太った中年

日本男児たるもの

田原総一郎コラム

2009-01-05 | weblog

「2009年、日本が「自立」するチャンス」

(日経BP 田原総一郎 コラム)

これまで日本は、あるいは日本人はと言ってもよいかもしれないが、アメリカの子分でやってきたと僕は思う。

アメリカの子分でやってきたメリットは非常に大きい。ソ連や中国の子分ではなくてよかったとも思う。

はっきり言って、1980年代の初めまでは、日本がアメリカの子分でいるということは、日本にとっての正解だと思っていた。

「冷戦でアメリカの方針が変更に」

第二次世界大戦、つまり、太平洋戦争に負けて、日本は当然ながら武装解除をされた。当初、アメリカは、日本を再び戦争をしない弱い国、つまり、世界にとって安全な国にしようとした。

そのために例えば、憲法を押し付けた。その憲法9条では、軍事力を持たない、戦いをしないということが定められた。

戦争で日本のほとんどの大きな工場は焼けたわけだが、アメリカは当初、日本を弱い国にするために、焼け残った工場の設備を東南アジアの国々に持って行こうとさえした。つまり、日本を貧しくて弱い国にしようとしていたのである。

ところが、戦後まもなく冷戦が始まった。冷戦が始まるとアメリカはその戦略を変えた。

日本をソ連、つまり東側に対する、橋頭堡(きょうとうほ)にしようとした。軍事力はともかく、しっかりとした橋頭堡にするために、日本に金や技術などあらゆるものを提供しはじめた。

実はその軍事力についても、軍隊ではなかったが、朝鮮戦争が始まって、今の自衛隊の前身である警察予備隊を置いた。

アメリカの戦略はすっかり変わったのだ。

「子分でいることのメリットを享受した国」

面白い例がある。

当時、日本は空襲で工場も全部丸焼け、アメリカに比べて技術力も劣っていた。金もない。

そういう時に、日本は融資される条件がずっとなかったにもかかわらず、世界銀行がどんどん融資してくれた。

さらに面白い話がある。アメリカは本土を爆撃されなかったので、戦前からの工場がそのまま稼動していた。日本は、戦争で主な工場は皆焼けたので、なんとアメリカは、アメリカの工場で使われていない最新の技術で日本の工場を作った。アメリカの工場よりも日本の工場の方が最新技術だ、というようなことが随所で起きた。

アメリカが新しい技術をどんどんくれた。そのために日本は高度経済成長ができた。

ベトナム戦争の時は、アメリカは本当は日本に「自衛隊に来い」と言いたかった。日本は、「いや、行きたいのはやまやまですが、あなたが作ってくれた憲法には9条というものがあって、行きたいけれども行けません」などと言い、戦後60年、日本を非常に安全で平和な環境に置いた。

さらに、日本はアメリカの子分であるから、国際的な発言を全くしなかった。発言をしないために、東西冷戦で、日本は西側の国々をマーケットにしただけではなく、冷戦の厚い壁をまるで透明人間のようにくぐり抜け、東側の国へも行って「共産主義っていいですね、社会主義っていいですね」と言いながら、東の国々までもをマーケットにできた。つまり、世界中の国々をマーケットにできた。

アメリカの子分でいたことは日本にとって“大メリット”であった。

ところが、その日米関係が、日米経済摩擦などにより、80年代の後半からぎくしゃくし始めた。

そして冷戦が終わってから、つまり、ソ連や中国の共産主義が崩壊して以後、アメリカは、ローマ帝国をしのぐ巨大帝国になり、まさに一極集中となった。

ところが、多少時間がかかるだろうが、その一極集中のアメリカ帝国の“崩壊”が今始まろうとしている。

そうなると、当然ながら、一極集中から多極化せざるを得なくなる。

「アジアの極を作る=自立すること」

まずその前に、アメリカはイラク戦争で失敗し、“軍事超大国アメリカ”の自信をなくし、さらに今度の経済破綻で、基軸通貨としてのドルが揺るぎ始めた。

言ってみると、日本はアメリカという大亀の上に乗っていた小亀だった。その大亀が倒れてしまい、小亀は自分で立たなくてはならなくなってしまった。

アメリカの一極集中がゆっくりと崩れ始めた。そうなると世界は、時間はかかるけれども多極化せざるを得なくなる。

すでにその多極化のために、EUはドルに対抗するユーロという通貨を使っている。これは、アメリカとは違う、もう一つの極を作ろうとしているといえる。

しかし、極はこの2極だけではなく、当然新しい極として、アジアという極が生まれなくてはならない。

これからおそらく10年以内に、アジアは世界の中心的マーケットになる。

そのアジアという極を作るためには、日本は当然ながら大きな役割を果たさざるを得ない。

この「アジアという極を作る」とは、「日本が自立する」ことだ。

こうなると、中国やオーストラリア、インド、韓国と、さあ日本はこれからどのように協力し合っていくのか。

今までは、なんと言っても日本はアメリカの子分で、アメリカの子分である日本を、アジアの国々は子分として遇してくれていた。

しかし、アジアの自立、アジアという極を作るためには、日本は当然アメリカの子分ではなく、自立した日本として振る舞わらなくてはならない。

去年までは、中国、韓国、ベトナム、インドといったアジアの国々は、皆高度成長を続けていた。日本だけが高度成長ができず、置き去りにされてしまうのではないか、という不安が日本人の中で強かった。

ところが今、幸か不幸か、アジアの国々は皆大不況だ。日本よりもはるかに大不況だ。

アジアの国々は高度成長の期間が短かったために、もろさが露呈している。

その中で日本は、不況とはいえ、40年間も高度成長が続いたせいで、基盤はしっかりしているし、ノウハウも数々持っている。

だから、今こそ日本はアジアの復活のために、全面的に取り組むべきだと思っている。

「否定された日本の構想」

実は、そのことを僕は、福田康夫前首相にも、麻生太郎首相にも提案した。

ところが、福田さんはすぐに辞めたし、麻生さんも今は目先のことでいっぱいで、そこへ目が向こうとしない。

とにかく日本としては、アジアの国々の復活のために取り組むべきだ。もし、日本が取り組むことでアジアが復活すれば、アジアの国々が日本を見直し、信頼することになるだろう。

日本は、中国や、オーストラリアといった国々と、アジアという極を作ることになる。

さらに、アジアの国々から信頼されるようになれば、当然アメリカの日本を見る目も変わってくる。

実は、1997年に当時大蔵省の財務官だった榊原英資さんが、タイから韓国まで東アジアの各国が通貨危機に陥った時に、日本が円でアジアファンドを作って、東アジアの通貨危機を救助しようとした。

この時はアメリカのローレンス・サマーズ財務副長官(当時)が断固反対をした。「日本がアジアを仕切ったのではアメリカの面目が丸つぶれだ。それはアメリカがやるのだ」と強烈に反対され、これは結局実らなかった。

しかし今アメリカは弱まっている。一極集中が終わろうとしているわけで、今のアメリカには反対する力もないし、そういう気持ちもない。

だから、アジアの復活に日本が取り組むことに障害はない。そして、それをやることでアジアという極を作っていく。

アジアという極を作れば、一方ではアジア経済圏を作ることになるし、アジアの安全保障もやることになる。

アメリカとの関係が日本にとって非常に大切であることに変わりはない。それは、親分・子分という関係ではないが、日米関係、日米同盟は非常に重要だ。

アメリカと日本の仲が良いということが、日本がアジアの中で色々な形で仕切ることができるための、大きな要素になっているのだ。

だから日本はアメリカとも仲良くしながら、アジアの国々といわば対等にアジアという極作りをやる。これこそが日本の自立だと僕は考えている。

何も、憲法を改正したり、核兵器を持ったりする必要は全くない。そんなことをすれば、逆にアジアの国々は日本を恐れると同時に嫌い、アジアという極を作るにはマイナスになるだろう。

日本は、今まさに自立するべき時期だ。そのチャンスの時であるのに、政治が何をやっているのかわからないのは残念だ。

「アメリカ新政権とアジアの関係」

2009年、アメリカに新しい政権ができる。

オバマ政権は経済重視であることは間違いない。何よりもアメリカ国内の大不況を何とか回復させなければならない。もう一つオバマ政権についてはっきりとしていることは、戦争はせずに世界の国々と話し合う、ということだ。

イラク戦争に失敗し、アメリカは再び戦争ができない国だということを、オバマ次期大統領は自覚していて、戦争はしない。イランとも、北朝鮮とも話し合う。そういう政策をオバマ政権は取る。

もしかすると、オバマ政権は、中国とも濃密な話し合いをするということになるかもしれない。

そうなると日本はやはり、アジアの再建、復活に取り組み、アジアの国々から信頼され、アメリカがアジアの国々と何かをやる時には日本を介さなければうまくいかない、という状況を作るべきだと思う。

アメリカが中国に接近する前に、日本はアメリカとのパイプを保ちつつ、アジアという極作りをやらなくてはいけない。そのために、中国やオーストラリア、インド、韓国といった国々を取り込むべきだ。

このような形で、今こそ日本は自立に向かう時なのである。

(以上、2009年、日本が「自立」チャンス を日経BPより引用)

冒頭、田原総一郎の名前をクリックすればウィキペディアに記されたテレビ東京時代の凄まじい仕事ぶりを目にしてド肝を抜かれる。政治権力に直接影響する唯一人のジャーナリストと称される所以だろうか。「ヤラセ的演出のドキュメンタリー」こそが田原の真髄だ。特に、水道橋博士が田原を評して「日本で初めてのAV男優である」ってのがスゴイ。視聴率のためならナンだってする男だった。

そんな田原は司会を務める元旦の「朝まで生テレビ」で発言を二転三転させたらしい。番組は最初のところしか見なかったのでアレなんだけれど、植草一秀氏のブログに詳細がエントリーされていた。

「朝まで生テレビ」に見る社会民主主義思考の再評価

「政治が何をやっているのかわからないのは残念だ」そう田原はコラムで書いている。しかし、混乱した政治をヤラセ的演出で視聴者に伝えることが田原本来の仕事なのだ。田原のコラムは朝生のカメレオン発言同様に場当たり的な思惑にすぎない。何をやっているのかわからないのは田原自身である。それにしてもトチ狂った田原の朝生を最後まで見ればよかった。なんたって日本で初めてのAV男優だからな。


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3 コメント

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ん~ (jet)
2009-01-05 13:19:43
遊びの時は終わってしまった。
今週山猫が帰って来る.....とほほ。

ところで、田原のこれを読んでると日本人特有の日本優越論が垣間見られますね。
何か日本がスゴイ...みたいな。
日本とアメリカの関係が冷めた夫婦のようになったのはアメリカが傾いてるからじゃないですね....中国という新しい愛人が出来たからじゃないですか....
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日中関係 (bibbly)
2009-01-05 16:41:58
田原は小泉・竹中政治の太鼓持ちで、小泉親米政権が終わって米国が金融破綻したから中国へ乗り換えようっていう都合のいい金融立国論を振りかざしています。これは恐慌を煽るエコノミストにも多いです。

中国を取り込む戦略らしいのですが、東シナ海の油田で中国は日中合意を破って掘削し、抗議すると哨戒艇を出して脅すというニュースがありました。そんな中国をどうやって取り込むのでしょうか。逆に取り込まれるでしょう。さらに、日本の自立は宗主国の米国が許さないと思います。
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すでに (jet)
2009-01-06 13:10:12
>逆に取り込まれるでしょう。
外貨準備高一位に飛び出した中国は米国債券も大量に抱えた超金持ち国に生まれ変わってます。
でもって中東にも近い中国に米国がご機嫌取りをするのは明白ですね。
つまり、もう取り込まれてると言っても過言じゃないでしょう。

反面日本は北朝鮮問題を見ても明らかなように、冷や飯食らっている古女房の図ですね!
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