2011年12月13日
「つつき餅のある駅」
山間部にある古い駅がある。それほど田舎というわけではないが決して賑やかなところでもない町である。その駅では踏切の待ち時間の間、特殊な技術を使って餅をつく。それを「つつき餅」と呼ぶ。「つつき餅」の技法を使うと餅は自動的に動き出し芸をする。人はそれを観て踏切の待ち時間を紛らわせるのだ。たいていはねずみの頭部の形の「つつき餅」が現れそこらを飛び跳ねる。それは大きい時には1メートル位になるが、たいては50センチから80センチ程度のものだ。「つつき餅」はどんな形になるのか餅をつく人にもわからないそうである。餅をつくのは駅長とSと呼ばれる老婆の二人だった。今回駅長が長年の「つつき餅」のおかげで精神を病んでしまい、精神科に入院する事になった。一見心を病んでいる人には見えないのだが、Sによれば「かなり危ない状態で、このままでは自殺してしまうだろう」と言う。知らない病院に入院するというのは誰でも不安に思うものである。もちろん駅長もその例外ではない。私(坂野)が彼の不安を取り除こうと話かけるも、かれは倉庫に飛び込み、置いてある本棚に入り込んだ。駅長は本棚に寝そべるのが好きなのだ。私は仕方なく「病院の本棚もきっと重厚なものですよ」と声をかけたが、駅長は黙って動かない。すると倉庫の外でチャイムがなる。しまった、うるさくしすぎたのだろうか。不安に思い扉を開けるとそこはマンションの玄関である。横の部屋を見ると大学時代の友人Kの家族が食事をしてた。少し会釈をしたが声をかける感じではない。チャイムが再び鳴ったのでKのかわりに扉をあけると隣に住む年配の老婦人が丸い青いバケツを無言で私に差し出した。ああ、このマンションでは水の入ったバケツを回覧板として使うんだなと思う。
覚醒
「つつき餅のある駅」
山間部にある古い駅がある。それほど田舎というわけではないが決して賑やかなところでもない町である。その駅では踏切の待ち時間の間、特殊な技術を使って餅をつく。それを「つつき餅」と呼ぶ。「つつき餅」の技法を使うと餅は自動的に動き出し芸をする。人はそれを観て踏切の待ち時間を紛らわせるのだ。たいていはねずみの頭部の形の「つつき餅」が現れそこらを飛び跳ねる。それは大きい時には1メートル位になるが、たいては50センチから80センチ程度のものだ。「つつき餅」はどんな形になるのか餅をつく人にもわからないそうである。餅をつくのは駅長とSと呼ばれる老婆の二人だった。今回駅長が長年の「つつき餅」のおかげで精神を病んでしまい、精神科に入院する事になった。一見心を病んでいる人には見えないのだが、Sによれば「かなり危ない状態で、このままでは自殺してしまうだろう」と言う。知らない病院に入院するというのは誰でも不安に思うものである。もちろん駅長もその例外ではない。私(坂野)が彼の不安を取り除こうと話かけるも、かれは倉庫に飛び込み、置いてある本棚に入り込んだ。駅長は本棚に寝そべるのが好きなのだ。私は仕方なく「病院の本棚もきっと重厚なものですよ」と声をかけたが、駅長は黙って動かない。すると倉庫の外でチャイムがなる。しまった、うるさくしすぎたのだろうか。不安に思い扉を開けるとそこはマンションの玄関である。横の部屋を見ると大学時代の友人Kの家族が食事をしてた。少し会釈をしたが声をかける感じではない。チャイムが再び鳴ったのでKのかわりに扉をあけると隣に住む年配の老婦人が丸い青いバケツを無言で私に差し出した。ああ、このマンションでは水の入ったバケツを回覧板として使うんだなと思う。
覚醒