太った中年

日本男児たるもの

米屋閉店

2011-04-27 | weblog

別に隠していたワケじゃないけどネネ妻の夫プリンスは不動産業の他に某店舗を10数年経営していた経歴がある。従って小売り業のことなら経験を踏まえ精通している。今回はテクニカルなことを交えてエントリーする。

・売れ筋の追及と死に筋の排除

つまり売れる商品は厚く品揃え、売れない商品は売り場から処分する。コンビニを経営している人ならわかると思うがこれは、米でも酒でも薬でも何でも小売りの基本中の基本である。当たり前のことで一見簡単そうに思えるが、素人には売れない商品の思い切った処分が出来ない。初期仕入れが終わり、次の仕入れをする前にしなければならないのは売れ残りの処分、後先で言うなら死に筋の排除が先で、その後売れ筋を追及する。

例えば書店で、週刊誌が発売したその週に売れなければ残りはデッドストックとなり返本される。書店の発注に対する月間残存率のアベレージは5%といわれる。では返本しなければどうなるか。半年後、5%×6=30%、3割の売れ残り週刊誌が売り場を占有するのである。10ヶ月後は半分、20ヶ月後はすべてが売れ残りとなる。残存率に応じて売上げは減少し20ヶ月を待たずとも返本制度がなければ書店は存続できない。

米屋がオープンして最初の仕入れの前、妻に上記のこと「売れた商品は多く仕入れ、売れていない商品は仕入れてはイケナイ」と教えれば「そんなこと当たり前」と言いながらも売れ残りの商品に何故神経質になるのか理解出来なかった。つまりは売れ筋の追及と死に筋の排除が理解出来なかった。売れる商品と売れない商品は在庫チェックをすれば簡単にわかる。小売り店とは日々の棚卸しに始まり棚卸しに終わるのである。

初期仕入れは叔母さんがサポートしてくれたので順調な滑り出しだった。しかし、デッドストックは免れない。最初からまったく売れなかったのはグロッセリーで缶ビールとジン。死に筋だ。酒の売れ筋はレッドホースのデカ瓶とサンミゲルライト、ピルセンの3つ、それからエンペラードつーブランデー。仕方なく缶ビールは買って飲んだ。飲み終わり不良在庫処分が出来てヤレヤレと思ったらネネ妻は不味くてまったく売れないマニラビールつーのを大量に仕入れやがった。昨年の12月はワンちゃんと一緒にマニラビールを飲んでいたのだ。

・チャンスロス

チャンスは一瞬に来て、一瞬に去る、そして永遠に失われる。チャンスロスとは業界用語で「機会の損失」。例えば昼のコンビニで最も売れるシャケのおにぎりが売り切れたとする。するとシャケのおにぎりを買いに来たお客は別のコンビニへ行ってシャケのおにぎりを買う。チャンスロスは顧客とお金、時間の損失を生む。そして小売り店の売上げが落ちる時、必ずチャンスロスが起きている。また、チャンスロスを起こさなければお店の売上げは上がる。米屋はオープンして5日目から売上げが落ち始めた。チャンスロスが起きているのだ。

ところが妻は売上げが落ちた原因を単純に商品在庫が少ないからと判断し、狂気の仕入れが始まった。エージェント・ネネの暴走だ。お店の売上げをつくるのは商品の在庫量ではなく回転率つーことを説明してもまったく耳を貸さない。仕方なく夫プリンスは「もう出金しねーよ」つーとネネ妻は逆上して「ならば店を売ってくれ」そして「口を挟むな、私がやりたいようにやって成功する」と言い放った。この瞬間、米屋は終わった。

その後米屋は母親が手伝いに来て多少売上げは持ち直した。そして母親の入れ替わりで妹と彼氏のフランシスが来た。妹とフランシスはネネ妻のパシリで内心、いつか見返してやろうと思っているので米屋の経営の立て直しに熱心だった。但し素人なので基礎学習として上記、売れ筋の追及と死に筋の排除、チャンスロスを教えた。チャンスロスを起こさない仕入れの例題として商品A,B,Cの初期仕入れを各10でスタート、10日後、在庫チェックしたところA=0、B=6、C=9だった。売れたのはA=10、B=4、C=1。10日に一度の仕入れ、仕入れのMAXはトータル30リミットとする。さて次の仕入れをどうするか。

妹とフランシスの答えは両者ともA=10、B=4、C=1だった。リピートを掛けるに止まっている。正解はA=30、B=0、C=0。商品Aは在庫0でチャンスロスを起こしている。販売期間10日間のうち3日で全部売れたかもしれない。商品仕入れはチャンスロスを起こさず売れ筋の追及をするのだ。商品Bは10日後まだ在庫が残る可能性があるから仕入れない。その分は売れ筋の商品Aに投入する。さらにC=1が問題で売り切るまで3ヶ月掛る不良在庫だ。売り切り商品でリピートを掛けてはイケナイのだ。

ネネ妻はつーと例題の場合、A=10、B=10、C=10。従ってネネ妻の仕入れはチャンスロスを起こしながら不良在庫の山を築くのであった。実際、オープン1ヶ月半後、妹に棚卸しをさせたところグロッセリーでは7割強が売れ残りの不良在庫だった。売上げのすべてを仕入れに回したから金なんて残るワケがない。

・人件費

これはテクニカルな話からズレるが、フィリピンは人件費が驚くほど安い。では何故人件費が安いのかといえば、親戚の若い男を使ってみてわかったが、人件費=能力=驚くほど安い、簡単に言えば使い物にならない木偶の坊だから。命令しなければ仕事なんてしない。率先して仕事をするなんてことは夢の夢で仕事を覚えることすらしない。親戚の若い男は朝、シャッターを開けるとまず寝る、そして近所の子供と遊ぶだけだったから妻はすぐクビにした。次に来たヤツも似たようなものだった。なにか言わないと何もしない。酷いものだった。

母親が来てまず店の掃除をして空いたところに置くだけの商品をきれいに陳列し直した。それだけで売上げが上がるのだ。しかし、妹とフランシスは言わないとやらない。マネージメントを教えても行動に移せない。教えるだけムダだった。妹とフランシスは2人ともレガスピの優秀な大学を出ているにもかかわらず。米屋の売上げが落ちたとはいえ、主力のお米は売れていて利益は出ていた。必要経費を粗利で割ると売上げの損益分岐が算出されるが、2人はそれを理解できず、徒に不安がっていた。そのくせ給料のことは聞いてきたな。

叔母さんは床屋と食堂2店舗を経営するビジネス・ウーマン。なにしろ指示しないと何もしない、出来ない従業員だから「皿洗って、テーブル拭いて、掃除して」と朝起きてから寝るまで超多忙だ。そこで感じたのはフィリピンでビジネスを成功させるには使い物にならない木偶の坊を如何にうまく使うかつーことだ。でまあ、それはストレスが溜まるだけだろうから、米屋の失敗を教訓にして当分ビジネスをしないことにした。ではナンでメシを食っているのかといえば、叔父さんのサイドビジネス金貸しに投資してメシを食っているのだった。

・米屋閉店

「私がやりたいようにやって成功する」と言い放ったサル山のボス猿ネネ妻であるがもちろん失敗した。詳細を省くが偽札事件とかあってネネ妻はヤル気を失った。でもって妻は叔母さんの娘と一緒に某カラオケ店に勤めた。そこで妻は26歳子持ちのホステスはオバサンに分類されサル山のボス猿は片隅に追いやられたのである。そしてネネ妻はネネで居たいがため再びジャパゆきを画策するのであった。ネネから離れたい夫プリンスは歓迎した。で、米屋は妹に任せる予定であったが、年が明けて大家の娘(14)が突然白血病で亡くなった。

このアンラッキーな出来事にネネ妻は米屋閉店を決意した。こうして3ヶ月間で米屋は幕を閉じた。

それからネネ妻はときどきヒステリーを起こすが、そのときいつもトバッチリを受けるのが御馴染jet師範。

この場を借りてお詫びします。ではまた。


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