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2024-09-30 04:00:00 | 修道院の断食・医術・ハーブ
8・ホップ

アサ科のつる性多年草。和名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)。

雌花は「毬花」と呼ばれビールの主要な原料の一つです。

ビールの苦味、香り、泡にとって極めて重要で、雑菌の繁殖を抑え、

ビールの保存性を高める働きがあります。

原産はカフカス付近(黒海とカスピ海に挟まれた地域)と考えられ、

野生はヨーロッパ東部からシベリア西部にかけて分布するとされています。

抗菌作用があるため民間薬として利用され、

エジプトでは薬用にされていたとも言われています。

今ではホップはビールの原料として知られていますが、

メソポタミアのシュメール人によりビールの原型となる飲み物が

作られ始めましたが、ホップは原料ではなかったのです。

紀元前10世紀頃にはコーカサスで野生のホップがビールに

加えられていたといわれていますが、途絶えてしまいます。

しかし、中世ヨーロッパにおいて、ビールはハーブ類や

スパイス類で味付けしたグルートビールが主流で2世紀初頭になり

ドイツのビンゲン修道院でホップを使用したビールが醸造されます。

14世紀から15世紀にかけてホップビールの持つ爽快な苦味や香り、

ホップを入れて煮た麦汁から作ることでビールが腐りにくく

長持ちするという特性などが、高く評価されるようになり、

ビールの主流になっていきました。

この頃からホップの栽培が普及していきました。

オランダでは14世紀から、既にビール作りに用いられ、

16世紀になってオランダから亡命した新教徒たちがイギリスに伝えました。

それ以前は苦みを持つハーブが用いられていましたが、

これらはエールと呼ばれ、ホップを用いたものだけが

ビールと呼ばれるようになったのです。

イギリスでは国王ヘンリー8世によって毒草として使用を禁止され、

次の王であるエドワード6世治世下の1551年、

ようやくホップ栽培者に特権が与えられました。

その後もイギリスでは、1608年に傷んだホップの輸入が禁止されています。

ドイツでは、1516年、バイエルン公ヴィルヘルム4世により、

ビール純粋令(「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」)が定められました。

中世のビール(グルードビール)にはハーブ類が使用されていましたが、

ホップは抗菌効果、芳香、爽快性、黄金色、透明感、泡立ちに優れ、

複雑な調合も不要であることから、14世紀以降にビールの原料として

定着しました。

ホップの毬花には、ルプリンと呼ばれる黄色の粒子が存在し、

ビールに香りを付与する物質や苦味を付与する物質はこの中に含まれます。

ルプリンに含まれるフムロン(α酸)は、ビール醸造の煮沸工程において、

イソフムロン(イソα酸)へと変換されます。

このイソα酸こそがビールの苦味成分です。

ビール以外の目的では、生薬としても健胃、鎮静効果があるとされ、

またハーブの一種としてヨーロッパでは民間薬として用いられています。

ホップには苦味成分、香り成分の他、キサントフモール、

イソキサントフモール、8-プレニルナリンゲニンといった機能性を持つ物質が

多く含まれています。

8-プレニルナリンゲニンは、吸収しにくいものの組織に

蓄積しやすいとされます。

これらホップ由来物質の多彩な機能性が科学的に研究され、

エストロゲン様作用による更年期障害の改善作用、睡眠時間延長作用、

鎮静作用、II型糖尿病患者に対するインスリン感受性の改善作用、

胃液の分泌増加作用、イソフムロンの肥満予防効果などが報告されています。

機能性食品の素材としても注目したいハーブです。

サッポロビールによって、ホップ抽出物に含まれる

ポリフェノールの一種であるホップフラボノールに

花粉症症状を軽減する効果があることが突き止められました。

2014年1月、京都大学とサッポロビールの研究チームが、

ホップの成分にアルツハイマー型認知症の予防効果があることを確かめたと、

米科学誌『プロスワン』に発表。

ただしビールの製造過程では、現在この成分は取り除かれているため、

ビールを飲んでも効果は期待できません。

2014年2月、クラシエホームプロダクツ (旧カネボウホームプロダクツ)が、

ホップの成分に表皮細胞のアロマターゼを活性化させる効果があると

のプレスリリースを行い、洗顔料への配合を始めました。

一方、ホップに含まれるプレニルフラボノイドが、

乳癌細胞のアロマターゼを抑制するという論文もあります。

また、ツルをよく伸ばすことから緑のカーテンに利用されることもあります。

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