fantasia*diapsida

とりとめのないメモの山

deep-deep mysteriousea:

2009-01-28 00:00:00 | biologie*

最近読んでたペーパーで面白いのがあったので、&結構色んな所に露出しているみたいなので、ちょっと。

"Deep-sea mystery solved: astonishing larval transformations and extreme sexual dimorphism unite three fish families"
G. David Johnson, John R. Paxton, Tracey T. Sutton, Takashi P. Satoh, Tetsuya Sado, Mutsumi Nishida and Masaki Miya
doi:10.1098/rsbl.2008.0722, biology letters  ,Published online

クジラウオ科・ソコクジラウオ科・トクビレイワシ科(リボンイワシ科)の3科が、
実は同じ科の♀・♂・幼体でした、という話。
幼少の頃好きだった深海の絵本に、アカチョッキクジラウオRondeletia loricata Abe and Hotta,1963が載っていて、
なんか毒々しくって
好きだったから「おぉっ」と。

元々3科とも、
脊索動物門 Chordata
脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
新鰭亜綱 Neopterygii
棘鰭上目 Acanthopterygii
クジラウオ目(カンムリキンメダイ目) Stephanoberyciformes
の中に属しており、クジラウオ目には他にカブトウオ科(Melamphaidae)なども含まれます。

クジラウオ科(Cetomimidae)は1895年に記載されたグループ。
眼が小さく、口が大きく体軸と平行に裂け、側線を持つ。腹鰭(pelvic fin)や、鱗を欠く。
体長26–408 mmで、1000-4000mの漸深層(漸深海帯; bathypelagic realm)に棲息。
トクビレイワシ科(リボンイワシ科; Mirapinnidae)は1956年に新目として記載。
側線や鱗を欠き、ほぼ体軸に垂直方向に裂けた大きな口を持つ。腹鰭(pelvic fin)あり。
体長5–56 mmで、殆どが200m以浅から採集されている。
ソコクジラウオ科(Megalomycteridae)は1966年に記載。
巨大な嗅覚器官、体軸と平行に裂けた不動性上顎の小さな口、重なり合わないモザイク鱗を持ち、腹鰭(pelvic fin)を欠く。

実は過去にも、形態からこれら3科の関係性が色々指摘されていて、
Gosline(1971)はソコクジラウオ科(♂しか見つかっていなかった)が
クジラウオ科(♀しか見つかっていなかった)の矮雄(dwarf male; ≒macrosomatic male)であることを、
Robins(1974)も、根拠がないながら
トクビレイワシ科がクジラウオの幼魚に当たることを主張していた。
その後ミトコンドリアゲノムなどでも解析が行なわれていたが、今回遂に決着。
前述の2者の主張の通り、ソコクジラウオ科とトクビレイワシ科はそれぞれ、クジラウオ科の矮雄・幼体であることが確定したのである。
(生物名などの記載の先取権により、この場合有効名は最も早く報告されたクジラウオ科に統一される)
もっとも、各"旧"科のどの種がどの種に対応するかはまだ不明のようです。

大型で捕食性が強く、遊泳力も高い♀、
小型でほとんど摂餌も遊泳もせず、
矮雄(チョウチンアンコウのそれが有名だが♀の体への寄生は特殊。矮雄の必要条件ではない)となって繁殖に身を捧げる♂、
突起や表面積の大きい体を持ち、餌の豊富な表層で生活する幼体
と、これでクジラウオも深海魚の典型的ライフスタイルを行なっておられることが明らかになったわけだ。


変態(metamorphosis)は動物で広く行なわれていて、これがために幼体-成体で別種と考えられていた例はそんなに珍しくない。
深海魚は大抵発見時には、♀・♂・幼魚が、あんまりにも姿が違うので別種として記載されることが多いし、
レモンハギとして知られていたニザダイ科の熱帯魚が、
比較的最近モンツキハギAcanthurus olivaceus Bloch and Schneider,1801 の幼魚と判明した例もある。
他にもチョウチョウウオの仲間なんかは色彩が超ドラスティックに変化するので、こういう例は山とあるらしいし…
あとベラなんかが雌雄で全く色が違うから、別種とされていたのが実は同じ種でしたーというのもあるよね。
もちろん脊椎動物に限らず、
もっと根本的に体制自体変化させてしまう動物(よく考えると"変態する"って殆どの動物がやってるよねぇ)には、
惑わされてきた歴史が自然史の歴史と同時に重く重く積み重なってきた。
これからもこういう分類ネタは尽きないでしょうな~☆

分子生物学の発展とともに、古きよき比較形態学もまた見直されてきたようだし、
これらの組み合わせによって相互に短所を長所で補完しあうことが可能になってきた。
カメのリネージュとか、哺乳類の系統とか、分子系統が活躍してきたお陰で
形態から「大体はこれでほぼ確定じゃね?」とされていた系統分類にも石が投げ込まれ(収斂とか個々の形質の評価とかね)、
形態学は一時廃れるやと思われたものの、
再度"カタチとは何ぞや"を考える時代が到来してきている。
解っていたようで、生物も自然史も、まだヒトは何も理解していないんですよねぇ…so fun♪




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2 Comments

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Unknown (misatrek)
2009-01-29 18:30:09
はじめまして、トラバから来ました。トラバありがとうございます。

まだまだ未知のことがあったり、今まで当たり前だと思っていたことがこうして覆されたり、深海の生き物は興味深いですね
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コメントありがとうございます (LOKI:(fantasia*diapsida))
2009-01-29 21:10:57
どうもコメントありがとうございますm(_ _)m。
深海生物は形自体がトリッキーですもんね。
きっとまだまだ新種も見つかるし、分類も変わっていくでしょう☆
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