残照日記

晩節を孤芳に生きる。

忠犬ペック

2012-01-21 10:12:14 | 日記
【人と禽獣】
≪人にして横逆なるは禽獣にも劣る≫(古諺)

【韓国版の「忠犬ハチ公」】
≪厳冬の山中で倒れた主人の命を救った「忠犬」が、韓国で話題を呼んでいる。寄り添って体を温め、ほえ続けて、眠ってしまうのを防いだという。 韓国の珍島(チンド)犬と北朝鮮の豊山(プンサン)犬の間に生まれた約2カ月の「ペック」。日本語では「シロちゃん」という意味だ。雑種だが、2000年の初の南北首脳会談で金大中(キム・デジュン)大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記が交換しあった、南北を代表する名犬種が親だ。 地元警察などによると、韓国北東部の江陵(カンヌン)市で12日夕、認知症の症状がある80代後半の男性が行方不明になり、家族が警察とともに捜索。夜9時すぎ、自宅から数百メートル離れた山の中で倒れているのが見つかり、飼い犬が寄り添って体を温めていた。 体感温度が零下10度の厳寒。老人は帽子や手袋を着けていなかった。警察などの聞き取りでは、子犬は、寒さで意識がもうろうとする男性の顔をなめたり、ほえたりしながら、体を密着させていたという。 警察関係者は「救出できたのは、子犬が少しでも体温を保ってくれたおかげだ」と語っている。≫ (1/19 朝日新聞夕刊)

∇かつて毎日新聞コラムの名手・高田保が、「ブラりひょうたん」で、≪犬が人間を噛んだ、というのではニュースにならないが、人間が犬を噛んだというのは大ニュースとなる≫、と書いていた。同様に、零下10度の厳寒に凍えていた子犬を、人間が救ったという話では、左程話題にならないだろうが、生後僅か2カ月の「ペック」が、85歳の老主人の≪顔をなめたり、ほえたりしながら、体を密着させて≫体温を保って救ったというのだから、忠犬ペックの話題は韓国ならずとも感動ものである。尚、韓国には、人気童話シリーズの一冊に、「帰ってきた珍島犬ペック 韓国・忠犬ハチ公物語」という書があるという。楽天ブックスの【内容情報】によれば、≪あらゆる苦難を経て、7カ月かけて300kmの道のりを走破し、奇跡的に主人のもとに帰った珍道犬ペックの愛と涙の物語! 飼い主を捜し続けたペックのすさまじい生きざまと過酷な運命、そして飼い主のおばあさんへの愛と忠誠の心は、涙を誘います。≫とある。現在犬肉を食べる習慣のある韓国が、忠犬ペックのお陰で変わることがあるかも……。


似て非なる輩

2012-01-19 17:44:07 | 日記
【言と行】(「論語」より)
≪子曰く、巧言令色、鮮(すく)なし仁。(陽貨篇)≫( 孔子が言うには、「言葉が巧みで顔つきが善い者は、大概、仁徳は無いものだ」と。) ≪子の曰く、始め吾れ人に於けるや、其の言を聴きて其の行(こう)を信ず。今吾れ人に於けるや、其の言を聴きて其の行を観る。(公冶長篇)≫(孔子が言うには、「私は今まで、その人の言うことを聞いてその行動が伴っていると信じていた。今、私は、「利口辨辞」な弟子の宰我の言行不一致を見て、善言を聞いても、行動がそれに一致しているかどうかを見てから信ずることにした」と。)

【小沢一郎という男】
≪民主党の小沢一郎元代表は17日、群馬県高崎市での会合で、野田佳彦首相が衆院解散・総選挙に言及していることについて「野田さんで解散は事実上できない」と指摘した。…小沢氏は「私自身が先頭に立って民主党政権を成功させたい思いは、今の野田さんよりも、誰よりもかれよりも強い」と強調。≫(1/18 朝日新聞) 小沢氏の「総理願望」はまだ衰えていない。否、寧ろメラ/\と怪しく燃えている。先の政治資金収支報告書裁判で最早「老兵は消えゆくのみ」を晒したばかりなのに。──彼曰く、≪私の関心は天下国家。政治資金収支報告書を見たことは一度もない≫と豪語し、4億円の土地取引は≪すべて秘書に任せていた≫≪直接関心を持ついとまはなかった≫を押し通した。虚偽記載の罪に問われた問題の収支報告書にさえ、≪担当者がきちんと報告していると思うので、(裁判が始まってからも)見ていない≫と述べ、今もって内容を把握していないことを強調していた。

∇≪小沢氏の「秘書任せ」の弁明が通る余地があるのは、規正法が報告書の一義的な責任を政治家本人ではなく、会計責任者に負わせているからだ。 その見直し問題は、長らく国会で放置されてきた。 違反の言い逃れを封じるために連座制を強化し、政治家自身が責任と倫理を明確にする制度を確立すればよい――。 19年前に出版した著書「日本改造計画」で、こう指摘したのは小沢一郎氏その人である。≫(1/13 朝日社説)  まさにご都合主義巧言令色のサンプル的輩である。こんな政治家が「天下国家」を口にする資格はない! ≪子曰く、紫の朱を奪うを悪(にく)む。鄭声(ていせい)の雅楽を乱るを悪む。利口の邦家を覆すを悪む。(陽貨篇)≫( 孔子が言うには、「[簡色である]紫が[正色である]朱を圧倒するのが憎い。[みだらな]鄭の国の音曲が[正当な]雅楽を乱すのが憎い。口達者な者が国家をひっくり返すのが憎い。」(金谷治訳) 所謂“似て非なる者”に惑わされるな!

∇≪子曰く、其の以(な)す所を視、其の由る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉(いずく)んぞ捜(かく)さんや、人焉んぞ捜さんや。(為政篇)≫( 対象とする相手の日頃やっていることを見続け、やっていることの動機や経歴を注意して調べ見て、その人の内面的な思想や職場外での行動をしっかり観察すれば、どんな相手だって見えてくる。表面上の言動だけでは人は見抜けない。「察する」というのが重要で、「実際に見届ける」くらいの努力が必要である。)≪子曰く、君子は言を以て人を挙げず、人を以て言を廃せず。≫(衛霊公第十五)≪子曰く、衆これを悪(にく)むも必ず察し、衆これを好むも必ず察す。(衛霊公篇)≫(孔子曰く、「大勢が憎むときも必ず調べてみるし、大勢が好むときも必ず調べてみる。私は盲従はしない主義である」、と。) 未だに100人を超す「小沢氏に近い議員」が、反増税勉強会に参加しているという。次の総選挙で殆ど落選しそうな御仁ばかりである。…


言語道断

2012-01-17 14:26:21 | 日記
【分を尽くせ】明恵上人
≪人は阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)と云ふ七文字を持(たも)つべきなり。僧は僧のあるべき様、俗は俗のあるべき様なり。ないし、帝王は帝王のあるべき様、臣下は臣下のあるべき様なり。このあるべき様を背く故に、一切悪きなり。≫(「栂尾明恵上人遺訓」より)

≪大型客船コスタ・コンコルディア(乗客・乗員約4200人)がイタリア西岸で座礁した事故で、運営会社は15日、船の針路や避難指示について「船長の判断ミスが重大な結果を招いた」との判断を示した。AP通信などが伝えた。 スケッティーノ船長(52)は乗客全員の避難を確認せず、先に下船したという。イタリアの法律では、緊急時に船長が船を放棄した場合、12年以下の禁錮刑が科される。また島に近づきすぎたことが座礁の原因とみられ、捜査当局は航行情報を記録したブラックボックスを回収して原因解明を進めている。≫≪停電で室内が真っ暗になる中、避難指示はなく、救命ボートに詰めかけた乗客を船員は押しとどめた――。救出された日本人乗客が、避難時の混乱した状況を語った。 …≫(1/14朝日新聞)

∇有数の豪華客船であるのに、適切な≪避難指示はなく≫、船長が≪乗客全員の避難を確認せず、先に下船した≫というのが事実なら言語道断である。咄嗟に、1982年に起きた日本航空350便の羽田沖墜落事故のことを思い出した。墜落直後、航空機の機内で、あるスチュワーデスが涙声ながら、「落ち着いてください、この飛行機は沈みません」とアナウンスして、乗客の過度の不安を鎮め、着実に誘導したことを。又、この度の東日本大震災でも「自分の役目をまっとうした名も無き人々」の美談が幾つも聞かれた。例えば津波に押しつぶされた宮城県南三陸町で、防災放送の担当職員だった遠藤未希さん(24)。大きな揺れの後、津波の来襲と高台への避難をひたすら呼び掛け続けた。

∇≪3月11日、未希さんは防災対策庁舎の2階で放送していた。「6メートルの津波が来ます。避難してください」。冷静で聞き取りやすい呼び掛けが何度も繰り返された。海岸にいた両親にもその声は届いた。が、未希さんは津波に呑み込まれて死んだ。 庁舎に残った職員約30人のうち、助かったのは10人。高台の高校に避難した人からも波にさらわれる職員の姿が見えた。……(母親の)美恵子さんは「放送が途中で切れた」と知人に聞かされた。最後の方は声が震えていたという。「放送するのに精いっぱいで、逃げられなかったんだろうね。実際は怖かったと思う。」 。避難所へ逃げた女性(64)は「あの放送でたくさんの人が助かった。町民のために最後まで責任を全うしてくれたのだから」と思いやった…。≫(産経新聞他) それらに比すれば“豪華客船”とは、名ばかりの「お粗末」さよ!

世論趨勢

2012-01-15 14:58:07 | 日記
【舜の大知】(「中庸」)
≪子曰く、舜は其れ大知なるか。舜は問うことを好み、邇言を察することを好み、悪を隠して善を揚げ、その両端を執りて、その中を民に用う。それこゝを以て舜と為すか、と。≫(「中庸」)=古代中国伝説の聖王であった「舜」は、実に優れた君主であった。「大知」の王であった。政事を行なう際、貴賤を問わずあらゆる人々の意見を聞き集め、その中で最も時宜に適った(TPOに適った)意見を採用してそれを実践した。)

≪内閣支持率37%に下落…岡田氏「評価」52%──野田改造内閣の発足を受け、読売新聞社は13日から14日にかけて全国世論調査(電話方式)を実施した。内閣支持率は37%で、前回調査(昨年12月10~11日実施)の42%から5ポイント下がった。不支持率は51%(前回44%)に上昇して初めて5割を超え、2か月連続で支持率を上回り、支持率下落に歯止めがかからなかった。今回の内閣改造を「評価しない」は49%で、「評価する」35%より多かった。改造内閣の顔ぶれについては、岡田副総理兼一体改革相の起用を「評価する」は52%で、「評価しない」35%を上回った。田中防衛相の起用を「評価する」は19%にとどまった。年金など社会保障制度の財源として消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げるとする政府・与党案に「賛成」は39%で、「反対」55%を下回った。≫(1/15 読売新聞)

∇内閣改造を受けて、今年最初の世論調査が新聞各紙で続々なされている。とりあえず今日時点入手した資料で概要だけ拾ってまとめておこう。内閣支持率は朝日が29%、読売・日経・共同等では35~37%で、前回調査と横ばい又は漸減した。相変わらず不支持率は50%前後、改造による政権浮揚効果は見られていない。但し、岡田氏起用については、共同59.4%、日経55%、読売52%、朝日50%と「評価する」「期待する」傾向にある。当然のことながら、一川保夫防衛大臣と山岡賢次消費者担当大臣を退任させたことに異論はない。政党支持率に於ける民主対自民は、25:17(読売)、28:29(日経)、19:18(朝日)、19:19(共同)で、これも相変わらず拮抗状態である。消費増税の政府案について、「賛成」対「反対」は34:57(朝日)、39:55(読売)と、「反対」傾向が強い。殊に、①国会議員定数削減、②国家公務員給与削減が実施されないなら「反対」、が、約7~8割に達している。(共同他)

∇今朝の朝日社説「日本の指導者―政治の根幹変える覚悟を」の冒頭部分が要を得た指摘だと思う。曰く、≪ この6年、毎年、首相が退陣した日本の政治は、すっかりタガが外れてしまった。 民主党では昨年、菅首相に「辞めろ」の大合唱が起こり、不信任案へ同調する動きさえあった。次の野田首相は増税を訴えて党代表選に勝ったのに、年末の党内議論で反対論が蒸し返され、離党者まで出た。 自民党には、もはや政権党の面影もない。財政赤字を積み上げてきた責任など知らん顔で、民主党のマニフェスト違反を責め立てる姿は滑稽ですらある。 こんなありさまだから、衆院で9割に近い議席を占める民主党と自民党の支持率を合わせても、最近は40%に満たない。 「支持政党なし」が圧倒的な最大勢力を占める現状は、果たして「2大政党」などと言えるものなのか。…≫  ≪維新の会の国政進出、「期待する」が66%≫あるのは当然の現象であろう。(1/15読売調査)。折りしも「ユーロ分裂の予兆」(1/15朝日)、昨日のテレビ東京での野田首相発言ではないが、1000兆円もの「借金漬け」国家にとって、ユーロ危機は≪「対岸の火事ではない≫。政治家諸兄に庶幾(こいねが)う、「舜」の大知を以て、博学・審問・慎思・明弁・篤行されんことを!


歌会始

2012-01-13 13:29:32 | 日記
【明治天皇御歌】
○四方の海 みなはらからと思う世に
      など波風の立ち騒ぐらむ
○あさみどり澄み渡りたる大空の
      広きを己が心ともがな

≪歌会始の儀:天皇陛下 津波での大きな被害の印象詠む──新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」が12日、皇居・宮殿であった。今年の題は「岸」。天皇、皇后両陛下や皇族方に加え、入選者10人と召人(めしうど)で詩人・小説家の堤清二さん(84)、それに選者の歌が伝統にのっとった発音と節回しで披露された。選考の対象となったのは1万8830首、うち海外は21カ国・地域からで158首だった。天皇陛下は東日本大震災の被災地、岩手県を見舞うためにヘリコプターに乗った際、上空から津波で大きな被害を受けた地域を見た印象を詠んだ。皇后さまは津波で行方不明になった人々や、戦後の外地からの引き揚げ者、シベリア抑留者などを待つ家族らの姿を「岸」に重ねて詠んだ。≫(1/13 毎日新聞)

∇明治天皇御歌は見事なものばかり。上掲「四方の海」の歌は、欧米列強がアジアを侵略し、ロシアが日本を虎視眈々と狙っている頃の歌。≪四方の海はみな同胞と思うこの世になぜ波風が立ち、騒ぎが起こるのであろう。≫。昭和16年、大東亜戦争開戦を決定した御前会議で、昭和天皇はこの御製を詠みあげられたという。「平和への願い」空しく「戦争」突入となった。今年の「歌会」での下掲の御製(天皇の歌)は、宮内庁の解説によれば、≪昨年五月六日、東日本大震災被災地お見舞いのため岩手県に行幸啓になった際、釜石市と宮古市の間をヘリコプターにお乗りになり、津波により大きな被害を受けた被災地を上空からご覧になったときの印象を詠まれたものである。≫とのことである。未曾有の大震災に遭遇した「岸辺」ではあるが、上空より見ると既に「青く静ま」っていた。「天地は不仁なり」と「老子」は言ったが、自然は何ごともなかったかの如く淡々と時を刻む。澄徹した、何か清々しさを感じさせる含蓄に富んだ御歌である。尚、皇后陛下の御歌も掲示しておこう。

御製
○津波来(こ)し時の岸辺は如何なりしと
            見下ろす海は青く静まる

皇后陛下御歌
○帰り来るを立ちて待てるに季(とき)のなく
            岸とふ文字を歳時記に見ず

〔歌意〕:≪俳句の季語を集めた歳時記に「岸」という項目はなく、そのことから、春夏秋冬季節を問わず、あちこちの岸辺で誰かの帰りを待って佇む人の姿に思いを馳せてお詠みになられた御歌。この度の津波で行方不明となった人々の家族へのお気持ちと共に、戦後の外地からの引揚げ者、シベリアの抑留者等、様々な場合の待つ人待たれる人の姿を、「岸」という御題に重ねてお詠みになっているようです。≫(宮内庁HPより)