尼の悪ガキ

中学の3年の途中まで住んでいた伊丹のとなり街である尼崎市は、ガラの悪いことで有名だ。
僕の通っていた中学の学区は、尼崎との市の境の近くにある。
当時、尼崎の高校生の悪ガキどもは、尼崎市内でカツアゲするのではなく、わざわざ伊丹市の中学生を標的に出稼ぎに来ていた。
僕の通っていた中学の生徒は、悪ガキどもの格好のカモにされていた。
学校の帰りや、伊丹の繁華街で、尼の悪ガキは頻繁に出没して、いたいけな中学生から金を巻き上げることを繰り返す。

中学には毎日のように被害の報告が届く。
学校側も対策を考えて、下校時は複数で帰ることや、お金は分散して持つ、繁華街はなるべく行かないなどと指導していた。

僕も何度か繁華街でカツアゲに遭ったことがある。
一度目は相手は一人。
「ちょっと来てくれへん？」
そう、声をかけてくる。
すでに、友だちが何人か被害に遭っていたので、
「お金もってません」
そう言って、早足でその場を離れ、難を逃れました。
2度目は相手は二人。
「ちょっと来てくれへん？」
そう言って、いきなり両側から腕をつかまれ、無理やり人気のないところへ連れて行かれる。
「ちょっと金かしてくれへんかな～」
相手はあくまで笑顔。
「持ってへん！」
そう言ったが、身体検査をされ、財布の中の有り金全部持っていかれた・・・
3度目も相手は二人。
でも、今回は、間を入れず相手を振り払って、全速力で走って逃げる。人混みだったが、構わずに走る。
尼の悪ガキどもはどうしようもないガキどもだけど、今から考えると、カツアゲの最低限のマナー(というか)は守っていたように思う。
女子からは絶対巻き上げなかったし、相手に必要以上の恐怖感を与えないよう、笑顔を見せていた。
巻き上げた金額が少なくても、文句は言わない。
一度、友だちがカツアゲに遭い、そのときは財布に15円しか入ってなかったそうだが、黙って持っていったそうだ。

僕の住む所沢でも、ときどき親父狩りの被害があるそうだ。
最近の悪ガキどもは集団ですぐに暴力を振るうし、持ち金が少ないと逆ギレすると聞いた。
昔の尼の悪ガキとはワルの質がかなり違ってきてるように思う。
もし、親父狩りに遭ったら、間を入れずに逃げるしか対策はないように思う。
でも、酔っ払ってたら全速力で走って逃げるのはちょっと無理か・・・