信じてるんだろ。心配ない。全部うまくいくさ」
手を握ってもらい、ソイは慰められ、笑顔を見せる。
ただ、そういうチェユン自身も、確固とした自信はないのだった。

密本のアジト。
大君が用意していた印刷物を読んで、ギジュンは顔色を変えた。
それは、釈迦の一代記だったのだ。
儒学ではなく、仏教典とは、どういうことだ!

それは、イ・ドの計画だった。
民が、文字をはやく覚えるように。
それだけを考えて、難しい儒学ではなく、面白く読める仏の物語を翻訳した。
ここは数百年高麗の土地だったのだから、
民も仏教には慣れ親しんでいる。
面白い話を読みたくて、民は喜んで文字を覚えるだろう。

「イ・ドはわたしに嘘をついた。
この文字で民に朱子学の理想を説くと」

「そうだ、余の頭に朱子学はなかった!」

「三峯先生を口実にしてでたらめを言ったのか」

「そうだ!チョン・ドジョンの結論だと信じ込み、自分を鼓舞し、偽った!」

「なんと抜け目なくずるがしこい王だ!許せない王だ!」

ギジュンは、監禁している大君の元へ行き、礼を尽くして頭を下げた。
そして自分の正体を明かす。
「王は、朱子学を広めるために文字を公布するとわたしに嘘をつきました。
わたしも、大君さまの訳本を見るまでは信じておりましたが、
あれは仏の一代記でした。
ですから、わたしは初心のままに行動します。
解例見つけ、破棄し、文字を知るものを根絶やしにします。
この文字公布を阻止するために、命を懸ける所存です」
大君は、その言葉を聞いて、はらはらと涙を流した。
「わたしの不忠をお許しください。
使命を果たしましたら、わたしも大君さまのおそばへまいります」
ギジュンは静かに頭を下げ、ユン・ピョンに合図した。

「お前は、使命をまっとうできない。
文字を知るものを殺すことはできよう。
しかし、疫病のような文字のタネ、解例は見つかるまい。
なにしろ、このわたしも見たことがないのだから」
大君は涙を流しながら、ギジュンを見やって笑った。

その夜パクポは、宮殿門前に、ひとつの輿が置かれているのに気付いた。
チェユンは、中身を確認して衝撃を受ける。

そこには、冷たくなった広平大君が乗せられていた。
イ・ドは自らの目で中を確かめ、
まだ生きているかのような大君の手をとる。
しかし、その手は力なくただ落ちていくばかり。

息子の死を前に、抜け殻のようになった王は、別人のようだ。
「王様、お気を確かに!わたくしをご覧ください!」
ソイの言葉も耳に届かなくなった王。
「お前も余を責めるのか!余をとがめるつもりだろう!」

ギジュンはひとり考えていた。
イ・ド、つらいだろう。お前の心を乱すには、こうするしかなかった。
お前は強大な敵であり、失敗を犯すよう仕向けるしかなかったのだ。
そうしなければ、止める方法はなかった。

「最初から間違いだった。余は、民を愛していたのではない。憎んでいたのだ。
民ではなく、余の作った文字を愛していたのだ。だから文字を最優先した。
だから、広平大君は死んだのだ」
王は狂ったように笑いながら、呪詛の言葉を吐いている。
カン・チェユンは、王とソイのいる慶成殿にズカズカと入って行くと、
ソイの手を取り、連れて行こうとした。

「何するの?!王様の御前よ!」
ソイの言葉に、チェユンは静かにこたえる。
「王様?誰のことだ?あのクソ野郎のことか?」
「カン・チェユン!」
彼を止めにきたムヒュルの叱責が飛ぶが、チェユンは気にもとめない。

「自分をあざけり、死んだ息子の顔に泥を塗るあの人が王様か?
タム、お前も知ってるだろ。大君さまは、王様の息子であることに誇りをもっておられた。
でも、大君さまもお前も、あの王様に騙されたんだ。
愛と憎しみの区別もつかない。愛とは何かさえ、知らないのがあの王だ。
お前は、そうとも知らず人生を捧げた。大君様は命まで落としたのに」

王は、チェユンの言葉に立ち上がり、にらみつけ、大剣をかざしてチェユンを斬ろうとした。
チェユンはひるまない。
「心が痛みますか?王様にそんな資格はありません。
大君さまは、王様を信じているので喜んで死ねるとおっしゃいました。
王様は涙ひとつ流さないでしょう。それでも、大君様は、構わない、と。
王様には、涙を流す資格などありません!」
そう、王を責めながら、チェユンもまた、涙を流している。

王は、剣を取り落とし、振り絞るように泣いた。
獣のように咆吼した。

(つづく)



毎度毎度のことですが、

いや~面白いっす!

王の苦悩がねぇ、ギジュンの大義がねぇ、
とにかく熱い男たちの真剣勝負がめちゃくちゃ面白いです。




大君は本当にお気の毒でしたが、
一度は密本にさらわれ、チェユンが助けなければ失っていたであろう、その命。
王様が、その死を無駄にしないことを祈っておりますよ。

それを命じたギジュンは悪い奴なんですけども、
大君を敬う態度、自分も後からゆきます、という言葉、
どこか、救いを感じてしまいました。

それも制作者の思うつぼかもしれないんだけどさ。

大義ため、朝鮮の未来のために、王子を殺し、逆賊の汚名を着るチョン・ギジュン。
仕方なかったんだね、イ・ドの心を揺さぶるには、これしかなかったんだね、
嫌だけど、やるしかなかったんだね……

なんて納得できるかぁーーーー!

てか、納得しちゃいけないと思うんだよね。
だってさ、大義のため、自分の信じる正義のためなら人を殺してもいいわけないじゃん。
反省してるからいいわけないじゃん。
後から自分も死ぬんだったらいい、って理屈はないじゃん。
それを仕方ない、って認めてしまったらさ、
どこに線を引くんだよ?って話になっちゃうでしょ。

公共の福祉のためなら人を殺してもいい、ってことになったらさ、
それはやっぱりむちゃくちゃじゃないか。

チョン・ギジュンはさぁ、やっぱダメだと思うよ。
自分が憎んだイ・バンウォンと同じ。
暴力を持って世界を動かそうとしてるんだもん。

ま、きっかけは王様のついた嘘だったわけですけどね……。

嘘っていうか、詭弁っていうか……。
イ・ドはあまりに正直だから、
「そうだ!嘘をついた!」なんて偽悪的に叫んでしまうのですが、
どっちでもいいじゃん、と庶民は思う。

結局、文字って「手段」だからさ。
文字を作って、広めること、が「目的」になっちゃってるけど、
いざ広まってしまえば、それはやはり「手段」だから。
そのツールを、どう、人が使いこなすか?
それは誰にもわからない。

新しいメディアが、たいてい人間の欲望(特にエロ方面)によって
進化し、普及していくのと同じで、
この新しい「文字」だって、民衆の欲望とともに進化し、普及していくに違いないのだ。

偉い人は、「簡易な文字を使って民衆に朱子学の教えを浸透させる」と考えていても、
とりあえず民衆に広く読まれるのは、エロ本や痛快冒険譚だったりする。
「簡易な文字で書かれた難しい思想」なんて、フツーの庶民はあんまり読みたくないのだ。

そのへんの欲望をうまくついて、王様は「仏の一代記」を印刷させた。
すごく賢い。
世が世なら、一流のプロデューサーになっちゃうような人である。
もしもおバカな人だったら、「そうか~、で、次に朱子学がくるんだな」と
王様の戦略に納得しちゃうかもしれない。
まず文字を知ってもらわなくちゃね!とか言って。

でも、チョン・ギジュンもすごく賢い人なので、
王様の心にあるちょっとしたズルさを感じ取ってしまうのだ。

「嘘ついたな!」ってわかるのは、自分だってそんな嘘をつきかねない人だからだと思う。
チョン・ギジュンはすごく賢いのに、
「士大夫だって人間だから、いつか腐る」という真理に、
わざと目をつぶろうとしている。
目の前に、イ・シンジョクという良い(悪い?)見本が実在するというのにね。

前回までは、チョン・ギジュンの言ってることもなんかわかるな~と思っていたのだが、
今回のわざとらしいまでのうやうやしい態度に、すっかりあきれてしまった。
これはたぶん本心からの態度なんだろうけど、
その茶番に気付かないなんて、やっぱりギジュンはおかしいし、
現実から目を背けようとしているだけなんだと思う。

「権力ではなく、責任を分け合おうとしているのだ!」という指摘はごもっとも。
でも、権力には必ず責任がついてまわるんだから、それは当然でしょ?
詭弁だよ、詭弁。

唯一、「政治は責任だ!」という発言は、素晴らしいと思います。
この覚悟は大事です。
多くの政治家に見習っていただきたいと思います。

ただ、「失敗したときの責任の取り方」について、彼はどうかんがえているんでしょうか?
「責任とってやめます」もしくは「死にます」と言われたって、
なんの責務も果たしてないんですけどね。
「お前の失敗の尻ぬぐいをしてくれる優秀な人物に頭を下げて回れ」とか、
「人々の罵声に耐えて生き抜いて、死ぬまでに何かいいことをしろ」とか、
責任を取るって、すごく難しいと思います。

大君殺した責任とって自分も死にます、じゃ話になんないのよ。
とりあえず終わった感は出るけど。

民衆の代表でもあるタムが、
(それは愛です!)と言い切った。
文字を与え、責任を与えようとすることは、愛なんです、と。
次回、そこんところをカン・チェユンに語ってほしいな~。
愛とはなんたるか、を彼に語ってほしいです。

お父さんを信じ、最後まで威厳を保って死んでいった大君は本当に偉いですね。


本当に立派な態度でしたよ。

こういう子が生きていて、跡を継がなきゃいけないのにねぇ。
彼も見たことがない、という解例(ヘレ)はどこにあるのでしょうか?
わたしは、ソイの頭の中だけにあるんじゃないかな~と思っています。
それに気付いた密本が彼女を襲う……なんて展開にならなきゃいいんだけどな~。
不安。

解例、って解説本ってことだよね?
発している音をどういう組み合わせで表すか、ということを説明したものなのかな。

不安に思っているソイの手を、そっと握ってあげるチェユン。
うんうん、今はそれが精一杯。
いつか、ふたりでしあわせになれるといいね。
子どもを産んで、楽しく暮らせるといいのに……。

恋愛要素の薄いこのドラマですが、
それでも最初の方は、ちょっとなにか匂わす描写があったような気がします。
ソイと王様の、お互いへの思いは、
尊敬と愛情が一緒になったようなものだったと思う。
わたしなんかは、チェユンに肩入れしてたから、
お門違いの嫉妬をして、ちぇっ!とか言ってました。

たぶんチェユンもそうで、
あの河原でおじさんにからかわれたあたりで、吹っ切れたのかな、と。
彼女を王様にあげて、ひとりで去って行こうとまでしますからね。

しかし、どうしてもタムを置いてはいけない。ほっとけない。
一番大事な人だから。
で、タムがかかわっている文字創製について知るうちに、
彼女の強い信念を理解するわけですね。
そのうえ、タムの口から「兄さんが側にいないと嫌なんだ。
わたしたちは離れられないんだ」と
わりと遠回しに告白され、そこにある愛情にホッとする。

今思えば、あの感動の再会シーンで、
ふたりが互いを想い合う気持ちは十分に表現されていたのですけどね。

15話あたりで、
「はい、そろそろみなさんいいでしょう?
Love要素も少しエッセンスとしてありましたが、主題はそこではありません。
ふたりが惹かれ合う魂だということはわかりましたね?
もちろん王様も、そんなふたりをいとおしく思っているんですよ」と、
ドラマ制作陣にいなされたような気がする。
満足(あるいは納得)した?本番はここからだよ!みたいな。

わたしがふたりを好きなあまり、敏感になっていただけかもしれませんけどね。


もう!なんなの?この初々しい距離感は……。

でも、このふたりの恋愛要素があったおかげで、
民の幸福、というものを具体的に思い描けた気がする。
人として、人らしく働いて、好きな人と生きていきたい、という願い。
そう願う気持ちに、とても共感できました。

何度もいうけど、しあわせになってよね!絶対!

息子の死を目の前にして、気が狂いそうになっている王様……。
鬼気迫る演技に胸が苦しいです。
こんな犠牲を要求されるほど、
文字創製とは罪深いことだったのか?
やはりわたしが間違っていたのか?

あまりのショックに、揺らいじゃった。
悪いことが起こったのは、自分が悪いことを考えたせいだ、みたいになっちゃってる。
一点の曇りもなく、「自分の行動は正しい」と信じている人は、ある意味怖い。
公平な人ほど、「本当にそうだろうか?」と常に自分に問いかけている。
王様の、聖君たるゆえんを攻撃するギジュンの一手です。
あいつ賢いわ。そして残酷だわ。

救いは、大君の擬似的最後を見届けていたチェユンの言葉。
おそらく、密本の前でも、大君はあの立派な態度を貫いただろう。
王様を信じ、笑って死んでいっただろう。
それがわかれば、王様は救われるはず。立ち直れるはず。


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