鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

予選R4-8(さあ、数えて下さい)

2007-02-13 22:51:29 | WOC2006
ここまで、何とか私は優勢を維持したまま、終盤戦を打ち進めてきました。49手目G8、50手目H6はともに最善手です。Feldborg選手はWOC常連の実力者で、1994年には2位になったこともあります(決勝で滝沢八段に惜敗)。この試合はFeldborg選手の粘りにより、なかなか差が開かないのでした。

/ A B C D E F G H
1++●+○○○+
2○+●●○○++
3○●●○●●○○
4○●●●●●○●
5○●●●●●●●
6+●●●●○●50
7+●●●●●○●
8+○○○○○49◇

下記の局面は最善手順で黒6石勝ちとなります。最善手順を考えた上で、石を数えて下さい。初手を間違えると、肝を冷やす展開が待ち受けていますので、ご注意を!

/ A B C D E F G H
1++●+○○○+
2○+●●○○++
3○●●○●●○○
4○●●●●●○○
5○●●●●●●○
6+●●●●○○◇
7+●●●●●○○
8+○○○○○●○
次、黒番(51手目)

予選R4-7(危険な落とし穴)

2007-02-12 22:12:13 | WOC2006
私は45手目を打つ段で、再び長考しました。直感では45手目A6が浮かびましたが、A6は危険な匂いがしたので、じっくりと読むことにしたのです。長考の末、A6を却下して、C1に打つことを決めました。

実戦
/ A B C D E F G H
1++◆+○○○+
2++●●○○++
3●●●○●●○○
4●●●●●●○●
5○○●●●●●●
6++●●●○●+
7+●●●●●●●
8+○○○○○++
次、白番(46手目)

実戦(46手目A2,47手目B6)
/ A B C D E F G H
1++●+○○○+
2○+●●○○++
3○●●○●●○○
4○●●●●●○●
5○●●●●●●●
6+◆●●●○●+
7+●●●●●●●
8+○○○○○++
次、白番(48手目)

私が45手目でA6を却下したのは、45手目A6に対する46手目B6の好手が見えたからです。好手B6により、下辺で偶数理論にはまる事になるため、黒が勝てないと判断しました。(参考図の進行では、Zebraによると黒-2であるそうです。)

参考図(45手目をA6に打った場合)
/ A B C D E F G H
1++++○○○+
2++○○○○++
3●●○○●●○○
4●●○●●●○●
5●○●●●●●●
6◆+●●●○●+
7+●●●●●●●
8+○○○○○++
次、白番(46手目)

参考図(白の好手46手目B6)
/ A B C D E F G H
1++++○○○+
2++○○○○++
3●●○○○●○○
4●●○○●●○●
5●○○●●●●●
6●◇○○○○●+
7+○○●●●●●
8+○○○○○++
次、黒番(47手目)

予選R4-6(難解な終盤戦)

2007-02-11 08:59:03 | WOC2006
私が41手目でB7に勝負手を放ちましたが、これに対してFeldborg氏は42手目でA5に当ててきました。黒は43手目でうっかりA6に打ってしまうと斜めの石も黒石に変わるので、負けてしまいます。

/ A B C D E F G H
1++++○●++
2++○○○○++
3+●○○●●○○
4●○○●●●○●
5◇○○●●●●●
6++●○●○●+
7+●●●●●●●
8+○○○○○++
次、黒番(43手目)

従い、黒は43手目で左辺を取らずにA3に切り返します。試合中、43手目まで微妙な形勢ながらも、やや黒有利と思っていました。試合後、Zebraで分析したところ、黒4石勝ちの形勢であることが分かりました。4石の差は1手のミスで逆転される可能性があることを意味しています。

/ A B C D E F G H
1++++○●++
2++○○○○++
3◆●○○●●○○
4●●○●●●○●
5○○●●●●●●
6++●●●○●+
7+●●●●●●●
8+○○○○○++
次、白番(44手目)

この試合の終盤戦では、どれだけ我慢強く打てるかが勝敗の分かれ目となりましたので、黒の45手目を慎重に考えてください。

/ A B C D E F G H
1++++○○◇+
2++○○○○++
3●●○○●●○○
4●●○●●●○●
5○○●●●●●●
6++●●●○●+
7+●●●●●●●
8+○○○○○++
次、黒番(45手目)

予選R4-5(鬼神の勝負手)

2007-02-10 13:37:33 | WOC2006
39手目でH2に打つのを断念した私は長考の末、F1に打つことを決めました。F1の狙いは40手目をE1に当てさせた後、41手目でB7に勝負手を打つことです。

/ A B C D E F G H
1+++++◆++
2++○○○●++
3+●○○●●○○
4●●○●●●○●
5+○○●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、白番(40手目)

白は黒の注文通りE1
/ A B C D E F G H
1++++◇●++
2++○○○○++
3+●○○●●○○
4●●○●●●○●
5+○○●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(41手目)

黒が41手目でB7に勝負手を打った局面です。黒は21手目ですでにG7にX打ちしていますので、この試合で2回目のX打ちを敢行したことになります。本当に黒は勝てるのでしょうか? 黒にとって不安一杯の終盤戦が続くのでした。

/ A B C D E F G H
1++++○●++
2++○○○○++
3+●○○●●○○
4●●○●●●○●
5+○○●●●●●
6++●○●○●+
7+◆●●●●●●
8+○○○○○++
次、白番(42手目)

予選R4-4(私が悩んだ局面)

2007-02-09 23:49:14 | WOC2006
当初は37手目をC2に打つ予定でしたが、38手目で白にC1と打たれるのが嫌だったので、予定を変更してA4に打つことにしました。この辺りは黒有利ながらも終盤戦で白にもワンチャンスありそうな嫌な予感がしていました。

/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++●○○++
3+●●○●○○○
4◆●●●●●○●
5+○○●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、白番(38手目)

38手目でFeldborg選手は微笑みながらC2に白石を置きました。きっと37手目で黒にC2と打たれた方が嫌だったのでしょう。そして、私は39手目で長考に入りました。第一印象でH2(参考図)が浮かんでいましたので、H2で勝てるかどうか時間をかけて考慮したのです。kurnikでブリッツを打っているときに、この局面が出現したなら、私は迷わずH2に打ったと思いますが、さすがに世界選手権ですので慎重にならざるを得ません。

実戦
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++◇○○○++
3+●○○●○○○
4●●○●●●○●
5+○○●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(39手目)

参考図
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++○○○○+◆
3+●○○●○●●
4●●○●●●○●
5+○○●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、白番(40手目)

39手目をH2に打った場合、私は44手目まで以下の進行を予想しました。この結果、白の44手目B7のX打ちが強烈で、ブラックラインの白の通しを切るのに、黒は大きな代償を払わねばならず、黒は勝てないとの結論を出しました。そして、39手目H2を却下したのです。

Zebraの分析では以下の進行で黒2石負け。しかし、43をB6ではなく、G2またはA3で黒8石勝ちとなることが分かりました。(まだまだ修行が足りません。)

参考図 (私の読み40A5,41A6,42A2,43B6,44B7)
/ A B C D E F G H
1++++++++
2○+○○○○+●
3+○○○●○●●
4●○○●○●○●
5●○●○●●●●
6●○○●●○●+
7+◇○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(45手目)

予選R4-3(右辺の構想)

2007-02-08 23:07:54 | WOC2006
29手目のC4は緩手でした。ここはE2に強手を打って、優勢を拡大しないといけない場面でした。黒がE2に打つことで、白G2のX打ちによる右辺攻撃が可能となるため、嫌な気がしたのでした。しかし、黒はG7にX打ちした時点で、右辺を捨てる構想ですので、白G2のX打ちを恐れる必要は全く無かったのでした。

実戦 (緩手C4)
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++++○++
3++●+●○○○
4++◆●○●○●
5+++●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、白番(30手目)

参考図(強手E2)
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++◆○++
3++●+●●○○
4+++●○●●●
5+++○●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、白番(30手目)

30手目以降は水が流れる如く、両者必然の着手が続きました。大ベテランのFeldborgはそう簡単には勝たせてくれません。

実戦(30~36手目)
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++3330○++
3+35●31●○○○
4+34◆●○●○●
5+3632●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++

36手目まで黒やや有利ですが、ここから本当の勝負が始まるのでした。終局して石を数えるまで、どちらが勝ったのか分からない試合となりました。さて、37手目はどこが最善手でしょうか?

/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++●○○++
3+●●○●○○○
4+○○○●●○●
5+◇○●●●●●
6++○○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(37手目)

予選R4-2(大ベテランの疑問手)

2007-02-07 21:44:41 | WOC2006
白の24手目F2は疑問手です。24手目はH5に打ち、黒にH3に打たせた後、F2に打つべきです(参考図の進行)。参考図では、黒はH4の空きに入ることができないので、白の余裕手となります。右辺で白から仕掛けられる分、白にとって実戦の進行より有利なのです。

疑問手F2
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++++◇++
3++●+●○○+
4+++●●○○+
5+++●●○○+
6+++○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(25手目)

参考図(24H5,25H3,26F2と打った場合)
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++++◇++
3++●+●○●●
4+++●●○●+
5+++●●○○○
6+++○●○○+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(27手目)

実戦(25~28手目)
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++++◇++
3++●+●○○26
4+++●●○○25
5+++●●○○27
6++28○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++

白に24手目で疑問手が出たため、28手目まで黒有利の進行となりました。29手目では黒は優勢を拡大させる強い手を打つべきでしたが、何としても4つめの勝ち星が欲しかったためか、安全指向に走ってしまいました。次の一手を境に、黒やや有利ながらも決め手が無い波乱含みの展開に突き進んでいくのでした。

実戦
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++++○++
3++●+●○○○
4+++●○●○●
5+++○●●●●
6++◇○●○●+
7++○○○○●●
8+○○○○○++
次、黒番(29手目)

予選R4-1(古典的定石)

2007-02-06 22:45:47 | WOC2006
予選第1ラウンドのCaroline戦に辛勝した私は、第2ラウンド、第3ラウンドでも勝ち星を伸ばして、第4ラウンドでデンマーク代表のKarsten Feldborg選手と対戦することになりました。Karsten Feldborg選手と世界選手権で対戦するのは、1995年のオーストラリア大会以来で実に11年ぶりでした。

昔々(約20年前)、若かりし頃のFeldborg氏がオセロの武者修行のために日本にやってたことがありました。せっかく日本に来たのだから、東京だけでなく、西日本にも行ってみようということになり、Feldborg氏が村上九段、吉田泰作四段に連れられて、姫路にある私の実家にこられました。当時、実家で飼っていた柴犬(12歳位)を見たFeldborg氏が「Old!」と一言コメントを残したそうです。ストレートで歯に衣着せぬ物言いで日本選手団をタジタジにしたのでした。

さて、試合は黒の私が「バッファロー定石」を選択し、バッファローから古典的な長手順の定石へと進んでいきました。私は準決勝のBen Seeley戦では「飛び出し定石」を使いましたが、予選では出来るだけ手を見せたくなかったので、いつも通りバッファローを使うことにしました。

F5F6E6F4C3D7F3D6G5G4
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●++●++
4+++●●○◇+
5+++●●○●+
6+++○○○++
7+++○++++
8++++++++
次、黒番(11手目)

F5F6E6F4C3D7F3D6G5G4E3G6E7G3F7F8E8D8C8B8G7C7H7
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●+11●14+
4+++●●○◇+
5+++●●○●+
6+++○○○12+
7++22○13152123
8+2019181716++

23手目まで定石通りですが、黒は21手目で早くもX打ち(G7)しています。

/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●+●●○+
4+++●●●○+
5+++●●●○+
6+++○●●●+
7++○○○●●◆
8+○○○○○++
次、白番(24手目)

予選R1-9(Caroline戦最終回)

2007-02-05 05:28:49 | WOC2006
参考までに、45手目A3が敗着である理由を説明します。45手目で正解のH6に打った場合、以下の46~52の進行が予想されます。下記の進行は最善手順ではありませんが、人間同士の試合なら最も実現する可能性が高そうな手順です。

参考図(46~52手目)
/ A B C D E F G H
1++●○○○51+
2+50●●○○5249
3+○○○●○○○
4○○●○●●○○
5●●●●●○●○
6●●●○●●●◆
7●●●●●●48+
84647●○○●++

参考図
/ A B C D E F G H
1++●●●●●+
2+○○○○○◇●
3+○○○●○○●
4○○●○○●○●
5○●●○○○○●
6○●○○●○○●
7○○○○○○○+
8○●●○○●++
次、黒番(53手目)

参考図ではブラックラインとホワイトラインの両方が白の通しとなって黒が困るように見えますが、53手目の黒A3が絶好手です。53手目A3により、D3に黒の種石が出来るので、黒はH7に打てるようになります。黒がH7に打つことでE4が黒石に変わり、ブラックラインの白の通しを切れます。下辺では、黒H7→白G8→黒H8の手順で黒が下辺をモノにした上で手止まりを打てるので、黒が勝つのでした。

実戦では黒は45手目でA3に打ったため、Cライン(C2~H7)及びブラックラインの白の通しが切れなくなってしまったのでした。

参考図(絶好手53手目A3)
/ A B C D E F G H
1++●●●●●+
2+●○○○○○●
3◆●●●●○○●
4○●●○○●○●
5○●●○○○○●
6○●○○●○○●
7○○○○○○○+
8○●●○○●++
次、白番(54手目)

WOC2006予選R1-8(天才少女、大金星逃す)

2007-02-04 09:29:57 | WOC2006
ついに、Carolineは45手目で敗着A3を打ちました。45手目の正解はH6です。なぜA3が敗着なのか?については明日詳しく解説します。

黒の敗着A3
/ A B C D E F G H
1++●○○○++
2++●○○○++
3◆○○○○○○○
4●●●○●○○○
5●●●●●○○○
6●●●○●○○+
7●●●●●●++
8++●○○●++
次、白番(46手目)

私が打った50手目B2は10石損の悪手で、ダイレクトにG7で白14石勝ちになるところでした。第1ラウンドは大苦戦の末に勝ち点1を上げることができました。この試合を落としていたらどうなっていたのでしょうか?考えるだけで恐ろしくなります。

実戦(46A8 47B8 48A2 49H6)
/ A B C D E F G H
1++●○○○++
2○+●●○○++
3○○○○●○○○
4○●●○○●○○
5○●●○●○●○
6○●○○●●●◆
7○●●●●●++
8○●●○○●++
次、白番(50手目)

あと一歩で大金星を逃しましたが、Carolineの才能の片鱗が随所に窺える好ゲームでした。今年の世界選手権には、経験を積んでさらに手強くなったCarolineが出場してくると思います。今年はCarolineも世界チャンピオン候補の一人に名前を連ねることになるでしょう。今後の彼女に注目したいと思います。

/ A B C D E F G H
15156●○○○5859
2○50●●○○5760
3○○○○●○○○
4○●●○○●○○
5○●●○●○●○
6○●○○●●●◆
7○●●●●●5255
8○●●○○●5354
白、4石勝ち